「寒 い」 長澤 アキラ
どうにでもなれと財布が言っている 静 岡
旅をして無口になったブーメラン
テフロンが剥げて今夜も冷奴
大道芸我家の暮し見せられる
「はだか木」 小林 ふく子
裸木も花満開の過去がある 袋 井
秋色へ染まる笑顔に散るもみじ
逆らわず冬の流れに乗ってみる
諦めをいくつも重ね年の暮
「けもの臭」 山口 兄六
コッペパン色した犬がついて来る 足 利
好きな鳥いますか 塩で二本ずつ
雨の日は獣の臭み隠せない
キヨコって名のペットにも発情期
「自 由 吟」 内山 敏子
また逢える人さよならがさりげない 浜 松
嬉しさを書くとペン先よく走る
高配当マネーゲームの落し穴
託児付きゲームセンターママ笑顔
「自 由 吟」 南 天子
根性の半分程が欠けて来た 焼 津
先の事考えないで浮草に
肩書きをすべて捨てたが影法師
秋の虫何が不足で鳴くのやら
「夜のしゃぼん玉」 斉尾 くにこ
矛先が呼び止めそうな空模様 鳥 取
しゃぼん玉一寸先の闇に浮く
懐の深さへ恋の跳ねる音
わたくしはバラじゃないのに刺を持つ
「銀 の 鞍」 提坂 まさえ
思うこと散らけ放題ワンルーム 静 岡
砂漠行く王子も今は銀の鞍
アンチエイジほんとに忘れどうしましょ
行間を行きつ戻りつ秋夜長
「うちの嫁」 森 だがやん
二歩下がり手綱を持ってムチを振る 島 田
「パパ決めて」言っときながら却下する
立ち位置が子供産む度高くなり
最近は角は出たまま隠さない
「捨 て る」 栃尾 奏子
断捨離が流行る私を置き去りに 大 阪
柵を捨てれば軽快な一歩
アレこれと捨てて残った愛一途
捨てるのもやっぱり拾うのも女
「てっぱく」 横田 輪加造
テツ分たっぷり鉄博の道すがら 東 京
新幹線大人のほうが齧り付き
鉄ヲタのない鉄博のすべり台
すべりだい「はやぶさ」号の鼻を縫い
「自 由 吟」 成島 静枝
やる気ONするまで子供誉めまくり 千 葉
おばやんと言われて席を譲られる
取説の書き出し電源入れるから
四つ切りのカボチャ故郷の方を向き
「雑 詠」 馬渕 よし子
年金の話あれこれ視界ゼロ 浜 松
イヤリング揺れて独りの旅に出る
差し伸べた手へ借金の肩代り
不器用に生きて女の泣きぼくろ
「自 由 吟」 松橋 帆波
自転車のように男も放置され 東 京
悲しいね武器と呼ばれる泣きボクロ
キャバクラの灯に切なさのありなしや
指名料そうかこの子も棒グラフ
「ケータイ」 川口 のぶ子
人並みにケータイ持っている自慢 藤 枝
ケータイを手取り足取り孫に訊き
ケータイが鳴る度ドキリ目が迷う
メール打つ指先ふるえ時間切れ
「ハートの手術後」 増田 久子
江ノ島と富士見る集中治療室 焼 津
安静の身で三食を待ち侘びる
手術跡みな胸に持つ四人部屋
下り階段リハビリの足すくむ
「自 由 吟」 鹿野 太郎
身に余るダークホースの席に着く 仙 台
なでしこを一輪飾りあやかろう
拗ねている姿が浮かぶ欠け茶碗
よそよそと金木犀が帰宅する
「 犬 」 濱山 哲也
逃げたこと詫びてる犬を抱きしめる つがる
耳を掻く犬はエクスタシーの顔
犬が去る夫婦喧嘩の二分前
上役の犬までウチにマーキング
「幸せな日」 真田 義子
秋の天 飛行機雲について行く 仙 台
無人駅秋がだんだん深くなる
秋の天りんごたわわになっている
幸せな日は1行で済む日記
「ご 来 光」 中矢 長仁
石鎚に来て雲海とご来光 松 山
ご来光受けて心が洗われる
雲海を渡ってみたい向こう岸
洗われた清い心で下山する
「通 販」 井口 薫
通販が殺し文句を並べ立て 袋 井
通販のお試しセット撒き餌だな
限定に弱いダイヤルまた回す
配達のチャイムへいつになく機敏
「自 由 吟」 川村 美智代
躓いた石に迂闊を正される 静 岡
白と黒決めかねている真ん中で
七五三借り賃くらい着ておくれ
大道芸 人の頭を見て帰る
「自 由 吟」 飯塚 すみと
車輪浮きセノバセノバと人が乗る 静 岡
ご利益のエリア近づきまた消える
失業者不況指差し擦れ違う
ポスト前シマッタ入れる物忘れ
「秋深し…」 新貝 里々子
無理しない私はわたし秋はあき 袋 井
くたびれたポストへ紅葉処方箋
もう少し元気くださいラッセーラ
ボジョレ・ヌーボ甲州産がお気に入り
「自 由 吟」 野中 とし子
なまけすぎハッキリ解る通信簿 静 岡
人生も負けず嫌いは疲れます
キンモクセイ香りただよう田舎道
大銀杏この世のすべて知り尽くし
「 絵 」 安田 豊子
意のままに描けば昔の絵が巡る 浜 松
気まぐれに咲いた花こそ艶がある
過去の絵が様ざま浮かぶ万華鏡
七十の胸に愛しい萩の花
「自 由 吟」 寺脇 龍狂
お迎えでその日が決まるデイケアー 浜 松
モテるわけ今日も男性おれ一人
主任さん休んで判る底力
自転車へお年老でも法は法
「自 由 吟」 宮浦 勝登志
高すぎた理想へ婚期とり逃がす 静 岡
小心のつぼみのままでとじる道
口べたと逃げて上手な嘘をつき
返信はすべて電話で筆不精
「自 由 吟」 石上 俊枝
同じ食べヤセとデブ見る鍋と釜 静 岡
任せとけ健忘症になる虎だ
大口に修正液が蚤とくる
スマートフォン人差し指が多忙です
「雑 詠」 西垣 博司
告発の勇気社員の正義感 静 岡
作者名伏せればただのいたずら画
コマーシャル見せ場になるとしゃしゃり出る
軽く見た相手が隠す落し穴
「雑 吟」 村越 精也
情の無いチームとハムは食えませぬ 静 岡
大リーグ先進国か唾ペッペッ
ついて来い昔云ったが今年金
体力計二十若いぞ武者震い
「か た ち」 杉山 太郎
標識がおでんに見える時がある 横 浜
三角の雲だよ誰が描くのか
人の影人よりでかくなりコワイ
三角の心のままで日が暮れる
「晩 秋」 鈴木 まつ子
積ん読の本にうたたね秋寂びぬ 島 田
日だまりでおしゃべりしてる女郎花
犬食わぬ夫婦げんかは夕限り
天高くノラにもなって山歩き
「大 相 撲」 岡村 廣司
外人に日本の国技支えられ 焼 津
九州場所声援しようニッポンと
奮起せよ静岡県の力士達
ふるさとの期待に応え勝名乗り
「シンプル」 奥宮 恒代
ご褒美を天が授けてくれた運 森 町
円熟期膝も笑いに包まれる
シンプルな頭すっきり思考ゼロ
ポイントもカードもさらばおさつだけ
「戦争と平和」 瀧 進
靖国に御霊帰らぬ終戦忌 島 田
戦争が語る平和の無い世界
核兵器捨てて地球に春が来る
平凡な暮らしの中にある平和
「若 し か」 川口 亘
美味なるは茶碗の底の残り滓 藤 枝
心境は清水(せいすい)に浮く月に似る
見方まで変えた自分は見捨てない
下手ながら精一杯が受けに受け
「晩 秋」 鈴木 恵美子
込み上げる想い日記にしまい込む 静 岡
枯れ葉舞う秋の日ざしにひとり佇つ
深み行く秋へカレンダーをめくる
またやった痛い言葉を噛みしめる
「自 由 吟」 滝田 玲子
神様も明日のことは解らない 浜 松
句が出来ずエンピツ投げて八つ当たり
面の皮やわらかくする蒸しタオル
ロボットに充電急げとせがまれる
「自 由 吟」 野中 雅生
この頃は落差感じぬ都市田舎 静 岡
もちました負けず嫌いで半世紀
戦争と彼岸花の根オレ泣かす
朝一番続け通したスニーカー
「写真立て」 毛利 由美
庭よりも2台停めれる駐車場 つくば
幼少のみぎりばかりの写真立て
老眼になる年齢は順不同
連れ合いがスマホに弄ばれてる
「 海 」 山本 野次馬
海の水甘く感じたいい日和 函 南
荒海へ架け橋になる鳥になる
満月を小船に乗せて行く阿修羅
手を合わせれば父のうみ母のうみ
「気 持 ち」 藤田 武人
玄関に四季折々が香る君 大 阪
ぐずる子にそっとにこにこくれた人
高いびき大の字腹に毛布掛け
テーブルに花一輪を飾る妻
「痛 い」 酒井 可福
其れを言う胸にズズンと痛いこと 北九州
痛い腹探るあいつの脛を蹴る
泣く程に痛くは無いが涙見せ
バラの刺痛い事とは知りつつも
「自 由 吟」 萩原 まさ子
セレブから見ると全てが特価品 静 岡
兄ちゃんに揉まれ芽を出す次男坊
仮免とシルバーカーに慣れぬ父
木登りが目線を超えて見せた空
「素 顔」 安藤 千鶴子
役者さん素顔にだけはならないで 静 岡
人生路落ちてわかった落差あり
どう痛い上手く言えずに苦しんだ
舐めてから食べるケーキの正マナー
「息 抜 き」 大塚 徳子
自画像が間抜けに見える馬の面 仙 台
今日もまた眠れずぼやく午前二時
イエスノー宙ぶらりんの生返事
なにもかも忘れ息抜きキノコ狩り
「高 齢」 畔柳 晴康
御挨拶歳は知らねどお若いネ 浜 松
急がない無理もしないよ蝸牛
膝痛い妻の歩幅でお買い物
言い訳は老いた加減と頭下げ
「台所の音」 鈴木 千代見
電子音どこで鳴ったか探してる 浜 松
包丁の研いでなかった掠り傷
今日の鍋ビタミン剤も入れて煮る
背の影で催促してるつまみもの
「大 物」 薗田 獏沓
大物の片鱗覗く甲子園 川根本町
エー・オーと大物運ぶ蟻の列
大物のお屋敷延々石の塀
頷いて大物たまに笑うだけ
「ガ イ ド」 深澤 ひろむ
イケメンのガイドが好きな山ガール 甲 府
今日もまた年増ガイドに仕切られる
夕映えの富士へガイドがバスを停め
不夜城でたんまり払うガイド料
「笑 顔」 中野 三根子
あんなにも笑ってくれてありがとう 静 岡
こんにちはテレビの笑顔答えてる
この笑顔あなたにみせるつもりです
白い歯がキラリと光りあらステキ
「五 感」 増田 信一
五感でも女心はわからない 焼 津
ピンチには第六感に頼る俺
霊感と六感のみで生きて来た
鈍感でちょうどいいのか今の世は
「ナ ン パ」 稲森 ユタカ
声かかり振り向きそこにマンバギャル 静 岡
差し出したコースターには番号が
街中で手を出す女間違える
後ろから声かけそれは友のママ
「夫どっこい」 尾崎 好子
ハッピーじゃないがリタイヤ七十五 藤 枝
スポーツは聞けば答えるパーフェクト
こそこそと酒買いに行く軽トラで
明ごころほろりとんろり寝てござる
「順 風」 石田 竹水
信号を無視したと言う霊柩車 静 岡
勝ち取った順風の風 帆に貰う
肩書きにそり返ってた背の痛み
負けた時 負けるが勝ちと言いふらす
「熟女の構図」 池田 茂瑠
雲一つ不況の町を離れない 静 岡
恋文に大きな窓を開け過ぎた
洋装に女将も変えて堕落する
構図引き直す熟女になりました
「雑 詠」 多田 幹江
一日が長い空の巣エイジング 静 岡
劇場中継否国会中継です
先に逝ったのはくたくたのスニーカー
音声多重ウーマンのティータイム
「雑 詠」 荒牧 やむ茶
再生へみすゞの詩は置いて行く 小 山
プチプチを潰して過ごす昼下がり
優しさを棘で隠して咲かす薔薇
のんびりと生きて私はエコロジー
「自 由 吟」 森下 居久美
一病息災メタボは気にしない 掛 川
アミダクジ進んだ先に要介護
日の丸が高い男子の表彰台
うつされてうつして微熱治まらず
「お酒にまつわるエトセトラ」 松田 夕介
幸せがワイングラスに写りこむ 静 岡
極上のワインにチーズ照れている
日本酒でゴクリ悔しさ流し込む
親友の墓前に並ぶ缶ビール
「こぶらがえり」 谷口 さとみ
はしゃいでる夢の途中で跳ね起きる 伊 豆
鎮まりつコブラは七度生き返る
きたきたきた うわっきたきた またきたよ
フニッシュで攣ってムードもぶち壊し
「渋 滞」 高橋 繭子
北からはせめて雪虫飛ぶ便り 仙 台
お土産を生活必需品にする
震災後こころもずっと渋滞中
幻の稲穂が揺れた津波の田
「行 く 秋」 真理 猫子
サンダルのかかと潰して行った秋 岡 崎
ごめんねとお茶目に笑う熱帯魚
前髪が三本抜けたから家出
音程がズレて始まる十二月
「お人好し」 薮﨑 千恵子
この辺で踏みとどまろうお人好し 焼 津
お人好し過ぎると馬鹿にされそうだ
内心はひやっとしてるお人好し
馬鹿でいる線を引くのはどのあたり
「 秋 」 林 二三子
倦怠期も遠に過ぎ去り日々平和 富士宮
新米の旨さ喧嘩も後にする
てんこ盛り止せばいいのに平らげる
旨いもの満載秋のてんこ盛り
「雑 詠」 川村 洋未
年長でミエではないが金を出す 静 岡
ボランティアごほうびもらいルンルンに
先頭に何かがあるぞ並ぶ道
安売りに行くかバス代考える
「雑 詠」 勝又 恭子
白衣着る知識を羽織るように着る 三 島
どうしたと聞いたとたんにもっと泣く
優しさをくるっと包む冬キャベツ
ちょっと視線上げれば明日が見えてくる
「 鍋 」 永田 のぶ男
大鍋に安全嗜好山と積み 静 岡
鍋料理冬将軍が踊り出す
食べて寝て起きてまた食べ繰り返す
女子寮に牛一頭が鍋に消え
「甘い生活」 望月 弘
角砂糖三つ性格まで甘い 静 岡
腕押しの暖簾を妻が掛けている
火葬場の道Uターン禁止です
お開きを奏でるようにメロン出る
「we are all alone」 加藤 鰹
この窓も幸せそうな十二月 静 岡
トラックで独りぼっちのクリスマス
街角のマリアは時給五千円
しんしんと雪 鳩尾に降りつもる
顧 問 吟
「自 由 吟」 高瀬 輝男
ふり向かずとも追って来るものが見え 焼 津
仏院の絵飾り寒くなるばかり
飽食へ雑炊の味ふと浮かぶ
なあバラよそんな生き方いいのかな