霜石コンフィデンシャル105   高 瀬 霜 石

「白米狂詩曲⑤(―三角はお好きー)」

ここ2年続けて十一月に静岡に行っている。

世界中のジャグラーたちが一同に会する「大道芸ワールドカップ・イン・静岡」なるイベントが開催されていて、その面白さにやみつきになったからだ。

有名な「しぞーかおでん」などでもてなしてくれる加藤鰹という川柳の後輩もいるからでもある。

以前、加藤鰹が川柳番傘本社の誌上エッセイにこんなことを書いているので紹介しよう。

―静岡という土地は温暖で、自然にも恵まれている。古くは東海道の宿場町として栄えてきた。そのせいか、のほほんとした人が多いように思う。

位置的には、東京と名古屋の丁度中間地点にあり《廊下》と呼ばれている。文化の面でも、学生の就職先も大井川を境に東と西に別れているようだし、この辺りが関東と関西の分岐点なのかも知れない。

握り飯の呼び方《おにぎり》と《おむすび》も、大井川を挟んで微妙に分かれるらしいという話を聞いた。

《おむすび》といえば、こんな話を思い出した。

ウチは両親ともに働いていたので、炊事、洗濯など家事一切はおばあちゃんがやっていた。

小学校低学年の頃。明日は心待ちにしていた運動会だというのに憂鬱だった。何故かというと、おばあちゃんが作る真ん丸の海苔がべったり付いた《田舎おむすび》が、嫌で嫌で仕方がなかった。何ともダサイと思っていたのだ。

「明日の運動会のお弁当は、三角おむすびじゃなくっちゃイヤだからね」と、おばあちゃんに駄々をこねた。

翌日、お弁当の風呂敷を開けてビックリ!丸おむすびしか作れないおばあちゃんは困ったあげく、なんと丸おむすびを包丁で切り揃えていたのだった。きっちりと角度まで計れそうな三角おむすびがそこにはあった。 僕は子供ながらに「負けた…」と思った―

どうです。面白い話でしょ。

思えば、オラたちが子供の頃も、鰹クンのおばあちゃんが作ったような真ん丸でったらだ(大きい)《握りまんま》であった。そのせいか、今コンビニなんかで売っている、海苔が別包装になっている上品な《三角おにぎり》を食っても、満足感がないのだなあ…。

オラの好みは、海苔よりは胡麻。具はやっぱり鮭。これは津軽の正統派というか、握りまんまの王道だと思うのだが、皆様は如何。