平成二十三年度 たかね年間賞 候補作品

 

尖るだけ尖って野バラ泣き疲れ   くにこ

ストレスを溜めたペダルが空回り  玲 子

煎餅の耳はゴシップ逃さない    哲 也

倒立が下手で会社を辞めました   猫 子

ブレーキが効かなくなった柿の種   弘

人生もここまで来ると斜め読み   よし子

斎場を出ると独りの月であり    帆 波

ミシュランは知らない母の握り飯   栞

多弁から寡黙に変り厚く着る    茂 瑠

立ち読みへ備えメガネを拭いている  弘

ぼけ防止活字を食べる事にする   恵美子

鬼じゃないほうが楽しいラブゲーム 帆 波

大海の波に国境洗われる       弘

躊躇した途端に消えた冬の虹     鰹

アクセルがかじかんでいる月曜日  猫 子

百八つ煩悩はまだ発芽中      里々子

閉店の日の開店を列で待つ     久 子

淋しそう賽銭守るガードマン    精 也

笑い声立ててコーヒー沸騰中    恒 代

私のすき間を埋める美術館     居久美

成程と云って終った負け戦     博 司

似た様な傷があるから近寄れる   豊 子

突然の背伸びに影が面食らう    太 郎

悪ガキの面を忍ばせ友と会う    やむ茶

ペンネーム吉永小百合でいいですか 久 子

雑魚だから手の鳴る方へすぐ走る  廣 司

胸騒ぎ大きくなった嘘一つ     可 福

向かい風覚悟まっすぐ歩き出す   恭 子

春の恋人達へ未来を進ぜよう    帆 波

日本が今原子炉の中に居る     アキラ

出る杭も打たれ上手になっていく  千恵子

再会を尻尾短くして待とう     茂 瑠

急がねばまだ弾力のあるうちに    薫

転がったまり新鮮な風と会う    ふく子

むきになる青いしっぽをぶらさげて くにこ

悪口とネギをラップで巻いている  猫 子

唇を罪の形に開けておく      帆 波

お喋りが続くわたしが閉じられる  美沙緒

気乗りなどせぬがコートいちまい脱ぐ野次馬

鏡から外出許可が出ない朝     夕 介

扇風機 邪魔臭そうに仕事する    帆 波

ふかふかのベッドに空豆のパズル  居久美

近道でネコの交尾を見てしまう   さとみ

人の好い背中ばかりに降る火の粉  玲 子

二代目はすぐに支店を出したがる  哲 也

木星のあたりで象が迂回する    猫 子

うかうかと生きて嵌まった水たまり 幹 江

洞窟の中にはコウモリと詐欺師    鰹

子が拾う骨だしっかり鍛えとく   廣 司

軟らかい言葉が深い穴を掘る    恵美子

嘘つきな鏡欲しいと思う朝     恭 子

二つ目の癌は誰かに喋りたい     弘

セシウムに秋の味覚が身構える    鰹

ふり仮名がないと空気が読めません  薫

正論を吐いたトイレの流し水    野次馬

嘘が下手ホントも言えずマグカップ まさえ

もう一つ足せば積み木は倒れない  まさ子

生きている老廃物がちゃんと出る   尚

すぐ響く人ではないが何故か好き  ふく子

冬眠をするのか妻はよく食べる   博 司

あなたしか信じられない 多分ウソ   ユタカ

重いから結婚指輪抜きました    由 美

早い者勝ちと言われて無駄使い   さとみ

人生もここまで来ると斜め読み   よし子

雨の日もいいな一冊読み終える   由利子

この辺で芽を出さないと枯れていく 天 子

読みにくい空気だ全部吸っちゃおう 五 貫

待合いの雑誌パズルも解いてある  可 福

ぼくなんか序二段であるサウナ風呂 哲 也

割り勘のときでもポイントは私   恭 子

出た腹が邪魔して靴がさがせない  修 市

いつまでも男は子供はしゃぎたい  武 人

上向いて歩きたいけどシーベルト   弘

胸のうちロールキャベツへ包み込む 智 子

お上手ねしっぽ振るのもアカンベも 恒 代