「自 由 吟」 奥宮 恒代
千鳥足帰巣本能しかと有る 森 町
エンジンが冷えた ホルモン鍋にして
エリエールカジノで札に化けてみた
エンディングノートは花で埋めつくす
「新 年」 小林 ふく子
今年また頑張れと言う年賀状 袋 井
初夢の続き見たくてする早寝
見込みある人には神も手を伸べる
風花が一月の字を連れて来る
「迎 春」 新貝 里々子
加湿器に頼るお肌とこのこころ 袋 井
お年玉笑い袋も添えて待つ
飲み会で埋める愉快なカレンダー
鍋の湯気残り時間を暖める
「初 冬」 斉尾 くにこ
冷えきった向こうでななかまど真っ赤 鳥 取
陽は満ちて手紙を読んだ午後の部屋
ピリオドを打たれて翼生えてくる
明日こそスカーレットは風に立つ
「自 由 吟」 鹿野 太郎
青春の傷を辿ればレモンティー 仙 台
さよならを背中で知った発車ベル
ふんわりと美女が火の輪をくぐらせる
わだかまり握り潰して嫁に来た
「お坊ちゃま」 濱山 哲也
宝くじでは笑いもしないお坊ちゃま つがる
正月はきっとマカオだお坊ちゃま
大吉が出るまで御籤お坊ちゃま
赤い羽根募金したのはお坊ちゃま
「昔も今も」 増田 久子
くじ運が悪くてまたも白羽の矢 焼 津
ハイボール酔いつぶれたら恥ですわ
鼻歌が忘れていないチェッカーズ
録画撮りヘップバーンが今も好き
「自 由 吟」 西垣 博司
早口でゆっくりやれと言っている 静 岡
肩の荷にセシウムまでも加えられ
旧暦で言うからあなたややこしい
年金を担保に妻は飯をくれ
「大好き・大嫌い」 森 だがやん
大好きとへそくり見つけ妻笑う 島 田
大好きと言われよく聞きゃ台拭きか
国民を見てない政治大嫌い
大嫌い言えず飲み込むなめこ汁
「愛らしい」 鈴木 千代見
愛犬も共に歳とる散歩道 浜 松
覗き見が得意な猫で嫌われる
さなぎからちょうに変身するドラマ
胃袋を満たすと吠えなくなる犬
「 夢 」 大塚 徳子
獣道いこかもどろかひと呼吸 仙 台
どんくさいわたしあなたを癒してる
言の葉をかさこそ探す落ち葉踏む
宇宙船少年の夢持ち帰る
「京の紅葉」 井口 薫
天地のマジックもみじ真っ赤っ赤 袋 井
燃え盛る紅葉にカツを入れられる
石段を登り若さを拾う寺
別荘の石垣仰ぎみる京都
「帯の位置」 真田 義子
群青の空を味方に生きてゆく 仙 台
焼き芋の臭い懐かし曲がり角
湯豆腐で話が尽きぬ寒い夜
帯の位置決めて迷っている私
「光のページェント」 毛利 由美
至難乗り越えて光のページェント つくば
依存症みたいにマスクつけている
関東の発想にない大阪都
2011に日本は変わったか
「師 走」 中矢 長仁
一年を終える間際は忙しい 松 山
忘年会何回もして忙しい
お歳暮はカニが欲しいと言っておく
サンタさん信じないけど待っている
「お 正 月」 成島 静枝
幸せ度ブータン王に及ばない 千 葉
復興も祈願弾んだお賽銭
龍神へ天変静かなれ祈る
嫁さんの話息子が遠ざかる
「雑 詠」 川村 美智代
腹が立つあんなに試食したくせに 静 岡
大道芸伸びたり縮む前の人
ゴミ袋下げてカラスとにらめっこ
ママを待つミーアキャットの形して
「自 由 吟」 提坂 まさえ
KYになりたくなくて斜め読み 静 岡
包んでも焼き芋ここと告げている
いい夢は録画したいとマイ海馬
サンタにもパパにも頼むプレゼント
「自 由 吟」 宮浦 勝登志
見栄っ張り家計はいつも火の車 静 岡
お見舞は菓子折りよりもまずお金
五円では願い聞けぬと返す神
銀髪を夢見る前にハゲて来た
「雑 詠」 安田 豊子
逢いたくて会えぬあなたが憎くなる 浜 松
つぎはぎのビジョン明日の夢がない
一年をゆっくり回す万華鏡
何もせずつるべ落しの陽が沈む
「自 由 吟」 南 天子
友倒れ右往左往が情けない 焼 津
電灯を明るくしたが見えぬ先
命って神が決定しています
乱れたる心を洗い祈るだけ
「雑 詠」 馬渕 よし子
韓流のドラマわたしを縛りつけ 浜 松
マンネリの心動かす赤い花
空財布覗き夫の独り言
信号が変わり運命狂い出す
「自 由 吟」 深澤 ひろむ
奪回の酒へ気の合う顔が寄る 甲 府
カレンダー妻の朱書きが邪魔をする
五七五ひねり一年たまる没
おかえりと迎えてくれる郷がある
「感 謝」 松橋 帆波
酒臭い話も母は聞いてくれ 東 京
言い過ぎた夜を忘れてくれる妻
聞こえないように女房へ礼を言い
ばぁちゃんが焼くから卵焼きだった
「ダンシガシンダ」 横田 輪加造
黒雲斎談志らしさを演じきり 東 京
家元の優しさ誰も語らない
マスコミが落語オンチをひけらかす
四天王逝って昭和が遠くなり
「内 視 鏡」 川口 亘
俎板の鯉のつもりが慌てぶり 藤 枝
腹黒も無くて喜ぶ内視鏡
恐々と腹探られて無いも知り
ひと山を越えて安堵が身に沁みる
「検 査」 川口 のぶ子
内視鏡夫は一日水を飲み 藤 枝
八時から一日がかり出番待つ
検査終えやっと一息ホッとする
つらそうだ私ぜったいやらないね
「雑 詠」 飯塚 すみと
大道芸阿呆のつらつら皆楽し 静 岡
タテヨコを横にしてみる朝の脳
駄菓子屋のオジさん仕切る子ら四人
オーイと呼び今日も一緒に生きてゆく
「自 由 吟」 滝田 玲子
季節感ドラッグストア教えられ 浜 松
SLの煙ロマンを乗せ走る
アンテナを張りめぐらせた地獄耳
スイッチオン我が家の今日が動き出す
「板 挟 み」 鈴木 まつ子
迷路から退くこと出来ず立ち往生 島 田
恩人へ義理と人情板挟み
公僕を忘れてややこしい迷路
二股をかけた情けへ落ちつかず
「雲 行 き」 薗田 獏沓
雲行きが怪しい語尾を言い直す 川根本町
極楽の雲行き微妙淀んでる
雲行きを見たくて亀が首を出す
川底で雲行き見てる丸い石
「あ~あ…」 萩原 まさ子
宴会で上司の浴衣寸足らず 静 岡
ママ美人なのにパパ似の女の子
用心棒時に痴漢になる彼氏
ざあますが洗濯のタグ付けたまま
「元 気 者」 石上 俊枝
脱兎去りうかうかいると龍が来る 静 岡
這えば立て絆が拍手エールする
来てやった貰ってやったと月日経つ
元気者美人薄命言い続け
「そーっと」 野中 とし子
ママ役のママそっくりのおままごと 静 岡
かくれんぼお尻かくさずもーいいよ
へそくりの貯金通帳のぞき込む
おじいちゃん駄洒落のつもり得意顔
「自 由 吟」 野中 雅生
俺マジメ笑える話何もなし 静 岡
初恋の夢から醒めたママの顔
シルバーよもっと威張ろう輝こう
ドラゴンズ打つ手これなし降参だ
「雑 詠」 安藤 千鶴子
泡が立つ石鹸消えた美への夢 静 岡
晴れ舞台おひとり様がやっと立つ
飯くれと犬の催促腹時計
バイキングベルト緩めてまだ食べる
「僅 か」 藤田 武人
我が息子コンマいちの差銀メダル 大 阪
味噌汁に僅かな秘密隠れてる
攻撃を僅かにかわすチャンピオン
僅かでも努力努力を惜しまない
「自 由 吟」 鈴木 恵美子
雲は流れてポカンと空いた予約席 静 岡
惜しみない汗で大地と生き続け
石積んで有情の風に抱かれよう
終章を飾る言葉を探さねば
「想 定 外」 瀧 進
歳時記も慌てふためく温暖化 島 田
台風を惑わすラ・ニャーニャ エルニーニョ
議定書も燃やし減らないCO2
国益のエゴに地球が蝕まれ
「自 由 吟」 内山 敏子
信念で越えた傘寿の峠道 浜 松
やり場ない心の乱れ八つ当たり
いい汗を流し明日の夢を見る
大会が終り没句のなげき節
「余 裕」 杉山 とんぼ
無駄のない暮らしに余裕などはない 神奈川
適当をみつくろってにある呼吸
よその子を叱ってくれた温かさ
なけなしのカネで面倒みてくれた
「 樹 」 山本 野次馬
老木もシロップ漬けにする家族 函 南
両の手を広げる母という大樹
御神木ピエロにされている誤算
木の温み知らずベッドの岩になる
「自 由 吟」 酒井 可福
棚ぼたの天命とやら寝て待とう 北九州
器用さは貧乏人の真骨頂
百聞で覚えた知識出てこない
吸い殻を足下に蒔きひとを待つ
「自 由 吟」 山田 浩則
観光で一度乗りたい人力車 島 田
時々はほんのりしたい日曜日
なでしこで負けず嫌いは澤選手
芸能人伸びて縮んでバネみたい
「たわごと」 尾崎 好子
毛越寺が良かったなあと良く話 藤 枝
愚痴ばかりついこぼしてたから無言
頑張ると言ってはくれた良い顔で
赤紙が来た老兵に手を合わせ
「 妹 」 中野 三根子
妹に人生論を教えられ 静 岡
還暦の妹にみるしたたかさ
妹と半分こする変な癖
妹が天使に見えた幼い日
「雑 詠」 荒牧 やむ茶
紅梅も桜も咲かぬ年はない 小 山
健脚が自慢で堪えた世間風
一夫多妻ここは地獄の三丁目
宝くじ当てて狂わす羅針盤
「ジョーク」 佐野 由利子
眴せが内緒ナイショを伝えあう 静 岡
噛みあわぬ話しに不信感募る
音程がずれてジョークが弾まない
人並の願望なのに叶わない
「月からの使者」 永田 のぶ男
お月見に薄を出しに飲みたがり 静 岡
月からは青い地球が喧しい
生物の争う地球揺すられる
勝ち負けで決める地球が溶け始め
「開 け る」 石田 竹水
人情をおいしく滋養摂っている 静 岡
書き加えもひとつ加え理想論
頑固者ゆずり合えない千日手
眼を開けて心を開けて見る世間
「自 由 吟」 稲森 ユタカ
寒空に願いを贈る流れ星 静 岡
苦難越え握りしめる手花が咲く
夢が覚め何も変わらぬ日々おくる
故意じゃないチラリと見えたパンツ白
「新 年」 増田 信一
新年はめでたくも有り無くも有り 焼 津
初詣デフレに合わせ小銭投げ
寝正月夢の中ではクジ当る
初日の出見られた事に手を合わす
「自 由 吟」 森下 居久美
天体の不思議私は生きている 掛 川
喜怒哀楽笑顔が少しあればいい
習慣を改め不惑締め括る
比べない私の道はここにある
「今年は…」 林 二三子
竜の勢い忙しい年になりそうだ 富士宮
年齢は八掛けポジティブに生きる
災害なく日々を平和に暮らしたい
良い方にとってくよくよ悩まない
「一枚の切手」 池田 茂瑠
振ったって腰に魅力の無い私 静 岡
細い愛繋ぐ切手の一枚で
祝福も全て造花でいい私
私が淑女だなんて誤解です
「雑 詠」 薮﨑 千恵子
キーホルダー心の鍵も付けておく 焼 津
サングラス外すと霧が晴れてきた
横柄と思い込まれている無口
日に一度親孝行の電話くる
「春よ来い」 多田 幹江
掘って掘って懲りずに掘っている墓穴 静 岡
愚痴って愚痴って昨日が戻るなら
二幕目へラーメンライスてんこ盛り
がんばった分だけ早く春よ来い
「 宴 」 真 理 猫 子
コンビニで龍の着ぐるみ買い求め 岡 崎
今年こそ金に困らぬ人になる
夕焼けを芋焼酎で割って呑む
手料理は皆既月食風サラダ
「イルミネーション」 高橋 繭子
2011未来に期待かけすぎる 仙 台
帰らない 連帯感が欲しいから
発電所動かしぬくぬくのコタツ
イルミネーションは鎮魂の瞬き
「冬 将 軍」 松田 夕介
初雪にレモンシロップかけた朝 静 岡
こたつ出ただけで土産をせがまれる
お年玉制度作ったやつキライ
財布にも冬将軍がきて師走
「師 走」 勝又 恭子
今日の顔できてスイッチオンになる 三 島
迷っても北極星はそこにある
腹八分幸せだってそのくらい
年の瀬へ何とはなしの急ぎ足
「クリスマスイブ」 谷口 さとみ
独り身を愉しむふりでロゼワイン 伊豆市
強がってみても寒がる薬指
プロポーズ期待しながら回り道
このままがやはり良いなと鍋つつく
「クリスマス」 川村 洋未
逃げ出したチキン追いかけクリスマス 静 岡
おもちゃ屋とケーキ屋笑うクリスマス
プレゼント渡す数だけふえて行く
一人では肩身のせまいクリスマス
「自 由 吟」 長澤 アキラ
液状化いつも昔が吹き上がる 静 岡
羽衣を纏い今頃飛ばれても
背を丸め暮れをさ迷うホームレス
補聴器が良い話だけ聞きたがる
「原発事故」 望月 弘
原発が想定外を小出しする 静 岡
汚染処理国会が打つ跳ね太鼓
原発が楚々と装うルミナリエ
政策がこっそり上げるシーベルト
「雑 詠」 加藤 鰹
ナマでしたそ~っと鍋に戻す肉 静 岡
抗菌加工し過ぎ娘は嫁き遅れ
たばこ税いじめはやめてくれないか
500円ゲット!ゲーセンコインかよ
顧 問 吟
「雑 詠」 高瀬 輝男
美しい花の裏には苦心談 焼 津
そこまでは割り切れなくて濁す語尾
便利という文字人情を薄くする
謙遜の字はもうとうに忘れられ