霜石コンフィデンシャル106   高瀬 霜石

「白米狂詩曲⑥-ライスはママならず-」

鍋焼きうどんの季節になった。

ラジオでコンビを組んでいる倉田和恵アナウンサーにとっても受けた―といっても、あまりのセコさに彼女が呆れたのだが―僕の《鍋焼きうどんを3倍楽しむ方法》を特別公開しましょう。

鍋焼きうどんと一緒に、ご飯半分も頼むのがミソ。もちろん、半分でなくてもいいのだが、フツーご飯というと丼に一杯分くらいくるので、上品に半分。それでも、茶碗にこんもり程度の量がくる店が大半だ。

ここでいう鍋焼きうどんは、鶏肉と天ぷらが入っているごく普通のタイプ。ぐつぐつ煮立った鍋焼きとご飯が来たら、そのご飯をまた半分に分ける。つまり半々ご飯。その上に、卵をサッと掬って乗せる。これ、すぐが肝心。すぐじゃないと卵が煮えてしまってアウト。ほんのり白くなった白身とトロリの黄身が、鍋焼きの汁とからまってそれはそれは贅沢。ハフハフ、ウフフ。うどんの前にまず《玉子かけご飯》というわけだ。

うどんを半分くらいすすったらば、海老天の出番だ。海老くんの下の部分は汁の中なのでグジョグジョ。でも、上の方はまだカリッの状態。この頃合いがとてもよろしい。これを残っている半々ご飯の上へ乗せる。

《ミニ天丼》の出来上がり。かき揚げなら《ミニかき揚げ丼》。こっちは、少し早めに乗せる方がいい。

週に一度は行く親方町の食堂にはご飯ものがないし、鍛治町の店ではウズラの卵なので、残念ながらコレはやれないが、どうです、美味そうでしょ。

「ご飯半分頂戴」と頼むと、たいていは丁寧に「承知致しました。半ライスですね」と、念を押す。ご飯はライスと呼ばなくてはならないらしい。

ある店で「ご飯半分頂戴」に、「承知致しました」と引っ込んだ若い店員。戻って来て僕にこう言った。「お客様。当店のメニューでは、ライスか半ライスしかございませんが、如何いたしましょうか」

先日、また別の店。卵を掬ってさあかっこむぞと構えたら、うどんの陰に、アレレレもう1つ卵が沈んでいるではないか。一瞬、蕎麦屋の親父がボケたかと思ったが、双子の卵だったのだろう、多分。少量のご飯に、卵がドーンと2個だから、まあ贅沢なこと。その日1日中、シアワセな気分に浸ったのだった。

 親父殺すにゃ刃物はいらぬ卵の2個もあればいい