「祝  儀」                   薮﨑 千恵子

三が日過ぎてお一人様となる               焼 津

良い祖母になるには金が要りまする

孫達の必要経費お年玉

六人の孫に追われている祝儀

 

 

 

「雑  詠」              川村  洋未

友星に 背骨砕ける音を聞く            静 岡

別れたのベジタリアンでやせた人

地下街の花背伸びして窓さがす

風が吹く じたばたしたら飛べるかも

 

 

 

「2012・わたし」            勝又  恭子

ちょっと視線上げれば明日は新しい        三 島

でも私きっと明日も孫悟空

今日もまた助走いつかはジャンプする

この角を曲がれば春の風が吹く

 

 

「出  す」                    馬渕 よし子

ほらここに春がちょっこり顔を出し            浜 松

回り道して人生が弾み出す

顔触れを見て口出しは止めにする

ジャンケンの出す手を孫に仕切られる

 

 

「無  題」                    西垣  博司

今年またひとつ唄った数え歌                静 岡

手に入れてあとのまつりも付いてくる

そのお世辞口内炎に効きそうね

熱燗が習慣病という至福

 

 

「たつどし」                  川口 のぶ子

龍年を迎えて高く天のぼる              藤 枝

年始め孫が揃って夢かたる

孫たちが曾孫を連れて春の宴

初夢に初恋の人あらわれた

 

 

「新  春」              岡村  廣司

初詣で神が見てると限るまい          焼 津

新しい年だ仁王も笑いなよ

新春の決意を鼻で嗤う妻

達筆と言えぬ賀状の暖か味

 

 

「自 由 吟」              滝田  玲子

託された希望の松も疲れ果て           浜 松

超不況ブレーキ利かず止まらない

ライバルも老いたか同じことを言う

針箱も嘆く雑巾買う時代

 

 

「落 ち 椿」             小林 ふく子

コンパスの範囲で冬と戯れる          袋 井

身の程をわきまえている野水仙

絶唱をしているような落ち椿

如月のコートに春の灯が点る

 

 

「明 か り」             杉山  太郎

LEDそれ効率の代名詞             横 浜

LED他人のようなその白さ

肉用の明かりと魚用ライト

人もまた一つの明かりだと思う

 

 

「ことば言葉」                斉尾 くにこ

言葉のしずくピンチのときに落ちてくる         鳥 取

味わって記憶に刻む言葉たち

真冬日に言葉咲こうと熱くなる

気に入りの言葉を連れて逃げてゆく

 

 

「2012」              山本 野次馬

初詣他人の背中拝む朝              函 南

元旦も変わらぬままにいた鏡

手詰まりの策を心太と語る

酔いしれて眠る私の冬銀河

 

 

「お 正 月」               毛利  由美

穏やかに年明けまして震度4             つくば

年賀状パソコンの腕競い合う

お正月太り恒例行事です

成人式一期一会のお振袖

 

 

「カレンダー」                濱山  哲也

カレンダー貰うときだけ行く老舗               つがる

独身はいいなヌードのカレンダー

鬼よりも月末怖い資金繰り

カレンダー絵から季節の風が吹く

 

 

「寒い別れ」               戸田 美沙緒

セーターがほどけて寒い別れです         さいたま

恙無く心を棄てる雪の夜

愛してるアイしてるルビをふる

香りの消えた恋ならば遊ばない

 

 

「中途半端」              新貝 里々子

着て脱いで着物供養のお正月            袋 井

眉足して老いたと思う顔飾る

まあいいか中途半端も個性です

ユニクロに着替え現実へと戻る

 

 

「波 の 音」              真田  義子

平凡に終わらなかった薬指           仙 台

波の音聞こえて枕裏返す

シナリオの通りに歩きまた迷う

やわらかな木洩れ日浴びて蝶になる

 

 

「ゆっくり」                 藤田  武人

鈍行で駅弁巡る一人旅              大 阪

コツコツと寝ずに歩いた亀が勝つ

ゆっくりと練り上げ出来たこの一句

日々妻と三食昼寝する老後

 

 

「自 由 吟」              鹿野  太郎

雪が舞う童話の森へおんぶして               仙 台

官僚はセオリー通り息をする

一時の平穏の陽を浴びている

終点でもう隈取りが消えている

 

 

「春待ちて」               栃尾  奏子

ゆっくりと育む幸せのかたち             大 阪

まだしがんでるのは幸せの尻尾

許されて許してまるくまるくなる

すんなりと春にはならぬ回り道

 

 

「にゃあ…」              高橋  繭子

ふるさとの除染地域で祝う初春          仙 台

迷いネコ傷は自分で舐めるもの

地デジ力がまだ活躍の被災県

セシウムの大地に雪が降り積もる

 

 

「雑  詠」               内山  敏子

ご多分にもれず年金たべてます            浜 松

心配の種は一生つきまとう

見えすいたお世辞におへそむづがゆい

サプリメント其の気にさせるコマーシャル

 

 

「天下泰平ね」             増田  久子

立ち読みのページにはさみたい栞        焼 津

折り紙もきれいなのから鶴になる

顔ぶれを見れば世襲に似た役所

訓告ってダメヨと睨むことなのね

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

ブランドもボロでも犬は無関心         静 岡

能面の挨拶が来る機械文字

銀メッキそれでも銀の意地がある

真ん中で決めかねている白と黒

 

 

「かぜのとおりみち」          松橋  帆波

月を見ていますあなたが遠いから        東 京

下ろされるためのファスナーぎこちなく

帰りたくないです赤い風車

からだよりこころにかぜのとおりみち

 

 

「た  つ」              野中  雅生

若い日に思いたつのが遅すぎた          静 岡

小沢派はうだつ上がらぬ者ばかり

婿殿はうだつ上がらず五十年

子供たち親をさておき家を建て

 

 

「自 由 吟」              野中 とし子

震災のあと東北に立つ煙             静 岡

ことしこそ龍にあやかり元気だす

七十路シルバー仲間まだ早い

思い出す初めて立った孫の顔

 

 

「自 由 吟」              鈴木 まつ子

一病の膝をかかえて年を越す            島 田

聞き役に徹して老いの日向ぼこ

嫌なことみな忘れたい毛糸編む

生きている限り夢あり初みくじ

 

 

「新  年」                      川口   亘

必勝と去年の上に書いて貼る            藤 枝

若いのは気持だけだよ杖が友

気がつけばうしろに手有り介護員

仕事せし夢を枕に今日を生き

 

 

「飛 鳥 Ⅱ」              井口   薫

清水から飛んだつもりの飛鳥Ⅱ             袋 井

ドレスコードというハードルを潜りぬけ

男ならモテモテだろうタグボート

夢の夢 世界一周なんてもう

 

 

「自 由 吟」             南   天子

強がりを言うのはやめる明日から        焼 津

もう少し優しい人に変化する

ゆるやかに流れて私同舟に

手に持った石の重たさ人知らず

 

 

「自 由 吟」                   深澤 ひろむ

今年こそ思うばかりの歳を積む                甲 府

幸せを零さぬように飲むワイン

雨煙る駅に別れのドラマ画く

背を流す妻へ不幸を詫びながら

 

 

「隠  居」                   畔柳  晴康

子と孫に家業を譲り趣味に生き              浜 松

隠居様身体と金は痩せ細る

楽じゃない年金だけの隠居だよ

隠居でも遣りたい事は山とある

 

 

「ひ と つ」                    森 だがやん

息子たちひとつのお菓子奪い合い         島 田

ひとつなら無ければよいとパパ食べる

泣き出してひとつで済まず買い出しに

仲直り一人ひとつで皆笑顔

 

 

「自 転 車」                    成島  静枝

自転車が正月三日パンクする            千 葉

バルブかも我が体重がする否定

修理屋も正月だけど立つ小腹

自転車は左 歩いて押すと右

 

 

「自 由 吟」                   鈴木 千代見

リトマス紙愛が程よくにじんでる              浜 松

飾らない言葉に人の温か味

仕返しのつもりが石にけつまづく

悔しさをバネにコツコツ石を積む

 

 

「ハッピー」                   奥宮  恒代

寝正月一生分を盲腸炎                  森 町

神様が味方大吉つれてくる

ハッピーをよろずの人に感謝する

手に染めたことば遊びの毒に酔う

 

 

「山  姥」                    大塚  徳子

ゆうやけこやけ無事な一日に感謝する       仙 台

肩寄せて細々暮らす老い二人

温もりを探しさ迷う姥桜

やまんばが残り火燃やし生きている

 

 

「自 由 吟」                    鈴木 恵美子

百人一首ボクは暗記の七十首            静 岡

白木蓮ほろりと春の声がする

花園を夢見て肥沃の土造り

日溜りにふきの坊やを探す朝

 

 

「自 由 吟」                酒井  可福

平常心補聴器外し無に入る                北九州

訪ねると先ずは酒出す友の妻

孫を待つカルタ双六用意して

お年玉孫の親から先ず貰い

 

 

「愛  車」              中矢  長仁

大切に乗ればいつでも機嫌良い          松 山

北海道一周しても良い機嫌

持ち主に似て来たのかな粘り腰

高齢者講習受けて未だ乗る気

 

 

「W H O」               恩田 たかし

水中のクラゲ寄り添うシルエット        静 岡

全国に愛人友人いるみたい

ダンディーだエンターテナーだ先生は

四度目の昇竜に乗る年男

 

 

「お 正 月」                 山田  浩則

元日は財布の中身軽くなる               島 田

三が日テレビに釘付け家の父

初日の出願う言葉は平和かな

初詣新年祝うお賽銭

 

 

「逃 げ 口」              安田  豊子

捌口の酒が難癖つけにくる            浜 松

暗雲へ逃げの一手で息を継ぐ

呪縛され溜るマグマが吹き騒ぐ

ほうほうの果てにもあった厚い壁

 

 

「  損  」               薗田  獏沓

全没に性懲りもなく応募する           川根本町

損得も織りまぜ人は生きてゆく

損得を一本道で出す答

帳面に載らない損をする幹事

 

 

「雑  詠」               飯塚 すみと

息抜きに妻が本音の都内地図             静 岡

癒される琴の音サンキューカセットさん

ツアーバス歌い上手も出番なし

月曜日正座の部屋で欲を消す

 

 

「受 信 音」              安藤 千鶴子

募集中昔話のお相手を               静 岡

ゆったりと等身大で生きる日々

明日が約束できず今ありがとう

黄門様印籠お貸しくださいな

 

 

「自 由 吟」              石上  俊枝

よく遊ぶ余生不明とよく遊び           静 岡

かくれんぼまだまだ隠れ大銀杏

デコメール心遊ばれ浮かれ顔

少子化のひとり遊びで鳩時計

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

思うこと散らけ放題ワンルーム          静 岡

砂漠行く王子も今は銀の鞍

年寄りの代名詞かと怒る銀

かつら脱ぐ明日もまたなとブラシかけ

 

 

「自 由 吟」              萩原 まさ子

仮免とシルバーカーに慣れぬ父          静 岡

飲みすぎでサンダル履きと革靴で

ババ付きで嫁に来たのでマスオさん

急に晴れ傘に長靴カッコワル

 

 

「自 由 吟」              宮浦 勝登志

野田どじょう防災服に口笛で           静 岡

遺産分け隣優雅な家を建て

立つ時につい口もらすどっこいしょ

ジーパンのヤングに負けず穴を開け

 

 

「箱根駅伝」               尾崎  好子

修行中私箱根にのめり込む            藤 枝

日本一ライバルだって日本一

転がった立った襷が繋がった

一秒を削る大会新記録

 

 

「自 由 吟」              林  二三子

干支切手ぐらい今年も当たりたい         富士宮

幸運と私は縁がないらしい

親の癖嫌というほど子が見せる

苦労した分だけ子から貰う幸

 

 

「新  春」              森下 居久美

ダンシャリを誓う雲間の初日の出         掛 川

東北に春の光よ早く来い

一粒の種が実となる花となる

宝くじはずれ平和な三が日

 

 

「雑  詠」               荒牧 やむ茶

顔色の冴えない影に励まされ           小 山

地球からヒト科が排除されそうだ

蹴飛ばした恋に躓き進めない

安全って本当ですか嘘ですか

 

 

「初  詣」                   増田  信一

初詣願いに合わぬお賽銭                焼 津

初詣 顔顔顔が前を向く

木漏れ日の参道歩く初詣

着飾った笑顔の中を初詣

 

 

「  涙  」              稲森 ユタカ

置いてきた涙さがしに過去想う          静 岡

悲しみを言葉にできず涙出す

感動の場面はいつも前ぼやけ

映画館出てきた二人目が真っ赤

 

 

「雑  詠」                   永田 のぶ男

人間がとことん好きで下り坂              静 岡

足裏を見せ合う友と飯を食う

十本の指いつまで見ても秋の空

矢が尽きてドンコで帰る長い旅

 

 

「  雪  」               中野 三根子

雪景色のんびりできる旅の宿                静 岡

さらさらと降る雪の中別世界

すっぽりと雪のふとんに横になる

雪ダルマだれかの顔に似てしまう

 

 

「期待の謎掛け」                 石田  竹水

流木の演技を買った華道展               静 岡

謎ナゾの二つは解かぬ事にする

賭け事に脳味噌使い認知症

議事堂のどじょう掬いは穴のザル

 

 

「正月雑感」              多田  幹江

辰年の男今年も気張るべし            静 岡

年玉をねらう親子の猿まわし

正月を呑んだ食ったの愚者さま

身から出た錆が浮き出る小正月

 

 

「自 由 吟」                   谷口 さとみ

いつも撮る人だったのに額の中             伊 豆

捨てようとすれば思い出暴れだす

こんなにもあなたは私の父でした

新しい名前もらった父と呑む

 

 

「私 の 腰」               池田  茂瑠

純真へ効いた少しの毒ですが                静 岡

理の枠を外し旅路を伸ばします

一般の席が私の腰に合う

構図にも雪崩を止める杭を打つ

 

 

「正  月」                  長澤 アキラ

お飾りを高級にしてごまをする             静 岡

三億を入れ忘れてる福袋

天国へ行って来ました三が日

自動ドア出る時だけは手動です

 

 

「占  い」              松田  夕介

額縁に大吉飾るはずでした            静 岡

我が家では母がみんなの占い師

占い師みんな幸せなのかなぁ

待ち人と引いたマチビトコズのくじ

 

 

「花  柄」                   佐野 由利子

花柄の温い毛布は妻のもの               静 岡

平穏を繕っている黄水仙

優しさが次第に欠けて隙間風

散歩道ポッケに春を摘んでくる

 

 

「マ リ コ」              山口  兄六

物置の悪魔少女が捨てられず           足 利

好きだけじゃ駄目 犬老いて要介護

ペット可のホテルで雑種見透かされ

クリスマス日本酒を飲む無頓着

 

 

「涙専用脱水機」           真理   猫子

断腸の思いで布団から脱皮            岡 崎

あの日から日焼けしていくカレンダー

渇かない涙専用脱水機

重箱の隅はなかったことにする

 

 

「ダルマさん」                望月    弘

九条は煎じつめればダルマさん             静 岡

手も足も出さぬ勝ち方だってある

かみさんにダルマになって立ち向う

転んでも起きてもダルマにはなれぬ

 

 

「冬 列 島」              加藤    鰹

破滅への序曲となりぬ武器輸出              静 岡

本音など吐くから向かい風ばかり

和文化を誇ろう大の字に寝よう

顆粒状の言葉がじわりじわり効く

 

顧  問  吟

 

「自 由 吟」               高瀬   輝男

言い訳は不要生き抜く外はない          焼 津

批判どうあろうとかかわりない空で

あしたこそまたあしたこそ そして…

天国も地獄も見えぬ歩道橋