霜石コンフィデンシャル107   高 瀬 霜 石

 

「 日 本 海 消 滅 」

かつて大阪は遠かった。それが、川柳を齧ってからグンと近くなった。

川柳は西高東低と言われる。日本で1番大きい川柳社も、2番も3番も大阪にある。念のために書くが、これは規模の大きさであって、句のレベルでは決してない。

大阪に行くようになって驚いた。乾杯をして間もなく、敵はすぐ肩を組み「六甲おろし」を大声で歌い、誰かれかまわず輪の中に引きずり込む。

そうなのだ。ここは、熱狂的という枕詞が付く阪神タイガースの本拠地―最近は青森県を含めて東日本にもタイガースファンがじわじわ増殖しているようだが―こちとらぁ、王・長嶋以来の生粋読売ジャイアンツファンでい。当然、拒否反応がある。

参加者のほとんどが壇上にいて肩組んで盛り上がっているのに、下(?)の誰もいない丸テーブルで1人ぽつねんと腕組み苦虫を噛みつぶし座っている。これって結構なプレッシャー。勇気がいる行為なのだ。

そうこうしているうちに、息子が京都に住むことになり、関西がますます身近になった。大阪を起点に行動すれば、四国も九州も目の前だと気づいた。

大阪(関西)へ行くのは、もっぱら寝台車。だからといって僕は「鉄道ファン」ではない。

鉄道ファンには2種類あるそうで、まずは「鉄ファン」。写真を撮ったり、模型を作ったり、グッズを集めたりの通称「鉄ちゃん」。真面目な正統派だ。

も1つは「道ファン」。鈍行を乗り継いだり、新幹線の開通に駆けつけたりの、旅そのものを楽しむタイプ。

僕は飛行機にまだ乗ったことがなく、これからも乗る予定がない。JRに頼るしか手がないから、あえて分類すれば「とっても消極的な道ファン」であろうか。

3月半ばで「寝台特急・日本海」がなくなるという。このニュースに思わず「アチャー」と叫んでいた。「弘前から大阪まで、十四時間もかかるくせに、なにが特急だい」といつも悪口を言っていたのだが、いざなくなるとなると、淋しいというより、実に困る。

ちょっと前まで「日本海」は1日2往復あったのだ。それが1往復になり、そして今回の消滅。これって「弱い者いじめ」としか思えないのだ。

そういえば、本物の日本海もトラブル続き。でっかい国や、近くの国からのイジメの渦中にあったなあ…。

2012年3月号