「自 由 吟」 南 天子
脳味噌にキムチ入れてもいいですか 焼 津
貧血か地震来たのか考える
あの世には待っている人多すぎる
文学に興味ない人腹が立つ
「高 い」 薗田 獏沓
利息より高い切手で通知来る 川根本町
大マグロ一挙に猟師息をする
復興のラッパばかりがかん高い
真ん中も右も左も高齢者
「あれから一年」 井口 薫
絆ってかくも脆いか瓦礫処理 袋 井
ど根性松を心に移植する
列島がタイタニックの様に見え
海凪いで憂いの音を深くする
「暮 ら し」 鹿野 太郎
生きている欠伸を猫とする三時 仙 台
詫び状を書き上げ安らかな眠り
底冷えの夜に夫婦で大笑い
啓蟄に本棚の奥から光り
「下町の長屋にて」 藤田 武人
コツコツと歩こうきっと亀が勝つ 大 阪
賽銭の諭吉招けよ福の神
おっとっと並々と注ぐ一人酒
招き猫並べてみたが閑古鳥
「嬉 し い」 栃尾 奏子
混浴湯ヤッタ男は僕一人 大 阪
退院日ご飯の味のするごはん
素晴らしい一日でしたアンコール
踊り場でゴング二度目の反抗期
「 春 」 山本 野次馬
口紅の彩はウキウキ恋模様 函 南
さくら咲く第一章を閉じながら
花見には首も振らない蟻の列
デジカメの窓に去年までの桜
「 運 」 新貝 里々子
運勢欄信じるままに今日は赤 袋 井
影薄い女が聖書売りにくる
当たる気はないから買わぬ宝くじ
負けん気の仕切り直しをしても負け
「満月の夜」 鈴木 千代見
満天の星賑やかで眠れない 浜 松
満ち足りた枕を抱いて床につく
満月に愛語るとは野暮な人
きっぱりと別れて月が味方する
「桜 咲 く」 小林 ふく子
うぐいすの一声春の山動く 袋 井
春風が女の靴をそそのかす
儚げに咲いてスミレは主張する
日本人を労るように咲く桜
「訪 れ」 奥宮 恒代
春一番S席からの福寿草 森 町
告白を焦らして春の蕾たち
土塊と遊びたくなる春の風
三月の響き俄に女めく
「熨 斗 袋」 深澤 弘
一枚を減らすか迷う熨斗袋 甲 府
見栄張るなすぐにあの世へ行く人だ
日本の絆が無駄を助長する
ピン札を入れて相手の口封じ
「好奇心のつもり」 増田 久子
新しいスーパー一度だけは行く 焼 津
セルシオの名を外車だと思い込む
海からは二キロの距離で耐震化
内緒だがたまに寝袋出して寝る
「咎 め る」 岡村 廣司
太り過ぎ介護受けるにゃ気が咎め 焼 津
人助けする嘘ならば咎めまい
咎め立てするか見ぬ振りしてようか
惚けた振りしてれば咎められず済む
「アルデンテ」 斉尾 くにこ
お湯かけて三分待って春になる 鳥 取
悔しくて笑い好きになっては泣く
彼の人はちょっとこじゃれたパスタ系
その嘘に微笑みひとつ返します
「自 由 吟」 内山 敏子
どしゃ降りを裸足で駆けた遠い過去 浜 松
忌がめぐる藍を愛した父偲ぶ
不利なこと忘れましたでけりがつき
一日のドラマを乗せる終電車
「雑 詠」 馬渕 よし子
四コマをはみ出し余生ああ愉快 浜 松
コンビニの味にも慣れて妻の留守
足腰が達者な姑に煽られる
踏ん付けたガムが予定を狂わせる
「きっぱり」 安田 豊子
引き際を迷わず決めた腕まくり 浜 松
熟年離婚きっぱり割った皿もある
言い出してからの時計の音がない
核心に触れぬところで王手打つ
「自 由 吟」 滝田 玲子
オンオフのけじめ忘れた認知症 浜 松
衣食住足りてニートの居候
大吉のみくじに春を呼ぶ予感
メルヘンの世界へとんだ千羽鶴
「雑 詠」 成島 静枝
なんだかなぁ今日も頭が回らない 千 葉
パの行で弾けて飛んだシャボン玉
予定無し躰のケアに春の雨
今日もまたパソコン依存症わたし
「草 笛」 真田 義子
嘘と罪包んでくれる冬景色 仙 台
占い師にあやつられてるのは私
草笛を聞かせる村のおじいちゃん
母の手はなんでも包みあたたかい
「PASMO」 毛利 由美
塾用のPASMOデートに使われる つくば
教習所が高校前でビラ配り
インフルも花粉もプリーツのマスク
こましゃくれた男子が座る美容院
「椿・心中」 戸田 美佐緒
寝返りを打って椿が身投げする さいたま
悪縁が折り目正しく飯を喰う
曇天を煮詰めて青いジャムにする
夜を漕ぐ愛の影絵を追いかける
「 春 」 石上 俊枝
春が好きムズムズ五体動き出す 静 岡
春ですね鼻にも目にもチューリップ
春風に人事異動が舞ってくる
夜桜のデート寒さが燃えさせる
「礼 儀」 濱山 哲也
砂浜は裸足であるくのが礼儀 つがる
友だちでいようねというお断り
一礼をしてから叫ぶバカヤロー
ケータイを切って息子と語る夢
「自 由 吟」 酒井 可福
誤作動が始まる脳に喝を入れ 北九州
ちっぽけな男大きな夢も消え
お返しはチョコじゃまずいか義理の仲
恥を知る心の底に有る誇り
「古 木」 中矢 長仁
梅の花季節たがわずなごませる 松 山
繰り返し耐えた月日を振り返る
年重ね貫禄増した深い皺
この家の喜怒哀楽を見た古木
「自 由 吟」 川口 亘
乗り越えて行かねば見えぬ未知の山 藤 枝
要領の悪さが目立つ老いの坂
駄洒落でも言えばそれだけ気がまぎれ
まだやる気これから先の思い込み
「春 一 番」 川口 のぶ子
ミニ畑に冷たい雨が降りつづく 藤 枝
サニーレタス葉をふるわせて泣いている
春の声庭の草木も待っている
もうそこに春一番がやってくる
「 春 」 鈴木 まつ子
久しぶり心も弾む待ち合わせ 島 田
順風に乗った会話に春そそる
何想い何か忘れる春の空
かろやかにペタルを踏んで駒返る
「九十九髪」 大塚 徳子
原発の無い世の中を希望する 仙 台
あなたなら法には触れぬ羽交い絞め
人生路 山また山の九十九折り
九十九髪生きてるだけで素晴らしい
「気ままに冗句・その1」 西垣 博司
ラブレター誤字を直せと返事くる 静 岡
ノーメイク遂に女を捨てた妻
デパートで妻は鼻声出したがる
怪しげな身なりで防ぐ花粉症
「自 由 吟」 山田 浩則
新春を過ぎて寒さが底をつく 島 田
スナックの下手なカラオケ拍手する
東京でスカイツリー一番乗り
春になり見つめる富士が素晴らしい
「 孫 」 畔柳 晴康
泣き虫の孫に負けたと両手あげ 浜 松
身に沁みる孫の親切誕生日
三世代孫が一家を掻き回す
成人の孫運転で寺社詣で
「雑 詠」 飯塚 すみと
促進をするくせ議員まちまちだ 静 岡
ホチキスがしっかり止まって句も巧い
内緒だよ入院患者いいくすり
両方がほしいアイスに胃は丈夫
「失 敗」 安藤 千鶴子
鍵失くす同じ失敗繰り返し 静 岡
バスの列乗り出しどっと割り込まれ
増税に復興ののしどじょう付け
出来ませんとは言えなくて追い込まれ
「まったく」 宮浦 勝登志
早すぎるもったいないをもう忘れ 静 岡
すみませんたった五文字がなぜ言えぬ
飲むほどに自慢話が止まらない
オレオレがまたも新手で押し迫る
「自 由 吟」 川村 美智代
あら嬉し桜のつぼみみぃつけた 静 岡
東北の傷口癒えず四季巡る
おーい風呂おーい酒めし他言わぬ
背中掻く両手ひらひら届かない
「自 由 吟」 萩原 まさ子
半額に釣られ余分に買っている 静 岡
似合うより細く見えると聞いて買う
バス遅れ新幹線を見送った
化粧の子次であなたは降りるのよ
「雑 詠」 提坂 まさえ
四等さえ一枚もなし年賀状 静 岡
声高に生めよ逝けよと国が鳴く
クラシック聞き飽きているかすみ草
制服がかわいいからと受験生
「話 題」 石田 竹水
竹撓う積った重荷弾く術 静 岡
歯が抜けてへのへのもへじ喋り出す
回答を求めず風に乗る愉快
笑えない話題を笑い飛ばしちゃえ
「春 の 景」 森下 居久美
合格の声が弾んでいる電話 掛 川
おめでとう福沢諭吉羽が生え
花びらに映る笑顔も泣き顔も
ほろ苦い春は大人の味がする
「む ふ ふ」 森 だがやん
ほかほかの湯たんぽがわり子供達 島 田
暖かい辰の子供もこたつちゃん
愛娘僕より遥か口が立つ
君たちにこの句の良さが分かるかな
「 春 」 鈴木 恵美子
ポカポカの陽気ニョキニョキふきのとう 静 岡
窓を開け春の誘いを待っている
さわやかに足音だけを置いて去り
梅桃あんず春爛漫の北の里
「大 自 然」 永田 のぶ男
老春に平成匂う梅日和 静 岡
切らぬのも切るのも惜しい梅の花
しあわせの花は黙って笑ってる
霊長が愛し続けた大自然
「やれやれ」 林 二三子
一日が無事終えホッと仕舞風呂 富士宮
預った孫がようやく寝てくれる
心配事一つ終ればまた一つ
物忘れ無用の頃に顔を出す
「選ぶ選べない」 尾崎 好子
友達は選ぶ嫁さん選べない 藤 枝
家や土地これもご縁で選べない
命日も以下同文で選べない
身体に良い安くて旨い物を買い
「ユタカの最近」 稲森 ユタカ
マフラーがただの荷物に早変わり 静 岡
あー寒い上着のチョイス間違える
危機迫る健康診断あと少し
くしゃみ連発映画館には行けず
「左遷の穴」 池田 茂瑠
下心底に残して酔い潰れ 静 岡
朱の仮面脱いで寂しい巣にこもる
曲げられぬ論に左遷の穴が待つ
火の傷を幾つ重ねた薄い胸
「 熱 」 中野 三根子
熱を出し時間が止まる一週間 静 岡
食欲がないのが一番ダイエット
熱の中夫が仏さまに見え
元気ならなにもいらない なんちゃって
「日 曜 日」 川村 洋未
朝ご飯仕事行かなきゃお休みで 静 岡
昼頃に新聞広げテレビ欄
夕食はパジャマのままで冷やご飯
風呂だけは入っておこう明日のため
「春 愁」 多田 幹江
あら見てたのねご近所のパパラッチ 静 岡
ミニトマト君もそんなに若くない
春愁や五十肩まで芽吹くなり
ヨイショして下さい遠慮なさらずに
「これからが寒い」 真理 猫子
切り傷の歩み寄らないもどかしさ 岡 崎
第三のコース背泳ぎするカエル
ひねくれた口は本日定休日
くつ下の穴で息抜きしています
「憂 愁」 松田 夕介
マイムマイム踊る陽気なスギ花粉 静 岡
杉の子のイタズラにまた泣かされる
イタズラな風ねと笑いサクラ舞う
強い目の君が桜の下にいた
「 春 」 増田 信一
春うらら隣は何をする人ぞ 焼 津
春がすみ見えてくるのはいつの日か
梅が咲き桜散っても気は氷
放射能春が来たのにまだ消えぬ
「自 由 吟」 荒牧 やむ茶
尻の下敷かれ身動き出来ぬ意地 小 山
残雪を突抜く若葉春を待つ
掻き捨てた恥が今でもついてくる
背伸びして生きているからよく転ぶ
「桜 前 線」 佐野 由利子
南から桜前線駆けて来る 静 岡
月の雫肩にポタリと露天風呂
ゆっくりと歩こう風に越されても
ライバルに抜かれてきつくネジを巻く
「自 由 吟」 薮﨑 千恵子
一日が徒労に終る空回り 焼 津
倒けるのを待ってましたと言う嫌味
人脈が多いと鼻を高くする
ほれぼれと独り善がりの句に浸る
「雑 詠」 長澤 アキラ
花粉症みたいな声でカラス鳴く 静 岡
冷え性の財布を襲う消費税
庭を掃く餓鬼大将のなれの果て
銀行の金利のように細る髪
「冬眠中につき」 谷口 さとみ
台本をもらえず欠伸あばれだす 伊 豆
あしたまであったら買おうそのケンカ
オムレツの中に隠れていた悩み
大雪が降るたび春は会議中
「雑 感」 勝又 恭子
微調整わたくしらしくいるために 三 島
くじ運は一部の人にだけ回る
前の人ボタン操作が苦手そう
順番を守りすぎるとビリになる
「サ ク ラ」 望月 弘
蕾まだ固いと漢字から便り 静 岡
カタカナになってサクラは三分咲き
さらさらとひらがなになる八分咲き
書きなぐるように桜の花が吹き
「夜 桜」 加藤 鰹
逢って来た余韻とひとひらの桜 静 岡
長距離バス見送る如く花吹雪
春爛漫 ねえ天国も春ですか
夜桜やサイドブレーキ壊れそう