霜石コンフィデンシャル111 高 瀬 霜 石
「 ワ ー プ ロ 難 民 」
この連載の記念すべき100回目に、愛用のワープロが壊れて、とてもあせった話を書いた。
愛用のワープロが壊れて困っていたら、FMアップルウェーブで十三年続いている僕のライフワークともいえる「霜石のやじうま川柳」なる番組のパートナー、倉田和恵アナウンサーから、お下がりのワープロ1台貰った。同時に、友人の娘・紫乃ちゃんのお下がりも手に入った(なんと偶然同じ機種)ので、ウハウハ。
そこに、思いもかけず、本妻(?)も直って帰って来たのでビックリ。以来、本妻と2人の愛人の間を行き来するただれた生活を送っている。多分、死ぬまで続くことだろうと書いた。本当にそう思っていた。
死神は、突然やって来た。
「愛人1号・カズエ」が壊れた。まるで脳内出血したかのように、画面全体が真っ黒な筋に覆われて、見るも無残。これはもうダメと直感したが、とにかく病院へ運んだ。手術は叶わず。クモ膜下出血にて死亡。
「愛人2号・シノ」にスイッチを入れたら、彼女も調子が変。キーボードに触れる度に、ゴボゴボ不思議な咳をする。記憶装置の方も、よかったり悪かったりで、まるで不安定。ンー、これは肺がん、プラス半ボケ状態、かなり危機的状況かと自分なりに診断。
あー、あの蜜月時代はもう還らないのかとため息をついていたら、知人の千恵子さんからの電話。
「倉庫の奥にしまっておいたワープロ(これも運よく同じ機種)を出してみたら、ちゃんと動くし、ひょっとしたら使えるかもしれない」と言う。ヤッタア。
「愛人3号・チエコ」は、新品と思えるほどきれい。期待は膨らむ。恐る恐るスイッチを入れた。
画面に、記憶装置部分の電池を取り替えて下さいとの表示。そしてまた、恐る恐るその蓋を開けたらば、そこは一面錆の海。電池も、電池は入っている箱の部分も、もう腐食してしまってメロメロ。
「愛人3号・チエコ」は、身体はすこぶる元気だが、なにせ認知症。フツーの生活はもう望めない。
こうなった以上、するべきことはただ1つ。みんなと同じように、電器店へ直行し、素直にパソコンの軍門に下ることであったが、なんとパソコンと僕は、とてつもなく相性が悪かったのだった。 ―次号へ続く―