「結  ぶ」              安田  豊子

この星でみんな結ばれ生きている         浜 松

結び目が緩んで愚痴が多くなる

いざという時にほどけぬ腐れ縁

結ばれてからのレールが長過ぎる

 

 

 

「  臍  」              岡村  廣司

夏の陣臍出し娘手強いぞ            焼 津

真夏日に乙女の臍が闊歩する

臍出しの娘に席を譲られた

懺悔する時には臍を隠しとけ

 

 

 

「雑  詠」               馬渕 よし子

咳ひとつひそひそ話黙らせる             浜 松

海が好き山も好きだが歩けない

出し惜しみなどと無い知恵からかわれ

ひまわりのスマイル真似てハイチーズ

 

 

「なるほど」               酒井  可福

骨太の父の脛さえ瘦せ細る            北九州

なるほどと思うこの子の親はボク

女房に付いた三毛猫威張り出す

オール電化優越感が危機感に

 

 

「あと始末」                    横田 輪加造

まず保身そして保身であと始末               東 京

家族まで曝されているイジメっ子

担任の無言 教育委の無策

大津市に地獄に仏などいない

 

 

「官 邸 前」                   毛利  由美

暴徒化の一歩手前の金曜日                つくば

原発は作らなければいずれ消え

関東は火力で補える電気

関西を牛耳っている一市長

 

 

「自 由 吟」              孝井   栞

任せてもいいと職人胼胝がいう          富 山

下戸だから飲んであなたを困らせる

マネキンと値段に負けた試着室

バイオリズム今日はゆずれぬ上り坂

 

 

「縁側にて」              栃尾  奏子

鈴虫ときゅうり私とハイボール          大 阪

ポンポンと叩けば西瓜本音吐く

水ようかんツルリと私癒します

縁側で亡母の梅酒二三滴

 

 

「依  存」              濱山  哲也

ケータイを充電すれば蘇る            つがる

シッシって妻が言っても付いて行く

人間のひとりに一人ずつ悪魔

輪に入り目的らしきものを得る

 

 

「夏 休 み」              真田  義子

大皿に思い出を盛る夏休み            仙 台

母の声今も聞こえる夏休み

フクシマにもういないのか青い鳥

あの時の夢を時々出してみる

 

 

「  夏  」              石上  俊枝

そよそよとゴーヤカーテンフラダンス       静 岡

風鈴と風待ち茣蓙にゴロ寝する

この泡が疲れを運ぶひとくちめ

夕立に胡瓜グーッと背伸びする

 

 

「気ままに冗句 その4」        西垣  博司

義母が鼻ぴくぴくさせるウサギ小屋        静 岡

ラーメンをのばして電話やっと切れ

雨乞いに洪水までは言ってない

人間とヒトを閻魔に仕分けされ

 

 

「どうしよう」             増田  久子

ヘビを見た日からバイクの道変える        焼 津

留守電へ間違い電話怒鳴ってる

ユニクロ製長すぎるうえ細すぎる

暗算で売り場を廻る持ち合わせ

 

 

「六十路妻」              鈴木 千代見

直球を投げても妻は動じない           浜 松

まだ弾むきっと弾むと妻のまり

穏やかな湖面噂の波が立つ

寄り道が好き夕刻のブーメラン

 

 

「節  電」              成島  静枝

ムームーと団扇昭和の節電派           千 葉

チェニックと今風に言うアッパッパ

早々と一人一台扇風機

体脂肪減らす手もあるクールビズ

 

 

「あじさい」              内山  敏子

あじさいの秘密は雨が知っている         浜 松

あじさいの情けか蝶の雨やどり

朝焼けへ雨後のあじさい生き生きと

風鈴にふれてやさしい風になる

 

 

「自 由 吟」              戸田 美佐緒

プラネタリウム独りぼっちの星がある       さいたま

廃船へ着信音がひとつ鳴る

わたくしを詰め放題で売りに出す

鍵括弧だけで私を捕縛する

 

 

「有り難い」              鹿野  太郎

細胞のひとつひとつと法話聞く          仙 台

方円のチェックを妻とさり気なく

潜んでもGPSがお見通し

マッサージする両手から得る知識

 

 

「  夏  」              藤田  武人

あー暑い梅雨明けニュース蝉時雨         大 阪

噴水でパンツ一丁の子供達

殻を脱ぐ儚い命輝かせ

炎天下聖地を目指し球を追う

 

 

「う さ ぎ」              斉尾 くにこ

足のつく川で持論を泳がせる           鳥 取

たいくつが楽しむ人の裁判官

水割りの巨匠がぐっと近くなる

お誘いへピョンとひと跳ねしたうさぎ

 

 

「自 由 吟」              滝田  玲子

人間よりお行儀がいい盲導犬           浜 松

ベテランの詐欺師六法読んでいる

寄り道とおしゃべり好きな万歩計

補聴器を外した祖母の地獄耳

 

 

「人 生 訓」              畔柳  晴康

座右の銘立派すぎたよ身が持たぬ         浜 松

先輩の忠告甘く見て火傷

老いた身で組んだ予定に力込め

芸達者努力の汗は語らない

 

 

「夏がゆく」              小林 ふく子

まっ直ぐな目のひまわりもくたびれる       袋 井

Tシャツへ夏の別れがシミになる

忘れない夏描く絵の具濃くしてる

さやさやと何かが通り抜けて秋

 

 

「自 由 吟」              奥宮  恒代

スーパーの溢れし中のバナナ買う         森 町

店頭に梅が並んで気が揉める

風評の農家を泣かせ新茶出る

失恋の傷あとならば五針ほど

 

 

「自 由 吟」              南   天子

年令は重くて今は動かない            焼 津

使わない部屋にガラクタ住んでいる

何故だろう心がドンと沈む日は

招待はしていないのにカラス達

 

 

「自 由 吟」              菅原  花子

洗濯をはじめてすぐに雨が降る          盛 岡

ナマケモノ動物園で愛される

夕飯の献立作り悩ましい

種をまき忘れたころに芽が出たよ

 

 

「自 由 吟」              竹内 みどり

何事も良いことだけを考える          さいたま

節電で自分に出来る知恵しぼり

節電をみんな楽しく考える

ありがとう娘に感謝箱根山

 

 

「飛 鳥 路」              井口   薫

まほろばの花びら拾うスニーカー          袋 井

石舞台以後の進化はいかほどか

いまさらに聖徳太子待ちわびる

年表をクリックしてる旅のあと

 

 

「  夏  」              恩田 たかし

夏の夜の空を彩る大輪華              静 岡

海沿いで風と一緒にウォーキング

朝は蝉夜は蛙の歌合戦

幼稚園送迎だけで滝の汗

 

 

「ぼんやり」              森 だがやん

ぼんやりと見えてた未来暗闇に          島 田

ぼんやりと分かるが名前出てこない

事故起こしぼんやりなんてすまないぞ

ぼんやりと夕日眺めて蚊に刺され

 

 

「現 在 地」              新貝 里々子

ハードルをとり払ってもまた転び         袋 井

プラターズには酔うAKBは知らん

どうせならB級よりも一ツ星

過呼吸のままで夏まできてしまう

 

 

「期  待」              薗田  獏沓

新党に期待半分何をやる            川根本町

寄り添うに少し時間がかかりそう

俺の子だエリートになるきっとなる

期待して鏡せっせと拭いている

 

 

「雑  詠」              飯塚 すみと

小沢さん新党作り趣味のよう           静 岡

なんじゃいなてんで解らぬ点字表

和讃よみ畑の草も軽く取る

千年も昔の貴族見張ってる

 

 

「自 由 吟」              川口 のぶ子

梅雨の中暑さ寒さの入り交じり           藤 枝

強風にすべての苗がたれ下がり

今年こそ張り切った分くだかれる

するすると朝顔のつる天目指す

 

 

「雑  感」              川口   亘

腰高で丸い土俵を攻め切れず           藤 枝

小糠雨まだ梅雨空の瀬が見えず

小鳥等が蒔かれた種を忙し食む

困窮の儘で通れぬせまい路地

 

 

「自 由 吟」                 大塚  徳子

六十がニューオールドの風になる            仙 台

川沿いの道をゆっくり折り返す

君香る風を待ってる風媒花

あたたかい夕餉待ってるまっしぐら

 

 

「終り良ければ」               中矢  長仁

始めから引き合ったなあ赤い糸           松 山

お爺さん二人が良いね幸せよ

婆ちゃんと爺ちゃん何時も一緒だね

何事もなく日が過ぎる幸せ度

 

 

「雑  詠」                  山本 野次馬

眠らぬ都会に輪番のフクロウ           函 南

妻の指食味計まで付いている

句読点外せば飛べる明日がある

指先が触れてアトムになる予感

 

 

「  首  」                        鈴木 まつ子

子の帰省首長くして落ち着かぬ           島 田

懲りずまた自業自得の首が飛び

口は災い大臣たちの首が飛ぶ

何くれと首を突っ込む好奇心

 

 

「青の主張」             川村 美智代

盗バイク見つけた巡査神に見え             静 岡

濃く咲いた青の主張に蘇る

ダルマサン転んだとこに五百円

浮く雲の形で遊ぶ待ち時間

 

 

「時はゆく」             安藤 千鶴子

逃げられぬ監視カメラと鬼ごっこ             静 岡

ちい散歩行きずりの濃い触れ合いさ

この膝で椅子に感謝し生きる日々

時はゆくすべての事を無に戻し

 

 

「戻るキー」             提坂 まさえ

折り合いはつかないけれど濃い句点       静 岡

春の陽に年取ったよう居間のソファ

保護者会椅子も倣って無言劇

アルバムに戻る戻るのキー捜す

 

 

「自 由 吟」             萩原 まさ子

発見が多く人生リフレッシュ           静 岡

守備範囲超えた日は濃い汗が出る

香り立つ新茶気持ちのズレも抜け

帰宅後も寝るのを惜しみ濃いめの茶

 

 

「椅  子」             宮浦 勝登志

あと何年生きるつもりの模様替え             静 岡

長年の労苦に耐えて部長席

わだかまり抱えたままで座る椅子

去る椅子を惜しみカバーに手を添える

 

 

「  夏  」             野中 とし子

完熟のトマトの赤さ食誘う           静 岡

緑濃い千頭の旅に満たされて

天の川彦星見つけ得意顔

若者に常識はずれだと言われ

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

お祝も濃い人多く他はなし            静 岡

濃い髪もそのうち薄れ禿頭

暑い夏始まる前の口合わせ

待つ待たぬそれが分かれ目運不運

 

 

「梅  雨」             山田  浩則

一年生蛙の歌を大合唱              島 田

田んぼから蛙ゲロゲロ声がする

紫陽花の写真を撮って額に入れ

水玉の傘差している女の子

 

 

「お 葬 式」                    永田 のぶ男

焼香し馬の尻尾を高く振る                 静 岡

ブツブツとその内ワッと脅かされ

水を撒き解らぬお経また始め

引導で占めはやっぱりチンポンジャラン

 

 

「こんなにも」             渥美 さと子

こんなにも口に合ってた故郷の味         静 岡

こんなにも取り越し苦労今日は晴

こんなにも涙流れる友が空

こんなにも一番出しと二番出し

 

 

「昭  和」                   多田  幹江

なつメロが洩れる昭和の吹き溜り               静 岡

わたくしを叩くと昭和が泡を吹く

まだイケル私昭和の再生紙

昭和っていつ頃のことですか

 

 

「漠  然」                    尾崎  好子

地球には今ニュートンやガリレオや              藤 枝

脳細胞天文学者奮可動

近未来気象もコントロール出来

地震さえ注射が出来るやも知れぬ

 

 

「笑  顔」              石田  竹水

遅咲きも格別なもの花盛り            静 岡

淋しさを隠す笑顔が派手過ぎる

電子辞書新語氾濫間に合わず

白い歯を見せて目尻は笑わない

 

 

「化  粧」               中野 三根子

うす化粧やっぱり私シッポ出す               静 岡

今週はお洒落に決めてパリに居る

すっきりと髪結い上げて紅をさす

浴衣着てほんのり化粧彼を待つ

 

 

「雑  詠」              薮﨑 千恵子

ブランドのセール女の格闘技           焼 津

横道に逸れた授業が盛り上がり

ぼんやりと川面の揺れを眺めてる

肩パット付け直す負けん気の意地

 

 

「お  金」                     松橋  帆波

老人のお金を狙う民営化             東 京

甲子園寄付の話もして茶の間

この先は生活保護か宝くじ

いろいろで済むこと済まぬこと お金

 

 

「自 由 吟」              中田   尚

粥の味 年金の味 人の味             浜 松

税金がまた年金の邪魔をする

クールビズ露出せよとは言ってない

節電にエレベーターもゆっくりめ

 

 

「おしゃべり」             林  二三子

女三人あっという間の三時間                富士宮

旦那の愚痴話せば更に盛り上がる

ここだけと聞いたそばから飛んでゆく

女三人寄れば話題に事欠かず

 

 

「  花  」              森下 居久美

ひまわりのメイロ迷子になって夏         掛 川

色水の記憶あさがお鳳仙花

赤、黄色、グラジオラスの背比べ

照りつける日差し和らぐ百日紅

 

 

「自 由 吟」                     荒牧 やむ茶

合格の便りを待っているチャイム         小 山

いいとこで噂の主が現れる

からっぽの空は木霊がよく響く

鈴生りのレモンに恋が発芽中

 

 

「カエルの合唱」            真理  猫子

ひとさまのふんどし借りてまた借りて       岡 崎

熱りが冷める間際の不整脈

まっとうに生きてないから生きている

とりあえず笑ってみろと鳴くカエル

 

 

「ブランド」              佐野 由利子

傘立ての中でブランド競い合う               静 岡

忘れたい記憶ほどまた思い出す

わたくしに鬼一匹が隠れ棲む

根回しに不服はあるが顔をたて

 

 

「消 費 税」              増田  信一

消費税上げる阿呆に乗る阿呆           焼 津

消費税上がる分だけダイエット

節約と勿体ないで税凌ぐ

流行にソッポを向いてマイペース

 

 

「のってけSummer」                松田  夕介

夏の青また会えました久しぶり          静 岡

イカ焼きの気分ビーチで荷物番

みーんみん直訳するとこそばゆい

縁日へ誘いふられるそれも夏

 

 

「雑  詠」              長澤 アキラ

最中で返事が出来ぬインタホン          静 岡

悪意ない顔して砂をかけにくる

善は急げそして階段踏み外す

幸運に不運を足すとアア無情

 

 

「カデン戦隊モモレンジャー」      谷口 さとみ

洗濯機のご機嫌伺いもう一枚                伊 豆

奥を見る勇気が出ない冷蔵庫

唐突に物をつっこまれるレンジ

ピーチ味だろうとドリンクは薬

 

 

「雑  詠」              勝又  恭子

金欠のサインか息子から電話           三 島

雑草に見える我が家のハーブ園

一粒のなみだ宝石箱の中

聞き酒の舌銘柄をピタリ当て

 

 

「家 の 事」                     川村  洋未

靴下がたまに奇数で洗われる           静 岡

ポケットでそのまま日干し諭吉さん

飯茶碗大きい方が母の前

ブランドの傘が我家に居つかない

 

 

「白い祈り」               池田  茂瑠

肩の荷を降ろせば読める風なのに         静 岡

折り鶴の祈りが白く届かない

錆を先ず落として顔を塗り直す

花の種胸の谷間に蒔いておく

 

 

「枯 山 水」               望月   弘

私が枯山水の中に棲む              静 岡

わからないけれどヒッグス素晴らしい

絵の中に佇んでいる終戦忌

追いかけて追いかけられている背中

 

 

「オ ヨ ヨ」              加藤   鰹

将来の夢はセレブと言う五歳           静 岡

金魚のフン集め新党だそうです

海底に利権まみれのクエが居る

オッチャンと呼ばれた僕のことだった

 

 

顧  問  吟

「スコール」                  高瀬  輝男

才能という武器もない凡人だ            焼 津

出来る事一つだけあるから生きる

どの雲が産んだ雨かな冷た過ぎ

放っとけば明日は雨も止むだろう