霜石コンフィデンシャル112   高 瀬 霜 石

「 続 ワ ー プ ロ 難 民 」

― 電 器 屋 の 巻 ―

前号で、愛用のワープロ「愛人1号・カズエ」がクモ膜下出血で死去。「愛人2号・シノ」は肺がん、半ボケ状態。「愛人3号・チエコ」は、身体は元気だが、認知症がひどくてもう駄目と報告した。

こうなったら年貢の納め時かと、弘前にもある全国チェーンの○○電気店へ行って聞いた。

「ワープロが壊れたので、パソコン買いに来たのさ。インターネットに繋ぐつもりないけど、モノ書くための1番最初の設定。つまり、縦が何字で、横が何行という設定方法。これだけ最初に教えてな」

「ハイ、分かりました。大丈夫です。初期設定などに少し時間がかかるので、2日後においで下さい。私はいませんが、ソレに詳しい佐藤という者に、きちんと伝えておきますから、ご安心ください」

2日後、少しわくわくして行きましたよ。

待っていたのは、パソコンに詳しい佐藤さんではなくて、頼りなげな中年男。まったくチンプンカンプン。

「アレレ。コレ、新しいタイプで、私のヤツなら簡単なんだけれども、アー、分からない。見つからないなぁ。アレレ」と、ただ時間が過ぎてゆくではないか。

「あのさ。悪いけど、オラ忙しいのさ。アンタじゃなくて、佐藤さん、いないの?佐藤さん。彼が伝言聞いていてくれているはずだよ。佐藤さんね」

アレレ親父が引っ込み、しばらくしたらその佐藤さんなる若者が現れた。こっちはもうくたびれてしまっているけれど、アレレ親父に話したように、またまた最初から説明した。そしたら何と、彼はこう言った。

「お客様。そういう難しいコトは、ちゃんとパソコン教室へ通って習って下さい。私たちには無理です」

「ハァーッ?そりゃあ話が違うよ。あんた、本当に佐藤さん?オラが知りたいのは文章書くための、最初の字数設定と行数設定。ただそれだけなのだよ」

「そういう難しいコトは、メーカーに聞かないと」

「ちょっと待って。例えばさ、新聞の下の天声人語とか、天地人とか冬夏言とか、あーいうのを書くとしたらば、どう設定するか、ちゅーことだけを聞きたいのよ」

「そんなの、読んだことないから分かりません」だと。

天下の○○電器ですよ。別な全国チェーンの△△店に行っても、同じような若い店員が同じ答えを繰り返し、あきれた。コイツら、宇宙人かとふと思った。

―まだまだ続くぞ―