「きびしい残暑」            松田  夕介

波しぶきだけではしゃげた夏でした        静 岡

液状化現象おきる夏の僕

伝統の一戦蚊との一騎討ち

いく夏を寂しく思う夏嫌い

 

 

 

「  筆  」              濱山  哲也

春夏秋冬四つの筆を持つ日本          つがる

手紙だと僕はぜんぜん訛らない

筆順にこだわりません幸の文字

追伸に火種をさりげなく添える

 

 

 

「兄  弟」               中矢  長仁

七人も子どもが居って蝉しぐれ            松 山

それぞれの土地で根を張り蝉しぐれ

弟を見舞いに行けと蝉しぐれ

何事も無かったように蝉しぐれ

 

 

「う な ぎ」               鈴木 千代見

給食に鰻がのって子の元気              浜 松

うっかりとうなぎも恋もすり抜ける

鰻重の米一粒も残さない

国籍をしらすうなぎに聞いてみる

 

 

「  雹  」                    石田  竹水

過信する僕の短所は花言葉                   静 岡

善人の涙が時に雹に成る

カミソリと言われた男傷だらけ

喉越しの良い冗談を賞味する

 

 

「衣 食 住」                   増田  久子

草刈りの鎌が残した花の草                  焼 津

ブランドがありますたかが竹輪でも

ファスナーが邪魔して困るMサイズ

頂いたキャビアに馴染めないあたし

 

 

「戦 中 派」              岡村  廣司

聖戦と今も信じる戦中派             焼 津

一粒の米でも拾う戦中派

使い捨て未だに下手な戦中派

英語など解りゃしないさ戦中派

 

 

「食 物 語」              新貝 里々子

砂糖足し醤油を足して自分流           袋 井

トマトの朱ゼブラゾーンを行き来する

多国籍というよりこれは思いつき

昼会席 父さんだけを置いてきた

 

 

「雑  詠」              奥宮  恒代

夕涼みゆかた姿も夢二風             森 町

蜩がさぁビールだと急きたてる

夏空へ水羊羹も冷えたころ

力まない生き方が好きダンゴ虫

 

 

「運 動 会」              小林 ふく子

萩の花いっきにこぼれ終る恋           袋 井

コスモスが空家を守るように咲き

虫の音に母の添い寝を思い出す

盛り上げに涙をもらう運動会

 

 

「暑  い」              井口   薫

館林 多治見 夏場の新名所            袋 井

ノンアルコール書いてなければきっと酔う

決断はこうあるべしと流れ星

ヒックス粒子おめでたいやら怖いやら

 

 

「ロンドン五輪」            毛利  由美

日本にいながら五輪疲れ中            つくば

JUDOと柔道どこか違う気が

新旧交代メダルの色なんておまけ

受験生にオリンピックの甘い罠

 

 

「種を蒔く」              真田  義子

たどり着く所にきっと夢がある          仙 台

わたくしが脱皮するまで待てますか

あの時のとても素敵な君の嘘

自分史のところどころに種を蒔く

 

 

「自 由 吟」              山本 野次馬

泡の出ぬラムネのような恋でした         函 南

トイレ紙都合のようにある切れ目

包帯を解けば自由になるサナギ

平和記念日に降りたる兵の群れ

 

 

「自 由 吟」              戸田 美佐緒

カチャカチャと音を食べてる一人膳       さいたま

点滴が月より届く深夜二時

死に神の指から落ちた処方箋

入院の手が憧れり発泡酒

 

 

「雑  詠」              馬渕 よし子

火に油注ぐ返事を持って来る           浜 松

咲き誇る花を無視して今日の荒れ

ばっさりとショートカットの顔で生き

炎天を避けてまだまだ生きる欲

 

 

「八  月」              安田  豊子

八月の空に昭和が湧いてくる            浜 松

大の字で暑さ凌ぎの居所寝

さっぱりと昼のそうめん喉が鳴る

日本チャチャチャ寝不足になる五輪戦

 

 

「気ままに冗句 その5」        西垣  博司

人間の一枚皮を破るトゲ             静 岡

画像処理終えて出てくる化粧室

好きですと言えぬ大根役者です

七人の敵の最後に妻が居る

 

 

「夏 休 み」              山田  浩則

夏休み知らない土地で子が迷子          島 田

夏休み子供の起床朝六時

先生にばったり会った夏休み

父さんが子の宿題に忙しい

 

 

「飛び散った和音」           斉尾 くにこ

遠近が二重写しとなり揺れる           鳥 取

すれ違いできて乗り替え駅に着く

感情のアイコンタッチする指紋

雑音となってる飛び散った和音

 

 

「嗚呼メダル」             成島  静枝

金メダル取って来いよと送り出し         千 葉

簡単に取れぬと知っている選手

入賞の4、5、6に無いメダル

被災地へ希望奮起をしたメダル

 

 

「やっぱ青春」             栃尾  奏子

恋のドアノックしているラブレター        大 阪

直球の恋あなたしか見えません

ラブライクちょうど真ん中辺に僕

夢一途くよくよなんか吹き飛ばす

 

 

「電  気」              村越  精也

侮るなたかが電気で長寿国            静 岡

冷房を止めてもやはり扇風機

原発阻止だけど電車でやって来る

デモもよしみんなが食える知恵をだせ

 

 

「八月の風」              石上  俊枝

ムンムンと熱い声援我が母校           静 岡

水しぶきエコエコと滝癒される

八月の風ドライヤー吹いてくる

すぐそこに酒とサンマが出番待つ

 

 

「自 由 吟」              宮浦 勝登志

濃い口の醤油に跳ねる生シラス          静 岡

筆太に父の遺墨の濃い一字

決別に神のみぞ知る恋行方

正直に見捨てはしない福の神

 

 

「濃い句点」              提坂 まさえ

化けの皮塗って塗っての負け知らず        静 岡

寝言でもイエローカード二枚です

サングラス濃い目に換えて嘘三つ

折り合いはつかないけれど濃い句点

 

 

「自 由 吟」              萩原 まさ子

鈍行に乗ると胃痛が軽くなる           静 岡

寝言だと思わせて言うプロポーズ

リタイヤで濃さが戻ってきた夫婦

キラキラのネオンと競う厚化粧

 

 

「山 の 貌」              川村 美智代

その時は濃く書いて逝くさようなら         静 岡

ひと山にされてバナナはふて寝する

山の顔確かめる癖今朝もまた

寝言でも先に逝くなとおじいさん

 

 

「寝  言」              野中  雅生

国会は寝言を聞いてまた寝言            静 岡

寝言にも出せないことがあるもんだ

政治家は寝言しゃべって票集め

富士山の世界遺産がごみの山

 

 

「  山  」              野中 とし子

愛犬の昼寝クークー寝言かな           静 岡

国会の山場向かえて荒れ模様

五輪への山を外して涙する

我が人生山谷あれど悔いはなし

 

 

「自 由 吟」              安藤 千鶴子

戦争の残り火 号令の寝言             静 岡

また落ちた我が声で飛び起きる朝

水源地他国に売るか山の国

乗車して百名山を登りたい

 

 

「傘 の 中」              大塚  徳子

九号を買ってタンスの見栄が跡          仙 台

生きてやる命おしくて水を飲む

水に流す度に大きくなる器

ヌーボーと生きるあなたの傘の中

 

 

「自 由 吟」              南   天子

一夏も修行と思い耐えること           焼 津

一日に何回叫ぶ暑言葉

若し夏が恋人ならばさようなら

野良ねこも涼しくなった頃にくる

 

 

「自 由 吟」              菅原  花子

スタートは法話を聞いて起きてすぐ         盛 岡

負けないぞ賢治のように暑さには

諦めず下手でも投句頑張って

ひさびさの涼しい朝にほっとする

 

 

「雑  詠」              竹内 みどり

お父さんいつも畑でボーイズトーク       さいたま

旅の宿 隣はいびきする人ぞ

負担増買い物減らしごみ減らす

貧乏と母の愛とで子が育つ

 

 

「気 配 り」                 薗田  獏沓

友の愚痴傷癒える迄聞いてやり           川根本町

同伴と見て隣席を譲られる

方言で友のあいさつ場が和む

服装で花屋はさり気なく造り

 

 

「自 由 吟」                  滝田  玲子

下請けに鉛メダルを付けてやり           浜 松

にぎやかに夏を告げてる蝉の声

節電へ団扇センスが駆り出され

白内障加齢ですねとさりげない

 

 

「後期高齢」                  畔柳  晴康

美しく老いる努力を今日もする          浜 松

痴呆かな隠しヘソクリ探してる

老の血が夢で踊って目が覚めた

呆けた真似急場を凌ぐ知恵とする

 

 

「現  実」                        鹿野  太郎

もう少しバブルのツケが虹になる          仙 台

一度だけドミノになったスリル感

消しゴムで何故か消えないこのページ

賑わっていても地雷が足を消す

 

 

「口説かれる」            鈴木 まつ子

人に藁泣く泣くすがる命乞い              島 田

しつっこく援助交際せまられる

繰り返し言い寄る舌が逃げまどう

ギブアンドテイクしばらく微熱持ち

 

 

「自 由 吟」             飯塚 すみと

AKB見るなと妻が横やりを               静 岡

風船とラッキーセブン差別なし

さわぎ過ぎメディア各社の予選会

ハワイ椰子サウスウインド空ひろう

 

 

「雑  感」             川口   亘

視野などの狭くなるだけ愚痴がふえ       藤 枝

焦る気をなだめて通る無碍の道

根生を取ってはつけて見るも良し

要慎に賢い生きる路探す

 

 

「と  は」             川口 のぶ子

省エネで団扇廻してエコとはね          藤 枝

弟の早い旅立ち送るとは

何時の間に年を重ねて八十路とは

老夫婦かけ込む先がトイレとは

 

 

「入 り 口」             藤田  武人

裏口を入り口にするお金持ち               大 阪

入官で化粧し直す八代亜紀

格子戸をくぐる浴衣の二人連れ

開けよかな覗き窓から良い香り

 

 

「A T M」             酒井  可福

どや顔でATMのカメラ見る          北九州

ATM後ろの客にせかされる

虎の子がATMに拒否される

ATM確認時間の間が持てぬ

 

 

「お引越し」             横田 輪加造

六年の計を詰め込む段ボール           東 京

サボってたなあこんなトコにもカビが

五十キロ痩せて我が家の移しかえ

忘れない家族がひとり増えた部屋

 

 

「ひんやり」             稲森 ユタカ

肝試し帰りの車内一人増え            静 岡

動けない夜な夜な起こる金縛り

風鈴の音色 心に風吹かせ

キンキンに冷えたジョッキで一気飲み

 

 

「先を読む」                    永田 のぶ男

猿よりも生まれ貧しい檻の中                静 岡

椅子の足三本足で用を足す

褌を固く結んで胃の検査

墓買わず決めて競馬に明けくれる

 

 

「軸足の構え」             池田  茂瑠

コルセット外し浮きたい道辿る          静 岡

結論へ軸足変えて構えたが

七転びだけでは済まぬ私です

放たれた矢に似て元に戻れない

 

 

「  盆  」                   多田  幹江

盆おどり踊る阿呆のお先棒                  静 岡

キタサノサって亡母が来る盆に来る

盆支度日頃の無沙汰詫びながら

盆景の意地 原発はお断り

 

 

「ほ た る」                    尾崎  好子

夕涼みがてらほうほう蛍がり                 藤 枝

家の中へ入るほたるを外へ追い

湧き水がコンコン川へ甘い水

限りある命に命つながれる

 

 

「オリンピック」            中田   尚

マスコミにメダルの色を飲み込まれ        浜 松

判定が畳の下で明と暗

審判は畳の上を回るだけ

鉄棒に苦しめられた銀メダル

 

 

「聖  火」              森下 居久美

熱帯夜ニッポンコールで夜が明ける             掛 川

ずっしりと重いメダルにもらい泣き

すっぴんが美しすぎるアスリート

平和だな今日も聖火が燃えている

 

 

「自 由 吟」              林  二三子

充実感味わいたくて本を読む           富士宮

アナログを馬鹿にできない凄い技

宙を舞う体操の技目を凝らす

全ての苦労涙で消して次にかけ

 

 

「自 由 吟」                     荒牧 やむ茶

誘惑に負けて進まぬ途中下車           小 山

福耳がお金の音を聞き分ける

日が沈むようにマドンナ去って行く

ほろ酔いの魔法が解ける二十四時

 

 

「仕切り屋」              薮﨑 千恵子

ひと夏の恋が終った花火の夜           焼 津

仕切り屋の自分勝手に背を向ける

近づくと粗がみえ出す上手もの

くどいなあもういいですよその話

 

 

「ク リ ア」              中野 三根子

この暑さすべてクリアで生きている             静 岡

サングラス日傘にタオル日焼け止め

生きること暑さ寒さも受け止める

省エネと言ってプールに入りびたる

 

 

「オノマトペ」             谷口 さとみ

シミくすみパッパッパッと流れ星         伊 豆

あげさんをコトコトと煮て待つ祭り

豪快に飲みウジウジとつまむ腹

ザァーザァーと生きものがかり降りてくる

 

 

「わがまま」                     川村  洋未

探し物裏が見えたらわからない          静 岡

手土産に食べたい物を買って行く

大声で泣いてもだえて生きかえる

材料が一つ不足でおかずなし

 

 

「ふ る 里」              佐野 由利子

ふる里の味はほのぼの手打ちそば         静 岡

青空の下に弱虫見当たらず

御主人が元気 まあまあお気の毒

根を張っているから踏まれても起きる

 

 

「オリンピック」            増田  信一

建前は参加心は金メダル                  焼 津

努力して花が咲かない事は常

金と銀天と地の差で評価する

閉会で五輪の色も風と消え

 

 

「日本人体系」             真理  猫子

宝くじ外れて笑う膝小僧             岡 崎

目の上のたんこぶはまだあずき大

短足と豚足 区別つきにくい

躓いた分だけ手には拾い物

 

 

「有  効」                     勝又  恭子

有効に使えばゴミは減っていく          三 島

薬指ずっと予約のないまんま

キッチンに三秒ルール生きている

有効でしょうか涙というカード

 

 

「八  月」               長澤 アキラ

ぐびぐびとビアガーデンの揃い踏み        静 岡

打ち上げの間を埋める遠花火

ゴミ出しの日は二重丸ついている

運命に歯型だけつけ夕あかね

 

 

「虫のいい話」             望月   弘

仏にも鬼にも虫が棲んでいる           静 岡

虫のいい話反芻して咀嚼

良薬になれなくなった糖衣錠

二人きりノンフィクションで暮れていく

 

 

「  蝉  」              加藤   鰹

クマゼミの羽を透かせば遠い夏          静 岡

靖国の蝉鳴いている泣いている

蜩が鳴くよこの恋終わりだと

君去りし部屋に抜け殻だけ残り

 

 

顧  問  吟

「三叉路の手前で」               高瀬  輝男

三叉路の手前で思考錬り直す            焼 津

万一に備え楔も用意する

過去などは捨てろ少しは楽になる

明日は明日今夜精いっぱい光る