霜石コンフィデンシャル113   高 瀬 霜 石

「 続 続 ワ ー プ ロ 難 民 」

― 浦 島 太 郎 の 巻 ―

テレビでもいっぱい宣伝して、全国展開している「○○電器」のような店の店員が、僕の知りたい単純なコト―パソコンの中のワープロの部分的なコト―を、何も分からず、教えることもできないのに腹が立ち、アイツらみんな宇宙人ではないかと、前号で吠えたのだった。

パソコンに詳しい妹夫婦に、このことを訴えた。同情してくれると思ったら、なんと、妹がこう言う。

「それは、お兄ちゃん。あんたが悪い。機械音痴のお兄ちゃんが、なんでのこのこ一人で行くの?行く前に、何故わたしたちに相談しないの?」と叱られた。

義弟に頼んで、パソコンをセットして貰い、使い方を教わったがしっくりこない。肌が合わないのだなあ。「ワープロ恋しやホーヤレホ」と数日泣いて過ごした。

呆れた妹夫婦は、インターネットで中古のワープロを探してくれた。2万数千円とちと値が張るけれども、修理済みの保証書が付いているから安心だと言う。

「こちとら金に糸目は付けねーぜ」だものさ。願ったり叶ったりで、新品のパソコンは、たった1週間で、お蔵入りとなったのであった。

それから数日後、会社から電話。O町内のNさんという方が訪ねて来ているという。知らない人だが、町内の老人会とかで、川柳の話を頼まれることもままあるので、そんな事かなと電話に出た。

「高瀬さんは、もうだいぶ前ですが『月間弘前』に、ワープロ愛用者だと書いていましたよねえ」

「ハイ。オラはずーっとワープロ派。多分死ぬまで」

「いやあ実は私もでして。退職した後も、町会の仕事やらもしていて、ところが頼りのワープロが突然壊れて、業者に聞いたり、メーカーに電話してもサッパリで困ってしまって。その時、フッと高瀬さんのことを思い出し、藁にもすがる思いで来たのですよ」

「Nさん。オラも、かくかくしかじかで。貴方の回りにも、パソコン強い人いるでしょう。その人に頼めばどうにかなるって大丈夫」と彼を勇気づけたが、そんな知り合いはいない。なんとか助けてくれと言う。

同好の士だもの、やむをえまい。義弟にまた探して貰い、その情報を伝えた。数日後、彼は念願のワープロを手に入れ、ニコニコ顔で報告に来た。

店員さん わたし浦島太郎です   霜 石

―もう1回続くぜ―

2012年9月号