「若 い 耳」              佐野 由利子

忠告が素通りをする若い耳            静 岡

ブラックのコーヒーが好き秋夜長

里芋の皮剥くとすぐ痒くなる

私よりまだ肥えている人がいる

 

 

 

「自 由 吟」              戸田 美佐緒

焼き芋屋冬の時間を売りにくる        さいたま

昼の月やっぱり夜に戻れない

ブルースの風に揺れてる彼岸花

無欲にはなれぬ女の調味料

 

 

 

「晩  秋」               井口   薫

晩秋へフリル多めの回顧録              袋 井

首筋が寒くて安否確かめる

エンディングノートへ秋の夕日射す

列島が新細胞で蘇える

 

 

「  妻  」               藤田  武人

妻の服着てる娘を見てドキリ             大 阪

同じ事同じ言い訳する母娘

パパよりもママが上です趣味立場

晩酌は妻が女将の居酒屋で

 

 

「コスモス」                    真田  義子

コスモスに夢をもらったひとり旅               仙 台

コスモスの栞をくれたのはあなた

草笛で秋のページに飛んで行く

前向きに生きる私もコスモスも

 

 

「秋 晴 れ」                   毛利  由美

iPSに足腰初期化してほしい              つくば

挫折したからノーベル賞受賞

小市民はいつも号外もらうほう

家事日和きょうは大物お洗濯

 

 

「ピンボケ」              山本 野次馬

妥協した言葉の裏にある本音           函 南

消しゴムで消したつもりの言葉尻

奥歯にも詰まる言葉の咳ばらい

デジカメに残した恋がピンボケる

 

 

「雑  詠」              岡村  廣司

近道はやめよう駄馬は駄馬らしく         焼 津

越えて来た峠に涙落ちた跡

空気読む上手な雑魚はすぐ動く

百才も珍しくない国になり

 

 

「ナムマイダ」             新貝 里々子

マッサージチェア女の愚痴を揉み解す       袋 井

背を越され親の思いが届かない

アリバイに強く残っていた香り

君の名を呼んだ気がして目が覚める

 

 

「自 由 吟」              南   天子

何故だろう昭和がやけになつかしい        焼 津

世の中が蝶々だらけそれは夢

争いは一切したくない気分

見渡せばいい友ばかりありがとう

 

 

「秋たけなわ」             鹿野  太郎

金曜日あっと言わせる栓を抜く          仙 台

晩秋の風に五十路が離陸する

独り言焼き芋食べてまた食べて

荒海といえど暖簾をくぐらねば

 

 

「ナデシコ」              栃尾  奏子

愛ひとつ空へ還せるのも女             大 阪

思い出をずっと握っているポッケ

悲しみを抱いて笑えるのも女

裏切りを許すと決めた日の女

 

 

「自 由 吟」              内山  敏子

右ひだり秋を貰って歌う靴            浜 松

純白もセピアに変わる金婚期

信じてた突っかい棒が軋みだす

リハビリの部屋で明るい輪ができる

 

 

「  昔  」              鈴木 恵美子

秋障子昔むかしの影法師             静 岡

佳き昔タイムスリップしたくなる

風を纏うて里の秋の唱歌聴く

おだやかな初秋コスモス揺れている

 

 

「自 由 吟」              竹内 みどり

秋風に旅に出ようと誘われた          さいたま

高齢化とうに分かっていた筈だ

金と恋逃げて行くから追わないよ

真実はひとつだけとは限らない

 

 

「あの頃の夢」             安藤 千鶴子

年収が成績順でない不思議                静 岡

忘れ物あの頃の夢取りに行く

あの校舎今はない友だけ残る

復元の東京駅が懐かしい

 

 

「あなかしこ」             提坂 まさえ

鈍行で駅弁二つたいらげる            静 岡

単線を行きつ戻りつ無人駅

校章はなでしこでしたあなかしこ

ありがとうなんて言えない父でした

 

 

「田  舎」              萩原 まさ子

田舎です目の前にあるアウトドア         静 岡

コンビニが救う九死の田舎道

獲れたてか目をサラにする田舎者

帰路につく我が家あってこその我

 

 

「お金 1」              松橋  帆波

兜町春の話を秋にする              東 京

妄想を会社四季報から貰う

一円の差にママチャリは風になる

香水がお金お金と小うるさい

 

 

「自 由 吟」              宮浦 勝登志

教室で騒ぎ起こした大毛虫               静 岡

野良仕事手甲脚絆姿なく

走らずにすむのに走る駅の中

偶然を装い君を待つホーム

 

 

「自 由 吟」             野中 とし子

田舎町過疎化の駅の彼岸花            静 岡

汽車の旅席譲られてありがとう

主人です駅で見かけたあの人が

田舎でのザリガニ取りが目に浮かぶ

 

 

「ありがとう」             野中  雅生

学校は友達作り第一ぞ              静 岡

あたたかい山形駅のそばの味

我が父の最後の言葉ありがとう

我が妻にそっと言いたいありがとう

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

ズロースの米の字いやな測定日             静 岡

ハイテク化毛嫌いをする田舎もん

ブータンに子供の頃の田舎見る

ありがとう前後左右におじぎする

 

 

「三婆パートⅠ」            奥宮  恒代

目いっぱいレース結果に泣き笑い         森 町

ヒット作できない惨めこぼし合う

お互いに謙遜しては意地みせる

昼定で三婆ねばり腰をみせ

 

 

「三婆パートⅡ」            小林 ふく子

三婆へ五七五の花が咲く             袋 井

三婆へ切磋琢磨のゆずり合い

三婆へ少し違和感持つ呼び名

本当はね三人娘なんですの

 

 

「ワープロ」              鈴木 千代見

挨拶文パズルのように組立てる          浜 松

変換キー軽いタッチで転がせる

保存キー忘れて白になる頭

塗り潰し小さな穴から漏れて闇

 

 

「雑  吟」              村越  精也

倦きませぬ一期一会で妻と生き          静 岡

糖尿病せめて犬の名アンパンに

新組閣爆弾抱いて行く先は

遺言状ペンを持ったが遺産無し

 

 

「体 当 り」              大塚  徳子

ジョーカーをどこで出そうか腐れ縁         仙 台

うかつにも否定されてる日のショック

柵をバッサリ切って一人旅

いじめには屈せず攻める体当り

 

 

「雑  詠」              馬渕 よし子

黒髪が揺れてフェロモン撒き散らし         浜 松

名月を串刺しにして酔い潰れ

落ち葉踏む骨の砕ける音たてて

顔色を変えて誰かを庇い出し

 

 

「平和活動」              中矢  長仁

辻褄は合わぬが深くとがめない          松 山

ヘソクリは知っても知らぬ振りをする

美味しいと妻のレシピは褒めておく

偶にはね僕のお金で妻の服

 

 

「笑  う」              酒井  可福

眉しかめ明日の笑いを考える           北九州

尖閣は日本笑っていられない

いい人だ笑える話持ってくる

大声で笑うと運が味方する

 

 

「自 由 吟」              濱山  哲也

オタクにも博士論文書かせたい          つがる

総会が荒れて小上がり盛り上がる

肥満児の背中をポンとたたく癖

「頑張るは犬でも言う」と言う上司

 

 

「自 由 吟」              菅原  花子

寒くなり夏の暑さが嘘のよう           盛 岡

庭の木もプロの剪定待っている

パソコンも数年たつと追いつけず

テレビよりラジオの音が心地良い

 

 

「ありがちな割」            斉尾 くにこ

触れたなら泣きだしそうで抱きしめる        鳥 取

うっかりとひとりひんやり自由席

少しでも命ある間の恩送り

ありがちな割も食っては生きのびる

 

 

「  扇  」              薗田  獏沓

扇子よりうちわが似合う老夫婦         川根本町

お揃いの扇子行き交う晴舞台

扇子より自然の風が心地良い

日の丸の扇かざして応援団

 

 

「冗句その六」―思いやり―         西垣  博司

逆走をせぬよう妻が念を押す               静 岡

共白髪互いにボケを探り合い

待ち合わせAEDのある店で

老いらくの恋は寿命とにらめっこ

 

 

「甲斐の旅」                  成島  静枝

ホウトウが苦手なんです甲斐の旅          千 葉

昇仙峡行きはジョークの下り坂

さざれ石国歌に想い深くなる

参拝は七五三の児待ってやり

 

 

「  誰  」                  川口   亘

遠耳に秋の気配は肌で知り            藤 枝

虫の声鳴いて秋よは他人の声

雰囲気で秋の気配を知る今宵

秋に迄とりのこされたか気配薄

 

「自 由 吟」                        川口 のぶ子

朝夕にひやり感じる秋の風             藤 枝

新東名山また山を重ねみる

彼岸花彼岸がすぎて今盛り

剪定に終日過ごす老二人

 

 

「自 由 吟」             滝田  玲子

目薬をさしてスカッとする頭              浜 松

断捨離が出来ず未練に迷わされ

程々に混んで安心する病院

家計簿が今月も足出して泣く

 

 

「日  々」             安田  豊子

遠い日の靴一足が捨て切れず              浜 松

あばら家も鍵が気になる健忘症

内緒事うっかり喋った日が怖い

生きていく自信がほしい老いの日々

 

 

「台  風」             畔柳  晴康

嵐の夜有難さ知る信号機            浜 松

潮風が緑を誇る樹を痛め

新鮮な野菜果物風に負け

嵐去り片付け亭主疲れ果て

 

 

「戯  言」             鈴木 まつ子

浮かれると寝言にまでも口走る          島 田

寝言から夫まんまと引っかかり

本筋がずれて掴めるものがない

聞きたくもない戯言の小半時

 

 

「雑  詠」             飯塚 すみと

安物のアイスでその場笑い合う              静 岡

まあクジが外れて行って当り前

雨降らぬ水がめ思い水を撒く

乱れ行く走りは見ない休み人

 

 

「  月  」             山田  浩則

十五夜の月見団子を食うウサギ         島 田

名月が雲の中へとかくれんぼ

秋雨に雲の向こうのおぼろ月

お月見の席にはお酒秋の月

 

 

「秋だなぁ」             恩田 たかし

これでもか行事重なる幼稚園           静 岡

運動会上下違う幼稚園

ぶらり旅たった十分散歩道

手の匂いおやじの香り思い出す

 

 

「娘が寝るまで」           森 だがやん

絵本読み 娘寝付かず大仕事            島 田

読みながら先に寝付いて怒られる

「パパ起きて」腹に跳び乗る愛娘

「寝る時はママと変わってパパじゃ駄目」

 

 

「イチロー」              尾崎  好子

イチローに同期のような懐かしさ         藤 枝

野球道一から十を磨き上げ

イチローの凄さ目をむき舌を巻く

孤高では有ってもチームの輪に和む

 

 

「闊  歩」              永田 のぶ男

旧友と軍歌をうたい腰伸ばす           静 岡

友見舞う一緒に飲めぬ寂しさよ

仏様すべて知ってるあいうえお

平凡で退職晩秋を闊歩する

 

 

「晩  秋」                   石上  俊枝

新そばの香りと腰が秋を連れ           静 岡

抜けるような空に木守り柿ひとつ

ダイエットどこに新米てんこ盛り

七輪でジュウジュウさんま旨かった

 

 

「秋 の 俺」                    稲森 ユタカ

秋が来て俺の走りが加速する                 静 岡

食欲に痩せたい思い打ち消され

衣替えずっと出来ないこのお腹

涼しげな風がすうっと通りすぎ

 

 

「発  見」              林  二三子

欲のない子らが色々よく見つけ          富士宮

子らの良さ見つけ教師が子を伸ばす

初めての子育て発見ばかりの日

孫の守り日に日に発見が増える

 

 

「い じ め」              増田  信一

いじめても何も感じぬ我亭主                焼 津

仲裁のガキ大将が今いない

ネットでも国でもいじめ止まらない

動物に当たるいじめは闇の中

 

 

「  旅  」              中野 三根子

たまにする妹と旅虫の声             静 岡

鈴虫と説法をきく京の寺

コスモスが電車の窓に流れてく

秋さがし嵯峨野の竹は風に揺れ

 

 

「  秋  」                     森下 居久美

夕焼けの空が優しい色になる           掛 川

赤トンボお腹空くから帰りましょ

チンチロリンつるべ落としの日が暮れる

鬼皮と格闘しました栗ご飯

 

 

「充  実」              勝又  恭子

朝日から受け取る今日のエネルギー        三 島

世界中旅するように開く地図

十二色絵の具じゃ足りぬ今日の色

ダイアリー今日も書きたいことがある

 

 

「匂いー後篇―」            谷口 さとみ

「ただいま」であなたの今日を嗅ぎ当てる          伊 豆

微笑むとほんのり甘い風が吹く

顔見えぬ電話の声は匂いつき

待ってたとメモの代わりに置く檸檬

 

 

「自 由 吟」              真理  猫子

曇天の名古屋 えび天丼の味            岡 崎

今年こそ師走からでもダイエット

懐が寒いじゃないですか 秋

私には明日の風が吹いている

 

 

「自 由 吟」                    荒牧 やむ茶

父さんの落語に舟を漕ぐ家族           小 山

食べ歩き舌で覚える食文化

慣習を盾に気づけば頑固者

トラトラトラ匍匐前進する野心

 

 

「と・言うは」             石田  竹水

正論に塗り替えられる多数決           静 岡

好き嫌い日替りグルメ召し上がれ

ライバルのお蔭で目標クリアする

一円貨たかがと言うは愚か者

 

 

「いいじゃないの」           渥美 さと子

いいじゃない一寸遅刻も早退も               静 岡

いいじゃない雑草真似て生きて来た

いいじゃないコンパス四角描いたって

いいじゃない積木は一つずつ積めば

 

 

「自 由 吟」              中田   尚

いつの日か土にお返しする身体          浜 松

細胞を研究しても金が要る

研究もクソボウズにも金が要る

次世代はロボット人間ばかりなり

 

 

「残 る 泥」                     池田  茂瑠

身の隅に拭い切れない泥残る           静 岡

盃を伏せて知性を組み直す

水飲んでいても花にはなれません

背水の陣に女将の知恵を足す

 

 

「  家  」              多田  幹江

新居訪問さてどの辺をくすぐるか         静 岡

寄りつかぬ子供の部屋も風を入れ

貰い手のない老人とあばら家と

別姓の家どことなく跳んでいる

 

 

「娑婆の灯」              長澤 アキラ

自首をして有期刑をば軽くする               静 岡

自発呼吸止めてあの世を覗き見る

トンネルの出口見詰めているベッド

失敗を「ん」の手前で気が付いた

 

 

「ブルーシャトー」           松田  夕介

上品な嘘で酔わせる赤ワイン           静 岡

お気楽に三日月湖から野次が飛び

飲めなけりゃロマネコンティもただの瓶

地底湖の魚になれず生きている

 

 

「女いろいろ」                    川村  洋未

金稼ぐ女 手酌で酒を飲む             静 岡

背の高い女がさがす台所

目の丸い女も嘘を吐いて行く

色黒の女 鏡を伏せて立つ

 

 

「雑  詠」               薮﨑 千恵子

うっかりの口約束が揉めている          焼 津

いつからか日課になっている昼寝

脱線が好きで話が終らない

寝そびれてあれやこれやと先案じ

 

 

「隣は何をする人ぞ」          望月   弘

蟷螂のオスであっても厭わない          静 岡

騙されるならば狸のあたたかさ

英雄になるには色の欲がない

居酒屋で体内時計整備する

 

 

「秋  憂」              加藤   鰹

待ちすぎて萎れた秋の夜の葡萄          静 岡

晩秋のパズル一つが埋まらずに

コスモスも僕も陽気な振りをして

萩の花ぽろぽろ涅槃へと続く

 

 

顧  問  吟

「俺 の 街」                 高瀬  輝男

用のない街だがフッと出たくなる          焼 津

他人顔した街だカーナビ正気かえ

俺の住む街だぞ元気足りないぞ

夕陽に燃える ああ美しい俺の街