先日スーパーのフルーツ売り場での出来事。年配女性二人のとても素晴らしい会話が私の耳にとび込んで来ました。
「リンゴこんなに種類があって山積みじゃあ、どれがおいしいのか分からないねえ。」
「ほんとね、でもじっとよく見ていると、リンゴがこっちを見て、わたし甘くておいしいよ~、買っていってね~ってほほえむのよ。」
「ほんとだー、ニコニコして言っているね。じゃ私この娘にするわ。」
「私はこの娘とあの娘にするわ。」
―と二人は楽しそうに嬉しそうに、大事にやさしくカゴに入れていました。
このお二人は、さぞかし知識豊富でよい人柄の持ち主に違いない、一体どういう方かしらと気になり、思わず声を掛けてしまいました。
「お二人の会話を聞いてしまってごめんなさい、リンゴへの気持ちが感性深く、情緒も豊かですね。何か文学的な仕事か趣味などやっておられますか」と。
すると、「昔は長いこと川柳をやっていたけれど、今は短歌をやっているのよ。」
声を合せてちょっと残念だけど嬉しい返事が来ました。
しかし、昔川柳をやっていたからこそ、今の素晴らしい感性と情緒が備わったに違いないとすぐに直感しました。
そういう事を少しでも感じ取ることが出来た私は、やはりこれも川柳から教えられ学ばせて頂いた心そのものだと思います。
五七五の文字に心の全てを写し出す川柳は本当に素晴らしい、私を川柳へと導いて下さった方にも感謝しています。
私はこの頃になって、少し川柳の心のゆとりが出来て、他柳誌を拝読したり、
他句会へもお邪魔する機会を持てるようになり、お目にかかる先生方、先輩の皆様とお話をして、いろいろなお知恵を教えて頂いて本当にありがたく思っています。
自分の指が五七五を折る事が続けられる限り、川柳を楽しめるように心掛けてまいりたいと思う今日この頃です。
2012年12月号