「 雲 」 増田 信一
ゆったりと身を委ねたい秋の空 焼 津
鰯雲一緒にふわり泳ぐ夢
曇り空けれど心は日本晴れ
きんと雲乗せて泳がす家の妻
「自 由 吟」 菅原 花子
とらわれず生きて行くのがおもしろい 盛 岡
風呂そうじ湯垢がとれて気が晴れる
マッサージ心の凝りもとれたかな
寄せ鍋で心身ともに温まる
「あ~年の暮」 小林 ふく子
もみじひと葉詩人にさせて歩く古都 袋 井
落葉掃き風とケンカをしてしまう
着膨れて老いの重さを感じてる
サンタにもきっと不況はあるだろう
「 旅 」 石上 俊枝
人の波列車にみんな吸い込まれ 静 岡
駅弁が地方の顔でお出迎え
車窓田に藁の兵隊お出迎え
金色に極楽菩薩手を合わす
「お金 2」 松橋 帆波
金のことにて 友情もこれまでか 東 京
要領の良い金 残るものでなし
借財を知らずジングルベル響く
捨印を捺す時ゾッとする背中
「有りがたい」 岡村 廣司
有りがたい電気も瓦斯も水も出る 焼 津
有りがたい助言多過ぎ悩んでる
有りがた味感じられない利率だな
有りがたい弔辞だけれど長過ぎだ
「年功序列」 中矢 長仁
頑張らず年功だけで係長 松 山
五時からはみんな元気に梯子酒
千鳥足我が家の道は忘れない
現役の思い出ミスの事ばかり
「エコノミー」 新貝 里々子
ビジネスの旅を夢見るエコノミー 袋 井
三食をきっちり食べて何もせず
紆余曲折 更地になった人生譜
ありがたくあなたの愛に酔いましょう
「自 由 吟」 戸田 美佐緒
ジョークよと簡単に言うふくらはぎ さいたま
青汁を飲みライバルの半歩さき
サヨナラがぎっくり腰で決まらない
ひとふりの塩で男を整える
「見えないものへ」 栃尾 奏子
ほどけないままに今日まで来たご縁 大 阪
風と手をつなぎ明日へジャンプする
気が付けば神の絵筆のままに秋
故郷に抱きしめられて深呼吸
「十 二 月」 提坂 まさえ
リセットをしよう一人のイヴだもの 静 岡
仏壇もジングルベルは聞きたがり
信じる子そうでない子もサンタ来る
ドングリもどじょうも山に帰るべし
「喜怒哀楽」 増田 久子
若返ることもなかったコラーゲン 焼 津
クラス会過去の美少女今も美女
禁煙の上に禁酒もさせる医者
五百円拾った道をまた通る
「年 の 暮」 川村 美智代
カレンダー取り戻したい月日あり 静 岡
仏滅は何処へも行かず寝て暮らす
プレゼント百貨店からニセサンタ
犬用ケーキ犬も俄かにクリスチャン
「 秋 」 安田 豊子
もう仮面捨てよと秋の空が言う 浜 松
素直になってノスタルジーになる旅路
有りのままの女に戻る長い夜
本能とは哀れ切ない夢を見る
「十 二 月」 野中 とし子
カレンダー塗りつぶし待つお正月 静 岡
日めくりが風邪引きそうな十二月
クリスマス キリスト様は蚊帳の外
クリスマス汗だくだくのサンタさん
「愁 い」 奥宮 恒代
あの時の釘一本を悔いている 森 町
ニュートンのりんごになった女へん
何もかもおまかせします塩麹
こんな時ぼた餅落ちてきて欲しい
「自 由 吟」 南 天子
秋の夜虫の鳴く声風雅なり 焼 津
風評は全くすべて気にしない
木捻子でゆるんだ心固くしめ
肩書きを全部消したら丸くなり
「世 間」 石田 竹水
本望と思う天辺に残る柿 静 岡
横槍に突かれる程の知識持つ
干し柿も父母も世間の風を知る
仕合せを食べ過ぎている肥満体
「晴れた日」 飯塚 すみと
父親のカレーを褒める里帰り 静 岡
子のために干したる毛布損はなし
リニューアルホテルボーイに自信あり
余りにも快晴すぎてやる気出ず
「初 雪」 真田 義子
手の平で初雪そっと受け止める 仙 台
ぼんやりと見ている過去の冬景色
言い出せぬ言葉ゆっくり咀嚼する
初雪に重ね見ている我が恋よ
「小市民的家電」 毛利 由美
地味にいい仕事するサーキュレーター つくば
ウィンドウズセブンに慣れたころエイト
詰め替えのインクの海にたそがれる
加湿器のおかげでカビが生えた部屋
「自 由 吟」 恩田 たかし
幼稚園力仕事の声掛かる 静 岡
治ったと思うと違う子に風邪が
ラジオからイベント情報血が騒ぐ
何食べ2更に料理の腕磨く
「浮 く」 酒井 可福
競泳の水着で独り浮いている 北九州
ボウフラの如く浮世に浮いている
軽石の潜るつもりのダイビング
定年後頑固親父が浮いている
「雑 詠」 馬渕 よし子
ずり落ちた眼鏡何かに怯えてる 浜 松
ケータイの電源切って持ち歩く
本音書く時に鉛筆芯が折れ
いつの間に妻へ依存で生きている
「自 由 吟」 竹内 みどり
幼子の笑顔あふれる披露宴 さいたま
秩父路でいい旅できたループ橋
楽をしてお腹の脂肪落としたい
日替わりで大臣変えてみませんか
「人間のノブ」 斉尾 くにこ
屍は白けた窓の夜光虫 鳥 取
謎解きのノブを探せば無表情
今日は寝るあした魔法をかけなおす
哀しみは磨き真珠にしてしまう
「 出 」 森 だがやん
隠れ待つ出の合図なく井戸の中 島 田
早く出てトイレに並ぶ大家族
嫁からの電話出るから静かにね
出張の嘘すぐバレる顔に出る
「計 測」 濱山 哲也
講演の中身を測るのは欠伸 つがる
ワイドショー陳謝に分度器をあてる
計測不能わたしのバカさ加減
ふるさとに警笛を吹く赤とんぼ
「きょうだい」 藤田 武人
弟がすらすら九九を歌い出す 大 阪
うりふたつ隠れた爪を磨く姉
ままごとのパパが弟ママは姉
さあいくで兄が速球投げてくる
「雑 詠」 成島 静枝
新築の槌音が止みティータイム 千 葉
短冊の下手な字が好い文化祭
この平和無くしたくない文化の日
早起きの人と行き会うゴミ置き場
「自 由 吟」 鹿野 太郎
段々と妻の口数減る鏡 仙 台
大根がほどよい鍋の司令塔
米軍を敵に味方に風のまま
俺だって酒と距離置く時もある
「初 投 句」 木村 けん
富士山を慌てて掃除世界遺産 東 京
富士山が見えた日そっとほくそ笑む
フラれても誘われたならいそいそと
いそいそと家族サービス点稼ぎ
「自 由 句」 山田 浩則
たんぽぽが春と間違え咲いている 島 田
おばちゃんもAKBの着うたで
年賀状やはり今年も版画刷り
じいちゃんもスマートフォンが欲しくなる
「三婆パートⅢ」 鈴木 千代見
三婆が寄るといい知恵湧いてくる 浜 松
川柳の話になると帰れない
三婆の机並べた時もある
三婆は初心に返る心持つ
「刈 る」 薗田 獏沓
後継ぎがない新品の稲刈り機 川根本町
都会から助っ人が来て棚田刈る
農政はどうなっている青田刈り
刈り終えた農夫の顔の笑い皺
「菩提寺落慶式」 井口 薫
合掌へ散華ひとひら舞い降りる 袋 井
唐招提寺の鴟尾に負けない今日の鴟尾
若き僧うなじに俗世絶った痕
合掌を重ねて無垢の人となり
「紅 葉」 滝田 玲子
清水の舞台華やぐ紅葉燃え 浜 松
顔見せの看板前に舞う落ち葉
南禅寺紅葉たずねる人を待つ
染めかえてすっかり酔っている楓
「年 末」 野中 雅生
カレンダー見るたび違う四季浮かぶ 静 岡
カレンダー来るたび過ぎし日が浮かぶ
クリスマスサンタになった怖い父
クリスマス皆で祝おう教会で
「冗句―その七―」 西垣 博司
赴任地へ矢鱈明るい妻のTEL 静 岡
運転はしない女房が指図する
母に似た顔へと皺に招かれる
雨降りは衣もすがら哭く破れ樋
「雑 詠」 内山 敏子
長電話ばかには出来ぬ通信費 浜 松
さらさらと書くペン先の良い便り
へそ天もたまにはいいね青畳
もう一軒財布の余裕聞いてみる
「雑 詠」 川口 のぶ子
秋の陽のつるべ落しに感じ居る 藤 枝
色づいた秋の風情の心地好く
誕生日祝ってくれたカーディガン
暖かな気持ち嬉しくありがとう
「妻 と 俺」 村越 精也
美人画展落差大だが妻愛し 静 岡
妻帰る姿勢を正す俺の癖
この頃は妻に話せぬ夢を見る
階下から妻の哄笑我至福
「同 窓 会」 鈴木 恵美子
くん、ちゃんと呼んで傘寿の同窓会 静 岡
黙祷に亡友の笑顔が偲び寄る
戦時中幼いいのち助け合い
我慢する強い力を授けられ
「自 由 吟」 鈴木 まつ子
ほろほろと溶けて口元グルメ旅 島 田
欲しいもの見たさ思わず喉が鳴り
くつろげる席へいつものコップ酒
居心地がいいと決心つけかねる
「高 齢」 畔柳 晴康
抱いた夢未だ半ばで八十を過ぎ 浜 松
白寿まで願いと欲を離さない
涙腺も高齢化して脆くなり
敬老会お祝お礼交換す
「とどのつまり」 川口 亘
思い付きだけで通れぬ世を憂い 藤 枝
勿論の持論も総べて底をつき
まだ其処に見られる迄の身繕い
いやはやととんだ処の目盛り付け
「粉 雪」 稲森 ユタカ
粉雪にのせた想いが君に降る 静 岡
雪の道足跡残し待つあなた
抱き合った二人の元へ春が来る
粉雪に隠れて消えた想い達
「自 由 吟」 谷口 さとみ
飲みやすいメロンソーダの頼りなさ 伊 豆
立ち読みをして振り返る待ちぼうけ
来る来ない 来てと引っ張る菊人形
意地っ張りゴメンを鍋に言わせてる
「訪 れ る」 中野 三根子
ゆっくりとゆっくりと来るしわとしみ 静 岡
少しずつ秋の訪れ枯葉舞う
突然になつかしい人訪れる
サプライズ花束かかえ彼が来る
「青天の霹靂」 森下 居久美
青天の霹靂元気印が救急車 掛 川
ケータイがあるのに家族捕まらず
もう二度と勘弁してねカテーテル
もう少し生き続けたいから禁酒
「宝 籤」 尾崎 好子
買わないと当たらないのが宝くじ 藤 枝
豚の息バラ三枚へでかい夢
宝くじ買う度たんび夢も変え
景品で貰ったくじが耳のおく
「 講 」 多田 幹江
講釈を言わない回り寿司のトロ 静 岡
無尽講運のいい子を連れてゆく
若さ売る寿大の講師たち
非常勤講師の背はやや丸い
「次 の 次」 永田 のぶ男
呼び声が地獄からだよ目が醒める 静 岡
聴診器下着に当てて目を瞑る
開業医時間外には救急車
お命が二つあること祈ります
「迂 回」 薮﨑 千恵子
矢印が罠とは知らず迂回する 焼 津
遠回りしてから気づく親の愛
遠回り見詰め直している世間
一つずつ知識が増える回り道
「自 由 吟」 中田 尚
人情も漬物石も吹き飛ばす 浜 松
くちびるをじっと見つめて手話を読む
全身を畳で癒す里帰り
田舎の子百円玉を握りしめ
「スイーツ」 佐野 由利子
だとしても合点がいかぬあの態度 静 岡
頼りない男が食べるトコロテン
スイーツが癒してくれる涙粒
青い空忘れてしまう世の騒ぎ
「自 由 吟」 林 二三子
よく見えるメガネ裏まで見てしまう 富士宮
正義感貫き空も澄んでいる
真に受けた話とんでもない事実
聴診器心の叫び聞こえない
「腹減った」 松田 夕介
昆布かな梅かな今日も運だめし 静 岡
スキヤキが待つ我が家へと跳ねるクツ
冷や奴得意料理といわないで
鋼鉄の胃袋を持つ味音痴
「日 常」 真理 猫子
デジタルの時計で今日も遅刻する 岡 崎
乾かない洗濯物に土下座して
富士山の向こうへちょっと行ってくる
怪獣も同じ三途の河わたる
「自 由 吟」 荒牧 やむ茶
微笑みを老後に備え貯金する 小 山
贖罪を流すと詰まるウォシュレット
電器屋の新種のリンゴ大人気
丈比べ少し背伸びをしたくなる
「演 技」 長澤 アキラ
生きるとは難儀朝からゴマをする 静 岡
風雪がしなやかにする振るしっぽ
迫真の演技が元に戻らない
おまわりが車の窓を叩いてる
「未熟な恋」 池田 茂瑠
青い絵を飾り熟れない恋を抱く 静 岡
諦めることも処世の術に入れ
仮面付け変えるトンネル出るまでに
赤い毬弾む危ない方向へ
「カ ー ド」 川村 洋未
カード買い大人買いとは限らない 静 岡
ポイントがたまるカードは忘れない
切り札は出したくないが持ち歩く
自慢する診察券の枚数を
「庭 仕 事」 勝又 恭子
春菊も一役買っている花壇 三 島
庭先で採れた胡瓜のいいカーブ
色見本みたいに植えるチューリップ
満開の春を描いて庭仕事
「覗くな!」 望月 弘
風評がボクの処で葬られ 静 岡
覗くなと妻は只今パック中
波風があって夫婦は面白い
正直な体重計に世辞がない
「まつりごと」 加藤 鰹
ママの元もうお帰りよ鳩ポッポ 静 岡
では自民かと問われればそれもヤダ
国民が第一と言うぬらりひょん
落ちそうな首を集めて維新だと
顧 問 吟
「 無 」 高瀬 輝男
出来たての噂が流れ着きました 焼 津
方舟へ時節外れの夢を積み
イニシャルが忘れさせない一つの名
アルバムの一枚ごとにある花火