平成二十四年度 たかね川柳会年間賞受賞作品
正 賞
反論の隙間を少し空けておく 増田 信一
準 賞
待ちぼうけでも幸せな白い息 松田 夕介
金と書くぼくの哀しい試し書き 濱山 哲也
背伸びして生きているからよく転ぶ 荒牧やむ茶
二人きりノンフィクションで暮れていく 望月 弘
平成二十四年度 年間賞選者プロフィール
千島 鉄男(ちしま てつお)
弘前川柳社主幹、青森川柳社所属
昭和44年川柳と出会う。著書「葡萄一
粒が転がっている僕の夕暮れ」
熊谷 岳朗(くまがい がくろう)
いわて紫波川柳社主幹
岩手県川柳連盟副理事長
句集「風はうたう」「川柳作家全集」
齊藤由紀子(さいとう ゆきこ)
川柳研究社幹事
NHK学園川柳講座講師
句集「川柳作家全集、齊藤由紀子」
中沢久仁夫(なかざわ くにお)
山梨県川柳協会会長
川柳「轍」主宰
句集「桜守」「川柳作家全集」
真島久美子(ましま くみこ)
番傘本社同人、佐賀番傘所属
川柳葦群同人、川柳会のアイドル
生年月日、3サイズはヒ・ミ・ツ❤
松代 天鬼(まつしろ てんき)
名古屋川柳社会長
渡邉蓮夫氏に師事(川上三太郎孫弟子)
句集「川柳作家全集、松代天鬼」
吉道航太郎(よしみち こうたろう)
無所属
番傘川柳本社同人を経て、現在無所属
妻あかねとの二人句集「すぷりんぐ」
小島 蘭幸(こじま らんこう)
川柳塔社主幹、全日本川柳協会理事
広島県川柳協会会長、竹原川柳会会長
1977年句集「再会」
弘前川柳社主幹 青森県 千島 鉄男 選
特 選
金と書くぼくの哀しい試し書き 濱山 哲也
佳 作
巣立ち後の部屋が更地になっている 毛利 由美
二人きりノンフィクションで暮れていく 望月 弘
ゆっくりと満ち潮を聞く誕生日 真田 義子
洗っても拭いても白に戻れない 望月 弘
▽雪景色を見ながらの選句はとっても温かい気持ちになれるね。
いわて紫波川柳社主幹 岩手県 熊谷 岳朗 選
特 選
洗っても拭いても白に戻れない 望月 弘
佳 作
ゆっくりと等身大を受け入れる 栃尾 奏子
旅に出て空一枚を持ち帰る 真田 義子
仮設住宅建つ公園も花吹雪 高橋 繭子
金と書くぼくの哀しい試し書き 濱山 哲也
▽人間に深く触れてくる句、そして私の人生に入り込んでくる句
いろいろ考えさせられました。感謝。
川柳研究社幹事 東京都 齊藤由紀子 選
特 選
背伸びして生きているからよく転ぶ 荒牧やむ茶
佳 作
春キャベツザクザク美女になるつもり 新貝里々子
良い祖母になるには金が要りまする 薮﨑千恵子
金と書くぼくの哀しい試し書き 濱山 哲也
長化粧不徳の致すところです 佐野由利子
▽一次選を通った句だけあって、どの句もわかるわかると納得させられました。ユーモアのある楽しい句を選びましたが、よい句が多く悩みました。
山梨県川柳協会会長 山梨県 中沢久仁夫 選
特 選
待ちぼうけでも幸せな白い息 松田 夕介
佳 作
春キャベツザクザク美女になるつもり 新貝里々子
反論の隙間を少し空けておく 増田 信一
アミダクジ進んだ先に要介護 森下居久美
子どもとの約束だから命がけ 濱山 哲也
▽特選・白い息にみる無償の愛、待ちぼうけはアドバンテージになる。秀1・ザクザクの山盛り感にそそられる。秀2・「少し」が効いている。秀3・当たり外れも苦の娑婆。秀4・親抜きで政府と子どもの約束の句と読めば力がある。
番 傘 本 社 同 人 佐賀県 真島久美子 選
特 選
ただ今と言えるところをここにする 永田のぶ男
佳 作
ゆっくりと等身大を受け入れる 栃尾 奏子
天婦羅にしてあげましょう春の風 谷口さとみ
この笑顔あなたに見せるつもりです 中野三根子
二人きりノンフィクションで暮れていく 望月 弘
▽迷わずに決まりました。七十二句読んでいてとても気持ちの良いものばかりでした。楽しかったです。ありがとうございました。
名古屋川柳社会長 愛知県 松代 天鬼 選
特 選
女房も月も喋らぬ長い夜 渥美さと子
佳 作
口下手の愛は豊かであたたかい 井口 薫
二人きりノンフィクションで暮れていく 望月 弘
反論の隙間を少し空けておく 増田 信一
背延びして生きているからよく転ぶ 荒牧やむ茶
▽秀句に近い句として「聞くだけは(野次馬)」「子どもとの(哲也)」「駄洒落でも(亘)」「待ちぼうけ(夕介)」がある。特選句は、夫婦だけの暮らしの中で、おだやかな時間が流れてゆく。寡黙であるが風流人らしい作品である。
無 所 属 大阪府 吉道航太郎 選
特 選
句読点外せば飛べる明日がある 山本野次馬
佳 作
その嘘に微笑みひとつ返します 斉尾くにこ
反論の隙間を少し空けておく 増田 信一
聞くだけは聞いて一本釘を打つ 山本野次馬
背伸びして生きているからよく転ぶ 荒牧やむ茶
▽定型で一読明快の作品が多くて、楽しく鑑賞させていただきました。
川 柳 塔 社 主 幹 広島県 小島 蘭幸 選
特 選
待ちぼうけでも幸せな白い息 松田 夕介
佳 作
仮設住宅建つ公園も花吹雪 高橋 繭子
先に逝ったのはくたくたのスニーカー 多田 幹江
巣立ち後の部屋が更地になっている 毛利 由美
反論の隙間を少し空けておく 増田 信一
▽特選句は、ほのぼのとした情景が目に見えるようだ。信じることの美しさが白い息からひしひしと伝わってくるではないか。