「お 正 月」 増田 信一
巳の年はのたりのたりとやり過す 焼 津
お正月飲んで食べてはまた太り
年をとることがめでたい年になり
巳の年はとぐろを巻いて立て籠もる
「P・S・」 松田 夕介
追伸と書いて迷子になった筆 静 岡
ぐうたらとコタツのスイッチは一つ
デジャヴみているよう二日酔いの朝
さようならムーンウォークで年が行く
「とりあえず、おめでとう」 濱山 哲也
初詣「冗談よせ」と神が言う つがる
新年の抱負ことしで七回目
元気よく悪魔も抱負語ってる
仕事始めと言ってたむろをする役所
「初 春」 荒牧 やむ茶
厄年をご破算にする除夜の鐘 小 山
ポチ袋出世払いのメモを入れ
よーいドン ハッピーエンドまで走る
冬桜戸惑いながら咲き乱れ
「巳 年」 毛利 由美
年越しを無事出来そうで賀状買う つくば
クリスマス ホールケーキがよく似合う
受験生いますスタッドレスタイヤ
お正月くらい経済回そうよ
「自 由 吟」 酒井 可福
夢に見たジャンボのくじも夢の中 北九州
ボーナスが薄くて酒も苦くなり
ただチョンと押せば写ると言われても
嬉しくも寂しくもあり娘が嫁ぐ
「初 春」 井口 薫
お正月どこを開けても福の顔 袋 井
極楽へセットしました春のナビ
スイッチの点検をして春に向く
一つ覚えて二つ忘れて春うらら
「新 生」 新貝 里々子
議事堂に虚しく響くバンザイだ 袋 井
トライアングル破調がどこかずれている
百人の友達まではあと少し
迷路から抜け出すための自由形
「年 の 暮」 岡村 廣司
突然に来た訳でなし年の暮 焼 津
無職には師走の風が身に応え
何もかもご破算したい年の暮
善人も悪人も聞く除夜の鐘
「押 す」 増田 久子
店が混むのに一人ずつ押すカート 焼 津
電子辞書ページ繰るより楽なキー
押す引くと書いてほしいにPULL Push
車椅子ぼくを忘れた母を押す
「雑 詠」 飯塚 すみと
スーパーにパンを忘れる丸い月 静 岡
金木犀来季も来てと香を残し
大道芸アホウのこころ皆空へ
好い人か何か協力したい顔
「あいうえお」 鈴木 千代見
赤ちゃんの囲む笑顔のあいうえお 浜 松
さしすせそ組立て上手母の味
おばさんの笑う唇はひふへほ
木洩れ日の光らんらららりるれろ
「おめでとう」 小林 ふく子
新年へ暮す構えの箸二膳 袋 井
新しい酸素を吸って見る初日
賀状来て絆の深さ確かめる
ライバルの絵馬より目立つよう吊るす
「自 由 吟」 宮浦 勝登志
達成の丸一つない月こよみ 静 岡
パソコンの誤認逮捕に身が震え
政治家が政治忘れたカナリヤに
節約とけちでもめてる妻と嫁
「クリスマス・イヴ」 安藤 千鶴子
サンタさん財布の中に雪が降る 静 岡
イヴの曲流れ初恋思い出す
メタボでもケーキ鶏肉フリーパス
幸来たれ全身蛇を纏います
「冬 景 色」 石上 俊枝
寒さきて野菜の旨さ冬景色 静 岡
義理と笑み宅配便で届く暮れ
電気料気になる冬がなお寒い
鍋物で財布の口を締める月
「も し も」 栃尾 奏子
もしもから始まる夢のストーリー 大 阪
かぐや姫来ないかなあと月見酒
もしもなど持たない彼の堅実さ
ドラえもんねえあんな夢こんな夢
「酸 欠」 真田 義子
酸欠になってしまった十二月 仙 台
つい背伸びする癖があるハイヒール
神様になかなか祈り届かない
優しさがおでんの味に染みている
「自 由 吟」 戸田 美佐緒
饒舌な夜が男を振り回す さいたま
カマキリが次の男を吟味する
肩書きを竹光にする女癖
再生の尻尾を売って生きのびる
「カレンダー」 提坂 まさえ
書き込みのあるカレンダー捨てがたく 静 岡
薄くなったね髪ではなくてカレンダー
来年は嫁けと巳年のカレンダー
信号機節電中の我が海馬
「 男 」 松橋 帆波
パート先気が効く男ばかりいる 東 京
謎かけの答えがずれている男
どこをどう切っても同じ男たち
嫉妬する男 退場願おうか
「増 え る」 薗田 獏沓
晩学の書棚に増える雑学書 川根本町
笑い皺増えて幸せかも知れぬ
診察券増えて病院ハシゴする
道草を食った分だけ友が増え
「年 の 暮」 鈴木 恵美子
少子国過保護の中で聞く悲鳴 静 岡
乱立の政党迷う小市民
旧友に息吹きかけて書く賀状
六億の夢のカケラに手を伸ばす
「時 間」 安田 豊子
残り火が時どき揺れるひとりなり 浜 松
酔う程に胸の時計が空回る
過去の絵が様ざま走る万華鏡
駆けてきた若さ恋しいファインダー
「アーメン」 萩原 まさ子
今年またシングルベルのパラサイト 静 岡
坊さんもチキンを食べてついアーメン
イエス様皆でハッピーバースデー
ヘビ革にしたがちっとも貯まらない
「自 由 吟」 竹内 みどり
つつがなく歳を重ねて冬の夜 さいたま
足腰をくねくねさせてダイエット
子育ては蒔いたとおりに芽が出ない
やせたいと悩んでみたが効果なし
「自 由 吟」 滝田 玲子
園児の笑顔ゆれるコスモス青い空 浜 松
ここだけの話ここだけでは済まぬ
百均で夢中になって買った無駄
真っ先に財布が痩せるメタボ腹
「たからくじ」 中矢 長仁
宝くじにわか長者の夢を買う 松 山
幸運の女神微笑む宝くじ
売り場嬢当たりますようお呪い
任せろと当たった時の使い道
「一 家」 鹿野 太郎
会いたくない人を感じる曲がり角 仙 台
転職の前によく来た子のメール
何かある青汁ぐっと飲む家内
永ちゃんのバラード聴いて針仕事
「年末年始」 藤田 武人
いつまでもアンパンマンのポチ袋 大 阪
角松の絵でも飾ろかワンルーム
今年こそ大吉願い籤を引く
派手衣装見れなくなった大晦日
「神 頼 み」 孝井 栞
今年こそ今年こそとて神頼み 富 山
神様の視力が弱る神頼み
母を看る幸せ子守唄の恩
大吉を掴む大きな柏手で
「2012年冬」 恩田 たかし
介福のテスト勉強ままならず 静 岡
この冬場イベント増えて手が足らず
大掃除職場でするが家はせず
寒い夜綺麗な夜空癒される
「自 由 吟」 森 だがやん
不景気の長いトンネル先見えず 島 田
我が息子夢はでっかく村の長
一服のつもりが長い休憩に
焦がしてるまた恋心背伸びして
「自 由 吟」 内山 敏子
子育てへ家族の絆つなぎ合う 浜 松
ピーポーへもしもがよぎる血の絆
みそ汁の湯気に安らぐ朝の靴
茶柱を信じたくじに背かれる
「自 由 吟」 野中 雅生
あのセガレ俺の人生メチャクチャに 静 岡
リュウマチにメチャ効く薬ないものか
カレンダー同じ数字が縦並び
カケッコでめちゃくちゃ遅いまたビリだ
「雑 詠」 川村 美智代
六月忌暦めくれず冬支度 静 岡
法要で経読むルビを追う必死
ああでもないこうでもないといじり過ぎ
3・11にっぽん中の度肝抜く
「雑 詠」 馬渕 よし子
枯れ葉散る日本の未来哀れんで 浜 松
耳鳴りか呪いか耳が騒がしい
一日を喜劇悲劇で締め括り
木枯らしが財布の中も吹き荒れる
「初 春」 畔柳 晴康
新しき年に感激八十余り 浜 松
初日の出ひとつ歳取り若返る
年金も削られ孫に強請られる
年賀状筆書きが減りちと寂し
「自 由 吟」 菅原 花子
年初め心新たに身がしまる 盛 岡
お日様に世界平和を祈願する
すっぴんで笑顔美人になりたいな
飼い猫は平穏無事に生きている
「自 由 吟」 成島 静枝
孤独死か蟷螂そっと撫でてやる 千 葉
終活は草の褥で安楽死
幸せになろう毎朝目が覚める
新年を寿ぐサバを読んだ歳
「よろよろ」 鈴木 まつ子
浮雲に乗った気分でよろめいた 島 田
鈍くなる脳の働き不安定
目も耳もズレが重なり呆気の森
顔役の顔もきかなくなった今
「満月の裏」 斉尾 くにこ
有頂天あしたになれば過去とする 鳥 取
考えに考えぬいた末タヌキ
夜更けてことことマウス散歩する
満月の反対側は人のもの
「 冬 」 山田 浩則
寒くなり春がまだかと待っている 島 田
新春と言うがホントはまだ寒い
ストーブの前が恋しい十二月
この寒さ何時まで続くのだろうか
「自 由 吟」 南 天子
反発をすれば自分が損をする 焼 津
争いは空気自身を冷やしてく
明るさがたった一つの長所かも
損得を考えないで歩いてる
「めちゃくちゃ」 野中 とし子
元旦に日めくり我先にめくり 藤 枝
孫娘めちゃくちゃ書きで得意顔
震災が日本中をめちゃくちゃに
あの人がめちゃくちゃにした我が心
「結 婚 式」 川口 のぶ子
花嫁の孫の姿についほろり 藤 枝
式場に新郎新婦厳かに
花嫁の衣裳華やか目をみはる
披露宴あつい拍手に盛り上がる
「無 題」 川口 亘
手のひらを飛び出せないでいる悟空 藤 枝
須弥山といえど心の積み重ね
拱いて手からこぼれた差違拾う
忙しさを寝て居て越せる自由知り
「 時 」 山本 野次馬
寝てる間に時の磁石が入れ替わる 函 南
朝風呂にふやけた肌の寝言聞く
師走から年明けまでのスリリング
瞬きの隙間に眠る活断層
「水 平 線」 永田 のぶ男
手と足の動く人生感謝する 静 岡
足腰がずれて歩行がままならず
人体の一部が杖でこの浮世
水平線追って追っても一直線
「生 き る」 石田 竹水
自惚れの杖一本を頼り切る 静 岡
強かに生きる昼寝のおお鼾
お祭りが無い日の神は独りぼち
金ブチの眼鏡手放しコンタクト
「ニュース」 中野 三根子
新しいニュースにテレビしがみつく 静 岡
歯を抜いた我家のニュース一大事
世界中ニュースが波に乗って来る
またひとり大切な人天国へ
「迷 う」 薮﨑 千恵子
目移りがして決められぬ試着室 焼 津
天秤に掛けても迷う欲の皮
偏差値が迷わせている子の進路
使い分け時々迷う飴と鞭
「年 末」 林 二三子
夫婦して出ない言葉で事が足り 富士宮
平凡な暮らし崩れる年の暮れ
皮算用ばかりで終わる宝くじ
年の暮れ体も金も忙しい
「裕ちゃん」 佐野 由利子
苦戦してますと握手をして回り 静 岡
この品は値札のまんま贈りたい
トンカツもウナギも好きな八十路母
裕ちゃんと一緒に生きた青春譜
「 飴 」 多田 幹江
母の電話のゲンコツ飴は甘辛い 静 岡
思い出が滲むべっ甲飴の先
見え見えの飴愛想笑いをして受ける
飴受けて登った木から下りられぬ
「雑 詠」 森下 居久美
北風に干し大根が甘くなる 掛 川
太陽を深呼吸する布団干し
黒豆が美味しく煮えてお正月
生きているから美しい初日の出
「うたた寝」 高橋 繭子
ひと呼吸置いて反論やめておく 仙 台
ライバルの役職名は忘れずに
幸せなひとだけが出す年賀状
二〇十三襖を開けるように来る
「自 由 吟」 真 理 猫 子
生け花の横にぽつんと鏡餅 岡 崎
お炬燵が袴代わりの三が日
釣り銭をください御利益なかったら
重ね着のヒートテックで春を待つ
「粉 雪」 稲森 ユタカ
手をつなぐ二人を包む静電気 静 岡
別れぎわそっと粉雪降りはじめ
顔出さずメールを残し消えていく
背を向けて笑って一歩踏み出そう
「そわそわと・・・暮れ」 谷口 さとみ
宝くじリボ払いではダメですか 伊 豆
金が要る時はポチまで風邪をひく
ご馳走が並ぶと茶漬け欲しくなる
ジャンケンポンしてみませんか総選挙
「女みたまま」 川村 洋未
和牛など頬張る女子の口赤く 静 岡
大声で泣いた後でもよく眠る
柔らかい女地雷を飼い馴らす
適当に磨いておいた鍋の底
「つぶやき」 勝又 恭子
日めくりのパズルへ出られないトイレ 三 島
病院へ通い病人らしくなる
迷うのは無料ハワイかサイパンか
本心はカーブミラーの中にある
「少ない仲間」 池田 茂瑠
縄抜けも覚えて少し悪も積む 静 岡
盃が甘く少数派を捨てる
涙まだ男溺れるまで流す
極楽は嫌い仲間が少なくて
「自 由 吟」 長澤 アキラ
溺れてる明日を酒で掬い上げ 静 岡
横向いて猫もニャーンとバカにする
寝かせれば寝かせる程に威張る酒
一票で十数営と渡り合う
「時 事」 望月 弘
逝ってから偉大だったと気付かされ 静 岡
トンネルを抜けきるまでのアミダクジ
おしゃべりな鳩は羽までむしられる
総裁へ一票という胃の薬
「総 選 挙」 加藤 鰹
総選挙魑魅魍魎が甦る 静 岡
圧勝に谷垣さんは蚊帳の外
民主党オウンゴールで幕を閉じ
ゼネコンがジャラジャラ鳴らす袖の下
顧 問 吟
「雑 詠」 高瀬 輝男
三叉路の手前で思考錬り直す 焼 津
万一に備え楔も用意する
過去などは捨てろと少し楽になる
明日は明日 今を精いっぱい生きる