せんりゅう広場
富 岳 抄

 

「雑  詠」                   多田  幹江

言い切っていつしか消えた水たまり            静 岡

着ぶくれて明日を掴めない五体

積み残し今更戻れない舳先

たそがれの青点滅を突っ走る

 

 

 

「春  Ⅱ」              森下 居久美

ふんわりとパスタにサラダ春キャベツ       掛 川

春霞などとのんびりできぬ敵

スイーツを独占桜フレーバー

ご祝儀で良しとしましょう諭吉さん

 

 

 

「四月・花」              佐野 由利子

お花見の誘い嬉しいEメール           静 岡

人の後付きつ離れつ花の道

風に舞う花びらを追う庭ぼうき

寝たきりを花見に誘う車椅子

 

 

「複雑怪奇」                   石田  竹水

すみませんたった一言言えぬ意地              静 岡

眼裏に僕の古里賑やかい

有終を飾る生花は笑わない

転んでも一つは拾う丸い石

 

 

「  謎  」                 渥美 さと子

生きるって不思議だ私血が赤い                静 岡

独り言あなたは謎で出来ている

とかしたいこのクエスチョン皮下脂肪

気に掛かる謎の部分がまた魅力

 

 

「雑  詠」                  馬渕 よし子

切り出した話またかの顔をされ            浜 松

偽りの愛だと知った花言葉

イケメンと出会ったバラの棘が抜け

慰めの言葉の中にある小骨

 

 

「雑  詠」              奥宮  恒代

丸い目を潤ませ君は花粉症            森 町

絶滅種うなぎ あなごで我慢しよ

黄味の濃さ保証のついた愛である

褒めことばほうら脱皮がうまくなる

 

 

「戻  す」              藤田  武人

まちぼうけ短針を何度も戻す           大 阪

巻き戻しボタンあの日に帰りたい

タイムマシン前世の僕に会いに行く

凸凹の路地で遊んだ日に戻す

 

 

「春よ来い」             井口   薫

病みあがり春を迎えに杖を伴           袋 井

自己主張過ぎて地雷を踏みました

強がっていても躓き多くなり

御破算で蒔きなおしてる夢の種

 

 

「知 恵 袋」             毛利  由美

春霞花粉黄砂汚染粒子              つくば

換気して外にきれいな空気出す

留守電に残すほどでもない電話

おばあちゃんの替わりにYahoo!知恵袋

 

 

「歯っぴー」                 中矢  長仁

元々は親に感謝の立派な歯              松 山

歯磨きを褒めて歯医者は手懐ける

飴玉は歯も溶けるから止めなさい

歯磨きに目覚めた時は遅かった

 

 

「花  筏」              小林 ふく子

バラバラの心まとめる花筏            袋 井

ボランティア少し心が満たされる

生き方を濃くしてくれる趣味の友

堪忍袋破き明日を丸く住む

 

 

「駿 河 路」               岡村  廣司

雪なんぞ知らぬ駿河のおひな様          浜 松

駿河路のどこ歩いても茶の香り

駿河路の田でも出来るぞこしひかり

駿河路のサンタクロース雪知らぬ

 

 

「  哀  」                 鈴木 恵美子

風は春陽気な友の訃報聞く                 静 岡

趣味いくつ共に学んだ日々がある

波長合う言葉遊びの過ぎし日々

桜咲く還らぬ友にほろほろと

 

 

「自 由 吟」               内山  敏子

つまらない話にみちる日向ぼこ            浜 松

テレビ消し趣味に溶け込むひとりの夜

耳打ちが早合点で行きちがい

御無沙汰を重ね敷居が高くなる

 

 

「身勝手なはなし」           増田  久子

コウノトリ罪作りにも殊勲にも            焼 津

トンビから生まれたタカは幸せか

目も耳も片方だけでない老化

パトカーで護送ではなく走りたい

 

 

「自 由 吟」              滝田  玲子

断捨離が出来ず未練に迷わされ          浜 松

善人の仮面で今日も生かされる

被災地に吹くやわらかな春の風

急須なし茶柱知らぬボトル族

 

 

「オアシス」              真田  義子

オアシスが真ん中にある我が暮らし        仙 台

さわやかなあなたの笑みに負けました

自分史を塗り変えたのは春の風

つまづいた石をそろそろ捨てようか

 

 

「自 由 吟」              酒井  可福

立ち止まる気分がイヤで流される         北九州

背伸びなど出来ぬ俺にも自負は有る

虫のいい祈り聞こえる神の前

こだわりを捨てて美味しい酒になる

 

 

「後期高齢」             畔柳  晴康

エコすると八十も半ばの知恵活かす        浜 松

残り火も元気笑いの旗を持つ

まだ疼く赤い血潮が歳忘れ

今日もまた疲れましたよ趣味多忙

 

 

「自 由 吟」             安藤 千鶴子

マンガから生まれた文化凄すぎる            静 岡

言えぬ事歌に包んで贈ります

懐メロであの日の私蘇る

待ち合わせウキウキ化粧すでに春

 

 

「ま、う、す」            萩原 まさ子

まあ飲めとうっかりすすめ素寒貧         静 岡

曲がり角後ろ姿も好きでした

満開の梅の香りに進む酒

貧しくてウチのご飯はスマル亭

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

焼き芋は演歌ケーキはクラシック        静 岡

オレオレにうちの母ちゃん渡り合う

おい母さん俺のくつ下はいただろ

まあるくてうららかな春すぐそこに

 

 

「還暦祝い」             孝井   栞

祝われてより赤くなるちゃんちゃんこ          富 山

輪の中にいつも貴方の底力

寄せ書きにいつも言えない有難う

還暦へ趣味の種蒔く多年草

 

 

「花  壇」             鹿野  太郎

冬ざれの花壇に思い出す追試          仙 台

下駄箱の花壇も四月模様替え

ひとつ目の鍵が花壇にある推理

ウグイスもメジロも辞書の中で鳴く

 

 

「花  筏」             斉尾 くにこ

傷つくを恐れぬ勇気買えますか             鳥 取

ガラス戸へ残るテープの執着心

沈み込む風船へ嘘ついたげる

花筏家族を乗せて切り離す

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

梅咲いて夫とくつろぐ旅行かな          さいたま

こだわりを半分捨てて春うらら

春だから脳細胞も踊りだす

直線は好きでないので回り道

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

歳だなあ過激なヌードつまらない         つがる

大人の修学旅行でメイドカフェ

型落ちの家電を買えが家訓です

お祈りとトイレじゃやはりトイレ先

 

 

「冗句 その九」           西垣  博司

後半の後半後生大事です                静 岡

さざ波と思えば皺も風情ある

栓抜きに小突かれているビール壜

孫の名が花子で何故かホッとする

 

 

「アルカイックスマイル」       外側 としみ

ニコニコのえみちゃんだからえくぼ二個        磐 田

片言のキャッチボールにもれる笑み

透き通る父の笑顔はセピア色

いにしえのアルカイックな笑みに会う

 

 

「ふれあい」             山本 野次馬

哀しくなると繋ぎたくなる片手         函 南

始まりは指先触れた時でした

ふれあいを窓辺の隅に置き忘れ

指先が触れてアトムになる予感

 

 

「自 由 吟」                   南   天子

野良ねこに好かれるなんて予定なし             焼 津

野良ねこも生きる世間を恨んでる

お人好しみたいな私千里眼

川柳の種をまいたら風で飛び

 

 

「舞  う」                   安田  豊子

ひらひらと糸を信じて凧が舞う              浜 松

東北の空へエールの花吹雪

舞い収め流れ任せる花筏

その裏はおくびも見せず夜の蝶

 

 

「自 由 吟」                   鈴木 まつ子

やはり友触れ合うことで好きになり          島 田

日に一歩三日で三歩いく余生

物持ちが良すぎてか物捨てられず

寒見舞 悲しきことも書き添えて

 

 

「自 由 吟」                    菅原  花子

春になり野良猫見たら元気出る           盛 岡

腰痛を夫に自慢雪かきで

おもしろいオウムも使うつまようじ

水をあげきれいな花を咲かせたい

 

 

「御身大事に」                  新貝 里々子

ひらひらと舞うから蝶は責められる               袋 井

御身大事にもう齧れない草加せんべい

無い無いといつもあなたのせいにする

さくらさくらふりまわされてさくらさくら

 

 

「  宿  」              薗田  獏沓

安心と宿とり震度五で孤立           川根本町

名作の生まれた宿にあやかろう

無愛想な民宿飯はうまかった

宿敵二本道をまっしぐら

 

 

「自 由 吟」                    野中  雅生

あの鬼のいまはなつかし母の顔            静 岡

マグロサバ上手く化けたな寿司ネタに

松葉杖うまく歩かすすぐれもの

だみ声と歌声を乗せグランドへ

 

 

「自 由 吟」                    野中 とし子

わらべ唄うたい継がれていつまでも         静 岡

花粉症卒業式の涙なり

紅白に時代の流れ追いつけず

孫どもはうまく育って素直です

 

 

「弟  よ」                成島  静枝

重き荷を振り解き君デスマスク                千 葉

幸せな人生だったか聞きそびれ

生きていてナンボ死にたくないと君

天国へ直行便で千の風

 

 

「春よ来い」              三島 紀久子

水仙の香り楽しみ春を待つ             静 岡

椿咲き春は近いと声はずむ

梅の花別れ惜しんで春つげる

桜咲き春が来たよと花見酒

 

 

「  春  」              川口 のぶ子

春うらら駿府マラソン最高潮            藤 枝

薄陽さす庭のアネモネこんにちは

プランターのレタス目覚めて一、二、三

ブロッコリー鳥につつかれびっくりね

 

 

「雑  詠」                 山田  浩則

今日もまた中国船とにらみ合い              島 田

ばあさんが飲んだ金歯18金

一粒の雪が雨になってきた

ハイキング足並み揃えランララン

 

 

「雑  詠」              川口   亘

臍固め自分流にと強く生き            藤 枝

現実の厳しさを知る夢うつつ

寝返りで景色を変える花暦

心配は体にきつい負担かけ

 

 

「自 由 吟」               飯塚 すみと

シルバー会左右に分かれるフォーク調        静 岡

披露宴席の順序に子は苦心

通夜の晩若いと言われ妻戻る

前立腺安き数値を菩薩言う

 

 

「自 由 吟」               鈴木 千代見

還暦の赤は喜寿までとっておく            浜 松

逢えたのに背でためいきついている

ホットミルク薄皮何か隠してる

骨抜きの涙明日まで溜めておく

 

 

「春うらら」              恩田 たかし

鰻かと思っていたらかたいパン          静 岡

恐ろしいトリプルパウダー襲い来る

もうじきだラジオパークへ行けるかな

子の世話をほって妻子に怒られる

 

 

「ふくのかみ」             尾崎  好子

此れだけは金に糸目は付けず買い              藤 枝

詰まらせる奴にまたかと援護する

詰まらせる奴は我が家のきれい好き

此の位かみの長さをよく教え

 

 

「  桜  」                 増田  信一

山桜ひっそりと咲く過疎の村                 焼 津

失恋は桜吹雪の中で泣く

散り際が一番好きと言う桜

月光に映し出された白桜

 

 

「待  つ」              林  二三子

孫受験手助け出来ず気だけ揉め               富士宮

神仏に届くか婆の願い事

気がかりでまた仏壇の前にいる

間口広く開けて朗報待っている

 

 

「  春  」              稲森 ユタカ

春を待つ大地の下で吹く息吹           静 岡

春からの便りと共に来る出会い

満月の日にはなんだか燃えてくる

暖かな春が花粉を呼び寄せる

 

 

「自 由 吟」               中田   尚

現実を知らないラララランドセル         浜 松

春ラララ現実見たらネガティブに

ウラ事情聞くと悲しい金メダル

脳味噌もやわらかい陽に干しておく

 

 

「花  束」              中野 三根子

花束がたくさん届く夢の中            静 岡

大好きなかすみ草ならひとかかえ

サプライズ真っ赤なバラが年の数

彼ならばバラ一本で夢心地

 

 

「雑  詠」              荒牧 やむ茶

休日はやる気スイッチ切っている          小 山

躓いたことは忘れてまた歩く

春の風ちょっとよそ見をしたくなる

生きているハッピーエンド繰り返し

 

 

「底のトゲ」               池田  茂瑠

それなりの企みを持つ白い花           静 岡

伸ばします渡れぬ虹の橋だけど

底に持つトゲを伸ばしてきた女

順番をつける私に足りぬもの

 

 

「無  題」                寺田  柳京

助六の団十郎が逝く氷雨                 静 岡

親に似て娘の和箪笥も何か噛み

蝸牛スカイツリーに用はない

耳寄りな極楽行きの無料バス

 

 

「春が来た」              石上  俊枝

ウキウキと塩瀬の帯の猫柳            静 岡

蕗の薹初恋の味ほろ苦さ

友を待つ春野菜咲くちらし寿司

ジャガイモが土を持ち上げ目を覚ます

 

 

「むずむず」                    谷口 さとみ

けれど好きややこしいんだけれど好き           伊 豆

友情のコップ酒今グルコサミン

葱が居る君の本音のすぐ横に

究極の選択 味か愛想か

 

 

「  皮  」              川村  洋未

皮をむくきゅうり白くてのっぺりと        静 岡

ナスの皮むいて煮こめばこれなあに

トリ皮のブツブツいやと赤い口

食通が身より旨いと鮭の皮

 

 

「馬 の 骨」                  長澤  アキラ

車だけピカピカで来る馬の骨              静 岡

ナア鏡お前も間抜け面だネエ

朝が来て昨日の先へ進めない

波と風抱いて無口な北の海

 

 

「末  席」              薮﨑  千恵子

奥の手もなく末席にただ座り                焼 津

末席に座ると見えるあれやこれ

末席でぼそりぼそりと独り言

窮屈な見栄という殻脱ぎ捨てる

 

 

「病院・・・其の二」            永田  のぶ男

受付で座って待てと指示をされ             静 岡

レントゲン恋や悩みが透けてみえ

百までは生きると言われむず痒い

退院日より丁寧に髭を剃る

 

 

「  息  」              勝又   恭子

好きだったのかしら妙に息が合う             三 島

息づかいまで伝わってくる手紙

息抜きのはずのパズルに悩まされ

青空へため息だって深呼吸

 

 

 

「人生音痴」                 真理   猫子

気真面目に生きてきたけど音痴です           岡 崎

そんなこと言ったって僕はひふへほ

黄砂舞う今日はやかんも騒がしい

生姜焼き定食に合うコスチューム

 

 

「自 由 吟」              松田   夕介

風見鶏回るごめんが響かずに                 静 岡

ジョバンニの切符を僕も持っていた

スギ花粉多勢に無勢だぞ卑怯

春一番ふいてモンロー達がキャー

 

 

「未 来 へ」                 望月    弘

まっすぐに歩くといつも千鳥足             静 岡

二十五時そこから先は下り坂

遠吠えにならないように吠えてみる

トンネルを抜けて未来へひた走る

 

 

「ショック!」             加藤    鰹

人が辞め給料増えず仕事増え               静 岡

シャツインをしないとだらしなくないか

もうちょいの所でパソコンがダウン

老眼鏡これほど見えるものなのか