せんりゅう広場

富 岳 抄

 

「雑  詠」                   谷口 さとみ

私のダウンを脱がす蕗の薹            伊 豆

棚の上去年探した物がある

占いに大安とある日の不吉

LOVEだけは読めて嬉しいエアメール

 

 

 

「自 由 吟」              内山  敏子

本心を宥め妥協の手をあげる           浜 松

恋ひとつなくしてからの花粉症

パチンコの過ぎた腰痛とも言えず

仕事する気力をなくす祭り笛

 

 

 

「後期高齢」              畔柳  晴康

老眼鏡離せないけど気は若い           浜 松

診察券妻と数をば競い合う

妻寝言俺には言えぬ事喋る

躓いた今朝の茶柱あれはなに

 

 

「わがままかしら」            増田  久子

ツアーにもさそいたくないのは美人              焼 津

暮らす身になればのどかでない田舎

好き嫌いどっちでもないこともある

とりあえず置いた箪笥がずっとここ

 

 

「健  康」                 松橋  帆波

カロリーで選んで不味い物ばかり               東 京

六甲の水で薬を飲んでみる

風邪を引きそうで餃子を追加する

指からもビタミンCを摂るみかん

 

 

「雑  詠」                  馬渕 よし子

柳友へ拝啓敬具取り払い             浜 松

隠したいことたんと有り夫婦仲

譲られた席へ浮かんだ老いの文字

金に羽根生えて四月は義理へ泣く

 

 

「笑  う」              鈴木 千代見

勲章と言われ隠さぬ笑い皺            浜 松

場違いの笑い時間を止めたまま

意味もなく釣られ笑いに福来たる

影のない人だ腹から笑ってる

 

 

「かくれんぼ」             斉尾 くにこ

誠実な季節となって無愛想            鳥 取

毒入れて会話の濃度増してゆく

着信へ足跡残しかくれんぼ

なんとなく待つ来るはずのない便り

 

 

「  嘘  」             戸田 美佐緒

軒先に恋情吊るす女偏            さいたま

柔らかな嘘でくるんだ昨日今日

付き添ってみても貴方は他人です

口惜しさに思わず洩れるガギグゲゴ

 

 

「春ですね」             野中  雅生

春ですねあの荒海ものたのたと          静 岡

春がすみホンマは黄砂PMだ

もう妥結これが春闘ダメ労使

金婚と合格だより春ですね

 

 

「余生とは」                 中矢  長仁

人生の本番ですね余生とは              松 山

孫が来る いそいそ妻は嬉しそう

期限切れ僕に試食をしろと言う

無害です爺さん既に枯れすすき

 

 

「夢のランデブー」           外側 としみ

シンプルに生きて私を取り戻す          磐 田

香り立つシャワーを浴びる花巡り

深呼吸心の声を聞いてみる

星空の向こうに夢のランデブー

 

 

「失  敗」               山本 ますゑ

騙されるまでは気付かぬ甘い罠          磐 田

緊張にエラーで決まる投手戦

失敗を庇う上司の胃が荒れる

自立する子の影を踏み気付かない

 

 

「花 曇 り」               川口 のぶ子

雛飾り主役いなくて淋しそう             藤 枝

雛祭り白酒変じ甘酒に

桃も散り桜も散るか春の宵

花曇り心の中はかすみ草

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

パンジーが人の顔して大合唱              静 岡

サクラサク茶の間たちまち上機嫌

花の下しゃべりまくった機関銃

美しさ貫き通し花筏

 

 

「自 由 吟」              孝井   栞

墓へ散る桜も父を起こしたい             富 山

使い方知らない北の子の刃物

発射ボタン神の金庫を査定中

冷蔵庫へ糠床預け旅に出る

 

 

「背  中」              栃尾  奏子

真っ直ぐに育てられたか曲がれない        大 阪

寄り道を覚えた影は良く伸びる

愚直さを溶かさんとする酒五合

部長席日本男児と書いてある

 

 

「雑  詠」              井口   薫

春の花みな栄転の顔をして            袋 井

クリックをしてから深い森の中

めりはりのある足跡が残せない

肝心な刻にまばたきしてしまう

 

 

「期  待」              鹿野  太郎

家計簿と睨めっこする春支度           仙 台

スーパーに春よ春よと踊らされ

ちちははの部品が占めている要所

ささくれが疾うに消えてた春の宵

 

 

「うすずみいろ」           新貝 里々子

ハイタッチ少し血の気をくださいね        袋 井

咲いて散るうすずみいろの誕生日

追伸に明日は晴れると書き足そう

揺らしては残り時間を確かめる

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

田舎者です嘘も方言                  つがる

コンタクトレンズがまるで似合わない

妻のメモ「割って食べて」とゆでたまご

永遠じゃない金持ちも貧乏も

 

 

「青 写 真」             毛利  由美

配偶者よりもスマホがパートナー         つくば

5cmのヒールでふくらはぎが攣る

気まぐれな気圧配置に大騒ぎ

もざいくがかかる日本の青写真

 

 

「桜 咲 く」              真田  義子

恋の思い出バラの香りに満ちている       仙 台

どん底に落とすドラマが面白い

桜咲く夢またひとつ増えて行く

悔しさもプラスに変えて春の靴

 

 

「ピンボケ」             小林 ふく子

マンションへ雨宿りする軒もない            袋 井

どたどたと来てあっさり帰る孫の群

日本酒を呑んで楽しくする日本

ピンボケの写真がとても好きになる

 

 

「複  雑」             奥宮  恒代

健気にもすみれのように咲く私         森 町

女子会の川柳パンチ効いてるね

当り前こうも嬉しい還付金

世の中はパンパカパンツなんだよね

 

 

「浮  く」             岡村  廣司

春風に少し浮かれていいだろか             焼 津

噛み合わぬ強い個性でいつも浮き

披露宴歯の浮く祝辞次々と

石が浮き木の葉が沈む世が怖い

 

 

「自 由 吟」             鈴木 恵美子

風を読む野性に戻す向い風             静 岡

横道へそれた若さの無鉄砲

庭いっぱい花の笑顔と暮す日々

新学期ほっと一息終い風呂

 

 

「  夢  」             石田  竹水

甘く見た山で救助の手に縋る           静 岡

寿命だけ延びるが夢は縮こまる

鳩を出す手品も氷には触れず

孫の来る帰省にはしゃぐ過疎が有る

 

 

「新入社員」             三島 紀久子

桜咲き希望の出会い春うらら              静 岡

場所とりの新入社員桜色

場所とりのブルーシートの花見酒

夜桜の新入社員千鳥足

 

 

「自 由 吟」                  竹内 みどり

れんげ草ふんわり風に揺れている         さいたま

浅草寺心の乱れ癒してる

年金であっちこっちは行けません

ダイエットなんでも試しすぐ止める

 

 

「春 の 色」             恩田 たかし

春の色桜タンポポ花水木            静 岡

介福の合格通知桜咲く

安倍川の桜ふぶきの艶やかさ

春なのに窓を外して大掃除

 

 

「自 由 吟」              宮浦 勝登志

桜葉が塩味効して生きている              静 岡

木の芽萌え恵みの雨がそっと撫で

先生も新入生に声が枯れ

筆の穂に似てるつくしがこんにちは

 

 

「  春  」              野中 とし子

窓たたく春の嵐に夢やぶれ            静 岡

たんぽぽが日差しを浴びておじぎする

道ばたに白木蓮の花びらが

ふきのとう天ぷらにして春感じ

 

 

「  北  」                   山本 野次馬

北風よ負けるが勝ちを知ってるか           函 南

別れましょ磁石は北を指したまま

北風よ許してあげる出ておいで

謎めいた娘がねむる北枕

 

 

「ストレス」                    酒井  可福

ストレスを酒がきちんと包み込む          北九州

ストレスに角が有ったら丸くする

ストレスを溜めて一気に酒を飲む

いい人で好かれストレス溜めている

 

 

「チャンス」                  藤田  武人

スナイパー決してチャンスを逃さない            大 阪

二人掛け僕の陣地へ忍び込む

守勢からチャンス逃さず攻撃だ

ヒットからチャンス拡大笛太鼓

 

 

「  春  」              成島  静枝

春嵐諌める人はいませんか            千 葉

春眠中私の五体無重力

春謳歌オランダ産のチューリップ

春愁の深みにはまる葬続き

 

 

「自 由 吟」                    滝田  玲子

こけら落とし晴れれば並ぶ名役者           浜 松

被災地に安全願い咲くサクラ

寝たっきり自慢にならぬ長寿国

ノルマ達成ライバルを抜く棒グラフ

 

 

「ペ ッ ト」                    鈴木 まつ子

日だまりで捨て猫のタマメタボ気味         島 田

いやされるペット思いのありったけ

負け犬の根性ポチも苦笑い

捨て猫の甘え道を振り返り

 

 

「自 由 吟」                南   天子

金もなし欲もないけど幸せと                 焼 津

老人と云われていいの赤い服

次の世を天国といういい名前

川柳に心取られて小半日

 

 

「雑  感」              川口   亘

共白髪歳が邪魔する俺が春             藤 枝

萎えるのは自分自身に負けた時

何故などが段々離れいく気迫

すぐ其処に春が来ているもの静か

 

 

「  宿  」              薗田  獏沓

安心と宿とり震度五で孤立           川根本町

名作の生まれた宿にあやかろう

無愛想な民宿飯はうまかった

宿敵へ一本道をまっしぐら

 

 

「自 由 吟」                 菅原  花子

春になり花粉症に泣かされる               盛 岡

目が覚めるチクリとささるバラのトゲ

昭和時のホームドラマがなつかしい

走りたい小犬のように元気良く

 

 

「  涙  」              安田  豊子

智にたける子に親馬鹿は裏切られ         浜 松

算段がついて妥協の涙のむ

慰めの涙こころにのしかかる

果てしない涙女の生きる糧

 

 

「自 由 吟」               飯塚 すみと

目に見えぬ緊張しきり挙式うた           静 岡

サングラス好いと思えど妻がだめ

焼き芋に一時だけは通り抜け

四千の近くで市会届かない

 

 

「  春  」               山田  浩則

春雨で開花の桜散り始め               島 田

まばたきをしたくなる程目がかゆい

日曜日春を探しに散歩する

一輪の桜のつぼみ散るサクラ

 

 

「春場所雑感白鵬全勝V」        尾崎  好子

懐かしい巨人大鵬玉子焼き                 藤 枝

初場所の最中大鵬見事散り

満員の客と一緒に黙とうし

大鵬の頭一つに見せた意地

 

 

「春が降る」              安藤 千鶴子

母ちゃんの作るみ汁世界一                静 岡

駄菓子屋は昭和のままでホッとする

大くしゃみホーホケキョより高々と

息をしていない家にも春が降る

 

 

「自 由 吟」              石上  俊枝

七十路をどっこい生きる足を褒め              静 岡

不器用で無駄な努力に日を暮らす

ひと言を家族がくれる杖頼る

そっと胸波風たてず声を抱く

 

 

「花いかだ」              中野 三根子

春の宵水面に浮かぶ花いかだ           静 岡

青い空お堀に映す花の舞

散るさくら今年の春を見納める

月の夜 桜ひらひら花いかだ

 

 

「フラワー」               森下 居久美

雨上がり桜吹雪になる愛車            掛 川

箱庭にぼんぼりふわり藤の花

生け垣のツツジ真っ赤にお出迎え

見渡せばピンクの絨毯芝桜

 

 

「ボーッと生きる」           永田 のぶ男

合鍵を貰ったけれど置き忘れ           静 岡

惜しまれて吹く潮風が凪となる

本当の愛は苦との背中あわせ

憎しみも愛も消えボーッと生きる

 

 

「猫  背」              池田  茂瑠

壁の花私に香り足りぬのか             静 岡

深すぎて時も癒してくれぬ傷

聞き流す私を崩す言葉なら

猫背気にしながら若いグループに

 

 

「ほんとに馬鹿」            多田  幹江

バカ馬鹿と枕言葉じゃあるまいに         静 岡

ほんとうの馬鹿にはできぬ馬鹿踊り

自称バカあちらで居士になりました

しだれ梅あたし馬鹿よねとか言って

 

 

「雨いろいろ」               渥美 さと子

古今東西 卒業式の涙雨                  静 岡

片想い遣らずの雨の手を借りる

お日さまゆらゆら昨日の雨の水溜り

城跡の雨もまたよし花筏

 

 

「雑  詠」              荒牧 やむ茶

逆転へ隠しておいた鷹の爪            小 山

優しさを刺で隠して咲かす薔薇

万病も僕の野心に逃げ帰る

火が点いた尻でやる気が燃えている

 

 

「自 由 吟」                    林  二三子

花粉まだ酷く外干し儘ならず               富士宮

予定した花見桜は遠に散り

桜散り家の芝桜で花見

春の旅桜ばかりが称えられ

 

 

「一  人」              長澤 アキラ

居酒屋で若い女が一人酒             静 岡

楷書で入り草書で出る赤提灯

一人で行き二人で戻る里の家

カーナビの教えぬ道がよく事故る

 

 

「定  年」                  増田  信一

円安も株高もない定年後                焼 津

定年後土日の方が忙しい

定年後空欄目立つカレンダー

定年後妻が上司になりました

 

 

「雑  詠」              薮﨑  千恵子

銀座花道華の役者が練り歩く                焼 津

雨の中一目見ようと傘の花

福顔と言われて角を出せずいる

蝶結びさらり解けて愛も解け

 

 

「無 責 任」                 佐野  由利子

支えられ支え夫婦を続けよう              静 岡

不器用で春のリズムに乗り切れぬ

楽勝を決めてかかっていたウサギ

身勝手な事情パートの無責任

 

 

「計  算」              川村   洋未

計算が出来る人から出世する               静 岡

引き算も幸せならば苦にならず

サイコロは二十一まで教えます

たし算も気が付きゃたまに減っている

 

 

「自 由 吟」                  真理   猫子

たまごかけごはんのおかずゆでたまご          岡 崎

尻もちをついた目線はポチの鼻

総入れ歯言いたい事も絡みつく

闘いの火蓋が故障しています

 

 

「期  待」                松田   夕介

期待していますと冷めた声が言う              静 岡

シャボン玉割れる期待を込めすぎて

ご期待は自己責任で頼みます

歯ブラシが二本タンゴで見つめ合う

 

「  春  」              勝又   恭子

春の庭まずスイセンのファンファーレ            三 島

問いかけに答をくれる春の風

青虫と分け合う庭先のキャベツ

ごめんねが素直に聞ける春の色

 

 

「パソコン」                 望月    弘

井戸端で採掘をするツイッター             静 岡

パソコンが使えないから非国民

コンクリの街で生きてる土踏まず

幸せのシュミレーションが儘ならず

 

 

「AKB48」             加藤    鰹

A列車春はスウィングジャズに乗り            静 岡

K点を越えてしまったトロロ汁

B型のひととクスクス食べている

48才です ガタが来ています