せんりゅう広場

富 岳 抄

 

「悪  友」                   薗田  獏沓

善しにつけ悪しきにつけて顔を出す       川根本町

中学の侭で止まっているふたり

自らを悪友と言い弔辞読む

共通の良いも悪いも酒が出る

 

 

 

「自 由 吟」              南   天子

老いたなと気がつく時は文字迄も         焼 津

天寿とは何才迄か風に聞く

幸せと云っておこうよ うそだけど

ありがとう今日も何回指を折る

 

 

 

「今でしょ」              新貝 里々子

今でしょと余熱確かめ跳んでみる         袋 井

歳なんか気にはしませんフリルたち

咲いたらおしまいチューリップも春も

今でしょとそんな言葉で突かれる

 

 

「雑  詠」               奥宮  恒代

バタヤンも逝き残された島育ち                森 町

ノウハウを隣に学ぶ夏野菜

タレントの顔が同じに見えてヤダ

核心に触れるとグズが発芽する

 

 

「雑  詠」                 川口 のぶ子

連休に行くとこもなしお留守番                藤 枝

子どもの日家族そろっていなり寿し

庭の木々手入れ大変老いたれば

強風に物干し竿が落ちてきた

 

 

「晴 れ る」                  安田  豊子

桜咲く絵馬へお礼の歩が軽い             浜 松

存分に泣けばあしたは気も晴れる

前向きに生きりゃいつかは陽も当る

茶柱が立てば一時ウツも晴れ

 

 

「金  婚」              馬渕 よし子

ささくれた指で金婚漕ぎ着ける          浜 松

それぞれの部屋で自由な夢を見る

おーいお茶 わたしメイドでありません

血圧の薬仲良く飲んで日々

 

 

「政  治」             藤田  武人

政党も賞味期限があるらしい               大 阪

橋下よ赤い絨毯踏みに来い

アベノミクス苦がなくなると安倍のミス

北からは撃つぞ撃つぞと三代目

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

キャバクラで新語勉強しています         つがる

三日酔いならば少しは考える

竜巻は浮気がもとでよく起こる

男ってバカだと思う 男でも

 

 

「誕 生 日」             真田  義子

冗談はやめて私を好きなんて               仙 台

素朴さがとても好きですかすみ草

追いかけてみたいあの日の夢ひとつ

おだやかないい風が吹く誕生日

 

 

「ス マ ホ」             井口   薫

ガラケーかスマホか老いの思案橋        袋 井

二駅を見とれスマホのギャルタッチ

抜け殻のような財布を連休後

言い過ぎは義歯が馴染んだせいにして

 

 

「ユーモア川柳」            岡村  廣司

おれおれと時々兄が掛けてくる          焼 津

愚痴もなく遅刻休まず仕事せず

盛り上げる為と音痴も唄わされ

お嬢さんと聞こえ老妻振り向いた

 

 

「  花  」               鈴木 まつ子

花占い一枚二枚来る来ない            島 田

高飛車な言葉は合わぬ花ふぶき

咲ききって桜は未練残さない

人生の哀感花のいさぎよさ

 

 

「努 力 賞」               小林 ふく子

乾杯のコップへ注ぐ努力賞              袋 井

割り勘へ一円玉が威張ってる

片方が燃えて少し火傷する

若き日の君へ余熱がまだ冷えぬ

 

 

「フワフワ」              外側 としみ

しゃぼん玉風に迷ってママの胸             磐 田

夢うつつ今日はおとぎの国に住む

見習いの魔女がほうきでランデブー

フワフワのシュシュは記憶の引き出しに

 

 

「雑  感」              毛利  由美

さとり系三人のさとった会話           つくば

本業よりクイズで稼ぐ漫才師

ビスタ・セブン・エイト ウルトラマンみたい

挫折克服 安倍さんを見てごらん

 

 

「子どもの日・母の日」         中矢  長仁

子どもの日代わりに孫を置いて行く        松 山

婆ちゃんは安い物でも巧く着る

婆ちゃんの作る味噌汁具沢山

カーネーション贈って妻よありがとう

 

 

「雑  詠」              成島  静枝

舌先も脳もたっぷり血が巡り           千 葉

ときめきも欲しい熟女が爪を研ぐ

子の世話にならぬ気概を持つ世代

食べて寝て今が一番好い我が世

 

「自 由 吟」              鹿野  太郎

女運無い連盟の慰労会              仙 台

歯磨きでもう鼻歌が出る娘

鉛筆を削り目にもの見せてやる

吹き溜まりから輝きのプロローグ

 

 

「春の夕暮れ」            斉尾 くにこ

このパターンいつかどこかで見た景色       鳥 取

たんぽぽも山椒魚も外来種

ざっくりと褒める天狗の高い鼻

おだやかに暮れていく今日また明日も

 

 

「哺 乳 瓶」             戸田 美佐緒

ポストまで春が付き添うプロローグ         さいたま

恋文の軽さにそっと火をつける

哺乳瓶あれば男は立ち直る

ため息を酒に吸わせて昼の月

 

 

「不 健 康」             松橋  帆波

背脂の中毒患者ですわたし            東 京

朝食は立ち食い 昼はベンチ食い

チャーシューの旨さ 血管詰まるほど

その先に血尿という句読点

 

 

「雑  詠」              寺田  柳京

しっかりと聞いていたから出た欠伸       静 岡

養老の滝をもしやと舐めてみる

下着など噛んでタンスも古くなり

酒で呑む薬発明しませんか

 

 

「不 景 気」             栃尾  奏子

あなたしか見えない今がお買い得        大 阪

格安のツアー土産屋ばかり寄る

地獄絵図持って閻魔が呼んでいる

父さんが何と瓶ビールをやめた

 

 

「自 由 吟」             宮浦 勝登志

隠し事妻の一撃口淀み                  静 岡

あの二人デキているなと読んでいた

味濃すぎ砂糖を入れてすまし顔

果てしなく試行錯誤の続く海

 

 

「  凧  」             滝田  玲子

初子凧五月の空へ舞い揚がる            浜 松

砂丘から天へとどけと喧嘩凧

砂蹴ってオイショオイショと凧が舞う

好天の皐月の空へ凧の華

 

 

「自 由 吟」              山田  浩則

旅に行き土産買うより無事帰宅           島 田

五月晴れ期待ハズレのシバザクラ

晴天の下で楽しむバーベキュー

ロトセブン当たりそうでも当たらない

 

 

「天  気」             菅原  花子

お天気が人の気持ちを左右する          盛 岡

雨の日は小洒落た傘でルンルンと

ゆったりと買い物できる雨の日は

晴れの日は心身ともに元気出る

 

 

「負け惜しみ」            畔柳  晴康

俺の背を見よ見るなよと子に諭す            浜 松

無い袖も有るよと言って見栄をはる

肩書きは消えたけれども意地消えぬ

晴耕と雨読で無くて本まくら

 

 

「田  植」                  山本 ますゑ

家中が一つになってする田植            磐 田

苗代の苗が鰹になる律儀

遊びたい盛り手伝い当り前

働いた汗の詰まった丸い米

 

 

「勝手に思うこと」          増田  久子

年甲斐もないと知っててやってみる       焼 津

蝶になる日までを耐えている毛虫

予報士の笑顔を恨む雨続き

共学のビリはたいてい男の子

 

 

「シ ッ ポ」             萩原 まさ子

ダイヤはめ知らんぷりなどしてみたい       静 岡

困ります年寄り立たせ知らんぷり

知らんぷり決めたがシッポ話し出す

可能性掘れば未来が寄ってくる

 

 

「雑  詠」             野中 とし子

道ばたで拾いものして知らんぷり        静 岡

しょっぱいと今朝の味噌汁手をつけず

若者の未来に向けて幸あれと

不合格未来の夢はまた延びた

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

政治家は何言われても知らんぷり         静 岡

知能犯すべて察して知らんぷり

この年で未来を語る若いなあ

味見してまた間違えて塩加え

 

 

「よくもまあ」             恩田 たかし

赤と黒夏をいろどる金魚鉢              静 岡

魚より肉がよかった若い頃

よくもまあ同じ失敗繰り返し

よくもまあ自分のことは棚にあげ

 

 

「  寺  」             山本 野次馬

禅寺が足の痺れに語る経             函 南

墓石の下で聞いてる裏話

石段の苔に聞かせて経を説く

山門に仏をひとつ追加する

 

 

「矛  盾」             酒井  可福

パラドクス パン食いネェと云う女        北九州

核兵器平和に暮らす為に持つ

完璧の蔭に消えたは人間性

使えない核で脅した空元気

 

 

「  母  」             鈴木 千代見

高らかに笑う長寿の秘訣かも           浜 松

時に冷たい風も織り交ぜて母

限りある命楽しむように生き

全力で支えてくれる子の積木

 

 

「痛  風」              森 だがやん

足腫れて改善誓いダイエット              島 田

痛み止め飲まず我が身よ思い知れ

ハイハイのパパに跨がる子どもたち

痛み去り改善忘れまずビール

 

 

「スタート」                鈴木 恵美子

偶然の出合い神様のお導き                  静 岡

新婚の窓辺ハミングの妻がいる

傘寿です出発点にする前途

二位の息背なに死闘のテープ切る

 

 

「  水  」              川口   亘

棚田にも水廻り込み春景色             藤 枝

水墨に吾が意をのせて書く絵画

水脈を求めて登る山の肌

呑み過ぎて夜半に甘露の水を呑む

 

 

「空 青 く」              飯塚 すみと

別嬪の歯医者に頼る年だから           静 岡

知事さんが台湾便に握手する

怖がらぬ十七スカートなんのその

カット行く明日の信号青を見て

 

 

「自 由 吟」                 竹内 みどり

散る桜なんて奇麗に舞っている            さいたま

散歩道 春夏秋冬ありがとう

いつ来ても心が和む古都散歩

川柳で頭を使う久しぶり

 

 

「成  長」              三島 紀久子

入園のママと別れて泣きじゃくる         静 岡

卒園の先生涙ボク平気

入学の知らない顔も笑ってる

入学の笑っていた子同じ組

 

 

「5・5天晴なひと日」         尾崎  好子

引退は古巣ドームで満席で                藤 枝

カンピューター夫駄目出しばかり揚げ

ミスターは華あり松井重みあり

女神までW受賞に微笑まれ

 

 

「自 由 吟」              石上  俊枝

子より孫なんでこんなに可愛いの              静 岡

産声に力んで疲れ爺と婆

どの子よりイケメンの孫ベビー室

家系図が末広がりにまたも春

 

 

「どっこいしょ」            永田 のぶ男

葉桜に背筋伸ばして一歩前            静 岡

茶を頼む婆さんでなく孫がくる

どっこいしょ日光浴で爪を切る

子と孫が居て幸せな家がある

 

 

「自 由 吟」               稲森 ユタカ

ひらひらと季節はずれの雪が散る         静 岡

ただいまが独りで暮らす部屋響く

これからの思い出つくる出会い待つ

花粉から守る姿で職訊かれ

 

 

「雑  詠」              谷口 さとみ

発見し進化しアトム遠ざかる           伊 豆

妹が来るたびポチが下痢をする

両腕を竿に通して揺れてみる

また残る灯油もカイロもクリームも

 

 

「猫パンチ」              多田  幹江

わがままな猫が好きです変ですか          静 岡

猫族が猫の話で丸くなり

ごめんねが中々言えぬ損な猫

引きつけて引きつけて打つ猫パンチ

 

 

「こだわる」              渥美 さと子

外ではペペロンチーノ 家では和風         静 岡

気がつけば靴左から履いている

軽い靴きっと朝見た飛行雲

口紅の真っ赤は駄目と決めている

 

 

「リラックス」               林  二三子

怒りんぼ脳が疲れているらしい              富士宮

忙しいと言うと時間が逃げていく

美に触れて脳の疲れを取ってやる

しなければをしたいに変えてリラックス

 

 

「安  堵」              石田  竹水

夫婦だよピントのずれは気にしない        静 岡

辻褄を合わせ言い訳などしない

釣り上げた河豚が威嚇のふくれ顔

安堵する気持ちの上に貼る湿布

 

 

「五月晴れ」                    森下 居久美

五月晴れ今日も稼いでおりまする             掛 川

五月晴れ敵は手強い紫外線

五月晴れ十連休が耳障り

さわさわと緑茶美味しいお茶になる

 

 

「五  月」              増田  信一

五月晴れ濡れたハートは家で干す         焼 津

新緑が破れた恋でセピア色

五月病だけどなぜだか太りだす

咲く花はすぐに散るさと慰める

 

 

「まあいいか」            荒牧 やむ茶

まあいいか笑い飛ばした赤っ恥              小 山

まあいいか何て言えない核保有

まあいいかちょっと墓穴に落ちただけ

まあいいか人生山も谷もある

 

 

「魔  女」             川村  洋未

片付けて残り物さえ渡さない               静 岡

ヒロインになれないならば魔女かなあ

消しゴムを持ち歩いては願い消す

魔女勝てとエールを送る女いて

 

 

「雑  詠」             長澤 アキラ

イコモスが富士のお山を高くする            静 岡

五月を捲る向こうの母に会うために

根性があって喜劇を演じきる

悲しみを理解されない俺の顔

 

 

「  雨  」             真理  猫子

先天性びっくり箱のかたつむり          岡 崎

犬小屋は防水塗装されてます

お仏壇 猫がお経をあげている

雨上がりコートのすそが草木染め

 

 

「五  月」             佐野 由利子

五月風ぐっと吸い込むレントゲン             静 岡

五月晴れあれこれと練る旅プラン

若葉風歳は云わない事とする

遠足の帰り無口な列続く

 

 

「コロコロ」             中野 三根子

何ごとも心コロコロころがして              静 岡

コロコロだペットの犬も飼い主も

かわいいなコロコロ笑う女の子

コロコロとパンダになって夢と跳ぶ

 

 

「終えた給油」            池田  茂瑠

品性も劣るカスバの女より                静 岡

便箋の裏荒れ狂う海がある

ページごと違った霧が立つ日記

図書館の窓辺で給油終えました

 

 

「成 る 程」             薮﨑 千恵子

成る程と思うお人の頭の低さ               焼 津

いい話すんなりと聞くいい心

褒めること嫌いな人がいて困る

嫌だなあもっと素直になればいい

 

 

「旅 支 度」             勝又   恭子

旅慣れているね荷物がコンパクト         三 島

匂いからして効きそうな正露丸

鍵を出すたびにバッグをかき混ぜる

現在地わからないまま地図を見る

 

 

「自 由 吟」             松田   夕介

目立つよう財布を忘れプチ家出          静 岡

蝶々も恋をしている じゃあ僕も

空仰ぐ幸せですか天国で

空の青知らず一人で低気圧

 

 

「影と生きる」                望月    弘

私を離れいたずらしてる影               静 岡

曼珠沙華ボクの最終処分場

放射能ほどは到底生きられぬ

母介護今ならこんな風にする

 

 

「流  沙」             加藤    鰹

不揃いの週末妻と子と俺と                静 岡

シャガールの藍恋しくて切なくて

君と逢うブレアウィッチの森深く

ラベンダーゆらり恋していたあの日