せんりゅう広場
富 岳 抄
「日常会話」 毛利 由美
カーナビにまかせ助手席眠りこけ つくば
遊ぶよりアイフォンに弄ばれる
熟年がせっせとナイトウォーキング
スズメバチに刺されたと日常会話
「 数 」 藤田 武人
兄ちゃんになったおやつは半分こ 大 阪
そろばんの玉を弾いてまけといて
覚えたぞ富士山麓にオウム鳴く
サイコロを二つ転がし決めてやる
「雑 詠」 井口 薫
木犀の香りへしばし荷を下ろす 袋 井
コスモスの揺れにあやかる余生欄
配布するティッシュが人を選っている
七年後へ老いの食指が動きだす
「 秋 」 奥宮 恒代
コンバインあっという間に秋は去り 森 町
返事よし重りが付いているお尻
一冊の本と夜長を添い寝する
ああここが終の栖かスイッチョン
「負け惜しみ」 増田 久子
タイトルが面白すぎる週刊誌 焼 津
この服も当時最先端だった
十年を車検で耐えるうちの軽
とりあえずあちらへあげた先取点
「秋の午後」 斉尾 くにこ
深追いをしては深手を負いたがる 鳥 取
秋の午後ネット散歩のひなたぼこ
しあわせのサイズはちょうどいい着丈
忘れてはいけず 忘れずには行けず
「雑 詠」 馬渕 よし子
ちっぽけな悩みと言われまた悩み 浜 松
ホルモンが減って化粧の斑が出来
メイドインチャイナ ハワイの土産です
小銭入ればかりがやけに重くなり
「 露 」 新貝 里々子
露に濡れそしらぬ顔で猫帰る 袋 井
火だるまになるのはきっと冬の薔薇
念ずればあなたに届くあみだくじ
ドレスアップして残り火をかき寄せる
「ユーモア川柳」 岡村 廣司
どっこいしょ動く度出る齢となり 焼 津
二つずつ齢取っていく様な妻
無口ゆえ人畜無害だと言われ
眼の鱗なんて無いのだおいらには
「時の流れ」 小林 ふく子
背に夕陽早く答えを見つけねば 袋 井
老けたのは私だけじゃないんです
亡き母と同じ小言を子や孫に
後廻しされた用事が雲隠れ
「別 れ」 薗田 獏沓
秋風を感じた途端夏は往く 川根本町
新幹線早くて味気ない別れ
子離れの出来ぬ別れの盆淋し
百歳を前に恥ずかし棺窓
「カ ラ ス」 濱山 哲也
ゴミの日の日程読んでいたカラス つがる
あかね空点呼を受けているカラス
日本語も英語も理解するカラス
電線に止まり充電するカラス
「秋の味覚」 岩永 圭二
馬肥ゆる季節到来俺肥ゆる 大 阪
銀杏の匂いで季節感じとる
キノコたちマツタケ様のお通りだ
秋味のビールを飲むが味同じ
「自 由 吟」 成島 静枝
俯いて虹も見ないでいるスマホ 千 葉
ガラケーでいいさ私もガラ昭和
常識に異を挟まない丸い歳
金木犀咲いてやっぱり秋と知る
「片 想 い」 外側 としみ
近すぎてはがゆい恋を追いかける 磐 田
好きだから真面目な話してるのに
眼差しがあなたに走る片想い
また会えた数光年の夢の跡
「途中下車」 鈴木 恵美子
途中下車友の笑顔に逢いに行く 静 岡
途中下車ばかりしている趣味の道
旅気まま憩い求めて途中下車
コスモスに魅せられて立つ途中下車
「誤 算」 鈴木 千代見
五分進む時計そろそろ直そうか 浜 松
振り向けば橋が壊れている恐さ
ビル谷間見慣れぬ蝶がとんでいる
お日様をまともに見れぬ小さな嘘
「自 由 吟」 竹内 みどり
今のまま背伸びしないでクレマチス さいたま
青い空素直に伸びる彼岸花
娘からランチ行こうとメール来る
手のひらに金運の線書いてみる
「自 由 吟」 内山 敏子
雷へ慌ててかくすへそピアス 浜 松
病院食ちょっと味見を許してね
無気力を必死で止めている右手
趣味多才友から学ぶ丸い顔
「やさしい風」 飯塚 澄人
欲のない姿勢で好期好齢者 静 岡
バラードの好きな亭主に留守頼む
九十度腰曲げ老婆草を抜く
満足に隣家の孫が泣き叫ぶ
「探偵の涙」 戸田 美佐緒
胃カメラに五臓六腑を探られる さいたま
疲れたよ眠いよ風呂で溺れてる
冬の貨車抱いて音信不通です
致死量の涙が俺を邪推する
「男 と 女」 栃尾 奏子
雨雨雨おんなが思い出す男 大 阪
カンカン照り男が思い出すおんな
通り雨おんなはそっと振り返る
虹出でて男真っ直ぐ走り出す
「あたたかい」 高橋 繭子
ネコじっと見つめるウソを見るように 仙 台
大声をすぐ出す人が有利です
メールでも音声入力ですって!
思い出をひきずるあたたかい初秋
「自 由 吟」 提坂 まさえ
彼岸花コスモス気取り楚々と咲く 静 岡
あっさりもこってりも好き恋の道
白旗をすぐに上げたくなる私
今日の嘘パチリパチリと爪を切る
「元気です」 真田 義子
前向いて笑って行こうまだ六十路 仙 台
待つことできっと光が見えてくる
人情に触れて心に残る旅
何もない人生だけど元気です
「自 由 吟」 川村 美智代
娘の吐いた言葉ひっ掻く胸の底 静 岡
マニキュアの剝げた指からおつり銭
黒く塗りドギマギさせる孫の爪
思い出し笑いしながら爪を切る
「 爪 」 安藤 千鶴子
いつ切るか爪のことわざ気にかかる 静 岡
マニキュアで体調示す色が消え
缶開かず爪の立て方猫に聞く
爪を噛む不満か癖か気にかかる
「ネイルケア」 萩原 まさ子
隠すほど能ありませんネイルケア 静 岡
爪弾きされても見てろ戻ったる
ネイルケア忘れた娘の寝顔見て
爪に火をともす増税への覚悟
「ナ オ コ」 森 だがやん
カラオケでなりきり歌う研ナオコ 島 田
テープ貼りなりきり歌う研ナオコ
気に入ってそのまま帰宅研ナオコ
やり過ぎて顔が戻らぬ研ナオコ
「自 由 吟」 恩田 たかし
秋風に吹かれ髪の毛抜け落ちる 静 岡
からっきしダメでもやれば好きになる
テーピング腕に巻きすぎ血が止まる
カセットに詰め込んでいた好きな曲
「赤パンツ」 山本 野次馬
この風を浴びて大人になるつもり 函 南
寝坊して社会の辛さひとつ呑む
赤パンツ穿けばお爺を曝け出す
思考力ゼロでぶらぶら展示会
「雑 詠」 滝田 玲子
からっ風カカア天下の遠州弁 浜 松
死にたいと言い医者ハシゴして飲む薬
目立たない人で無遅刻無欠勤
美しい四季が消えゆく温暖化
「自 由 吟」 安田 豊子
もう嘘はつくまい雑魚の値が下がる 浜 松
感情の尖り悔いてる泣きぼくろ
今更に走る事ないロスタイム
永らえて仕草だんだん母に似る
「プライド」 鈴木 まつ子
へりくだる卑下も自慢のうちと見る 島 田
プライドがあるから理想なお高く
プライドを保ちじっくり火を灯す
人生の集約記す一代記
「後期高齢」 畔柳 晴康
朝目覚め今日も兎に角元気する 浜 松
自画像を描く途中で嫌になる
朝の経欠かさないけど呆けは来る
また忘れ先に生まれた先生も
「秋に想う」 鹿野 太郎
違います新人類のへその位置 仙 台
独身がごろごろこれも処世術
虫の音に三半期菅撫でられる
腰痛の体操追い追い口笛
「自 称」 中矢 長仁
一日の旅の別れも寂しがる 愛 媛
夫留守何か清々して過ごす
留守電のマナーモードが気に掛かる
お土産は無事に帰ればそれで良い
「隣 国」 酒井 可福
隣国がデマで首相を困らせる 北九州
隣国が武士の眠りを覚まさせる
韓流の歴史ドラマに穴がある
竹島の次は対馬を狙う民
「 秋 」 川口 のぶ子
大祭に老いも若きもテンツクテン 藤 枝
数台の屋台がきそう秋祭り
彼岸花時を忘れず咲きほこる
虫の声朝からしきり耳にふれ
「自 由 吟」 南 天子
此の風はきっと味方だ信じよう 焼 津
暑い日は優しい声の人が好き
反論はしてはいけない空気さん
外に出て月を見てるとほっとする
「自 由 吟」 菅原 花子
癒されるたかねの本を読むだけで 盛 岡
雨降ればぐんぐん伸びる庭の草
億劫な気持ちを捨てて庭仕事
南天がいつも生き生きたのもしい
「木 綿」 山本 ますゑ
手付かずの着物が眠る蔵の中 磐 田
長持の中の着物は皆木綿
丹前で机に向かうテスト前
着膨れの温さは木綿だったころ
「歩けるよ」 川口 亘
歩き来し過去は夢でも捨て切れず 藤 枝
夢でさえ歩く姿につい見惚れ
歩く気を見せて初めて身を悟る
存分に歩いた夢で気がまぎれ
「野球…で」 尾崎 好子
好きだった選手も今や解説者 藤 枝
フォアボールから逆転のホームラン
原だから四番にバンドさせやがる
ピッチャーの解説だから良く分かる
「バ カ」 山田 浩則
バカ暑い冬になったらバカ寒い 島 田
バカボンのパパと呼ばれてスネている
通信簿なぜかバカだと書いてある
バカだけを集めて開くクラス会
「雑 詠」 永田 のぶ男
戒名を本人聞いて笑ってる 静 岡
金持ちが極楽覗きやはり金
人生を斜めに走り賭けに出る
大祭が富士の火柱秋を告げ
「自 由 吟」 西垣 博司
別れたらいいとあっさり言う他人 静 岡
反論の爪を隠した懐手
争いを好まぬ母も爪を持ち
二の舞を踏んで器の程を知る
「ラ ジ オ」 林 二三子
懐メロが流れボリューム高くする 富士宮
聞きながら受験勉強した昔
コメントが読まれにんまり聞いている
眠れぬ夜DJの声子守唄
「 指 」 多田 幹江
おしゃべりな小指同士のお約束 静 岡
鍋釜の話はしない白い指
思い出は足の小指も抱いていた
紅さしの頃なつかしむ薬指
「誘 惑」 渥美 さと子
貴女からの電話必ず放浪記 静 岡
お疲れさん灯るネオンがもう招く
独り居が色と形で五ケも買う
有り余る余暇を羅列の長電話
「草 刈 り」 薮﨑 千恵子
洗っても取れぬ頑固が身に付いて 焼 津
容赦なくはびこっている土手の草
草刈りにおまけの付いた蜂の針
草刈りに怒った蜂が暴れ出す
「運 動」 石上 俊枝
完走に秋風褒美頬を撫ぜ 静 岡
綱引きに母の体重役に立ち
日替わりの風景楽し万歩計
アンカーの花形バトン秋の空
「超 能 力」 荒牧 やむ茶
あれそれで会話している父と母 小 山
マー君をスーパーマンにした女房
テレポート出来たらいいな朝寝坊
予知夢ならいいな檀蜜とのデート
「自由に秋」 谷口 さとみ
豊作に案山子も誘い踊りだす 伊 豆
天高く秋は正しい秋であれ
ヌーボーを片手に踊るジャンバラヤ
芸術の秋まず空を描きあげる
「ミステリー」 中野 三根子
人生もいつもなぜだかミステリー 静 岡
どうしよう我家がとてもミステリー
ミステリーツアーは西か東かな
小説の最後気になるミステリー
「 風 」 石田 竹水
靖国に意地と怨みの風が吹く 静 岡
気転から脱皮し過ぎた木偶の坊
生命線伸ばし愉快な好奇心
活の良い妻と楽しく送る日々
「乾 く 愛」 池田 茂瑠
羽繕いしてます雨はきっと止む 静 岡
祭りの夜私に削る物がある
効き目ない赤い糸だが紡ぎます
加湿器を据えてる愛が乾くから
「お片付け」 川村 洋未
思い出の詰まる袋が粗大ゴミ 静 岡
片付けをすると決めても重い腰
高価でも使わなければ捨てちまえ
金以外全部ポイさと教えられ
「 秋 」 森下 居久美
彼岸花咲いても夏が終わらない 掛 川
止められないかっぱえびせんと読書
私の時間を過ごす美術館
初めてのキャッツに心奪われる
「自 由 吟」 真理 猫子
伝言板だれも書かないまま五年 岡 崎
百均に用意されてる五円玉
聞けなくて聞けなくてまだわからない
求めない分だけ爪が枯れていく
「流 行 語」 増田 信一
我が家でもされてみたいなおもてなし 焼 津
じぇじぇじぇじぇじぇ離婚届を突き出され
倍返しされるくらいにもてたいな
日本中異常気象が振り回す
「マニキュア」 佐野 由利子
慣例を消しゴムで消す嫁が来る 静 岡
新鮮なキャッチコピーで町興し
長生きの血筋と思う母白寿
マニキュアを落した爪の深呼吸
「雑 詠」 長澤 アキラ
ご当地の銘酒を褒めて様子みる 静 岡
蒸し方が足りなかったかまだ迷う
小遣いをアベノミクスにぶら下げる
砂時計お前淡白すぎないか
「秘 密」 勝又 恭子
三人目入り秘密が色褪せる 三 島
満月がひとつ産み落とした秘密
孵化しそう私の中の恋心
透明な箱にしまっておく秘密
「雨 宿 り」 松田 夕介
負けたっていいんだネバーギブアップ 静 岡
泣けてくる子どもの方がお金持ち
腕時計外してごらん雨宿り
天岩戸母ちゃん開けて腹へった
「恋 と 筆」 望月 弘
エンピツの芯に闘争心がある 静 岡
筆圧を信じていますシャープペン
恋文に拒絶をされたボールペン
毛筆の仲疑わぬのし袋
「悪 女」 加藤 鰹
マティーニのグラスの中にある殺意 静 岡
ブルーベルベット淫らな夜になる
しなやかな指でオトコのホネを抜く
他殺かも知れない美女の水死体