「一年の終わりに」          栃尾  奏子

押し寄せて来て追い越してゆく師走            大 阪

晦日蕎麦優しい顔をしてすする

除夜の鐘指切りは無かったことに

一年に感謝感謝の大晦日

 

 

「お節商戦」             尾崎  好子

十月の初旬頃から予約戦             藤 枝

松の値が七十五万とはじぇじぇじぇ

世の中の上には上の暮し向き

では私今日の日付の五割引

 

 

「小さい秋」             奥宮  恒代

まあいいかつるべ落しの秋だもの             森 町

予約した栗ようかんの食べ比べ

まだ生きております噂ではあの世

飾らないオンリーワンでいいのです

 

 

「自 由 吟」             荒牧 やむ茶

お日様をシェアする僕もみの虫も           小 山

あと一歩あと一歩って生きている

ジャスミンの香り漂う嘘が好き

魯山人の皿で溺れる焼き秋刀魚

 

 

「聖  夜」             外側 としみ

てっぺんの星を取ってと困らせる        磐 田

クリスマスローズは何故かおしゃべりで

キャンドルが北極星とコラボする

聖夜にはこぼれるほどの流れ星

 

 

「秋  月」             薗田  獏沓

月明かりスマートな影道連れに        川根本町

宵散歩月に出会った田舎道

月は雲酔った振りして手を繋ぐ

月のベンチ忘れた杖が露にぬれ

 

 

「  鰌  」             寺田  柳京

泥沼へ鰌が逃げて猫の負け              静 岡

メモ帖に書けぬ名前で忘れない

どれ程の意味かお経が分からない

お迎えは要らぬボチボチ歩くから

 

 

「敬 老 会」             畔柳  晴康

米寿だと席を上座に禿の人           浜 松

ひと言とお祝い言葉長すぎる

お若いね歳がばれたよ晴れの席

来賓の祝辞に負けて欠伸咬む

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

てきぱきとできたらいいな大そうじ        盛 岡

お土産のお菓子を食べて元気出る

置き時計メロディ音が心地良い

動じない強い人間めざしたい

 

 

「未  練」             新貝 里々子

石どけてください恋が通ります          袋 井

石の上に三年石も耐えている

ここからは立ち入り拒否の石ひとつ

出直そう胸の小石はみんな捨て

 

 

「  月  」             山田  浩則

かくれんぼ月を見つけた雲の中             島 田

月を見てボツでいいから詠んでみる

お月様抱かせてくれと問いかける

窓の外月の光が照らしてる

 

 

「熱  い」             小林 ふく子

幸せを煮込みおでんが笑ってる          袋 井

熱燗に迫られビールすねている

覚悟したお灸の熱は心地良い

燃え尽きたはずの今年へ立つ煙

 

 

「自  由」             滝田  玲子

医者信じ安心感で飲む薬                 浜 松

右利きの右手に傘を頼る杖

強情を反省させる仕舞い風呂

案山子より田んぼアートで人を呼ぶ

 

 

「振り返る」             安田  豊子

宿命か格差社会の影で咲く            浜 松

窓を拭く邪念を透かすまで拭う

自分史を手繰る記憶もセピア色

言い訳が過ぎて私の芽が萎む

 

 

「筑 波 山」             毛利  由美

紅葉が渋滞させる登山道               つくば

山男にとっとと追い抜いてもらう

山ガール 女が見ても愛らしい

これからが正念場です下山道

 

 

「元気です」             真田  義子

人の声聞こえて朝が始まりぬ           仙 台

自分史にあざやかに描く夢ひとつ

恋ひとつ笑い話にしてしまう

おしゃれしてゆっくり登る六十路坂

 

 

「誤  算」             渥美 さと子

歳時記がまた欠伸してクシャミして             静 岡

遠回りしても足りない帰路の恋

おいくつですかキイロ モモイロ カーキ色

暇な日は夫観察デーとする

 

 

「雑  詠」             多田  幹江

猫カフェに嵌っています病んでます        静 岡

迷わない自分で描いた道標

アベノミクスの行方は知らずはしゃぐ風

三途の川はお釣りをくれますか

 

 

「育  親」             恩田 たかし

歌姫の美声に酔って夢心地           静 岡

宝くじいつも買っても夢のくじ

仕事より子どもと遊び倍疲れ

育児かな育児じゃないな育親だ

 

 

「ひとまわり」            川村  洋未

ひとまわりしたけどやはり君といる          静 岡

御褒美は羽毛ぶとんの暖かさ

手を出した何かもらえる気がしたの

団栗に生まれ枯葉の下で死す

 

 

「  石  」             酒井  可福

秋祭り小銭転がる石畳                  北九州

石垣にされて絶えてる石の顔

石つぶて懐に秘め出る会議

石仏が町の不満に耳を立て

 

 

「宇  宙」             増田  信一

宇宙から見れば何でもないことさ        焼 津

星が降る大草原で寝てみたい

お月様酔って二つに見えちゃった

流れ星欲をかき過ぎ舌を噛む

 

 

「  秋  」             井口   薫

素直なる婆婆に戻って大根煮る          袋 井

ムカゴ飯亡母としばらく語り合う

数粒を仏と分けて栗ご飯

松茸が素通りをして秋深し

 

 

「師  走」              濱山  哲也

十二月かにカニ蟹と来るチラシ              つがる

達郎を毎年歌うイヴの夜

ディセンバーと師走が混じる十二月

お歳暮は来ぬが督促状は来る

 

 

「自 由 吟」             鹿野  太郎

昼と夜それぞれにあるサングラス        仙 台

秋の夜桔梗が咳をまた一つ

先を読む事が苦手の道具箱

斜め切りして増税の火縄銃

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

学童の声が聞こえる秋の空              さいたま

旅に出る今が一番若いから

寒くなり重ね着しすぎ動けない

断捨離で見つけた本がすぐ痩せる

 

 

「雑  詠」             内山  敏子

中秋の月と一緒に万歩計            浜 松

介護ロボ心の温み通じない

夕焼けがいつか溶けてる思慕ひとつ

いたわりの歩幅が揃う介護の日

 

 

「十 二 月」             岩永  圭二

クリスマス予定無いから寝ていマス       大 阪

鍋の時期メガネが曇るお約束

サンタさんほんとの姿親の愛

白いヒゲ季節限定ヒーローに

 

 

「戻  す」             藤田  武人

ふりだしに戻れとサイが主張する        大 阪

繰り返し寄せては戻す白い波

人生をリセットしてもまた君と

やり直しできるかなーと砂時計

 

 

「ネイルケア」            萩原 まさ子

隠すほど能ありませんネイルケア         静 岡

爪弾きされても見てろ戻ったる

ネイルケア忘れた娘の寝顔見て

爪に火をともす増税への覚悟

 

 

「十 二 月」             森下 居久美

日本人だから冬至にはカボチャ            掛 川

雪被り富士山らしくなる師走

イブまでに出そうと決めた年賀状

換気扇からやっつける大掃除

 

 

「人恋しい秋」            谷口 さとみ

顔出してくれる海老入れ一人鍋         伊 豆

寒いからカセットコンロで一人鍋

残ったらそのまま明日へ一人鍋

コマーシャルつい口ずさむ一人鍋

 

 

「なまけもの」            鈴木 まつ子

贅沢なくらし減らせぬダイエット             島 田

ときめきも薄れ葉うらのカタツムリ

若者の背だけが伸びて昇華され

弾まないなまけ者ほど食急ぎ

 

 

「ユーモア川柳」           岡村  廣司

愚かさは素直に父を継いだから          焼 津

少年が慣れた手付きで吸う煙草

薮医者と言いつつ通う十年目

死ぬ迄は生きてる積り大丈夫

 

 

「  爪  」             安藤 千鶴子

いつ切るか爪のことわざ気にかかる           静 岡

マニキュアで体調示す色が消え

缶開かず爪の立て方猫に聞く

爪を噛む不満か癖か気にかかる

 

 

「どうするね」             川口   亘

まだ其処をどうして通る気に迷い         藤 枝

滅法に強い筈だと虚勢張り

手を出して噛まれて知った犬の性

足腰が何故に萎えたかよく知らぬ

 

 

「雑  詠」             野中 とし子

また今日も嘘かまことかスキャンダル      静 岡

子どもらのパカパカしてよ懐かしい

馬小屋でキリスト様はすこやかに

紅白に時代の流れ追いつけず

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

寿司ネタにうまく化けたなマグロサバ       静 岡

スマートにうまく話せたマイ英語

松葉杖うまく歩かすすぐれもの

黒い馬肥やしてしまうメガバンク

 

 

「  馬  」             川村 美智代

草食で笑う歯並び馬に似る               静 岡

馬の目に駆け引きもなく欲もなく

馬車馬の悩み毎日日曜日

楢山へ少し馬力を残しおく

 

 

「弟  よ」             中矢  長仁

口癖は三惚れだった弟よ             松 山

土地に惚れ仕事に惚れて妻に惚れ

旅の地に子孫増やしてはびこらす

孫たちに取り囲まれて嬉しそう

 

 

「自 由 吟」             南   天子

反論をする風好きになれなくて              焼 津

不用品捨てる日課で疲れ果て

一日に二食と決めて丁度いい

ガラス窓ブスの私が一段と

 

 

「ス マ ホ」             川口 のぶ子

あちこちにスマホが飛んで危ないね       藤 枝

日常を老いも若きもスマホ漬け

老けこんだ夫の好みは時代劇

年寄りが若さ求めてアニメ好き

 

 

「まあいいか」            飯塚  澄人

作曲家なった気分に符が読めぬ          静 岡

ペット君両足籠に主人待つ

女性部が低音まとめへり下りる

予報士の出過ぎる画面草臥れた

 

 

「さよならを干した朝」        戸田 美佐緒

ジャンケンに勝って気がつくさようなら       さいたま

水たまり飢えた男の首が浮く

ひび割れた骨をしゃぶって生きている

洗っても干しても喰えぬ首である

 

 

「動けぬ私」             池田  茂瑠

真実を知りたい古い紐を解く           静 岡

私の情けと轍乾き切る

髪切ってみても悩みは重いまま

花束に括られ私動けない

 

 

「当たり外れ」            森 だがやん

事故ばかりおかま掘られる当たり年        島 田

我が家ではパパがやるのが当たり前

クイズ見て力説したら大ハズレ

久しぶりキャッチボールで肩外れ

 

 

「良  心」             永田 のぶ男

不貞腐り点滅しない反抗期            静 岡

聞えるか聞えないかと耳鼻科医師

判断を自問自答で恥じぬ身に

良心と呵責に耐える弥次郎兵衛

 

 

「自 由 吟」             成島  静枝

出品に意義を見いだす文化祭          千 葉

上手い下手言わぬが花の文化祭

電飾の街へご一緒しませんか

先延ばしした付けが来る大掃除

 

 

「小銭入れ」             山本 野次馬

風向きを見極めてますカメレオン           函 南

突風に見栄のカツラを外される

片言の愚痴も入れます小銭入れ

隠れ家は妻の布団と決めている

 

 

「終業チャイム」           鈴木 千代見

お疲れさま何と響きのいい言葉              浜 松

更衣室御局さんの目が刺さる

金太郎飴退社の門を切って出る

さよならも告げずにそっと散るもみじ

 

 

「自 由 吟」             山本 ますゑ

原石に光を当てて丸くする              磐 田

丸顔も四角もあって座が和む

物分かりいい人集め守る椅子

譲り合い目が物を言う狭い道

 

 

「明日が有る」            石田  竹水

好きな事やっているのに寒い冬         静 岡

延命をすると預金が乾涸びる

守らない約束が有る明日が有る

気にもせず食べてた穴の無い竹輪

 

 

「鰯  雲」             斉尾 くにこ

スキャナーをあてられている胸あたり          鳥 取

湿原が広がっていく心よこ

握手した手からもらった鰯雲

女子会へ一角獣もまぎれ込む

 

 

「  穴  」             馬渕 よし子

靴底の穴に社命の棒グラフ           浜 松

空気穴あけてストレス追い払い

イケメンを穴のあくほど見てしまう

老い二人心に穴のあいたまま

 

 

「ヒステリー」            中野 三根子

家計簿をつけてる母がヒステリー         静 岡

訳もなく今日は一日愚痴ばかり

何しても朝からドジが止まらない

旅行の日朝寝坊してお留守番

 

 

「自 由 吟」             鈴木 恵美子

内幕を知ってる妻のあたたか味         静 岡

再起へのファイト内幕語らない

プライドのひげが本音をかくし切る

誘導にはまり本音がポロリ落ち

 

 

「冗句その十二」           西垣  博司

リストラと寿 父と娘の退社          静 岡

惚けてない とぼけた振りがまだ出来る

一八〇私血圧 孫身長

来年も生きる予定で日記買う

 

 

「吊 し 柿」              佐野 由利子

ふる里の秋を彩る吊し柿             静 岡

早寝してあす逢う顔が眠らせず

大切な伴侶と気付く老いの坂

無駄骨と思う布石も敷いておく

 

 

「三つ編み」             真理  猫子

石頭なのに頭突きはからっきし          岡 崎

お祝いに高級鍋で炊くおから

丸顔の順に並んだ授賞式

飛行機の吐息三つ編み編んでいく

 

 

「秋の気配」             勝又  恭子

芸術の秋へ指先にもアート           三 島

日焼けあと消えないままに秋の風

飛び込んで来る人を待つ秋の空

どちらにも行けぬわたしの中の秋

 

 

「自 由 吟」             林  二三子

鉢花の植え替えも苦になってきた        富士宮

明日から明日からねと草だらけ

子ら巣立ち怠けてしまう夕メニュー

勉強もせずにゲームばかりに夢中

 

 

「師  走」             石上  俊枝

干し組のラインダンスの大根が            静 岡

クリスマスパパかサンタか揉める孫

陽がつまる速い師走を追いかける

冬の月澄んで清める我を懺悔

 

 

「すっぴん」             薮﨑 千恵子

すっぴんの方が素敵よお嬢さん              焼 津

有りのままみせてすっぴん親しまれ

緊張の糸がほぐれている素顔

ライバルに素顔みせたら負けになる

 

 

「地獄ツアー」             松田  夕介

地獄行き切符にハンを押せと友          静 岡

自販機の当たりトンビにさらわれる

宝くじ当てたら君にあげるのに

処刑台次はあなたですと歯医者

 

 

「雑  詠」              長澤 アキラ

カメレオンそんな器用に生きられぬ           静 岡

二日酔いしたくて安い酒を買う

かくれんぼ諭吉がいつも捕まらぬ

野良犬のプライド痩せた肋骨

 

 

「想 定 外」              望月   弘

空色は水平線で逢っている            静 岡

にんげんを塩辛くした海の水

割れ目から生えてくるのが播かぬ種

衣食住足りると駄目になるヒト科

 

 

「ディセンバーソング」         加藤   鰹

ミルフィーユ僕らの刻を幾重にも         静 岡

社会鍋美味しいのかと子に訊かれ

キャバクラで出会った女 名は純子

おでん屋の親父泣かせること言うぜ