「伊豆に帰る」 外側 としみ
雪富士に心の底を見透かされ 磐 田
カピバラの思考回路も湯気の中
めでたさを厚切りにして三嶋駒
星の夜はシャトーワインに騙される
「新春の誓い」 成島 静枝
初春の鐘胸キュンの人と打ち 千 葉
新春の誓い懲りないねと笑い
大空へ夢託したい飛行船
スマホでもやろうか老いていられない
「新 春 へ」 新貝 里々子
新春へ向けて海馬にムチを入れ 袋 井
自然体で墓の話もして夫婦
お隣りと海老で鯛釣るおつき合い
新しい手帖に記す通院日
「これでいいのだ」 増田 久子
大学の孫へしぶしぶお年玉 焼 津
口開けたまま答えてる歯科の椅子
老骨をからかっているレントゲン
よく噛んで噛んでついでに舌も噛み
「歴 史」 山本 ますゑ
肩書をはずし自由になる背中 磐 田
方言の温もりに酔うクラス会
愛着の宿った服が離せない
皺の数一つ一つにある歴史
「ユーモア川柳」 岡村 廣司
上がる凧B29はもう来ない 焼 津
裕福と色紙に書いて初春迎え
喪中だよやめておこうかお年玉
正月が終われば元の過疎の村
「倍 返 し」 中矢 長仁
口応え一言すれば倍返る 松 山
耐え忍ぶなんて知らない妻の愚痴
倹約の妻で老後の金貯める
お互いに堪えた心算の五十年
「元 旦」 小林 ふく子
元旦へ女の足袋を履き替える 袋 井
くじけるなくじけないでと初日の出
福袋 中はグレーか白黒か
福笑い形成外科医忙しい
「お馬さん」 毛利 由美
丙午生まれの妹は強い つくば
宝塚 歌劇も競馬場もある
時代劇には欠かせないお馬さん
年とともにポニーテールの位置下がり
「新しい年を思う」 栃尾 奏子
天翔る蹄鉄を今打ち直す 大 阪
ペガサスに生まれたことを思い出す
書き初めたばかりよ燃えている抱負
新しい年新しい志
「お 正 月」 濱山 哲也
室温を35℃にしてアロハ つがる
逃げていた煩悩戻るお正月
ゲイ春とカミングアウトある賀状
今年の抱負一日ひとつ恋をする
「迷子の駅」 斉尾 くにこ
朝霧を行く先知れぬ汽車が着く 鳥 取
ゆっくりと記憶の駅を過ぎてゆく
乗り換えの駅で迷子になる きっと
まちがえた列車だ最後まで乗ろう
「おめでとう」 鈴木 千代見
年賀状手書きの筆が跳ねている 浜 松
手鏡の中の私におめでとう
初という言葉の響き酒交わす
喜怒哀楽胸に畳んで除夜の鐘
「年 末」 鈴木 恵美子
今日の富士はなしの出来る距離にいる 静 岡
主婦の腕見せる師走は決算期
分刻み予定をこなす大晦日
来る年へ初心を根ざす初鏡
「師 走」 奥宮 恒代
お伊勢様瑞穂の国はどこですか 森 町
ペン皿の乱れ焦りは隠せない
古ボトル撫で撫でするの久し振り
煩悩の重さにペンがへし折れる
「雑 詠」 馬渕 よし子
耳掃除してじっくりと愚痴を聞き 浜 松
内緒事話す相手を間違える
好きだよと言えば嫌いと来る木霊
あの涙わたし五回も騙された
「自 由 吟」 内山 敏子
どっこいしょこらしょで朝の深呼吸 浜 松
メーキャップ少し濃い目に白衣脱ぐ
救急の白衣機敏に皆動き
添い寝するママの寝息が先になる
「演 技」 酒井 可福
半分は本気夫婦の演技する 北九州
あのボケは天然なのか演技でしょ
悪妻の演技止めてよ僕の前
演じてるワイフがお茶を持ってくる
「 雪 」 藤田 武人
燃えすぎて一夜で溶けた雪女 大 阪
初雪の便りワクワク僕とポチ
紅葉の山にうっすら雪化粧
新雪に描くパラレルメッセージ
「蛍追う夢」 真田 義子
蛍追う夢を見ている六十路坂 仙 台
二人ならどこまでも飛ぶ雲の上
やがて散るバラの話は面白い
大陽も夜はゴロリと横になる
「年末年始」 岩永 圭二
鍋奉行 鍋がなければただの人 大 阪
年末を歌合戦じゃ越せへんわ
痩せてやる 年始にいつも思うだけ
初日の出ビルの隙間にチラリズム
「自 由 吟」 菅原 花子
南天にいつも守られありがたい 盛 岡
賀状の絵柄選びに精を出す
元気出る今年の暦ちびまる子
午年は何でもうまく行く年に
「自 由 吟」 滝田 玲子
ゆっくりと杖を頼りに明日を行く 浜 松
湯気の立つ噂話に尾鰭付く
夜が更けて一人聞いてる雨の音
背伸びせず我が道をゆくマイペース
「恩 の 海」 川村 美智代
恩の海きょうも波間で浮いている 静 岡
じゃんけんぽんこの世の恩はあいこでしょ
サイレンに飼い主置いて逃げる犬
犬がいてくれてどうにか生きられる
「自 由 吟」 提坂 まさえ
王子様来るには来たが駄馬を連れ 静 岡
真っ向勝負少しこたえた馬の耳
姑力ダークホースを飼っている
残そうか消してしまおか爪の痕
「馬 力」 宮浦 勝登志
背は縮み腰は曲がるが爪は伸び 静 岡
口先と腹とは違い恩を売り
決断へ切符一枚なぜ買えぬ
今度こそ始めの馬力その日だけ
「恩 の 字」 野中 雅生
教室の怨みをはらす謝恩会 静 岡
父親の恩あだ返す孫の声
恩の字をあだと読ませる国がある
恩の字は演歌の時代生きている
「雑 詠」 萩原 まさ子
母に似てほっこりな人と慕われる 静 岡
親の恩逆手に取った悪商法
親譲り箸の持ち方誉められる
深すぎる親の愛情子が沈み
「自 由 吟」 野中 とし子
キャロラインオバマ支援の恩返し 静 岡
謝恩会病院通いで盛り上がり
マニキュアの手で米を研ぐ若いママ
お父さんその爪跡はだれですか
「自 由 吟」 安藤 千鶴子
取り違え血か縁かどの恩選ぶ 静 岡
今あるは親のおかげと鶴になる
馬に乗り富士山越えてグローバル
福の神白馬に乗ってやって来て
「新 年」 石上 俊枝
今年こそ期待膨らむ国の舵 静 岡
カレンダープラス志向で幕を明け
好奇心夢を担いで古希に飛ぶ
元旦の計は元気に万歩計
「背信へ雨が降る」 戸田 美佐緒
背信のカラスは低くひくく飛ぶ さいたま
人間の影になりたい獣道
品性を問われニンニクかしこまる
やってきた雨と一献傾ける
「自 由 吟」 山本 野次馬
借用書厚く重ねて飯を食う 函 南
鎖骨まで溜めた湯船のがん治療
三コマ目やっと笑と対座する
手のひらに収まるほどの善意です
「自 由 吟」 鹿野 太郎
シャンプーをしても晴れない後ろ髪 仙 台
引き返す道をゆっくり考える
家計簿でじっくりとする草むしり
皮膚一枚リハビリ室へ置いてくる
「生 き る」 薗田 獏沓
さり気ない助言心で手を合す 川根本町
人生をゆっくり歩くだけの知恵
無印で生きて自由はそこ此処に
どうしても丸が画けないまま生きる
「雑 詠」 南 天子
柴田ゆきいとこも川柳静波で 焼 津
友の皆私よりも格が上
墓まいり頭の中が冴えてくる
電話する優しい言葉聴きたくて
「自 由 吟」 竹内 みどり
優しくて素直になれる努力する さいたま
ガタガタで生きて行きますA型で
スーパーで庶民の味方探してる
デパートで二時間歩きティータイム
「置きみやげ」 鈴木 まつ子
先立った君の寂しさ付きまとう 島 田
繰り言はもうやめにするこの残花
千の風 土へと還りそれっきり
いつまでも思い切れない置みやげ
「米 寿」 畔柳 晴康
米寿だよ先は永いと元気する 浜 松
人生も表と裏でなる米寿
米寿だろのんびりやれと友の声
米寿だと祝の言葉で老いを知る
「 色 」 川口 のぶ子
一輪の黄色ひそかに菊の花 藤 枝
さざんかの白が目にしむ夕まぐれ
目にしみるあおいの花の赤き色
ほととぎすあわい紫一列に
「暮れの景色」 飯塚 澄人
絶景だフムフムオジさん湯に転ぶ 静 岡
南禅寺四百年の女将居た
ていねいに挨拶したら倍返し
リンゴ顔アフタースクール線に立つ
「当たり外れ」 恩田 たかし
嫌な役外れて欲しいでも当たる 静 岡
ハズレても再度チャレンジ夢のくじ
ハズレてもいい事あるさ前向きに
セパリーグ勝ち負けよりもセール待ち
「雑 詠」 川口 亘
思い出を書き貯め見る明日の糧 藤 枝
愛嬌は笑顔に限る知る今宵
行き盡いた気持ちにそっと花を添え
無理強いは体に悪い楽に生き
「不 眠 症」 松橋 帆波
正直な人が胃薬飲んでいる 東 京
反省のネタばかりある不眠症
不眠症冷蔵庫すら敵であり
梅干しのように胃薬飲んでおり
「消 費 税」 森 だがやん
消費税上げて賃金変わりなし 島 田
消費税上げで小遣い下げとなる
春に上げ景気は真冬消費税
消費税何に使うか機密かな
「 夢 」 山田 浩則
宝くじ大きな夢を買いに行く 島 田
ハズれても次の夢など期待する
いい夢を期待枕を高くする
今月の最後の夢は万馬券
「こ・の・ざ・ま」 尾崎 好子
友達にくらべ希薄な記憶力 藤 枝
手の甲に何処で作った赤い痣
身嗜みずぼら通してうちん中
歩くって決めたに今日も雨だから
「褒め言葉」 池田 茂瑠
一匹の鬼を女が連れている 静 岡
致死量を超えそあなたの褒め言葉
末席が続く敗者の位置として
魔性の芽伸びてく白い身の底に
「根ぐされ」 多田 幹江
置かれた場所で根ぐされしています 静 岡
三万円のマイセンで飲むウーロン茶
いい嫁御りんご村から来たそうな
貴腐ワイン瓶だけ売ってくれますか
「青 空 よ」 森下 居久美
手打ちそば上手になって除夜の鐘 掛 川
重箱にお正月たち勢揃い
青空よ私はこれでいいですか
手を合わすご先祖様に詫びながら
「ままならず」 永田 のぶ男
信じるに大黒柱細すぎる 静 岡
地の社大吉だけを籤に入れ
禁煙を破る一服味の良さ
出産に整形なしの顔を産む
「歌 う」 渥美 さと子
ビブラート下手で素通りする演歌 静 岡
酔ったふり自負の音痴をカバーする
童歌脱げぬ絣のチャンチャンコ
字余りの歌でたまには見栄を張る
「自 由 吟」 川村 洋未
イケメンの医者に虫歯を見せに行く 静 岡
ほころびをなおすと次の穴が見え
寝たふりを邪魔する風が動き出す
反省会つけるお面はどれにする
「健 全」 石田 竹水
下積みで免疫力を溜めました 静 岡
物腰はソフトで芯は曲げてない
私にも有ります愛のかすり傷
健全な私ご懸念無きように
「洋風おせち」 真理 猫子
クリスマスローズ咲かないクリスマス 岡 崎
元旦にもうやり残してた事が
アップルパイ嘘がはがれていくようで
表向き平和キャラメルマキアート
「断 捨 離」 増田 信一
断捨離をしすぎて風邪を引く我が家 焼 津
断捨離と勿体無いを繰り返す
断捨離のイの一番に名が挙がる
買うのは一秒捨てるのは一年
「お 正 月」 谷口 さとみ
十円で一年の幸予約する 伊 豆
無期限の約束のせて年賀状
夢色をダウンの下に着て年賀
パパは餅ママはトースト僕カレー
「自 由 吟」 荒牧 やむ茶
鼻息も荒く午年やって来た 小 山
嘘なみだ女は女優だと気づく
ウクレレは弾けないけれどハワイ好き
年輪を重ねほど良い出汁になる
「2014」 勝又 恭子
湖面にもひとつ世界遺産の富士 三 島
揺れ続けているわたしの中の水
こぢんまりしてくる新年の抱負
元日の朝に大きな晴れマーク
「人 生」 中野 三根子
おもしろい何が起こるか人生は 静 岡
あら不思議人の出逢いも人生も
大切な友にもめぐり会う旅路
ダイエットしたら人生かわるかも
「年の暮れ」 長澤 アキラ
粉骨も砕心もして年の暮れ 静 岡
高度成長転んだ傷がまだ疼く
大掃除古傷だけが片付かぬ
穴に落ち何がおかしい松葉杖
「自 由 吟」 薮﨑 千恵子
塗装屋がきて来年の色に塗り 焼 津
調子良く乗って踏み台外される
気遣いが裏目になっている虚脱
顔見知りなった隣の猫がニャー
「晩 秋」 林 二三子
雪冠る富士が美人に見えてきた 富士宮
富士を背に紅葉が冴えている湖畔
朝夕に富士を拝んで暮らす幸
晩秋の里山で見る美人富士
「お 年 玉」 松田 夕介
明けましておめでたいのは子どもだけ 静 岡
水戸黄門気分であげるお年玉
お年玉回収します7ならべ
お年玉撤廃たのむ安倍総理
「白寿の母」 佐野 由利子
家中の電球替えて初春を待つ 静 岡
願掛けとあちらこちらへ初詣
百円で十指に余る願い事
お正月白寿の母を囲む幸
「初 春」 望月 弘
川柳の種を弾けよ鳳仙花 静 岡
多すぎる賽銭神に失礼な
巻き癖をはにかんでいるカレンダー
長老という乾杯の席にいる
「トラック哀歌」 加藤 鰹
ろくでなし達のトラックターミナル 静 岡
チンピラの如くデコトラ運転手
どん兵衛をすすり車内で年を越す
元旦を走る俺ってロンリネス