霜石コンフィデンシャル132   高 瀬 霜 石

 

「ポールがやって来る

ヤア!ヤア!ヤア!2」

 

ポール・マッカートニー作で、1番好きな曲は?

と、アンケートをとったらば、まず間違いなく1位は「イエスタデイ」であろう。

僕は、となると、悩んで悩んで―「エボニー・アンド・アイボリー」なる曲に一票を投じたい。

この曲が生まれるきっかけになったのは、

「ピアノの黒鍵だけでも曲は弾ける。白鍵だけでも立派な曲になる。でも、その両方を巧みに調和させれば、その何十倍も何百倍も素晴らしい曲を弾くことができる」という話を、彼が小耳にはさんだからだという。

ピアノの黒鍵と白鍵を、人種問題に置き換えて、愛と平等を歌ったこの歌は、1982年(昭和57年)に大ヒットした。

その大きな理由は、ポールが、アメリカを代表するスーパースターのスティービー・ワンダーをパートナーに依頼したことである。

エボニー(黒人)のスティービーと、アイボリー(白人)のポールによって歌われたこの曲は、黒人や白人に限らずに、様々な人種間の融和を訴えた愛のメッセージ・ソングとなったのだった。
◇ エボニー&アイボリー ◇

エボニーとアイボリーは 完全な調和を保ちながらピアノの鍵盤に並んでいる

ああ神よ なぜ僕らに それができないのか?

僕らは誰でも知っている 人間はみな同じだと

どこに行こうと 人にはそれぞれ

美点もあれば 欠点もある

「生きる」という意味を知ったとき

僕らは初めて学ぶのだ

エボニー アイボリー 完全な調和を保っている

エボニー アイボリー

 

 

キリスト教(ユダヤ人だって勿論OK)のミュージシャンと、イスラム教のミュージシャンが、ポールとスティービーのように手を携えて、メッセージ・ソングを熱く歌えないものなのか。

アラブの音楽家と、イスラエルの音楽家が、あえて同じ場所で互いの曲を演奏し合い、理解し、称賛しあえないものなのか。この曲を聴くたびに思う。

 

2014年3月号