せんりゅう広場

富 岳 抄

 

 

「ときめき」             酒井  可福

ときめきを隠しあなたに逢いに行く          北九州

ときめきの種は財布に隠し持つ

ときめいた頃の公園ふらり寄る

ときめきも血圧までも下り坂

 

 

 

「いいじゃん」            尾崎  好子

我慢という事すら希薄すぐ離婚            藤 枝

エテ公が温泉三昧とは優雅

ダイエットしたいに食い気侭ならず

お愛想で笑っておけばそれでよし

 

 

 

「記憶の壺」             石田  竹水

信じれば明日を楽しく迎えられ            静 岡

勇気ある言葉が汗をかいている

息の根を止められ鯛の祝い膳

行き詰まり記憶の壺をかき回す

 

 

「免 税 店」             成島  静枝

ぴったりと免税店でつくマーク            千 葉

手に取ると円ではいくら先周り

カモ同士声を掛け合い切り抜ける

小物だけ買ってシブチン日本人

 

 

「五 歳 児」             孝井   栞

補助輪をはずし世界が一つ増え            富 山

妹が叱られ一緒に泣く五歳

ひらがなを覚え絵本の森へ行く

初めてのチョコへ弾んだ恋心

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

新しい自分見つけた川柳で             さいたま

人生はサンドイッチによく似てる

体脂肪 消費税分減らしたい

過疎の人雪にも負けぬ助け合い

 

 

「雑  詠」             内山  敏子

ライバルのたった一歩の差が遠い           浜 松

よちよちを皺の手が追う足が追う

どん底でもらう労り忘れまい

人垣が責任の無い輪を作る

 

 

「  春  」             新貝 里々子

ぐつぐつとわたし煮つめる鍋が焦げ           袋 井

雑草にせっせと水をやっていた

雑草も咲かせてみれば花のかたち

倦きもせず女系家族の焼プリン

 

 

「容易じゃない」           増田  久子

適当にやれと言われるのが困る            焼 津

兄弟でゆずらず犬の名が二つ

捧げ持ち盆へ障子を足で開け

ひとつだけ打つシンバルが難しい

 

 

「ユーモア川柳」           岡村  廣司

しぶしぶと来たのに諭吉さっと出る          焼 津

総理には靴投げる人まだ出ない

振り向いて何だビリかと気がついた

往生は見ますと嫁が事も無げ

 

 

「のっぴきならぬブーケトス」     外側 としみ

君といてのっぴきならぬ春の闇            磐 田

風薫るダマスクローズ摘みにいく

蔓バラのチャットくすぐる春の虹

ブーケトス幸せフワリ舞い降りる

 

 

「自 由 吟」             馬渕 よし子

女子会を仕切る傘寿の肌の艶             浜 松

ふと神が降りて来そうな空の彩

相談か惚気か時間無駄に過ぎ

三食へ勘を頼りでする料理

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

待った春花粉に悩み涙出る              盛 岡

旅したい前に一歩が踏み出せず

真っ直ぐとぶれないように自分軸

腕だめし夢まで見れるナンバーズ

 

 

「アンチエイジング」         小林 ふく子

悲しさも嬉しさも知る白い飯             袋 井

雑草が私へやる気けしかける

百均で恋もあるかと探してる

脱走に成功アンチエイジング

 

 

「冗句その十三」           西垣  博司

引き際に器の程が試される              静 岡

結局は父の生き方しか出来ぬ

人生は経験二度のツノかくし

大根の美学スパッと斬られたし

 

 

「溶 け る」             藤田  武人

一晩でダイエットする雪だるま            大 阪

ツンドラが溶けてマンモス目が覚める

義理チョコが溶けて熱意と勘違い

靴底で踏みしめ溶かす霜柱

 

 

「いまどき」             毛利  由美

ビットコインわけが分からぬまま終わり        つくば

ミニコミ誌にプチ有名な店が載る

XPお前もついに定年か

仕送りもインターネットバンキング

 

 

「  桜  」             井口   薫

今でしょとサクラ前線脳ゆする            袋 井

夜桜へ逢瀬を約す一年後

山桜一週間の自己主張

背景は桜と決めてある遺影

 

 

「自 由 吟」             鹿野  太郎

傷口の闇夜に咲いている石榴             仙 台

納豆の糸から今日の運を呼ぶ

焼酎を飲み干す頃に咲く椿

どうどうと担架に乗って救急車

 

 

「検  診」             鈴木 千代見

私のシフォンケーキのような骨            浜 松

せんべいの乳房女捨てるマンモ

MRIこれが私の脳ですか

胃カメラに食生活を写される

 

 

「ままならぬものよ」         奥宮  恒代

ゾウさんのお鼻は星になったのね           森 町

曙や猫の恋歌切なくて

椿にはなりたくなくて椿の絵

言い訳はできない空の青さです

 

 

「春 の 風」             山本 ますゑ

無造作に投げた小石の軽い罪             磐 田

控え目な話へ少しかしこまる

咲く花へふる里少し近くなる

読みかけの頁をさらう春の風

 

 

「琑末な昨日今日」          斉尾 くにこ

淡水へ逃がしてあげる熱帯魚             鳥 取

家庭へもどす貸し出し期限切れた恋

深入りをしたから傷を覚悟する

修正のきかぬ昨日がくねってる

 

 

「生き物係」             濱山  哲也

よく見れば真面目な顔をしてる鹿           つがる

犬とネコ昼寝のノルマあるらしい

妖怪も幼いときはカワイイよ

おしぼりに手を拭きにくる蝿がいた

 

 

「自 由 吟」             真田  義子

美しい思い出だけを秘めるバラ            仙 台

神様に守られながら生きてます

春風に掴み所のない噂

足音が乱れたままのフクシマよ

 

 

「ファイヤー」            栃尾  奏子

燃えたぎる炎メスライオンになる           大 阪

虚栄心火の輪くぐりもしてみせる

紫の炎揺らしている妬心

燃え尽きて残ったとこが本音かも

 

 

「自 由 吟」             山本 野次馬

好いて人嫌われてヒト死してひと           函 南

戸惑いの翼広げて待つ始発

哲学を絞るレモンの爽やかさ

あとすこし待ってください旅立つ日

 

 

「自 由 吟」             岩永  圭二

うたた寝で気づけばおっと小旅行           大 阪

団子さん君が美味いと上向けない

断固拒否今年も俺は負けないぞ

春なのに何も変わらずちと安心

 

 

「自 由 吟」             鈴木 まつ子

毎日が盆正月のような膳               島 田

冗談の中にも時に本音混ぜ

叱り役宥め役あり子育て記

元気度が低下してくる古稀の坂

 

 

「  桜  」             山田  浩則

お花見に出掛け花粉とにらめっこ           島 田

家山の桜トンネル走る汽車

桜よりはるかに目立つランドセル

お花見の場所に迷って桜散る

 

 

「記 念 日」             中矢  長仁

妻の喜寿二人で祝うホテル食             松 山

記念日はホテルが良いね水入らず

喜寿傘寿子らに言っても知らん顔

カレンダー予定は子らの誕生日

 

 

「四  月」             石上  俊枝

園服のポケット涙隠してる           静 岡

ピョコピョコと名札が踊るランドセル

制服が校門向かう友と夢

自転車がピカピカ走る通学路

 

 

「自 由 吟」             安藤 千鶴子

駄菓子屋は昭和の茶の間温かい            静 岡

金メダル望むマスコミうるさ過ぎ

本物のコピーは世界一の国

今あるは親のおかげと鶴になる

 

 

「き、の、う」            野中  雅生

金権とノンポリ政治うんざりだ            静 岡

希望もち上ってきたぞ上野駅

基礎英語のんびり二年うまくなり

君だけが望みの人とうそを言い

 

 

「自 由 吟」             宮浦 勝登志

記憶力伸びるはずない生まれつき           静 岡

気晴らしに飲むイッパイへ埋める愚痴

きっぱりとノーとは言えずうろたえる

足らぬとこ互いに埋めて馬が合い

 

 

「自 由 吟」             野中 とし子

金色にのぼりきったと嬉し泣き            静 岡

うちの子は兄弟で脳天気なり

今日もまたのんびりすぎてうたた寝か

子山羊たちオオカミの手に扉開け

 

 

「にせ氾濫」             川村 美智代

議事堂へお国のために死ねる人            静 岡

道産子はしずおかのウニ食べません

飽きもせず長持ちもするけど高価

にせ氾濫やまと魂泣きまする

 

 

「感  謝」             萩原 まさ子

お弁当なくても五時に起きる母            静 岡

親譲り箸の持ち方誉められる

駄菓子屋でクラス会議の決をとる

深すぎる親の愛情子が沈む

 

 

「自 由 吟」             提坂 まさえ

七光り重たいけれどあるといい            静 岡

吉と出て脳じんわりと浮かれ出す

きれいごと脳波きっちり映し出し

決められぬ能書きばかり浮き上がり

 

 

「砂 時 計」             安田  豊子

転ぶ度きっと誰かが嗤ってる             浜 松

握手する時に空しい嘘をつく

八起き目のチャンスなどないひとり独楽

音もなく惰性に落ちる砂時計

 

 

「雑  詠」             飯塚  澄人

もう一杯飲みたいもんじゃ瓶が空           静 岡

まあいいさ歯医者の助手も悊れる日が

消し忘れ朝に気が付く豆ラジオ

解体屋オヤジの巧くゆく声が

 

 

「自 由 吟」             南   天子

下手くそなうそをつくから笑えます          焼 津

暖かい心一つで生きて来た

友守るそれが私の使命です

弁解はしなくていいよ反論も

 

 

「春よこい」             川口 のぶ子

春の風冬の名残りをちょっと見せ           藤 枝

春なのに冷たい雨が邪魔をする

コブシの芽ちょっと開いて一休み

春ですねピンクの椿チラホラと

 

 

「  穴  」             薗田  獏沓

土の穴平和に蛙眠ってる               川根本町

山の穴子熊が二つ顔を出す

穴を出た日から命のドラマなり

皮剥けばテントー虫がしゃがんでる

 

 

「自 由 吟」             滝田  玲子

ゆっくりと杖を頼りに明日を行く           浜 松

湯気の立つ噂話に尾鰭付く

夜が更けて一人聞いてる雨の音

背伸びせず我が道をゆくマイペース

 

 

「範  囲」             川村  洋未

後二回行ければボトルキープする         静 岡

百グラムボクサー並のダイエット

千羽鶴誰も数える訳もなし

シニアです守備の範囲は広いのよ

 

 

「一  つ」             池田  茂瑠

水すまし一つ下さい丸い輪を           静 岡

バラの花少し乱れが欲しかった

持っている背の劣性を除く鞭

一つだけつける華麗なオンナ偏

 

 

「雑  詠」             川口   亘

風邪を引き身に包み込む想い込み           藤 枝

のんびりが効いてあくせく世に侍る

蹴手繰りにちから誇示する当り見せ

薬袋の使いひとつで気も変わり

 

 

「  逆  」             畔柳  晴康

逆風に肩怒らせて耐えている             浜 松

逆境も浮世試練と受けて立つ

湖が逆さ富士見せ笑顔する

一度では済まぬ逆境潜り抜け

 

 

「  黴  」             戸田 美佐緒

ドーナツの穴から狙う狙撃兵         さいたま

シナリオのト書に愛と書く迂闊

軸足がずれないように履く草鞋

糸状のカビが生えてる理想論

 

 

「自 由 吟」             荒牧 やむ茶

返したい恩があるから生きられる           小 山

割り算はちょっと苦手な一人っ子

勝ち馬のしっぽに駄馬がしがみつく

幸せの切符くださいハウマッチ

 

 

「五  輪」             増田  信一

五輪ファン熱くなるのも冷めるのも       焼 津

一面を五輪が飾るああ平和

参加することは何処かに行く五輪

五輪には魔物が居ると言うメダル

 

 

「春よ恋い」             真理  猫子

二十歳から二十年間二十歳です            岡 崎

永いこと連れ添ってます花粉症

青春の切符使いたいんですが

恋泥棒二十四時間ドーパミン

 

 

「あ の 日」             森下 居久美

今日だから口ずさみたい歌がある           掛 川

還らないあの日へ思い馳せている

時だけが過ぎて主を待つ野原

明日への思いを繋ぐ手を繋ぐ

 

 

「旅ごころ」             佐野 由利子

お花見をする国 戦する国も              静 岡

挨拶もマスク通しの花粉症

言い訳をぐっと飲み込む花の下

お誘いにのってみようか旅ごころ

 

 

「幸  せ」             中野 三根子

幸せというゆとりある我が余生            静 岡

時々はケンカ相手がいて欲しい

ふと気づく幸せだなあ生きている

ワクワクと毎日過ごす良い仲間

 

 

「見越しの松」            多田  幹江

節分の豆が居座る余寒かな              静 岡

馬の耳通ると噂丸くなる

湯タンポの代りと猫の恩返し

どう見ても見越しの松は頭が高い

 

 

「自 由 吟」             薮﨑 千恵子

春よ春スキップをしてずっこける           焼 津

慶祝の行事ひしめく新年度

わきまえぬけじめあとあとまで響き

赤ちゃんが寝ているからと忍び足

 

 

「肉 体 美」             永田 のぶ男

身の美貌五センチ減って五キロ増え          静 岡

入れ歯忘れサ行ラ行が聞きとれず

歩いても駆けても解る蟹の股

ニッコリと笑う笑窪が花のよう

 

 

「終 わ る」             渥美 さと子

紅椿ポトリ大事な恋終る               静 岡

恋終る黒板の字を消すように

矢が折れて天使の恋も終焉へ

古傷は鰺の小骨がすべて罪

 

 

「  春  」             林  二三子

雪押し退けあちらこちらに蕗のとう          富士宮

城と桜春の息吹を感じさせ

花粉さえ無ければ楽しい春なのに

方々から花の便りが届く春

 

 

「リセット」             谷口 さとみ

今日の憂さ送信先が見つからぬ            伊 豆

退勤時リセットボタン打刻する

この我慢してよいものか腹にきく

辞表ならいつもあるから頑張れる

 

 

「  春 」             勝又  恭子

断捨離がすめば案外広い部屋             三 島

あの人の海はいつでも凪いでいる

優しさに触れてまあるくなっていく

春うらら私もポンと花開く

 

 

「自 由 吟」             松田  夕介

ネコババはズルい花咲か爺さんよ           静 岡

スギ花粉たわわ遠慮をしておくれ

チューリップ咲く音きこえそうだ春

ナメクジの気持ちを知った塩サウナ

 

 

「雑  詠」             長澤 アキラ

犬缶も猫缶もある妻の留守              静 岡

節分の豆を数えて泣けてくる

よそ目には奇麗に見える虹の橋

ボケたかな春か冬だかわからない

 

 

「ひねもす」                 望月    弘

せかせかと雪を見たくて蕗の薹             静 岡

男には無いスッピンの化けの皮

三コマ目まではすらすら描けたのに

定年のひねもすのたりのたりかな

 

 

「春らんまん」             加藤    鰹

真央ちゃんでなく森さんがすぐコケる           静 岡

枕もと土屋アンナが立っている

サクラサクすっからかんになる財布

そう言えばさあとカサブタ剥がされる