せんりゅう広場

富 岳 抄

 

「酒呑み親子」            森 だがやん

酒飲んで頬ずりするな髭痛い             島 田

飲みたいかチョットだけだぞイケる口

ウケるから調子に乗って飲み干した

学校を初めて休む二日酔い

 

 

 

「振り返る」             鹿野  太郎

妻の手の中で油断をしてしまう            仙 台

鈍行で浮き世の垢を流す旅

理想とは違うところに首がある

神様の作った坂でまた転ぶ

 

 

 

「夏 支 度」             栃尾  奏子

きゅうりもみ小鉢に涼をそっと盛る          大 阪

紅ショウガ詩人になれと言われても

夏支度風鈴吊るすワンルーム

ラタトゥーユさあ夏野菜踊らせる

 

 

「JAPAN」            伊藤  豊志

一カ月間だけ侍のバイト               宮 古

先生よこの君が代が聞こえるか

金髪にしたいが許さない親父

ロスタイム静かに腹を切る用意

 

 

「水しぶき」             斉尾 くにこ

はしゃいでる私を連れ戻すわたし           鳥 取

散歩道カラスの威嚇とんでくる

腑に落ちるとき撒き散らす水しぶき

寄り添って柔らかくって重くって

 

 

「飲み放題」             孝井   栞

安すぎる店の裏口閉めてある             富 山

飲み放題徐々に変身する御酒

綺麗さは追及しない暗い店

酔うほどに催眠術にかかる店

 

 

「自 由 吟」             濱山  哲也

金持ちはケチだとなげくその隣            つがる

文化人ぶって飲んでる瓶ビール

レントゲン撮ってはみたが空財布

ダイエットいつからやるか「明日からでしょ!」

 

 

「冗句 その十五」          西垣  博司

夫には内緒理想に程遠い                静 岡

妻ですと年の差婚を照れている

へそくりの額とあり場所知らぬ振り

別姓の夫婦表札二つある

 

 

「もったいないと思うこと」      増田  久子

バイエルでやめたピアノのクレジット          焼 津

名文の手紙だろうが草書体

お育ちを芋が知ってるクラス会

わたくしのお口に合いませぬキャビア

 

 

「難  問」             奥宮  恒代

雨降りもいいしみじみと読むマンガ          森 町

好きずきが虫にもあって瓜破滅

レアメタルどこ迄ヒトはゆくのです

回遊魚詫びねばならぬメタボ腹

 

 

「自 由 吟」             内山  敏子

それぞれに役割がある塩コショウ           浜 松

旧姓で呼ばれ昔が走り出す

口笛もリズムに乗せる青田風

リストラの靴が欠伸をしてる朝

 

 

「おばあさん」            新貝 里々子

おばあさんばかりで混んでいる眼科          袋 井

おばあさんとは一線を引いている

病名に老人性とついていた

結局わたしもひとりのおばあさん

 

 

「ユーモア川柳」           岡村  廣司

何度でも待ったが出来るへぼ将棋           焼 津

そんな事も知らないのかと笑う辞書

据膳を一度も食べた事が無い

貴男だけそんなせりふに弱い僕

 

 

「梅雨の夜」             安田  豊子

いたずらに褪せたアクセル踏むばかり         浜 松

意のままに漕げばブランコ捩くれる

逢いたくて酔えば空しい酒の妙

ひとり居て想い巡らす梅雨の夜

 

 

「怪  我」             薗田  獏沓

冷たさに殊更痛い冬の怪我             川根本町

野仏の前で転んだ冬の怪我

便利さに馴れた手足が動かない

観世音十一面の梅雨の前

 

 

「自 由 吟」             毛利  由美

銀婚のついでに包丁を替える             つくば

実印は逆に押しても分からない

女には女の都合セミロング

両方の言い分そうそうは聞けず

 

 

「ハードル」             真田  義子

ハードルを下げると何故かよく笑う          仙 台

初夏の風ゆっくり抜いた胸のトゲ

ペットからもらう幸せかみ締める

諦めた夢をも一度拾う旅

 

 

「  草  」             戸田 美佐緒

風がやむ木の葉一枚喋らない         さいたま

決断の時を待ってる王妃様

王様が戦い方を思い出す

沈黙も足し薬草を処方する

 

 

「自 由 吟」             成島  静枝

一筆箋一言添えて領収書               千 葉

言い訳は考えてある淀みなし

翌朝にドラマは起きぬ期限切れ

私にも人脈らしきものが出来

 

 

「明日は晴れ」            外側 としみ

誘われた迷路の先は行き止まり            磐 田

ストレスをほぐしてくれるマキアート

ハミングをつなげて今を謳歌する

夕焼けが空染め分けて明日は晴れ

 

 

「雑  詠」             馬渕 よし子

暮らし振り違って会話弾まない            浜 松

旨いのか不味いか妻の味に馴れ

携帯に出なくて用を成し遂げず

横文字のメニューメタボにさせたがり

 

 

「自 由 吟」             酒井  可福

窓際の景色に馴染む定年日              北九州

辞表には社長を他でやると書く

大者になった狸の腹鼓

窓明かり消えてあの世に旅に出る

 

 

「後期高齢」             井口   薫

チップ装着しかたなかろう高齢化           袋 井

年金の枠で互いに見栄を張り

ロボットを視野に会話のお勉強

無呼吸の造花の憂に気づかない

 

 

「少  し」             鈴木 千代見

耳栓を緩めて小言遠く聴く              浜 松

甘い言葉心の扉半開き

こちらではやさしい雨が降ってます

雨の日は楽し電話の来る予感

 

 

「  手  」             小林 ふく子

誤作動へフリーズしてる手も足も           袋 井

手仕事に世代違いの味が付き

お手上げの夜の布団はやさしくて

ライバルか握手一つが冷えている

 

 

「  苺  」             鈴木 恵美子

歓迎の花が微笑む無人駅               静 岡

久能路に苺娘の旗が揺れ

日焼けした苺娘の振る小旗

ひよどりに先を越された苺籠

 

 

「自 由 吟」             鈴木 まつ子

端居して聞えぬふりの地獄耳             島 田

厄逃れ平均寿命保たれる

熟考や舌にころがす金平糖

スカートの裾ひるがえす日本晴

 

 

「初  夏」             畔柳  晴康

庭下駄に足のせ緑かげ探す              浜 松

湯浴みして団扇片手に日が暮れる

酒のあと冷たい蕎麦をすすり込む

夕焼けが燃えて暮れゆく夏がくる

 

 

「自 由 吟」             南   天子

友だちを一人残らず守りたい             焼 津

悩みごと何でも聴ける人になる

誕生日五月十日で五月病

ストレスを足許に置く同居人

 

 

「ぎっしり」             藤田  武人

本棚に絵本ぎっしり母の声           大 阪

お土産を買いすぎフタが閉まらない

隙間なく思いを書いたラブレター

巣を見ればヒナが口開け餌を待つ

 

 

「  手  」             山本 野次馬

手のひらにふわりと乗った風の精        函 南

手の指紋苦労話が終わらない

五指みんな夢見て育つグーチョキパ

いつからか指輪を外す癖がつく

 

 

「下五しりとり」           中矢  長仁

寝そべっていては駄目よと散歩する       松 山

散歩する寄り添いながら老夫婦

老夫婦どちらが先に介護する

介護することを互いに覚悟する

 

 

「夏が来た」             岩永  圭二

キラキラと光り輝くデコとハナ            大 阪

水遊び恨めしや~と見る大人

ジリジリの後のビールはキンキンに

パラソルに顔を隠して誘惑よ

 

 

「三保の松原」            山本 ますゑ

借景を世界遺産にする快挙              磐 田

羽衣の松に調和の富士の山

景観を眺めて急ぐバス旅行

排ガスに追いつめられる松並木

 

 

「は て な」             川口   亘

遠耳を気さくに話す老いの坂             藤 枝

別れ際やっと素直に立ち還る

笑顔だけ絶やさぬ事に気をつかう

合い槌が合わないことの有るを知り

 

 

「梅  雨」             川口 のぶ子

甘夏の棘に何度もなやまされ             藤 枝

梅雨前に庭の刈込みやっと済み

紫陽花の今年は何故か花咲かず

梅雨入りを喜ぶ蛙ケロケロと

 

 

「自 由 吟」             竹内 みどり

散歩道今日の出会いはカキツバタ          さいたま

人生はひたすら歩くこけながら

体脂肪増えた減ったと忙しい

カラスさん今日も元気で笑ってる

 

 

「自 由 吟」             菅原  花子

ポチとタマ仲良く散歩楽しそう            盛 岡

天候の変化激しく追っつけず

何事もプラスにとらえ乗り越える

希望もちいつも笑ってハイチーズ

 

 

「自 由 吟」             飯塚  澄人

計算器するほど稼ぎ多くない             静 岡

売れっ子の詩人も書けぬ話する

良い方に取ろうね今日は深呼吸

川越の菓子屋横丁豆笑う

 

 

「雑  詠」             川島  五貫

魂が飛び出ちゃうから押さないで           富 士

もう言うな注いだビールが泣いている

玄人の帯にはほどのよい透き間

さっと出た強い言葉に希望の灯

 

 

「自 由 吟」             安藤 千鶴子

陰膳に運勢を見て無事祈る              静 岡

留守すると私のうわさ花盛り

親バカは夢中で理性留守になる

見回せばスローライフに宝物

 

 

「自 由 吟」             野中 とし子

なつかしい駄菓子屋さんのおでん味          静 岡

いつまでも仲むつまじくかっこよく

いい気分波の音する海岸線

孫どもに留守を頼まれいそいそと

 

 

「自 由 吟」             川村 美智代

一匹が鳴いている母かもしれぬ            静 岡

今でしょうなんてカラスの勝手でしょ

インチキか泣きべそをかく割烹着

生きていく泣いて笑って風邪ひいて

 

 

「自 由 吟」             野中  雅生

本物は自慢話をしないもの               静 岡

赤三つえらい人でも落第だ

三役が揃い踏みしてまた負けた

君だけが望みの人と嘘を言い

 

 

「  雨  」             山田  浩則

雨傘を差してトトロの森に行く            島 田

雨蛙トノサマガエルに負けました

傘なんか役に立たない強い雨

軒下のてるてる坊主雨に濡れ

 

 

「か き 氷」             尾崎  好子

シャカシャカと今驚きのかき氷          藤 枝

焙じ茶と甘酒生姜トマト味

苺メロンあずきは昭和からの味

進化系マンゴー・リンゴ・エトセトラ

 

 

「昔の初夏」             石上  俊枝

青白く怪しく誘う誘蛾灯             静 岡

麦からで祖母と作ったホタル篭

畦道をピョンピョン蛙梅雨知らせ

蚊帳の中雷様に臍隠す

 

 

「クラシック」            川村  洋未

CMで初めて聞いたクラシック            静 岡

クラシック眠くなるから大好きよ

クラシックダイジェスト版見つけ買い

コーヒーはインスタントでクラシック

 

 

「豆ごはん」             中野 三根子

豆ごはん今年も炊いて娘待つ          静 岡

究極の豆を求めてごはん炊く

大好きな豆ごはんなら来る娘

三杯もおかわりをしてご満悦

 

 

「自 由 吟」             滝田  玲子

恥をかくことも慣れたか面の皮            浜 松

ちょっとだけおしゃべりしたい春帽子

サービスにロボット歌うヨイトマケ

プライドは捨てライバルと手を結ぶ

 

 

「余  裕」             谷口 さとみ

悩む間にツキがするっと抜け落ちる          伊 豆

クラス会あか抜けた奴ぬけぬ奴

今月はまだ残高が一千万

友に貸す左の手はまだ開いている

 

 

「青  い」             多田  幹江

甘口にひょいと飛びつく青蛙          静 岡

青い瞳のキャッツを抱いていま独り

戦争を知らぬ輩のカーニバル

老春謳歌黄みどりの風に乗り

 

 

「笑 っ て」             石田  竹水

円満を心に秘めてお付合い              静 岡

さりげなく笑って許す愉快かな

愚痴ったら途切れてしまう人の道

裏方で愉快な気分賞味する

 

 

「梅  雨」             増田  信一

梅雨の晴れ濡れたハートを吊るそうか         焼 津

梅雨が好き相合傘で手が触れる

空梅雨に手持ちぶさたの美人傘

梅雨が来て蛙が歌い田が踊る

 

 

「整  理」             林  二三子

諸事紛れ気づけば花壇草まみれ           富士宮

懐かしんでいたら片付け終わらない

断捨離を決意馴染んだ桐箪笥

物置の整理をすれば全てゴミ

 

 

「紙 の 旗」             池田  茂瑠

歪んでるけれど素直よ青リンゴ            静 岡

すいてます破局の風が残る髪

意地を張る私の旗は紙だけど

歪んでた悪意持つ夜の片えくぼ

 

 

「華道展 その3」          永田 のぶ男

年配に人気集めたストレチア             静 岡

竹と松立場違えて協力し

アンスリウム大きな舌で嘗められる

各流儀苦労話に花が咲く

 

 

「雑  詠」             薮﨑 千恵子

ネジ一つ外れて恋の空回り              焼 津

出かかった言葉飲み込み熱を出す

出す時は出すさと始末屋の威勢

甘言に釣られ出口を見失う

 

 

「病 室 で」             森下 居久美

病室で夜の長さを思い知る              掛 川

家族にも遠慮している痒いとこ

どうしましょイケメンでした執刀医

眠れない夜にラジオが語りかけ

 

 

「雨の休日」             荒牧 やむ茶

ドクダミの花と知らずにプロポーズ          小 山

「あめふり」を唄って梅雨の中休み

梅雨空が全部飴ちゃんならいいね

騒がしいドタドタバタン梅雨の朝

 

 

「初  夏」             勝又  恭子

思い出を巻き取り弾むガラス玉            三 島

空見上げ飛び方思い出してみる

さらさらと記憶の砂が落ちていく

真夏日は影にリードを奪われる

 

 

「紙 一 重」             佐野 由利子

運のいい人だと努力無視される            静 岡

文句ではないよ貴方へ助言だよ

明暗を分けたゴールの紙一重

ローカルのテレビカメラが私撮り

 

 

「ふっふっふ」            真理  猫子

かつおぶし柔軟体操しています            岡 崎

スロープの角度昼寝にちょうどいい

鉄棒で筋トレをするかたつむり

二十二時二十二分のふっふっふ

 

 

 

「夏  空」             松田  夕介

腕時計はずして紅茶でもいかが            静 岡

鰺だってミックスフライにはなれる

マーメイド水着審査がきっとある

夏空を従えやって来るTUBE

 

 

「自 由 吟」             長澤 アキラ

鳴るものは試したくなる非常ベル           静 岡

年金のサイズに合わすピサの斜度

笑いからフッと悲しみ漏れている

箱書きが無ければただの木偶の坊

 

 

「部品欠落」             望月   弘

にんげんになる三本のネジが無い           静 岡

どこがどう錆びたか後期高齢者

物忘れネジが弛んだだけなのに

ピンぼけは誤作動だったことにする

 

 

「自 由 吟」             加藤   鰹

SBS通りは今日も紙吹雪              静 岡

ベーキングパウダーここだけの話

アメリカの自由はアメリカの都合

スコッチとモディリアーニとロッシーニ