「自 由 吟」 長澤 アキラ
出始めたボケが間合を詰めてくる 静 岡
悔しくて直滑降の酒になる
遺言書みんなあげると書いておく
忘却をうまく演じている墨絵
「中 心」 勝又 恭子
休日のまん中へんにフェルマータ 三 島
中心に据えられているのは案山子
鼻の差でクレオパトラに負けている
中心を決められなくてアメーバー
「コンビニ」 栃尾 奏子
コンビニへ寂しさ少し置きに行く 大 阪
あんまんの不思議失恋まで癒す
妻は寝ているがコンビニ開いている
一階がコンビニ借家ここにする
「自 由 吟」 奥宮 恒代
気紛れな雨 気紛れな雨女 森 町
吸うときも吹くのが好きなハーモニカ
日替りのランチ日替りの友人
それなりに金魚のフンも気疲れる
「痛 ~ い」 鈴木 千代見
ポンポンと叩いてからの注射針 浜 松
足の指ぶつけ存在感を知る
満月の冷たく光るひとり旅
合鍵でなかなか開かぬ閉じた愛
「 水 」 鈴木 まつ子
野暮天は水を向けても知らん顔 島 田
打ち水で涼しさを呼ぶひとり部屋
年寄りの冷や水無茶な石を蹴り
百選の水で仕込んだ大吟醸
「生 き る」 西垣 博司
肩書が剝がされている介護室 静 岡
日記帳躓いた日のなぐり書き
子の手相頭脳線だけ俺に似る
生き様にまだ煩悩が茶々を入れ
「恋はかげろふ」 新貝 里々子
銀座画廊あの日の恋はモスグリーン 袋 井
パーカーで書く恋文のつま先立ち
ハイボール恋の苦さも知りました
リハーサルなしでゆきましょ恋も三度目
「こ こ ろ」 石田 竹水
僕の夢変化進化の万華鏡 静 岡
好奇心賞味期限が無く挑む
読み過ぎた空気が起こす乱気流
運は天気候異変に来る勇気
「 蟻 」 成島 静枝
ゆっくりと出来ぬ働き蟻の群れ 千 葉
冬支度蝉の骸にワッと蟻
ヘッドライト富士に取りつく蟻の列
敬老の女王蟻はどうしてる
「ユーモア川柳」 岡村 廣司
その皺じゃ沢山要るでしょ化粧品 焼 津
死神も貧乏神も神様か
おれおれが難敵とする遠い耳
捨てぜりふした事忘れまた出掛け
「雑 詠」 井口 薫
車間距離ほどよし尾灯美しい 袋 井
わたしにも描けそうですがムンクの絵
かじ取りが鈍り尻尾をまた泣かす
私を丸ごとあずけ滑走路
「 中 」 山田 勝笑
立派すぎ中が恐縮ラッピング 森 町
中身より化粧おしゃれの技磨く
貰い過ぎ夢の中でも梅漬ける
御中元振って中身を言い当てる
「 秋 」 山田 浩則
日暮れ前秋の空舞う赤トンボ 島 田
食欲の秋の味覚は栗御飯
名月が光輝く秋夜長
紅葉のプラン計画立てる秋
「自 由 吟」 鹿野 太郎
セキュリティーソフト更新して眠る 仙 台
さくさくと動く決断したお尻
脚光を浴びて間もなく急降下
壮絶な昭和の塔の実録史
「銀 の 魚」 斉尾 くにこ
るるるるる地上の神はまた不在 鳥 取
上質な大人時間となる孤独
名月へ金魚と影の銀の魚
沈黙のメロディー風が吹いている
「薬 箱」 戸田 美佐緒
焼き鳥の串であなたを刺しに行く さいたま
くすり指見知らぬ風が絡みつく
針千本のんだ枯野で蝶になる
きっかけは上手に焼けた林檎パイ
「パズドラの呪文」 外側 としみ
パズドラも今日はとことん負けたけど 磐 田
ランウェイの君から星は零れ落ち
丸ごとのスーパームーン巻きこんで
尖んがった魔女の呪文が染み渡る
「 秋 」 森下 居久美
ばあちゃんへおはぎ供える彼岸花 掛 川
本当のキンモクセイが咲いて秋
モンブラン食べて腹筋20回
病院のはしご車窓は黄金色
「現在進行形」 増田 久子
送信のわりに受信のないメール 焼 津
間違えたとこでやめとくハーモニカ
できるだけゆっくり渡る交差点
このマリモ本物ですか金魚鉢
「雑 詠」 馬渕 よし子
家路へと一番星に急かされる 浜 松
周りではおひとりさまが皆達者
まねてみる亡母のレシピは舌にある
持つべきは友だと言われ気を許し
「自 由 吟」 内山 敏子
虫の良い話を齢が呑みかねる 浜 松
夕焼けに孫とデュエット童うた
そよ風に肩をたたかれ秋の群れ
人間の心が薄くなる平和
「焦 る」 安田 豊子
はやる気は無いが諸もろのしかかる 浜 松
断崖の渕を這っているカルテ
焦る気を宥めひとりの腰据える
未だいいと延ばす明日が減っていく
「飲 む」 小林 ふく子
あつ熱のお茶から秋のおもてなし 袋 井
コーヒーのおかわり彼はきっと来る
水を買うあたり前だという時世
薬よりサプリメントがよく喋る
「自 由 吟」 南 天子
あの世からそろそろ出番声がする 焼 津
暑すぎて脳みそ迄が水欲しい
残念ね人の心がお見通し
年令をテーマにしない欲はゼロ
「自 由 吟」 竹内 みどり
散歩道草を刈る音黙々と さいたま
枝葉なし一本道の老後です
秋深し読書してます舟漕いで
自然界号泣します大雨に
「不特定多数」 阿部 天気
不特定多数の海を平泳ぎ 横 浜
暁へ百鬼夜行のショータイム
能面と整形美女がドッキング
幻影が裏街道に忍び寄る
「自 由 吟」 中矢 長仁
茶所のお茶屋で入れた美味いお茶 松 山
静岡に来たお土産は茶の香り
夫婦仲喧嘩するのはもう飽きた
子の中に僕の遺伝子生きている
「ス ロ ー」 山本 野次馬
アナログをすり抜く風が速すぎる 函 南
カタツムリ自負を鎧に食べる音
慌てるな皆おんなじ二十四時
歯車を大きく変えて見る世界
「自 由 吟」 真田 義子
虹の色足して私の人生論 仙 台
満月と話が出来たひとり旅
現住所ここは私の指定席
夢足して足して私は鳥になる
「椅 子」 酒井 可福
椅子取りのゲーム敗れて定年後 北九州
抜群の日当たりの席次の椅子
心地良い椅子にすわった三日間
木の椅子が人を抱えて子守唄
「食 い 気」 薗田 獏沓
夏負けの五臓六腑に時価を食う 川根本町
リハビリに食い気の鬼が顔ひそめ
話しかけても食い気返事うわの空
好物へ発癌性は無視される
「我が町清水」 鈴木 恵美子
次郎長も演歌も似合う街に住み 静 岡
明治まだ生きてるような住みごこち
外国船絵になる港夕焼ける
紺碧の空をバックに俺が富士
「爺の愚痴A」 畔柳 晴康
サア今日も元気に過ごす螺子を巻く 浜 松
年金と暇ができたら医者通い
ハイハイとふたつ返事は甘過ぎる
米寿だよ祝と別れ兼ねた膳
「自 然」 菅原 花子
朝日から受ける光が温かい 盛 岡
無限なる大空眺め希望わく
木も花も適度な雨が必要だ
人間は自然とともに生きている
「自 信」 藤田 武人
打ってみろ自信満々ど真ん中 大 阪
初勝利自信たっぷりプロの顔
ひたひたと二番手迫る自信です
一点差最終回で逆転だ
「自 由 吟」 岩永 圭二
起きられぬ理由がひとつ増えました 大 阪
カサカサと落葉と仲間僕の肌
読書せずキレイなままで売りに出す
行楽地住んでる人が羨ましい
「くすり漬け」 川口 のぶ子
くすりかて時によっては救い神 藤 枝
のみぐすり時々忘れ歳のせい
期限切れそれでも治る風邪ぐすり
鼻ぐすり効いて今日から楽隠居
「頑 張 る」 川口 亘
確かめてみないと知れぬ吾が想い 藤 枝
一歩ずつ歩むことへの気の配り
成る程と思う言葉に突き当る
今は只想いの儘に生きる智恵
「自問自答」 伊藤 豊志
あの頃は歌っていたよ課題曲 宮 古
勘違いそれでもよろし梅サワー
美人ママ模範解答語りだす
おしぼりを丸めて男とは何か
「自 由 吟」 孝井 栞
日焼け跡同じ親子の露天風呂 富 山
写真の中ワープあの日へ還る脳
瞬足で一等夢の中で蹴る
春も秋も同じ温度の風なのに
「雑 詠」 多田 幹江
飛び地の花にお水がまわらない 静 岡
どしゃ降りへ傘一本の罪つくり
言い訳のうまい千鳥の梯子酒
晩秋の風の便りもからっ風
「十一月のつぶやき」 谷口 さとみ
日替わりの社食 週単位で飽きる 伊 豆
ミスったがミスではないの元ミセス
預金にも欲しいポイント2倍デー
片付けは遺族に任せ遊びます
「ま と め」 中野 三根子
一日の終りに心セットオフ 静 岡
グチばかりしっかりまとめ受け止める
父さんは反省文もきっちりと
日記帳百年分も書くつもり
「人 々」 川村 洋未
能力の一つに美人と書き留め 静 岡
人たらしこれも特技と記憶する
泣きながら寝ると朝まで涙の子
やる時はやる ただジャンプ台が無い
「なぜ生きる」 増田 信一
なぜ生きるなんて考え込んで朝 焼 津
生きている理由探しをしたい旅
あきらめる事ができないのが小物
笑っても泣いても宇宙ではミクロ
「自 由 吟」 林 二三子
たわわな実揺らす秋風棚田道 富士宮
サラダより煮物が夕餉には欲しい
火加減は下手でも料理まずくない
堀りたてのさつま蒸かしてお茶にする
「きまぐれ」 山本 ますゑ
メールでは出せぬ美文字のお礼状 磐 田
ペン先に力の入る願い事
雲行きの悪さに持持て余す
きまぐれな風の誘いに乗る落葉
「ひだまり」 尾崎 好子
太陽のような人です暖かい 藤 枝
明るいね持って生まれたいい気立て
孫の手が足が婆ちゃん揉みほぐす
食う話呑む話ならすぐ受ける
「平 凡」 薮﨑 千恵子
諦めぬ夢のかけらが光り出す 焼 津
ライバルの自信に満ちた上目線
三猿を捨てて素顔を取り戻す
平凡という幸せの安堵感
「希 望」 川島 五貫
いい事をした日の空は青くなる 富 士
バカを見た勇気だったが宝もの
伸びしろを教えてくれた負け戦
私にもきちんと射してくる薄日
「雑 々」 永田 のぶ男
一寸の光陰惜しみ学成らず 静 岡
ウンでなくスンでもなくて文句言う
インフレを知らぬ御仁が物価上げ
問診で最後はお年ですからと
「自 由 吟」 滝田 玲子
タクシーが不況の愚痴をのせ走る 浜 松
加齢ですひと言医師が片付ける
駅前はシャッター下りた過疎の街
姦しい青春キップ熟女旅
「食欲の秋」 石上 俊枝
きのこ達松茸横目座を広げ 静 岡
温暖化早熟あかい次郎柿
新米がピカピカ光る湯気の中
渋いお茶栗ようかんで三時する
「吾 亦 紅」 荒牧 やむ茶
ささくれた心に沁みる郷の風 小 山
親孝行ベッドの横で真似てみる
聞こえないふりして母の小言聞く
親孝行どんなにしても不合格
「自 由 吟」 真理 猫子
桃栗を待って三年目の庭木 岡 崎
飛行機のおなら本日は三つ編み
スキップでつい口ずさむ千の風
恋文はバルサミコ酢の味がする
「自 由 吟」 濱山 哲也
自縄自縛人生Mじゃいけないよ つがる
努力せず悔しいという悪い癖
酒飲むと僕の正義は立ち上がる
喝采を浴びてる一人カラオケで
「T P O」 毛利 由美
札付きの乙女のようなお姉系 つくば
意味がありカプセル剤になる薬
ワンコイン 額はTPOによる
近眼老眼こんな小さな目の中で
「過疎の毬」 池田 茂瑠
花言葉派手な私へ青すぎる 静 岡
水よりも低く流れて恋失くす
転がれぬ過疎の歪みを持つ毬で
破れ傘内緒話は控え目に
「本 音」 佐野 由利子
いつまでも元気でいろと放っとかれ 静 岡
神様にだって本音は言えません
レジェンドの活躍をみる土根性
一言が女結びを和らげる
「祝五百号」 松田 夕介
流行に取り残されて三日月湖 静 岡
あめ玉のように悲しみ溶けたらな
呼吸するようにあなたの事が好き
心臓は歌うロックも賛美歌も
「依 存 症」 望月 弘
肝臓の許可を貰って米の水 静 岡
納豆が無いと朝日が昇らない
日常を追いかけている五七五
診察のたびに増えてる糖衣錠
「流 沙」 加藤 鰹
半世紀生きて来たのにまだセイゴ 静 岡
失って気付くボタンも愛情も
じいさんと呼ばれた僕のことだった
会えぬ理由なんだかんだとつけて秋