長野 川柳キマロキ吟社 石田 一郎 選
入 選
生しらす団塊の目が物を言い 垣野 佳子
人間を敵視している魚の眼 小林 游峰
キミにだけ見せる鱗があるのです 丸山あずさ
日本語の漢字楽しむ魚偏 辻部さと子
鮎遡上わくわくさせる解禁日 田中 重忠
数々の釣果を語る魚拓帳 田中 重忠
王様の貌で孤独な深海魚 小林信二郎
脇役の煮干器に海を呼ぶ 岡 さくら
生臭く生きる鱗を逆立てて 吉道航太郎
図書室の魚貝図鑑にある指紋 笹島 一江
食べたけど書けぬ読めない魚偏 石川 直
被災地で復興待ってる魚たち 高見沢早紀
運の無い金魚だ俺に掬われる 後藤 尚郎
額入りの魚拓に映る自慢顔 黒瀧 睦子
未来へと遡上してくる鮭の息 目黒 友遊
手土産は鮭一本の里帰り 岩佐 昭弘
釣り天狗魚拓に誇り鎮座する 石上 俊枝
魚偏三つ覚えて出る寿司屋 加藤 輝雄
今一度確かめている魚心 高浜 広川
血圧がサンマイワシを食べさせる 島田 洋審
疑似餌でも魚は釣れるマニフェスト 柴垣 一
雲晴れて稚魚も煌めく海へ向く 荒牧やむ茶
目を回す回転寿司の魚たち 内山 敏子
産卵の鮭ふるさとを忘れない 平野ふじ子
上品で真鯛のようないいおんな 浅川 昇
原発の影に怯える魚の群れ 稲毛 寛
プライドある雑魚には雑魚の小宇宙 小山惠美子
ひょっこりと魚雷が右へカーブする 中込 朝子
雑魚だってみんな魂持っている 遊佐おさむ
大漁を願いお神酒を海とのむ 曽根 文子
脳みその隙間を埋める青魚 渡邊 幸子
ガラス張り住みにくそうに深海魚 竹山惠一郎
解禁日アユには知らせないでおく 小林 昭男
脚光を浴びて大間の針を飲む 植松 蓮華
三陸の魚が嫌う線量計 植松 蓮華
一尾の秋刀魚で足りる箸二膳 府中三三男
魚にも序列があって雑魚の群れ 住田勢津子
睨み合い魚には海はひとつです 松本としこ
人間の海で溺れている魚座 外側としみ
骨密度ちりめんじゃこに助けられ 毛利 由美
開かれて干されて雑魚は旨くなる 工藤千代子
プライドも意地も鯛よりあるつもり 工藤千代子
汚染した魚に何の罪も無い 増田 信一
居酒屋の雑魚で社長を切り捨てる 望月 弘
煮て焼いて人と魚のドラマです 小野 しま
料亭で煮詰まっている魚心 中沢久仁夫
究極の祈り魚拓の目が光る 福力 明良
シーラカンス時空を止めたまま生きる 菊田 信子
人間を育てつづけている魚 阿部 文彦
冷凍魚望郷はるか父の海 辻 敬子
亡き父の笑顔に見えてくる魚拓 下田 幸子
俎板で鯛が誇りの活け作り 林 柳泉
昭和の日卓袱台囲む魚の目 増田 幸一
鯨料理守る日本の食文化 藤岡シゲヨ
まだ青い海を見ている活づくり 錦 武志
ふる里の浜辺を想う干し魚 松本壽賀子
欲望の川を渡って行く鱗 佐藤 清泉
深海の謎を解いている人魚 小川 道子
塩鮭の辛さの中に亡母がいる 小池 楽人
もう何も言うまい雑魚のままでいる 早泉 早人
雑魚だって汚染水から自主避難 大久保眞澄
エリートのまぐろフォークで召し上がれ 松山 芳生
真夏日の涼感を呼ぶ金魚売り 川口 亘
大海が雑魚の背骨を強くする 竹内いそこ
諸行無常俎上の鯉になり辞世 伊賀 武久
ひっそりと生きるわたしは深海魚 阪本ちえこ
凪の海鱗一枚剥いでゆく 鈴木さくら
景品の金魚は死なぬ金魚鉢 児馬不二子
友釣りの鮎が内気で寄り付かぬ 堀澤 静巴
あの頃はメダカや子供がいた小川 坂本 澄子
コンビニの鯖の味噌煮が美味すぎる 鈴木 順子
魚市場海の男の意地が飛ぶ 深澤 初江
年金の巾で目差しの味も知り 井上信太郎
マングローブの森 耕している魚 丹下 凱夫
被災地の魚に罪は何も無い 森 廣子
朝採れの魚コンロでそり返り 月原つくし
ワンピース脱いで魚になるところ 笹田かなえ
恋しいな逃げた魚に小石投げ 森だがやん
佳 作
宇宙から帰還鯨になるメダカ 四分一周平
魚には水のコワサがよく分かる 小出 順子
人間の都合で太る養殖魚 山﨑 武彦
水槽から人の喜劇をみる魚 内田 厚子
誇らしげ魚拓べたべた踊ってる 遊佐おさむ
過疎でいい小鮒を掬う川がある 錦 武志
禁じられた遊びを泳いでる金魚 石橋 芳山
どの魚も月夜は丸い夢をみる 増田マスヱ
生涯を生簀の魚で飢えはない 鏡渕 和代
床の間の魚拓自慢が始まった 藤田 武人
秀 逸
にらめっこオコゼの顔には勝てはせぬ 酒井 可福
家庭内別居を見てる熱帯魚 相田みちる
魚にもいやな地球になりました 加藤友三郎
特 選
脱皮して少年鮎の香を放つ 木本 朱夏
▽選後感・深海魚の作品の多いのに驚いた。魚拓の作品
は少なかったが佳吟が目についた。特選は清々しい活
きのよさを買いました。
また、電子書籍も近日発行予定だそうです。