平成21年度 たかね年間賞受賞作品

正 賞

前向きに生きよう鼻は低いけど    池田 茂瑠

準 賞

人を見る眼鏡を外すコップ酒     石田 竹水

旅に出て少し大きなあくびする    真田 義子

こんなにも青があるのに拾えない   川村美智代

歯を抜かれ笑顔が神に近づいた    薗田 獏沓

 

平成二十一年度 年間賞選者プロフィール

 

浪越 靖政(なみこし やすまさ)

札幌川柳社副主幹、水脈編集人

北海道川柳連盟事務局長

全日本川柳協会常任幹事

 

 

 

 

雫石 隆子(しずくいし りゅうこ)

川柳宮城野社主幹、全日本川柳協会理事

句集「樹下のまつり」

「浜夢助の川柳と独語」編者

 

 

 

太田 虚舟(おおた きょしゅう)

「川柳文学コロキュウム」所属

川柳えんぴつ社所属、散居の詩講師

著書「紫陽花雨情」、柳歴四十八年

 

 

 

 

大木 俊秀(おおき しゅんしゅう)

NHK学園文芸センター編集主幹
句集「満天」(平成二十一年十一月
日本詩歌文学館館長賞受賞)

 

 

 

 

 

 

西來 みわ(にしらい みわ)
昭和二十八年川上三太郎に出会い師事
昭和三十三年より川柳研究社幹事
川柳句文集「女子像」「たんぽぽ」ほか多数

 

 

 

 

 

川上 大輪(かわかみ だいりん)
和歌山県川柳協会副会長
川柳塔わかやま吟社主幹
句集「二重奏」「流れ星の詩」

 

 

 

 

中田たつお(なかた たつお)
番傘川柳本社参与
堺番傘川柳会会長
句集「森ノ宮」「あさか」

 

 

 

 

 

新家 完司(しんけ かんじ)
川柳塔社理事、川柳展望社会員
新家完司川柳集「平成元年」「平成五年」
「平成十年」「平成十五年」「平成二十年」

 

 

 

 

札幌川柳社副主幹      北海道   浪越 靖政 選
特 選
やさしさも時には風邪をひくらしい   真理 猫子
佳 作
歯を抜かれ笑顔が神に近づいた     薗田 獏沓
こんなにも青があるのに拾えない    川村美智代
平穏な日です包丁研ぐことに      井口  薫
夕暮れてちーさき海で背伸びする    竹内 さき

▽選ばれた句の中から5句に絞り込むのに苦労しました。特選句には素直にうなずいてしまいました。

 

 

川柳宮城野社主幹      宮城県   雫石 隆子 選
特 選
平穏な日です包丁研ぐことに      井口  薫
佳 作
アルバムを静かにめくる雨が好き    森下居久美
旅に出て少し大きなあくびする     真田 義子
前向きに生きよう鼻は低いけど     池田 茂瑠
ガチャガチャで当たったような恋をする 山本野次馬

▽集句中の十二句が残り、さらに五句にしぼった選でした。位付けに相当の苦心があり、どれが上位ということもない作品と思います。総じて佳句が多く、動きのある作品たちに若さを読みました。「たかねの今後の発展を期待いたします。

 

 

川柳文学コロキュウム    富山県    太田 虚舟 選
特 選
前向きに生きよう鼻は低いけど     池田 茂瑠
佳 作
空き缶を蹴りたくなったハイヒール   今井卓まる
日に一度ジョークを処方しています   濱山 哲也
泡立ちのいい石鹸で嘘流す       芹沢穂々美
ノーという答えを出してからの道    森下居久美

▽「前向きに生きよう鼻は低いけど」言語操作はいうことがない。いくぶん自嘲的な結句は微笑ましい。「空き缶を」と最後まで争ったがウイットの冴えを頂いた。

 

 

NHK学園文芸センター 神奈川県   大木 俊秀 選
特 選
ひまわりの花終えてなお立ち尽くす   柳沢平四朗
佳 作
タライから海まで長い平泳ぎ      長澤アキラ
旅に出て少し大きなあくびする     真田 義子
前向きに生きよう鼻は低いけど     池田 茂瑠
大切な妻で触診欠かさない       望月  弘

▽「泣いて佳吟を斬る」がこの度の選出に当たっての偽らざる気持ちでした。それほど秀作が目白押しでした。カルチャーの生徒さんにいつも申し上げていることの一つに「サムシング・ニューであれ」があります。詠み尽くされた、ありきたりの、手垢の付いたものは作るなということです。「サムシング・ニュー」の力作が多く、目を見張りました。

 

 

川柳研究社顧問        東京都   西來 みわ 選
特 選
人を見る眼鏡を外すコップ酒      石田 竹水
佳 作
在りし日の母が歌っている土鍋     真理 猫子
ドーナツの穴で燥いているコント    戸田美佐緒
幸せをお稲荷さんに詰めている     大塚 徳子
裏通り花とおしゃべりしています    真田 義子

▽楽しい「たかね川柳」を楽しく拝見させていただきました。特選「人を見る眼鏡を外すコップ酒」最高の川柳でした。秀1、土鍋に日本の世の姿を歌ってくれました。秀2、ドーナツの穴が燥いているコントとみた川柳家のユーモアをいただきました。

 

 

和歌山県川柳協会副会長 和歌山県  川上 大輪 選
特 選
こんなにも青があるのに拾えない    川村美智代
佳 作
化け方を変えよう月が丸いから     池田 茂瑠
リンゴ半分秋が半分同居する      中田  尚
4Bで父6Bで母を描く        望月  弘
空き缶を蹴りたくなったハイヒール   今井卓まる

▽素晴らしい発想、着眼に感心しながら、また5句という厳選に迷いながら私も楽しく勉強させていただきました。たくさんのエネルギーをありがとうございました。

番傘川柳本社参与     大阪府    中田たつお 選
特 選
上達を祈る隣のバイオリン       増田 久子
佳 作
ドーナツの穴で燥いているコント    戸田美佐緒
人を見る眼鏡を外すコップ酒      石田 竹水
靴紐を結ぶと用を思い出す       谷口さとみ
ダイヤルのゆっくりがいい黒電話    増田 久子

▽予選を通過した六十二句を楽しく拝見しました。特選の句は、お隣の初心者としか言いようのないバイオリンを軽いタッチで諷刺した佳句で、作者のさりげないゆとりも感じられます。

 

 

川柳塔社理事        鳥取県    新家 完司 選
特 選
前向きに生きよう鼻は低いけど     池田 茂瑠
佳 作
歯を抜かれ笑顔が神に近づいた     薗田 獏沓
旅に出て少し大きなあくびする     真田 義子
人を見る眼鏡を外すコップ酒      石田 竹水
デュエットの権利で腰に手を回す    濱山 哲也

▽候補作品、いずれも甲乙つけ難く「たかね」のレベルの高さを示していた。中でも「特選」「秀1」の軽い自嘲をユーモアで包んだ味を高く評価する。

 

 

たかね年間賞過去の受賞作品
平成十一年
昭和史に忘れたままの傘がある     真田 義子
選者 飯尾麻佐子、石田一郎、川上富湖、柴崎昭雄、太田紀伊子、熊谷岳朗、奥田一星、平山虎竹堂

平成十二年
シアワセって退屈ですねお月さま    多田 幹江
選者 復本一郎、赤松ますみ、近江あきら、いとう岬、川上大輪、西恵美子、高瀬霜石、平山虎竹堂

平成十三年
好きだ好きだと男を騙す発泡酒     新貝里々子
選者 児玉ヒサト、中田たつお、遠藤みゆき、柳沢花王子、藤沢岳豊、酒井路也、斉藤由紀子、平山虎竹堂

平成十四年
抱きしめてやりたい真夜中のポスト   寺田 柳京
選者 辻 晩穂、真弓明子、鈴木柳太郎、江畑哲男、松岡恵美子、長谷川冬樹、筒井祥文、平山虎竹堂

平成十五年
風に逢うまだたてがみのあるうちに   新貝里々子
選者 浪越靖政、猿田寒坊、太田紀伊子、山倉洋子、成田孤舟、川上大輪、竹下勲二朗、森中惠美子

平成十六年
穴堀りをするには少し陽が高い   川路 泰山
選者 板垣孝志、宮村典子、門脇かずお、長谷川酔月、津田暹、雫石隆子、大木俊秀、大野風柳

平成十七年
傷一つ時効を過ぎてから痛む    高瀬 輝男
選者 佐藤美文、米島暁子、熊谷岳朗、菅原孝之助、小島蘭幸、浅野滋子、大橋政良、徳永政二

平成十八年
一冊の本一本の藁になる      池田 茂瑠
選者 佐藤岳俊、国吉司図子、川俣秀夫、久保田元紀、桜井閑山、木本朱夏、大木俊秀、新家完司

平成十九年
団塊のこれから角のない切符    柳沢平四朗
選者 千島鉄男、渡辺松風、山﨑蒼平、宮村典子、浅利猪一郎、板垣孝志、川上大輪、赤松ますみ

平成二十年
母さんが教えてくれた非常口    井口  薫
選者 熊谷岳朗、雫石隆子、佐藤美文、成田孤舟、酒井路也、渡辺梢、森中惠美子、新家完司

平成二十年度月間推薦選者
一月 復本 一郎  二月 瀧  正治  三月 江畑 哲男
四月 浪越 靖政  五月 植竹 団扇  六月 柴崎 昭雄
七月 上野 楽生  八月 真弓 明子  九月 津田  暹
十月 大橋 政良 十一月 大西 泰世 十二月 丸山  進