「光の射す方へ」 稲森 ユタカ
昼寝する布団いらずの陽の光 静 岡
栄光の架け橋となる夢を見る
月光でかすかに見えるだから良い
より僕を引き立たせてる光射す
「冬 支 度」 荒牧 やむ茶
柿の実を小鳥にふたつお裾分け 小 山
ほっかほか焼き芋まーだ落ち葉焚き
どんぐりを頬張るリスも冬支度
いい天気僕も布団もふっかふか
「テ ー プ」 濱山 哲也
エンドレステープのような不況です つがる
ガムテープはがすと里の母ごころ
団結は両面テープだとおもう
ぼくの胸テープを切ったことがない
「深層心理」 奥宮 恒代
しあわせ度お腹まわりがままならぬ 森 町
あわだち草噂話が止まらない
お上手ねしっぽ振るのもアカンベも
あぶないと知っているのに燃えてくる
「 枕 」 鈴木 まつ子
味気なく枕かかえて秋夜長 島 田
枕絵の甘い話に落される
枕添え女目覚める酔心地
自画自賛世間知らずの高枕
「雑 詠」 馬渕 よし子
空腹へ衝動買いの手が伸びる 浜 松
大幅な値下げ原価へ湧く疑惑
拝啓で優雅な暮らし自慢され
人生もここまで来ると斜め読み
「自 由 吟」 内山 敏子
定年の日から引き算うまくなり 浜 松
月影が淋しすぎます別れ道
就活へ歩き疲れた破れ靴
おでん鍋囲み家族の味がする
「師 走」 小林 ふく子
痛いところからだんだん冬になっていく 袋 井
ふところが寒いと声が出しにくい
宅配便師走の愛が重たくて
あたふたとまた一年をたたみ込む
「恋ひとつ」 真田 義子
まだ花を咲かせるつもりコンパクト 仙 台
ゆっくりと目覚める旅の朝が好き
旅の空詩人にさせる秋の月
どうしても巻き戻したい恋ひとつ
「締め切り」 毛利 由美
締切りがあって充実できる日々 つくば
手の色を見ればなるほどミカン好き
トラウマでしょうかまだある扇風機
ベッドへの獣道ある子供部屋
「自 由 吟」 松橋 帆波
紅白の60曲がクイズめき 東 京
大掃除しても片付かない思い
斎場を出ると独りの月であり
駅一つ歩く自分に会うために
「君を感じよう」 栃尾 奏子
やわらかな時を刻んでいる寝息 大 阪
指切りに込めているのは願いです
忘れない君が生まれた日の誇り
反抗期君の全てを感じよう
「無 題」 西垣 博司
華やかな花でないから秋に咲く 静 岡
転車台迷い続ける人生路
非通知の着信歴にある秘密
焼け木杭 君の指環が拾わせぬ
「三面記事」 新貝 里々子
捕えればかみつきサルのいいお顔 袋 井
練炭火鉢おんなはブスでたくましい
断捨離と勿体ないが責めたてる
ボジョレー・ヌーボー踊る準備は出来ている
「自 由 吟」 成島 静枝
撫で肩がさらりと躱す頼み事 千 葉
さりげない世間話が難しい
アクセルを踏みっぱなしの独楽鼠
容量不足脳内へ黄信号
「いつしか」 石田 竹水
ざく切りを男の料理と言わせぬ 静 岡
甘い点なんかはいらぬ夫婦仲
腹の立つ万才聞いた弱い僕
積もる苦が何時しか消えていた余生
「ぬまづ弁」 芹沢 穂々美
そーずらよぬまづ弁なら生まれつき 沼 津
こばっちょを貰って建てた次男坊
たーんと持て兄が威張って出した灰
ちょっくら来てさあっと帰ぁる母不在
「 駅 」 提坂 まさえ
凡人だが俺には俺の上野駅 静 岡
反抗期無人の駅に少し似て
各駅をしゃべりとおして三姉妹
駅ビルの地下でケータイ息をつき
「笑 う」 石上 俊枝
泣き笑いシーソーに乗り繰り返す 静 岡
ライバルの笑くぼが不意に矢を向ける
マイホーム夢が膨らむ福笑い
ご機嫌で飲んで笑って寝てしまい
「くずの花」 斉尾 くにこ
雫する朝日をペロリ舐めてみる 鳥 取
くずの花思い通りに咲く原野
傷つけてもっと自分が傷ついて
明日もまた飛ばない鳥と遊歩道
「安 物」 酒井 可福
安かろう性格までも悪かろう 北九州
百均のパーツで飾る安い奴
安物が似合う身体が恨めしい
安物を高価に見せる徳がある
「道しるべ」 孝井 栞
ミシュランは知らない母の握り飯 富 山
神の手の医師の予約は一年後
母の背が老後へ向かう道しるべ
どうせなら楽しく杖と日を刻む
「夫 婦 坂」 中矢 長仁
野次喜多のように長閑な旅ですね 松 山
諍いをしているようで仲が良い
登り坂手を取り合って二人旅
夫婦坂上って今が良いところ
「野 性」 薗田 獏沓
放されて野性に還る眼が恐い 川根本町
外来魚メダカの学校奪い去り
放牧の山羊はやっぱり群をなし
食い残すキャットフードがなつかしい
「聞 く」 川口 のぶ子
補聴器が内緒ばなしを聴きそびれ 藤 枝
聞きそびれまた聞く手間の素振りかえ
聞こえない素振りが知れて哀れ買う
聞く耳を持たぬかわりに心読む
「自 由」 滝田 玲子
一本の釘の効き目がじわとくる 浜 松
賞味期限切れた野心が飛び火する
洗っても落ちない過去のふたつみつ
進化した画布に色足すボケ防止
「黄昏れる」 井口 薫
老け込むな京で紅葉が待っている 袋 井
ああ無情紅葉一枚散り忘れ
明日を読む紅葉が今日を燃えさかり
紅葉狩り終え雪吊りを急がねば
「ため息まじりで」 増田 久子
網棚の荷が取りにくい背の縮み 焼 津
やや派手をすすめてくれる売り上手
息災はもうこれだけかクラス会
女子アナのトーン早朝から高い
「 秋 」 鈴木 恵美子
星仰ぎ疲れを知らぬ七十路かな 静 岡
花に贅しあわせだなとふと思う
遠き日が微笑みかけるアカマンマ
紅葉が山駆け降りる里の秋
「自 由 吟」 戸田 美沙緒
ひと色に染まりたくない昼の月 さいたま
雨だれと素足で遊ぶ女です
行きずりの時計と狂う化粧坂
糸ひとつ結んでからの枯野です
「自 由 吟」 山本 野次馬
秋茄子も知らずに終わる冬支度 函 南
十五夜の隣に座る夏模様
プチトマト赤いダイヤに成りすます
ブランド米はだかにされる日焼けあと
「曼珠沙華」 鈴木 千代見
廃屋におしゃべり好きな曼珠沙華 浜 松
仏の顔心静かにそっと咲く
ことしまた会えてよかった曼珠沙華
曼珠沙華私のハート灯をつける
「思 う 秋」 鹿野 太郎
軽快に生きた証をくれるペン 仙 台
キッチンのハミングを聞く力こぶ
偏見の色に支援の二重三重
金木犀の道で消え去るへの字眉
「 父 」 深澤 ひろむ
前チャック開けて父さんあるがまま 甲 府
野次途中入りトチった父の謝辞
口下手の父がたんまり持つ温み
いつからか父の轍をなぞり生く
「雑 詠」 瀧 進
同病が問診し合う控室 島 田
お仲間があって持病も恐くない
ガン告知つらいする人される人
悩みあるうちは病気も忘れられ
「きっかけ」 藤田 武人
周り見て無謀な策に出る子猫 大 阪
玄関を出れば視線が変わる父
巣立つまで節目で舵をとる軌跡
ふんわりな香りにつられ文を書く
「自 由 吟」 大塚 徳子
このごろは手抜き料理が旨くなる 仙 台
ノーメーク スボラな靴は薄化粧
コツコツと真夜中に打つ五寸釘
まだ女溺れてみたいネオン川
「 齢 」 岡村 廣司
親切にされて齢だと思い知る 焼 津
赤貧も規則正しく齢を取る
齢だから薬は無しと銭は取り
この齢で作り笑いは草臥れる
「運 動 会」 畔柳 晴康
運動会カメラも走る幼稚園 浜 松
テープ切る子よりも親が両手あげ
金メダル狙うとクラス皆が言う
主婦なれど今日は選手で子と走る
「意 地」 安田 豊子
ひと花を咲かす野望へ背伸びする 浜 松
腑に落ちぬ話やんわり煙に巻く
土壇場で爆ぜると怖い雑魚の意地
意地張ると褪せた仮面がずり落ちる
「懐 古」 川口 亘
振り返る事の出来ない心意気 藤 枝
誰だって一度や二度は有る危険
懐古して忘れたやる気思い出す
知らぬ間に自分でつける節目歳
「雑 詠」 飯塚 すみと
不快なしピオーネ棚の皆の口 静 岡
真似でいい手品を見せて食事会
動向が気になる日中波の中
平和賞チャイナの党は欲しくない
「自 由 吟」 恩田 たかし
渋滞中まわり道して迷子道 静 岡
まわり道たまーにすると行き止まり
松茸が高すぎるため擬似キノコ
さっぱりと嫌な事ほど忘れたい
「仕 分 け」 小野 修市
妻がする仕分けで減ったお小遣い 静 岡
堤防のため息もれる予算かな
大臣は仕分けられたら椅子がない
愛人のお手当て予算分けておく
「大道芸と・・・」 尾崎 好子
魅せられて海を渡って移り住み 藤 枝
息子ならついつい思う親心
投銭も熱くなってる芸に会い
サーカスに売り飛ばすぞと脅かされ
「 猫 」 増田 信一
借りてきた猫がこの頃爪を研ぐ 焼 津
野良猫も生きる為には悪さする
猫飯でも希望持ち夢捨てず
子供たち猫可愛がりして不作
「あいさつ」 中野 三根子
おはようが元気な父のラブコール 静 岡
ありがとういつもやさしい母の声
アニハセヨやっと覚えたラブレター
さようなら言えずにそっと下を向く
「紅 葉」 森 だがやん
紅葉狩り眼(まなこ)で食す秋の味 島 田
紅葉見て遠いあの日に想い馳せ
紅葉の葉貰っていいと聴く我が子
紅葉貼り日記眺めてご満悦
「冬がはじまるよ」 松田 夕介
受験生春笑うため冬ごもり 牧の原
イベントの多い季節に向け貯金
君のため湯たんぽとなる寒い夜
準備よしこたつにみかんそれと猫
「 秋 」 谷口 さとみ
八月は夏のふりして秋仕度 伊 豆
九月でもやはり私は筆不精
十月になってごちゃごちゃする箪笥
メリーゴーランド降りたら十二月
「秋 深 し」 真理 猫子
好きでした あの人よりも焼き芋が 岡 崎
真夜中の電話 砂漠のきびだんご
新聞のへそはスポーツ面だった
こんばんはシャイな林檎が落ちてくる
「介 護」 森下 居久美
長男の嫁に介護の荷が重い 掛 川
いつまでと約束のない要介護
私も行く道なのか二度童子
現実をただ淡々と淡々と
「杭の緩み」 池田 茂瑠
多弁から寡黙に変り厚く着る 静 岡
この胸に一冊分の安堵抱く
一本の杭が緩んで愛揺れる
母の巣の匂いがついた羽根で翔ぶ
「 寂 」 長澤 アキラ
強がって勝手に生きたつむじ風 静 岡
不器用な性を背負って波の華
泣いてない風が眼にしみただけ
逃げ出せぬ道をしみじみ振り返る
「旅 支 度」 佐野 由利子
高鳴りを押さえて明日の旅支度 静 岡
回り道してもいられぬ六十路坂
落ち葉踏む冬の音聞く散歩道
知らぬ振りすれば相手も知らぬ振り
「台風も去り」 永田 のぶ男
秋祭り今年は法被小さすぎ 静 岡
賽銭を札に切替えかきくけこ
杖ついて石段のぼる果報者
太鼓の音 孫 曽孫踊る輪に笑顔
「冬 支 度」 中田 尚
ひえひえがぬくぬくになり冬になり 浜 松
氷屋がおでん屋になり冬支度
デパートがかちどきあげて冬支度
また来たな年賀ハガキのあて名書き
「雑 詠」 多田 幹江
ライバルの背中が見えてきた鼓動 静 岡
無印良品それ私のことですか
石垣が崩れてクラス会を解く
落葉しぐれてカミツキ猿も捕まった
「自 由 吟」 薮﨑 千恵子
噂好き種を探しにやってくる 焼 津
酔うほどに父の昔が弾け出る
明日というドラマに繋ぐ今日を生き
今出来ることをやらなきゃ残す悔い
「自 由 吟」 勝又 恭子
口下手な私をペンに語らせる 三 島
力むことなどありますか水水母
もう少し泣いてから言うさようなら
泣きたくて探したタマネギのレシピ
「アオウオ」 山口 兄六
ラフランス君の季節がまた巡る 足 利
走っても跳んでも影は僕のまま
お転婆な月まだ帰らない兎
中国魚アオウオでかいだけなのか
「もったいない」 林 二三子
物置きの中半分は捨てるもの 富士宮
百均の梯子 山ほど買ってくる
我が家よりいい椅子がある集積所
エコも兼ね小まめに電気消している
「準 備」 川村 洋未
初めてのデートコースを下見する 静 岡
最終に備えカバンの整理する
条件を備えていどむコンテスト
雑貨屋でいつか役立つ物を買う
「日常茶飯」 望月 弘
老齢の猫と生きるを競い合う 静 岡
改装のバリアフリーに足とられ
立ち読みへ備えメガネを拭いている
アイディアは出たがトイレを出られない
「十二月~仮面幻想」 加藤 鰹
幸せな仮面を捜す十二月 静 岡
もろびとはこぞりてにわかクリスチャン
キャンドルの炎に揺れる下心
恋人のいないひと このゆび止まれ
顧 問 吟
「無 題」 高瀬 輝男
にごり酒 人待ち顔の椅子一つ 焼 津
三人称でカムフラージュする僕の影
CMの新語造語が歴史変え
花暦 過疎なればこそ味がある
「自 由 吟」 柳沢 平四朗
生きがいへ残す鱗の二三枚 静 岡
あれこれの夢のむくろを玩具箱
ほどほどに裏切る妻の泣きぼくろ
スランプへもう受け皿が欠けている