平成二十二年度
たかね年間賞 候補作品
エンジェルが方向音痴ややこしい さとみ
あやかって付けた名前を返したい まさえ
綿雲は甘いと今も信じてる 武 人
のんびりと茶葉の生い立ち聞いている野次馬
日報に書けない夕焼けの赤さ 卓まる
家計簿の折れ目の数や十二月 帆 波
捨て石が活路を開く四面楚歌 進
耳打ちの言葉は一度濾過します 竹 水
二杯目のお茶に潜んでいる阿吽 アキラ
うっすらと互いの疵にある指紋 太 郎
出奔の蝶です楕円形を飛ぶ 美沙緒
生き恥を晒して水に辿り着き アキラ
すっぴんで出掛けられない寒いから 猫 子
熟したら柿はしずかに落ちていく 弘
地図にない道で見つけた冬の蝶 義 子
友が来る雪にビールを挿しておく 哲 也
小吉にビミョーと語る受験生 由 美
食パンの耳が聞いてるひとりごと 猫 子
建前を粉々にして紙吹雪 和 一
海原を一枚希望いたします 徳 子
オラオラとせっつくヤンキーな車 由 美
この話 絶対ヒミツ鉤括弧 由利子
マンホール女人禁制かも知れぬ 弘
握力が無くてお金が掴めない アキラ
政治家は修正液を持ってない 哲 也
正直な影でそっぽを向いている 武 人
太陽に近いところにへそがある 猫 子
罠だとは知らずに渡る虹の橋 尚
春霞軽い恋わずらいの中 奏 子
嫌な上司きょうも青汁飲んでいる 哲 也
立ち止まるたびにアトムの顔になる 野次馬
心配だレモン百個分サプリ さとみ
へそくりの中に隠した吉備団子 猫 子
昼下がり少し斜めに貼る切手 美沙緒
隠し事しているらしい喉仏 帆 波
次の日も降ると困った雨になる 久 子
ムーンライトパワー奇跡は起きるはず 恭 子
人生はわからない 誓いの言葉 由 美
めでたいと思うめでたい人になる 弘
ひと休み命が若くなりそうだ 和 枝
路線検索天国駅と打ってみる 薫
S席で観たあなたにはわからない さとみ
苦しゅうないわらわが嫁になってやる まさえ
ブラックコーヒー生きざまなんか入れないで 野次馬
ニッポンって勝てば官軍だったのか 輪加造
未練など東へ捨ててホイサッサ 昇
くさむらに虹の根っこを植えておく 徳 子
白髪の恩師に頭下げられる 尚
中肉で中背で貯金ずっとゼロ 久 子
それぞれの窓 それぞれの窓の中 美智代
頼られている倖せを知る背中 恵美子
数かぞえ私の分は無いと知る 洋 未
ほんとうの事を言うため歩き出す 猫 子
この間だったのにまた誕生日 由 美
自分史に虹の色足す六十路坂 義 子
焦ってもどうにもならぬ風の向き 千恵子
多少でも世の為ならば身を削る 竹 水
やさしさに触れコスモスの揺れ止まず 鰹
美しくなるにもやはり銭が先 輝 男
好きなほど心は天の邪鬼になる 夕 介
スリッパの音で機嫌のわかる妻 博 司
帰り道だんだん腹が立ってくる 由利子
ひと時の愛を求めてハイボール やむ茶
着るほどに馴染むあなたという紬 奏 子
君があの男の嫁か蹴っ飛ばす 和 一
あと一歩届かぬものが欲しくなる 恭 子
大空に雲で描かれた世界地図 ユタカ
晴れた日に夫も干そう布団ごと さとみ
子をみんな仕上げ気楽な箸二膳 輝 男
角取れたねと言われてもまだ楕円 信 一
ヤキモチに気付き気付いた恋心 だがやん
幸せそう蹴っ飛ばしたくなってくる 由利子
裏表紙悲しいことが多すぎる 穂々美
冷奴こころの奥を覗かれる のぶ子