「Parachute Limit」 今井 卓まる
バラよりも焼鳥似合う誕生日 浜 松
妻の名を呼んで始まる休戦日
自販機に挨拶されて返す朝
落下傘 開かぬまんま終わる恋
「冬 景 色」 毛利 由美
イニシャルでヒートテックを使い分け つくば
健診を前に忘年会続く
掃除機の「弱」でツリーのすす払い
鍋料理するにも家族揃わない
「D V D」 濱山 哲也
わき腹にじゅわっと沁みる緒方拳 つがる
日本人ですから僕もサユリスト
弱虫のくせに任侠ものが好き
優作が吸うと煙草はシガレット
「あれ・それ」 新貝 里々子
あれこれのあれをさがして小半日 袋 井
さよならは嫌いあれから不眠症
サスペンス海馬それから消えました
ヒーローもヒロインも老いそれっきり
「古 今」 鹿野 太郎
殿様も俺も権限には弱い 仙 台
うっすらと互いの庇にある指紋
中流の海を残業して泳ぎ
守秘わすれ螺旋階段から落ちる
「夫 婦」 松橋 帆波
正月も夫婦喧嘩は金の事 東 京
双子だと聞いて出産祝い揉め
想定の範囲だ 妻の朝寝坊
母に似てやはり義母にも似て妻で
「日 常」 奥宮 恒代
停電のオール電化に泣かされる 森 町
新聞の折り目のずれに耐えている
プライバシー ゴミの袋へまるめ込む
ありがたい一日一個卵食べ
「 風 」 川口 のぶ子
隙間風築三十年の家ゆする 藤 枝
秋風に銀杏の黄色宙返り
天空を私のうつがたちこめる
どこからも風の便りもこなくなり
「生 涯」 岡村 廣司
忍の字が生涯俺につき纏い 焼 津
生涯を鈍行俺の生き方さ
生涯に一度も神と出合わない
いい生涯だったと妻に言う積もり
「 嘘 」 瀧 進
政治家の嘘が真顔でカード切る 島 田
根回しが回り回って嘘がばれ
愛ゆえの可愛い嘘の二つ三つ
いゝ嫁としゅうと外では見栄を張り
「好 物」 鈴木 恵美子
バイキング遠慮しながらてんこ盛り 静 岡
隠し味にんにくなしでいられない
焼酎の味をひそかに知る妻よ
糟味噌は私ひとりで食べている
「十 二 月」 藤田 武人
生欠伸枕が僕を呼んでいる 大 阪
帰路に見た月出勤時まだ空に
ボーナス日重い肩凝り吹き飛ばず
まず権利夢現実へジャンボくじ
「自 由 吟」 内山 敏子
食欲に負けてメタボという悩み 浜 松
今年こそ今年こそはの予定表
ラブレター今は川柳書く机
正札のゼロが邪魔する空財布
「スターⅡ」 西垣 博司
本名を知ったスターの訃報欄 静 岡
本名は平凡ですね大スター
立ち見したスターが寝たきりの噂
子の為に詫びるスターも人の親
「笑ってすむこと」 増田 久子
夢を買うなんてジャンボのきれいごと 焼 津
黒髪へかつらですねと念を押す
プレゼント捨てるに惜しいからだって
長生きのお礼のつもりボランティア
「アンダーライン」 提坂 まさえ
コート下体の線が油断する 静 岡
涙腺が弱く意固地な女です
伏線も消費期限があったよう
やんわりとアンダーライン物を言い
「チェンジ」 萩原 まさ子
嫁が来て教えていますさしすせそ 静 岡
ねえ先生なんで代わるの手術中
コンビニの顔が変わった朝帰り
介護きて育爺日記書く娘
「点 と 線」 川村 美智代
線引いて「いちぬけたー」と言ってやる 静 岡
くもの巣にガッパと顔を捕らえられ
虹アーチ誰も優しい顔になる
終点へ向けてわたしはどの辺り
「点 と 線」 石上 俊枝
母と子に番号のない糸電話 静 岡
ストレート言った言葉にパンチ受け
まだまだよ生命線が応援歌
子に線路良かれと引いて恨まれる
「越 年」 井口 薫
除夜の鐘鱗ぽろぽろ脱ぎ捨てる 袋 井
雑煮餅御身大事に小口切り
初暦の喪中のポストがらんどう
先見えてきてクラス会花盛り
「自 由 吟」 真田 義子
嵐過ぎ夜明けを待っている私 仙 台
おだやかな心で明日会うつもり
友達と一緒の夢を見てた頃
すっきりと悔いを流してくれるお茶
「新 年」 小林 ふく子
初日の出先手必勝掴み取り 袋 井
晴れる日も雨もあろうと年が明け
元旦も昨日と同じ薬飲む
元旦にやはりゴミ出て生きている
「しぞ~か弁川柳」 中安 びん郎
世の中は欲かかなきゃあえーとこだ 静 岡
八十じゃひゃーだめでーれいのけにゃー
来年はやーけるようになるかしら
まーちっと過ぎりゃー腰ん直るらー
「愛の川柳」 西谷 秀朗
手の皺と同じ数だけ母の愛 兵 庫
うるせぇの言葉に込めた愛してる
おふくろの服の変化に絶句する
ため息と一緒に飛ばすこの想い
「雑 詠」 滝田 玲子
負けん気の根性見せるこぼれ花 浜 松
ゆっくりと時間が回る花時計
泣くことも時には上手く使いわけ
面影は遠く消え去るメタボ腹
「ミニ旅行」 成島 静枝
おばさんの群れで一日笑いこけ 千 葉
青春が彷彿若い笑い声
写真屋が美男美女だと正直に
胸襟を開きすぎても旧い友
「一度きり」 芹沢 穂々美
落ち葉舞う意志を通して気が強い 沼 津
病気でも熱が出ないとダメですか
知恵の輪が解けず性格悪くする
人生は待ったなしです一度きり
「雑 詠」 馬渕 よし子
謝ればこんな騒ぎにならず済み 浜 松
戦中を生きて落着く場所がない
背伸びした途端老骨悲鳴上げ
ここ掘れと犬のお告げを待ち焦がれ
「落 暉」 石井 昇
限界を知ってるカニの横歩き 蓮 田
失敗が二階の窓に置いてある
平等に貧乏してるヨイトマケ
老いてなお落暉と競う色模様
「積む一歩」 鈴木 まつ子
指先で記憶をたどるうろ覚え 島 田
これしきのこと ままならぬ年となり
つきつめて生み出す言葉大辞林
ささやかな達成感に積む一歩
「冬 の 花」 薗田 獏沓
石蕗のかすかに揺れて風の絵よ 川根本町
城跡を紅葉に染めて山下る
山茶花の白 父の色今盛り
石蕗の花や狭庭に人を待つ
「 橋 」 安田 豊子
一か八渡った橋の運のつき 浜 松
思案橋行ったり来たりすくむ足
噺されて止むなく渡る義理の橋
この橋を独りで渡る未だ死ねぬ
「ね 正 月」 川口 亘
この山を越せば明日の風は春 藤 枝
深追いをしても素直が横にそれ
空虚覚 そんな気持ちが字を数え
面白く言葉遊びの気で撫でる
「自 由 吟」 大塚 徳子
ハッピーな風が吹いてるジ・エンド 仙 台
デフレーの水はたっぷり塩辛い
お金持ち蟻も通さぬ門構え
ゆうやけこやけ途方にくれる日が暮れる
「政 変」 酒井 可福
頑張りも効かぬ無策の金バッチ 北九州
真実を話せばママからお小遣い
政変に金も奇策の手がつまる
難題を残し気楽に野次飛ばす
「三角四角マル」 戸田 美佐緒
伏せ字から三角四角流れ着く さいたま
出奔の蝶です楕円形を飛ぶ
食パンの耳が支える四角形
軽石が委細承知の靴を履く
「気 持 ち」 加茂 和枝
外見と中身が違う餡の中 岩 沼
揺れ動く気持ち支えて風の中
陽溜まりを見つけるここでひと休み
大切な心で気持ち磨きます
「人 生 道」 畔柳 晴康
乱れ世を我慢努力で乗り越える 浜 松
前歴の髭剃り落とし今一度
しがらみに負けてならじと今日の汗
低姿勢でも信念は替えず生き
「う し ろ」 鈴木 千代見
ライバルがぴったりついて息つまる 浜 松
講演に後ろの席で居眠りし
ランナーがうしろチラッと見る余裕
バックミラーパトカー写り減速す
「雑 詠」 飯塚 すみと
中学生あるく歩巾に希望見え 静 岡
町内会ひそひそ話 道そうじ
風切って食べたい煎餅買いに行く
わが妻子何かを求め身延山
「ウォーク・デビュー」 尾崎 好子
友人が歩け歩けとやかましい 藤 枝
引っ越を機 栃山川土手デビュー
一キロを歩くと富士が見えるけど
おかげさま歩くと身体ほっかほか
「雑 詠」 森下 居久美
平凡な一年願う初日の出 掛 川
不景気な話は止そう鏡餅
近況に介護が覗く年賀状
箱根路へ声援送る掘炬燵
「自 由 吟」 森 だがやん
焼くほどに膨らむモチはキモチかな 静 岡
ドラマ出てスター気取りのエキストラ
会議中アラーム響く腹時計
腕時計 腕は間違い手首でしょ
「相変わらず」 中矢 長仁
宝くじ大きい夢を楽しんだ 松 山
古亭主と呼ぼうかお前も古だぬき
口論はほどほどにして仲直り
憬れの駿河の旅で富士を見た
「雑 詠」 山本 野次馬
今日を解く方程式が間に合わぬ 函 南
鼾まで抱いてあげたいホスピタル
正直な彩だ夕陽が曇らない
初めからグーを出すから見破られ
「新聞を読みながら」 栃尾 奏子
トリックの尻尾に触れて容疑者に 大 阪
壁画から流出す古代のリズム
手の平の端末子等の世界感
私からは逃がさぬ愛の落し蓋
「イルミネーション」 高橋 繭子
冬空は晴れて光のページェント 大河原
豆電球が人を性善説にする
雪が降るように光の降る師走
明るいほうへ惹きつけられて2010
「自 由 吟」 稲森 ユタカ
降りしきる雨が足跡消していく 静 岡
秋の空自然のざわめきこだまする
足元に静かな水面月残し
千鳥足トイレに向かいよーいドン
「今年も終わります」 小野 修市
一年が終わって俺が古くなる 静 岡
予定書くより愚痴多い我が手帳
来る年の福を頼んで拝む虎
リストラでエプロン掛けて主夫となる
「チャリンコ通勤」 恩田 たかし
雨に濡れ路面輝く朝日見た 静 岡
カッパ着て寒い雨の日汗をかく
食べてるが割と太らぬチャリ通勤
体力と足腰鍛え更にエコ
「ストレス」 林 二三子
ため息一つ不幸の種が又生える 芝 川
姑に尽くし嫁にも気を遣う
温泉へストレス束で流し込む
時間だけ過ぎて作句が進まない
「自 由 吟」 増田 信一
インフルで休みまくって席がない 焼 津
おしゃべりは裁判員が務まらず
交代と言った社長を代えたいな
氷河期をスーダラ節で泳ぎたい
「大そうじ」 勝又 恭子
思い出の品手に止まる大そうじ 三 島
役に立ちそうでしまってあったゴミ
賞味期限切れた思い出大処分
片付けがすぎて居心地悪い部屋
「振り返る」 長澤 アキラ
ウッズにはなれず草食系のまま 静 岡
ストックもフローもなくて振り返る
沢山の自分を捨てて黄昏れる
生き恥を晒して水に辿り着き
「年の暮れ」 中野 三根子
何もかも忘れて過ごす年の暮れ 静 岡
大掃除今年も予定半分で
捜し物次々みつかる大掃除
窓拭いてピカピカになりおもち焼く
「詰め込む」 山口 兄六
募金箱見栄でも偽善でもいいよ 足 利
宛て先は不明不満の詰め合せ
梅干しは一個で愛はたっぷりと
青春のノートが君で溢れそう
「里 山」 山下 和一
里山の秋を頬張る四半刻 伊豆の国
耳を当て楠の木の声聴いている
ため息のあとにかすかな陽の匂い
オリオンに肩を抱かれて千鳥足
「自 由 吟」 真 理 猫 子
シュレッダーにかけてしまったお年玉 岡 崎
家計簿にイルミネーションつけてみる
すっぴんで出掛けられない寒いから
厚化粧して買いに行く宝くじ
「師 走」 谷口 さとみ
大掃除 心のゴミはまた残る 伊 豆
暇ですと言えない空気流れてる
めでたくもないうちに書く年賀状
借金が無い幸せを噛み締める
「自 由 吟」 中田 尚
石ころに目鼻をつけてモニュメント 浜 松
ちゃぶ台のみかんでつなぐ家族の和
ラ・フランス気位高きひとりごと
にんまりと自分に酔っていた油断
「低 姿 勢」 藪崎 千恵子
感情の走る言葉が胸を刺す 焼 津
馬鹿になり負けるが勝ちの低姿勢
切り替えを早くしないと日が暮れる
きっと良い明日がくるのを信じよう
「鍋 女」 多田 幹江
音無しに構えて転ぶクセがつき 静 岡
にんげんの都合で猫になったトラ
のりピーも柿ピーも好き発泡酒
冬ですね 鍋ですね 楽ですね 女
「世の中いろいろ」 永田 のぶ男
結び目を大きく開けて誤解とく 静 岡
問診で君の戯言聞けません
神仏の加護をえるよう正座する
冷静になってマスクを買っておく
「切り取り線」 石田 竹水
決断が鈍ると湿り出す火薬 静 岡
八百長を仕掛け掛けられふたり旅
我儘な切り取り線に気を遣う
四捨五入我儘な五が四をかばう
「落 し 穴」 佐野 由利子
プライドを持って進めば落し穴 静 岡
嘘ついてまでも逢いたい青春期
じっくりと話せば誰も悩みあり
シャンソンを聴きながら書く年賀状
「なくし物」 川村 洋未
さようなら砂に埋めた恋の殻 静 岡
ぬげそうなサンダルはいた恋だった
骨無しの男を好きと言った秋
夢にすら君の泣き顔出てこない
「妥協の旗」 池田 茂瑠
花の束嫌い個性の色で咲く 静 岡
二種類の朱色下絵へ用意する
染めむらが妥協の町の旗にある
女から掛けた可愛い仕掛けです
「ニッポン」 高瀬 輝男
ニッポンて貧しい国さ自給率 焼 津
古き良き心忘れた日本人
自画自賛富士山苦笑するばかり
円の価値少しの風へすぐ崩れ
「熟 柿」 望月 弘
赤い糸切手不足で返される 静 岡
熟したら柿はしずかに落ちていく
うらおもてじっくりと焼くマニフェスト
四年間じっくり寝かす消費税
「冬の日の幻想」 加藤 鰹
冬銀河 いくら待っても無駄なこと 静 岡
サヨナラのセリフに凍りつく受話器
愛のない街です着膨れています
いま君がいてくれたらと思う 雪
顧 問 吟
「冷 や 飯」 柳沢 平四朗
西からは出ぬ陽へ誤算の蟻になる 静 岡
熟年に多情多恨の灯がいびつ
其の先を読めず冷や飯てんこもり
失職の皿へ多弁なパンの耳