「自 由 吟」 森下 居久美
梯子酒妻が反旗を翻す 掛 川
私のすき間を埋める美術館
血液がさらさらになっていくシネマ
春風と一緒に絵手紙が届く
「世知辛い…」 栃尾 奏子
飼い主は紫 犬の毛はピンク 大 阪
限界の村へオレオレ詐欺の影
イケメンにばかり集まるチョコレート
騙されていればバラ色だったのに
「階 段」 濱山 哲也
階段がメタボメタボとあざ笑う つがる
斬られ役階段落ちが晴れ舞台
階段が国境となる親子間
失敗を階段として生きている
「節 分」 井口 薫
鬼は外 自分に向けて豆をまく 袋 井
そんなには食べられません豆の数
日本中あっという間に恵方巻
胸ボタン一つ外して明日は春
「バレンタインな夜」 新貝 里々子
立春の陽ざしの中に君がいる 袋 井
抱かれて梅の香りに包まれる
分け入れば君の激しい息遣い
一生を守ると甘く溶けてゆく
「自 由 吟」 内山 敏子
子等巣立ちポチのセーター編んでいる 浜 松
リサイクル古着もいつかニュールック
万華鏡くるくる明日の夢を追う
サービスと言えば忽ち列ができ
「肉 食 系」 毛利 由美
新年会終わった頃はもう二月 つくば
夫へのチョコ本命か義理なのか
宝塚の肉食系の男役
K-POPは筋肉ジャニーズは肋
「春はどこ」 小林 ふく子
米を研ぐ水にも春を教えられ 袋 井
冬のカッコ外して春と書きなぐる
ひと色にもうひと色を足して春
弾みたい女ひとりで種子を蒔く
「主婦の一日」 鈴木 千代見
見比べるチラシに今日の予定練る 浜 松
玄関の靴が出てゆきお茶にする
五百円コトン音する心地よさ
昼ドラに猫とこたつで涙する
「テ レ ビ」 奥宮 恒代
飴色にしっくり溶けた夫婦像 森 町
きみまろを捨て佑ちゃんに首ったけ
ひとっ翔び春へ佑ちゃん追いかける
鬼平のチャンネルだけは譲れない
「自 由 吟」 西垣 博司
一人居は寝るも起きるもドッコイショ 静 岡
究極の名水酔いざめの水
成程と云って終った負け戦
人生路 生死一如の道しるべ
「幼い兄と妹とパパ」 森 だがやん
妹の高い高いを兄見てた 島 田
次は僕高い高いはエンドレス
逃げだしたパパ怪獣をやっつけろ
やっつけたパパ怪獣が馬になる
「これでいいのだ」 増田 久子
片方の眉だけ描いて出る電話 焼 津
價値はないけど五十年前の皿
三千円当りジャンボの元を取る
バイオリンとビオラ並べば区別つく
「片 想 い」 戸田 美沙緒
夕焼けに罪を被せている懺悔 さいたま
ギロチンの刑に処してる絹豆腐
終止符と思った点がずれている
左手に持ち替えてみる正義感
「拠りどころ」 安田 豊子
似た様な傷があるから近寄れる 浜 松
咲く花も散る花もある人生路
何回も転びもたらす明日の糧
まざまざと過去が弾ける日向ぼこ
「 歳 」 川口 のぶ子
いつまでも若くはないよつむじ風 藤 枝
恥かしさそっとかくせる歳が好き
付いて行く気にもなれない歳が邪魔
笑われているのに気付く時おくれ
「雑 詠」 酒井 可福
大人へと変わる心が揺れ動く 北九州
初夢が首を切られて飛び起きる
馴れ合いに初心忘れて振り返る
定年で居眠りしてもいいですか
「雑 詠」 鹿野 太郎
突然の背伸びに影が面食らう 仙 台
内閣にもう耐えられぬ吹き出物
廃校が生まれ変わって村おこし
煌いた日の押し花を見る齢
「晴れマーク」 荒牧 やむ茶
悪ガキの面を忍ばせ友と会う 小 山
スカイツリー涙零さぬよう見上げ
ご破算にしてくださいと晴れマーク
ノーと言えなくて美人に奉られる
「メモリー」 中矢 長仁
文明の利器で土俵に土がつく 松 山
婆ちゃんは昔の事をよく話す
若かりし頃は封印しています
思い出はお酒が好きで飲んでいた
「スポーツ」 藤田 武人
取組みをメールで決めて土俵際 大 阪
芯外しバットへし折る豪速球
一面を飾る数だけ勝ってくれ
寝ぼけてた新芽も息吹く甲子園
「タイムスリップ」 真田 義子
タイムスリップ変な所にきたもんだ 仙 台
赤い糸結び直してくれた空
夢の通りに運命線を書き直す
手の平に幸せひとつ置いてます
「自 由 句」 南 天子
何の音心が折れる音だった 焼 津
イエスノー会話はそれで終りです
死に支度六文銭がみつからぬ
枯葉でも風が吹く度焦ってる
「拾 う」 鈴木 恵美子
長老の指針諭吉から拾う 静 岡
惜敗の涙が拾うあたたか味
太陽を拾いソーラーの湯につかり
片方の耳で拾っているうわさ
「まあ いいか」 馬渕 よし子
買いたいが財布が妥協してくれず 浜 松
宣伝の文句に負けている餃子
釣り銭が十円足りず言いそびれ
推敲をせずに投句という甘え
「自 由 吟」 深澤 ひろむ
兄嫁の耐えて見守る形見分け 甲 府
嫁ぐ娘の正座に惑う涙壷
妻の居る幸せ口に出ぬ頑固
投げられた試練度量をはかられる
「自 由 吟」 飯塚 すみと
解釈は美談の隅の外におく 静 岡
定住の気持半分カナダ行き
限界は見たくもないし続けてる
エゴイズムさらば北方愚連隊
「隠 す」 岡村 廣司
よくもまあ隠し事など無いなんて 焼 津
見栄張って心の不安隠しとく
本心を隠す努力を怠れず
野心など隠して笑顔続けてる
「自 由 吟」 滝田 玲子
風化した地蔵の赤いよだれかけ 浜 松
さりげないひと言相手急所つく
向かい風に明日を生き抜く知恵もらう
貧乏神が金借りに来てあわてさせ
「自 由 吟」 鈴木 まつ子
添い遂げた介護この手がいとおしい 島 田
背伸びして掴む句材に四苦八苦
内助にも光が当たり芽吹くころ
学ぶのは楽しあたたかさと出会い
「後期高齢」 畔柳 晴康
もう嫌だまた加齢する誕生日 浜 松
思い出し又忘れたり長寿する
妻に手を引かれ眺める逆さ富士
了解と言いつつ尚も愚痴こぼす
「化 石 人」 瀧 進
マニュアルのしたり顔する二進法 島 田
デジタルの頭の中で過去が消え
アナログの頭ゆとりの十進法
読み書きと算盤だけで世を渡る
「頑 張 る」 薗田 獏沓
帳尻を合せる為に汗をかく 川根本町
頑張った汗は明日の夢を盛る
汗と涙黒帯しかと締め直す
米倉の米が知ってる汗の量
「馬鹿になる」 大塚 徳子
ボルテージ上げて愉快な馬鹿になる 仙 台
プライドを捨てて陽気な馬鹿になる
お皿たたいておけさ音頭を歌う馬鹿
土壇場で母は火事場の馬鹿力
「雑 詠」 山本 野次馬
神の手が攫っていった友の顔 函 南
春までは待てぬと発酵してしまう
大空へ綴った二行詩の決意
節々を鳴らして後期高齢化
「千 の 風」 成島 静枝
雨予報はずれて欲しい通夜の客 千 葉
享年と平均寿命まだ若い
逝く時はバスより速い千の風
お悔みと介護の労へ頭下げ
「おやすみまたあした」 斉尾 くにこ
お料理をしている背が美しい 鳥 取
理性の壁へ感情は自然体
さくら色してると決めて会いに行く
想い出に抱かれおやすみまたあした
「雑 感」 川口 亘
同じもの違う角度に見る変化 藤 枝
何がまた自分にさせてこころ詠み
名も知らぬ垣根に咲いた花の精
まだ先を見つめていつか花咲かせ
「自 由 吟」 恩田 たかし
懐かしいドリフを子と見ゲラゲラと 静 岡
テレビなく携帯ワンセグ見て我慢
この冬を灯油二缶で過ごしきる
休みの日のんびりラジオ三昧日
「雑 詠」 萩原 まさ子
箸ぶつけ目を見合わせるラストワン 静 岡
衣食足り隙間は友が埋めている
年一度居場所教える年賀状
見舞い品友の笑顔がトッピング
「雑 詠」 提坂 まさえ
程がある初めて嘘をつきました 静 岡
初めての頃より第九年を取り
ハゥドゥユドゥ身についたのは一語だけ
初恋のかけらもついに粗大ゴミ
「か が み」 石上 俊枝
また朝が洗面笑顔光ってる 静 岡
試着室鏡がノーと言いショック
夕方はメッキも剥げて鏡拭く
人生の鑑の姑真似て生き
「静 岡 人」 川村 美智代
半額になるまで待とう静岡人 静 岡
初詣ピンピンコロリ願掛ける
ピザ宅配孫にかこつけ知った味
足元に百円玉が落ちている
「正月はこうれい」 尾崎 好子
座り込み箱根駅伝女子男子 藤 枝
大相撲魁皇びいき声を張り
白鵬はついてる持ってる光ってる
駅伝を見ながら膝をさすってる
「 春 」 増田 信一
日溜りでうつらつらする年になる 焼 津
蝶が舞い鳥が飛んでも引籠もり
川音に耳傾ける散歩道
雑草が空を見上げて夏を待つ
「根が真面目」 小野 修市
根が真面目過ぎて人生遠まわり 静 岡
根が真面目で妻がいらぬ苦労する
根が真面目なので眉間にしわがよる
根が真面目で酒も酔わず飲んでいる
「命 乞 い」 石田 竹水
プライドが病む身を庇い強くする 静 岡
ジャンケンに強いが病には怖け
法律の抜け道ファイルする秘書課
遣り残し有るから命乞いをする
「四季の仮面」 池田 茂瑠
バラよりも派手な女の嘘だった 静 岡
四枚の四季に合わせた仮面持つ
花言葉月へ深みもなく散った
旅装解く 鱗の数が減っていた
「は る」 望月 弘
入学へサクラが散ってしまいそう 静 岡
パンジーのパンティーで行く幼稚園
娘の部屋にももひきがあって なう
静電気ほどは感じぬキスシーン
「ドッチラケ」 加藤 鰹
ハッケヨイ メール見ながら相撲取り 静 岡
カン蹴りはもう飽きちゃた永田町
例年の十倍と聞きもうクシャミ
ゴジラってメスなんだって やっぱりね
顧 問 吟
「生 き る」 高瀬 輝男
まだ死ねぬ欲があるから医者通い 焼 津
交戦歌本気で歌っているのかな
飽食と飢餓 地球の裏表
標準語なのに理解の出来ぬ犬