黒地に白で山姥が描かれた、一枚の切り絵と出会った。私は不思議な力でその絵に引き寄せられ(切ってみたい)と思った。切り絵の約束ごとは、持ち上げて一枚に繋がっている、ということを教わり、早速手持ちのカッターで、アヤメを完成させ、山姥の作者である、かつての職場の上司に見せた。上司が切り絵歴四十年、趣味の域を超えた切り絵作家であるとは知らずに。知っていたらきっと、幼稚な作品を見せるなど、恥ずかしくてできなかったと思う。その後、私は勝手に弟子入りし、心の中で上司を師匠と呼んでいた。切り絵に夢中になっていた私が「街の看板がみな切り絵に見えます。」 といったとき、師匠は 「あなたはもう、立派な切り絵作家ですよ。」 と笑いながら言った。
当時、川柳が趣味の一つだった私は(川柳を切り絵に仕上げたい。)という密かな目標を持った。師匠の作品からたくさんのヒントをもらい、文字を白抜きにして、挿絵を入れるという方法で一枚の川柳作品が完成した。
「あなたの切りたかったものはこれですか!あなただけの切り絵の世界ですね。」 と、師匠から嬉しいお褒めの言葉をいただき、私の切り絵熱はさらに上昇し続けた。

その後、川柳に興味をもった師匠が、句会の入選句からイメージした絵を切り、それに私が文字を入れた作品ができあがった。 「ぜひ譲ってください」 と、句の作者さんが言ってくれたことも、作品作りの大きな励みになった。
山姥の絵と出会ってちょうど二年、川柳がたくさんの人と繋がり、川柳と切り絵と繋がり、私の世界も広がった。川柳と切り絵、そして魅力的な人たち、これからもずっと大切にしていきたいと思っている。 今までの作品を飾り、小さなギャラリーになっている私の仕事場へ、一度遊びに来ませんか?