「自 由 吟」              長澤 アキラ

刀傷癒す薬で二日酔い              静 岡

あの世からこの世に戻る午前二時

日本が今原子炉の中に居る

春なのに楽しい夢が見られない

 

 

 

「嘆  く」               新貝 里々子

千手観音 手の一本を被災地へ           袋 井

命とは簡単に死者二万人

被災地に遠くテレビに意見する

原発のなんてこっちゃにやり切れぬ

 

 

 

「評  判」                薗田  獏沓

噂さえ七十五日持たず消え            川根本町

井戸端の噂たちまち風に乗り

過疎地でもうまい店には人の列

医療事故以来患者が来なくなり

 

「避  難」                大塚  徳子

避難して水いっぱいを所望する             仙 台

避難所でカンパン分けて食べました

炊き出しに並びうれしい塩むすび

避難して人の情に涙する

 

 

「3・11ナウ」                   成島  静枝

驚愕の揺れ脳内は液状化                   千 葉

竜宮へ避難か声が聞こえない

原子炉へ世界の人智立ち向かい

被災地へせめて節電義捐金

 

 

「M9の恐怖」                   鹿野  太郎

ICUで見た化け物が飲む故郷               仙 台

折れそうな心にとどめ差す余震

看護士の愚痴をタラタラ聞くベッド

東北の粘りを知っている津波

 

 

「う ば 桜」              真田  義子

水車小屋作ると駅が混んで来る         仙 台

青空に映えてきれいなうば桜

空青いいつかどこかで会えるよね

足跡をすべて飲み込む大津波

 

 

「ガタピシなの」           増田  久子

こわごわと待つ脳外科の初診の日              焼 津

立て付けが作法を無視させる障子

人知れず近所の犬に餌付けする

歯科で会うさっき眼科で会った人

 

 

「雑  詠」             岡村  廣司

顔色を窺う癖のついた雑魚           焼 津

回り見て手を挙げている多数決

低利息無関係とは情けない

切れ味が落ちると頑固まで消える

 

 

「旅 立 ち」             奥宮  恒代

つめ放題政治家よりもかわいらし         森 町

つめ放題どこにあるのよその粘り

ふくらんだ蕾のような春帽子

小さな肩大きく見えた巣立ちの日

 

 

「雑  詠」             馬渕 よし子

駆け足で歳を取るから息が切れ              浜 松

日が昇り今日一日を持て余す

ジャンケンに負けた手だけど清潔だ

充電を終えて饒舌取り戻し

 

 

「危 機 感」               井口   薫

どうしようきのうの私消えている         袋 井

急がねばまだ弾力のあるうちに

さびしさのメンテナンスに花を植え

青空をついつい広く撮りたがる

 

 

「片 想 い」                 松橋  帆波

君のこと想う去勢をしたくなる             東 京

淋しくて絵文字に汗をかいている

ラブメールというと何だかいやらしい

君を忘れるための小石を選る河原

 

 

「自 由 吟」                 深澤 ひろむ

ああ青春手繰れば何故かほろ苦い              甲 府

その後で実はと見せて来た本音

まだ解けぬ男結びの父の汗

品薄と見たか娘はまだ独り

 

 

「真  心」              鈴木 恵美子

一粒の涙に真心があふれ                   静 岡

夕焼けの彼方に真心をつるす

清貧が清貧救う野のすみれ

閉じた目にあの日の愛がよみがえる

 

 

「弱  い」               濱山  哲也

網タイツ所詮わたしも鰯です           つがる

やきとりの煙に負ける僕の足

頼みごと友だちだろとせがまれる

弱さ知り強い男になってゆく

 

 

「3 1 1」               毛利  由美

安否確認を初めてされました           つくば

悲しいね津波ごっこをする子供

風評被害みんな賢くなりましょう

品薄に応じ納豆断ちをする

 

 

「心が痛むとき」             中矢  長仁

震災の様子テレビで見るたびに            松 山

買い溜めで水が棚から消えたとき

衝動買い似合わないから捨てる時

勿体ない置き場ないので捨てる時

 

 

「雑  詠」             酒井  可福

停電の街に美人が増えている                 北九州

程々に飲んで帰りは朝ぼらけ

春風に土筆つんつん土手に揺れ

手には豆 瓦礫を除く目に涙

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

よく遊びまだよく遊ぶ妻を持ち          静 岡

ほめられてけなされもして新社員

しあわせとふしあわせとをオンとオフ

静と動それぞれもらい三姉妹

 

 

「新  鮮」                小林 ふく子

光合成重ね元気になる心                袋 井

夢はまだ若葉の彩をしてますか

新鮮な話題が好きなイヤリング

転がったまり新鮮な風と会う

 

 

「雑  詠」                     西垣  博司

助走路に向かう女の勝負服                 静 岡

倦怠期円周率がずれている

愚痴を言う口でグルメを食い漁る

慣れる事ない淋しさに一人老い

 

 

「雑  詠」                    川口 のぶ子

親の歳越えておまけに余分生き              藤 枝

春だもの少し位の老化もよい

方便がまったり風でよく似合い

山鳥が早く咲けよと芽を突つく

 

 

「自 由 吟」              野中  雅生

国労は分割されて今は猫             静 岡

おことばの苦難の日々を分かちあい

我が心他人の不幸に揺れている

被災者に分けてあげたい必需品

 

 

「雑  詠」              萩原 まさ子

分け合って極寒の地を温くする               静 岡

復興に私も参加義援金

金無心おまけに言った嘘が効く

悪口を言うと振り向くおじいちゃん

 

 

「白いなみだ」              斉尾 くにこ

パック入り白い涙を十個買う           鳥 取

人間の沼地なみだの溜まり場所

フロントガラスの雨を数えて待っている

寄り添って傘の涙がおちてくる

 

 

「雑  詠」              野中 とし子

おやつです昔の話数かぞえ                 静 岡

笑い顔分け与えよう被災者に

あまりにもおまけの多い災害だ

五十すぎおまけ人生これからだ

 

 

「自 由 吟」               山本 野次馬

無人駅みんな着ぐるみ脱ぎに来る         函 南

湯豆腐の角に女の意地がある

一歩後退 人の背中を確かめる

風向きが変わって尻尾切り離す

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

手の平で豆腐は切られ鍋に舞う          静 岡

配給のパンを囲んだ十二の目

ご飯よそるいつもの朝の炊飯器

ジョギングの慣れない靴で痛い豆

 

 

「自 由 吟」              石上  俊枝

ふるさとに元気ですよと墓参り          静 岡

幕が降り生き様晒す過去を美化

古希になる逢いたい自然河童橋

いよいよか東海地震神頼み

 

 

「雑  詠」              宮浦 勝登志

びりの席意外や空調効いており               静 岡

子よりママライバル燃やす参観日

家計簿に科目消された酒タバコ

ゴミの日に分別一つへそまがり

 

 

「強く生きる」            鈴木 千代見

被災地の梅咲いて家この辺り           浜 松

がんばって生きて希望の梅の花

会話去りさびしがりやの梅の花

復興の街を見守る梅の花

 

 

「隣のみよちゃん」           瀧    進

みよちゃんの手だけ握った麦畑         島 田

ほうたるこいどっちの水も甘かった

初デート夕日に伸びる長い影

再会の祭互いにこぶが付き

 

 

「自 由 吟」              飯塚 すみと

気がつけば姿勢を正すあなた居た         静 岡

とりあえず座ってみよう本の前

ジスイザペン音のひびきで本借りる

人助け出来ない日々の靴をはく

 

 

「自 由 吟」               村越  精也

義援金外人映る俺急ぐ             静 岡

早咲きの桜一輪風邪ひくな

寒戻り焚火にむせび花見酒

安売りに行ってはみたが燃費損

 

 

「雑  詠」                   安田  豊子

冗談をまことしやかに咲かす花              浜 松

話したいでも話したくないうちわ事

あからさま筒抜けている立ち話

心地よく残り火煽る日向ぼこ

 

 

「襖 の 絵」                   寺田  柳京

列島よ貧乏ゆすりやめてくれ            静 岡

積善の家も津波に襲われる

みんな無事犬も家族の夕餉の輪

頭から足が生えてる襖の絵

 

 

「自 由 吟」                  内山  敏子

国訛りまる出し老の輪が弾む           浜 松

ふる里の夕焼けこやけ歌になる

天下りしたらしい靴ちびてない

デパートで旅の舗の味を買う

 

 

「自 由 吟」                         南   天子

両親もあの世で何をしてるやら           焼 津

目に見えぬ縁ある人に声をかけ

説明をしないと私誤解され

あの世にも羽根のある事信じてる

 

 

「あわてる」               藤田  武人

買い物を忘れてチンでごまかした         大 阪

目覚めると景色が違う終電車

一万が有ると信じてレジ並ぶ

行き先を見ずに飛び乗り駅通過

 

 

「宝 く じ」                     森 だがやん

宝くじアレやコレやと狸算                  島 田

宝くじ夢に出てきた大狸

宝くじ狸なんかに化けないで

宝くじタヌキたを抜きゃ空くじに

 

 

「町 内 会」               恩田 たかし

息潜め成りがでかくて目立ってる         静 岡

役のがれいろんな言い訳考える

若いから男だからと体育部長

協力をすると言いつつしてくれず

 

 

「雑  感」              川口   亘

やるときはやるしかないという掟            藤 枝

こだわりを持たないことで強く生き

地震来る現実に見て気を締める

ちっぽけな事に終始は捨てて生き

 

 

「自 由 吟」               滝田  玲子

浪速の街触れ太鼓なく遠い春           浜 松

還らぬ島北方領土待ちぬ老い

悩むのはよそう明日の風まかせ

針のムシロ座る姑が疲れはて

 

 

「陰暦卯月」                  畔柳  晴康

春衣装並べ吊るして若返る                 浜 松

古着肩羽織りエコだと鏡見る

不況でも卯の花月と浮かれてる

狭き庭草だ虫だと口喧嘩

 

 

「宇  宙」              鈴木 まつ子

宇宙から天女が撮ったハイビジョン          島 田

宇宙から望む霊峰 残り月

染めてくる太陽浮遊する地球

クリックで宇宙ふしぎのひとり旅

 

 

「東日本大震災 M9・0」       尾崎  好子

地震って地球のストレスなんだって         藤 枝

大津波想定外にただ唖然

自衛隊十万にした菅を褒め

世界から五十ケ国が支援の輪

 

 

「幸  せ」                    林  二三子

名画見るひととき幸せな気分                 富士宮

大観の名画ひととき息を止め

被災した故郷が写り友なみだ

被害なく暮らす幸せ噛みしめる

 

 

「さ く ら」              小野  修市

通学路夢が弾んでさくらさく           静 岡

野山にも希望膨らむさくらさく

春風に背中を押され一年生

残雪の光る山並みあさき春

 

 

「ひとり上手」                   荒牧 やむ茶

幸福が透けて見えてる影法師                 小 山

舞踏会一人ぼっちの月見草

星空が黙って聞いてくれる愚痴

呟いた言葉が溜まる瓶の底

 

 

「自 由 吟」                    森下 居久美

頑張れとは言えないただ負けないで              掛 川

原発の不安便利の裏表

農水産疑心暗鬼になる風評

振り上げた拳納めて明日の風

 

 

「パーティー」             川村  洋未

テーブルの位置でランクが知れわたる       静 岡

お隣りに美人座ってうれしいな

御祝儀をはずみすぎたかこの料理

パーティーで自分を売って元を取る

 

 

「女なんて。女だから」         栃尾  奏子

君がつく嘘は砂糖で出来ている                大 阪

ウインクひとつ易々と切り抜ける

あなたに出逢い輝きを増してゆく

あかんたれやなあと差し伸べる両手

 

 

「短い尻尾」               池田  茂瑠

私の出窓多情は許さない             静 岡

桃に似た定め流れに任せ切る

再会を尻尾短くして待とう

濁流を越さねば愛を掴めない

 

 

「大自然と」                     永田 のぶ男

明日来ても不思議ではない大津波          静 岡

陸地へと海の力は類がない

陽は昇る目先読めない道を行く

超魔物平和利用の水が出る

 

 

「桜 散 る」                稲森 ユタカ

花びらが寄り添う二人包み込む           静 岡

散りゆくも僕の横には君がいる

桜散るあっという間に人も散る

花びらと一緒に消える人の声

 

 

「自 由 吟」                    真理  猫子

感嘆符だけの手紙を書いている                 岡 崎

運がない金もないけど嫌じゃない

いつか会うあなたの分の金平糖

さあ酔ってここで芽を出せ柿の種

 

 

「前  へ」               勝又  恭子

青空に預けてしまう今日の鬱           三 島

エコライフ地球の声に耳をかす

パンドラの箱の最後にある希望

やり残しあって明日が見えてくる

 

 

「笑  顔」               松田  夕介

いつだって笑顔でパワー無限大            静 岡

笑顔よぶ魔法の言葉 また明日

笑顔行き誰でも持てる乗車券

ポケットに笑顔をいつも入れておく

 

 

「震  災」                増田  信一

震災は忘れなくても忘れても              焼 津

自然にはかなわないねと言う地球

震災に備えていても運もある

震災に負けても絆捨てやせぬ

 

 

「自 由 吟」              山口  兄六

潮干狩り父さんそれはハタミです         足 利

甲羅となりし君が草木の鉢となる

ただちにがいよいよになるシーベルト

舞い落ちる桜に被爆思い馳せ

 

 

「卒 業 式」               谷口 さとみ

メルアドつけて渡すチェルシー          伊 豆

バイク跨り尾崎してみる

卒業写真撮ったのは秋

急に大きく見上げる母校

 

 

「孔 の 石」               石田  竹水

虫食いの葉っぱも僕も無農薬           静 岡

アミダくじ何本足しても運が無い

水滴にすきをつかれた孔の石

世の中を広く見ている遠い耳

 

 

「閑 な 女」                多田  幹江

猫じゃらし閑な女のたわむれに             静 岡

たくらみが浮かびゴシゴシ手を洗う

暗室の闇に浮かんでくるジョーク

目に青葉鰹も青い縞を着て

 

 

「  友   」                  中野 三根子

友からの手作りの品届く春                 静 岡

おばさんも会えば昔の女の子

一本の電話で友と三時間

友が来てワインと桜 春の宵

 

 

「自 由 吟」               薮崎 千恵子

生き生きと真っ白を着る新部員          焼 津

戴帽を終えてナースが走り出す

忠告がひしと身に沁む曲がり角

出る杭も打たれ上手になっていく

 

 

「春  風」               佐野 由利子

かじかんだ葉っぱ春風そっと撫ぜ         静 岡

花吹雪浴び心までリフレッシュ

外景色見ながら思案五七五

気負わずに歩けば春の風も見え

 

 

「無縁社会」               望月   弘

よく歩き無縁社会を遠ざける           静 岡

子離れは無縁社会へ続く道

愚痴よりも無縁の風に寄り添われ

無縁だが五七五の恋をする

 

 

「震災~その後」            加藤   鰹

結局は東電のツケ払う民               静 岡

消費税アップにまたとないチャンス

フクシマがチェルノブイリと比較され

東北産食おう飲もうよ なあみんな

 

 

  顧  問  吟 

「  恋  」                  高瀬  輝男

小休止恋の奴隷になるも良し            焼 津

連綿と綴る日記の片想い

恋よ愛よの文字が重なる夢日記

奔放な恋を夢見る石頭

 

 

「自 由 吟」              柳沢 平四朗

法人へ妻の遊びも社用です            静 岡

もう敵は外より内にいる余生

問い詰めてみたら善意も縫いぐるみ

蹴った石の角が余生にはねかえる