「自 由 吟」 真理 猫子
悪口とネギをラップで巻いている 岡 崎
文部省唱歌をうたうトタン屋根
通り雨みたいなオレの給料日
ひとめぼれ うまく釣り銭渡せない
「雑 詠」 荒牧 やむ茶
ひとまずは謝っておくお辞儀草 小 山
温室で道楽息子よく育つ
親になり初めて知った親不孝
好奇心ネットの海で溺れてる
「芸 能 人」 濱山 哲也
何人前あるのかマツコ・デラックス つがる
親戚の徹子もねほりはほり聞く
和田アキ子はどこへいってもいるんだよ
エリカ様キミにはちゃんが似合ってた
「誕 生 日」 稲森 ユタカ
誕生日彼女のメール寝ずに待つ 静 岡
いよいよか三十代になるユタカ
メール音この日はいっそ鳴り響く
日が変わる瞬間君におめでとう
「自 由 吟」 松田 夕介
ウィリアムテルに頼もうキューピッド 静 岡
赤い糸手繰る勇気は持ってない
人生が空車だったらつまらない
小さめの幸せでいい けど欲しい
「ド ラ マ」 勝又 恭子
連ドラで一週間の時を知る 三 島
月曜の鬱を月九が和らげる
主を生かしながらも光るいぶし銀
城跡に私を誘うストーリー
「波 の 跡」 真田 義子
あの日までゆっくり時間流れてた 仙 台
新しく名前を変えて出直そう
青空の下でのびのび草野球
人生の節目にあった波の跡
「青いしっぽ」 斉尾 くにこ
菜の花のまごころ砕くキャタピラー 鳥 取
伝えない言葉まぎらわしてるキス
むきになる青いしっぽをぶらさげて
ほろ酔いの胸の傷知るおぼろ月
「自 由 吟」 成島 静枝
断捨離が出来ず瓦礫が溜る部屋 千 葉
復興の風を孕ませ鯉のぼり
高い塀潜んで居そうテロリスト
目には目を神様怖いことを言う
「スプリング」 谷口 さとみ
ふわふわを潰さぬようにルンルルン 伊 豆
黄色着てピンクにダイブ青を見る
うかうかと杉のパウダー トッピンシャン
気がつけばまた次の駅オーマイガッ!
「やっぱり」 奥宮 恒代
正直にひいてしまった春の風邪 森 町
相性のよさを煮込んでいるところ
饒舌に眠たくなったロバの耳
怖いもの見たさに覗くコンパクト
「ふるさと」 増田 久子
猪と鹿と蝶々もいる故郷 焼 津
廃校の母校は過疎という空き地
老犬と老老共に一つ屋根
観光の水車米搗く技も見せ
「 風 」 西垣 博司
俺はまだ生きているぞと弔辞読む 静 岡
描ききれず余白のままで終る画布
生きざまを問えば葉擦れがひとしきり
自分との会話二合の酒とする
「輪 廻」 安田 豊子
この星に生まれ輪廻の齢重ね 浜 松
こだわりが溶けない雲は流れない
濾過された水はつましい色で咲く
三寒四温脱いで私も蝶になる
「 酒 」 薗田 獏沓
根回しの酒が本音を喋らせる 川根本町
やめたいと思ったことのないお酒
新春の酒は笑いをもって来る
終電の車掌に呂律まわらない
「罪のかたち」 松橋 帆波
唇を罪の形に開けておく 東 京
時めいたことがあります二の腕に
毒の味知っております薬指
防水と書いてあるから泣いてみる
「雑 詠」 岡村 廣司
木偶なりに友の吟味をしておこう 焼 津
天敵が同席すると身が竦む
逆らえぬ力不足がばれるから
介護する身で良かったな されるより
「内 緒」 鈴木 千代見
トイレから戻るピタッと口を閉じ 浜 松
いつからか内緒の話風にのる
失敗を胸に心が重くなる
胸の虫内緒と言われ暴れだす
「自 由 吟」 南 天子
老人期くることだって忘れてた 焼 津
夢追って夢は何時でもシャボン玉
人生は苦労ドラマと割り切ろう
年令は忍者みたいについて来た
「雑 詠」 内山 敏子
昭和史を語りシャキッと腰のばす 浜 松
のし袋行ったり来たりする四月
化粧品値下げでママはえびす顔
お天気が膝のごきげん左右する
「災 難」 井口 薫
一億がモルモットかも放射能 袋 井
黄砂降る国威発場するように
名前では頼れそうだが五百旗頭氏
トリミングしたら私がゼロになり
「衣 替 え」 小林 ふく子
雑草が過保護な花の先を行く 袋 井
追憶の夢で見つけた蛍来い
青葉若葉うたた寝の脳ゆり起こす
衣替え造花も夏になりたかろ
「雑 詠」 深澤 ひろむ
三度癌 病歴だけを光らせる 甲 府
私にもある青春の一ページ
人間らしく生きるに義理が重くなる
路地裏に私の好きな駅がある
「応 援 歌」 中矢 長仁
復興へせめて一灯義捐金 松 山
避難地を癒す善意の簡易風呂
もう泣かんさあ復興へ立ち上がる
春が来て被災の地にも花が咲く
「雑 詠」 戸田 美沙緒
あなたが帰る渇き始める私 さいたま
ぶつぶつと喉で腐っていく台詞
指先が僕の背中を散歩する
お喋りが続くわたしが閉じられる
「虎 竹 抄」 山本 野次馬
私にも裏は見せれぬ場所がある 函 南
気乗りなどせぬがコートいちまい脱ぐ
スローライフ亀の歩幅がちょうどいい
蓮華も笑う気兼ねせぬ生き方
「自 由 吟」 鹿野 太郎
なりふりを構わずバカになる五体 仙 台
趣味ひとつ春と冬とが喧嘩する
第2位をやるから眉を濃くしろよ
まだ回る頭駆使する三塁打
「自 由 吟」 石上 俊枝
ゴール前うさぎになるな道祖神 静 岡
手抜き膳チーンわざわざ言いふらす
干したはず洗濯物が脱水機
まだいいと後で後でがツケの山
「自 由 吟」 川村 美智代
エンジンがかからず今日もいいかげん 静 岡
刺さる骨きょう一日を参らせる
世話をした孫に降参されたババ
借りたい手 横をのっそり猫が行く
「自 由 吟」 宮浦 勝登志
やるすべて俺は不運な奴と決め 静 岡
参加こそ意義あることと負け惜しみ
派手好きな母さんいやだ参観日
整理説くその人の家ゴミの山
「自 由 吟」 萩原 まさ子
主役より犬の名演参ったね 静 岡
サボったと頬の昼寝の跡が言う
こっそりと怠け力を明日に貯め
おまけには毒ありと手を引っ込める
「自 由 吟」 提坂 まさえ
草食系ひねもすゴロリ春の猫 静 岡
掌の下でまあるくゆるく生き
参考書母さんごめんゲームした
まだまだとアナログテレビかわいがる
「自 由 吟」 野中 雅生
ボランティア机二千個参加する 静 岡
参加だけ異議を述べたい五輪会
ナマケルな言ったコーチがさぼってる
なまけるも働き者には難しい
「自 由 吟」 野中 とし子
年老いて年に一度の墓参り 静 岡
なまけぐせ治す薬でノーベル賞
ボランティア心の中で参加する
沖縄の海の青さよとこしえに
「 先 」 藤田 武人
その言葉ピンポイントで攻めてくる 大 阪
先鋒の勢いのまま勝利する
暗闇に剣先を向け自問する
ペン先を走らせ妻と子へ一句
「トンネル」 大塚 徳子
ベガルタに宮城の思い乗り移る 仙 台
ついに来た天然水を買う時代
食い縛りトンネル抜けたパラダイス
トンネルの社へ天下るパラダイス
「ため息の春」 新貝 里々子
一面のいぬのふぐりもおんなです 袋 井
それなのにユッケを食べたとはあきれ
笛太鼓無しでは踊る気にならぬ
信号はいつも黄色のあばら骨
「自 由 吟」 滝田 玲子
ここだけの話尾ひれが付いて飛ぶ 浜 松
たとう紙に亡母の形見が眠ってる
原子炉に振り回されて泣く市民
春へ発つ絵の具ひと足し春の色
「ゴールデンウィーク」 畔柳 晴康
連休も祭り中止で草毟る 浜 松
帰省した孫に年金ねだられる
孫達に連れられ街を爺と婆
お財布にと身体疲れる連休日
「手 抜 き」 鈴木 恵美子
手抜きした畑に雑草生い茂り 静 岡
空腹においしく食べたカップ麺
レトルトも野菜たっぷり添えて出し
手抜きなど出来ぬ子育て奮闘記
「心 残 り」 鈴木 まつ子
またたきの月日必死に呼び戻す 島 田
千の風土へと還りそれっきり
恋恋と未練が残る愛の数
安らかな君の感触手に残り
「雑 詠」 川口 亘
津波こそ来ないがそれに似た想い 藤 枝
花の咲く故郷を確と刻み込む
遠出には堪えられないを知る思い
体力の落ちた答えを確と知り
「無 題」 瀧 進
曲水の盃あの娘通り過ぎ 島 田
悔しさを水辺の鳥に八つ当たり
蒲公英の絮と気儘なひとり旅
地獄耳笊耳になる子煩悩
「波 紋」 毛利 由美
仕事中うとうとしてる不眠症 つくば
油断すると富士山になる頭頂部
日当たりのいい職場でこの夏が怖い
人災の波紋広がり続けてる
「待 つ」 酒井 可福
腕時計遅らせ急ぐ待ち時間 北九州
待たされる気持ち馴れてる筈なのに
二ヶ月も帰らぬ人を待ちぼうけ
故郷の山河私を待っている
「自 由 吟」 川口 のぶ子
空港を見に行く事で納得し 藤 枝
休日を子供と孫とピクニック
母の日にお花と心ありがとう
公園の花に誘われふとパチリ
「雑 詠」 飯塚 すみと
首都圏が電気のめぐみ忘れてた 静 岡
疲れかな花の目次でアルメリア
ロシアの子綺麗な仕分けしてくれた
人のアト全部直して妻元気
「自分を見つめて」 栃尾 奏子
じっくりと雨には雨の過ごし方 大 阪
噛んで噛んで寂しがり屋の丸い爪
折り合いをつける四隅を丸くして
ねえ僕は誰かの為に泣けますか
「貧 乏」 尾崎 好子
貧乏で医者いらずとは有難い 藤 枝
医者いらず賞味期限も加勢する
貧乏と思っていない連れが良い
にしき着て愁う人よりまあいいか
「通 園 路」 恩田 たかし
通園路木々の葉香る初夏の風 静 岡
笑顔する次女を後ろに十五分
お母さんいっぱいいる中我一人
何回も送迎すると慣れてきた
「クールビズ」 森下 居久美
クールビズゴーヤ朝顔発芽中 掛 川
リビングのステテコ許すクールビズ
クールビズ田舎暮らしにある工夫
クールビズ昭和を思い出してみる
「 味 」 渥美 さと子
にんまりと今朝の至福は合わせ味噌 静 岡
快復へ耐える苦さの粉薬
長生きの気分初摘みの味を呑む
四季を越え舌を集める味がある
「ままごとは真剣に…」 森 だがやん
ままごとで旦那の役を指名され 島 田
食べるふり片付け作る繰り返す
欠伸見て怒る娘にまた欠伸
「パパのバカ」ちゃぶ台返し飛ぶ玩具
「B型にんげん」 山口 兄六
B型の人間いつもパピプペポ 足 利
BBと泣いた赤子の蒙古班
亀が寄る選ばれたのはBの人
十六茶移ろいでゆく恋心
「 話 」 高橋 繭子
椅子があるから会談が長くなる 仙 台
大声をあげたら負けの会議室
とりあえず週末前にお詫びする
空模様の前に震災の話し
「生かされて」 多田 幹江
みつを仰ぎみすヾに気触れ生かされる 静 岡
寄り道をしてにんげんに会いに行く
しなやかに生きるアラ還今が旬
万華鏡ラストダンスを追うて秋
「美 し い」 中野 三根子
スケーターキラキラ光る花の舞 静 岡
人間の技かと思う美しさ
現実を忘れてしばし夢の中
リズムとり若さをと力貰い受け
「自 由 吟」 佐野 由利子
宝石を見てる女に歳は無い 静 岡
雨よ降れ晴れよと人の得手勝手
片足で体重計に乗ってみる
咲く花に美しい人と重い人
「結 果」 川村 洋未
忙しくしてれば脂肪減りそうだ 静 岡
おごられたそのお茶後で高くつく
ぐずぐずと返事のばして忘れてく
健康茶飲むの忘れてストレスに
「食べて嬉しい」 小野 修市
焼芋を朝から食べて母元気 静 岡
柏餅ヨモギと白と半分こ
竹の子のご飯おこげがうまいんだ
蕨餅食べよう初夏を感じよう
「Vサイン」 石田 竹水
両手上げ負けたはしないVサイン 静 岡
甘やかし過ぎ蛞蝓へ塩胡椒
棘の有る舌に真っ赤な薔薇が咲く
人を見る目を患って自粛する
「 罠 」 池田 茂瑠
ジーパンの穴に別れの歌絡む 静 岡
牙のある罠が大きく口開ける
情炎と罪な燃え方しています
戻らないものを探そうローヒール
「雑 詠」 薮﨑 千恵子
輪の中にうっかり入り火傷する 焼 津
久し振り話が刻を忘れさせ
お若いね言われ浮き足立っている
肝心な話になると茶で濁す
「雑 詠」 長澤 アキラ
色即是空だが腹だけは減っている 静 岡
謀並べ正義となる怖さ
私の影をしっかり確かめる
背骨にはDNAが潜んでる
「加 減」 増田 信一
子や孫はたまに来るのが丁度よい 焼 津
休日もあんまり有ると持て余す
冗談も連発すると煙たがれ
ご馳走も毎日出ると飽きが来る
「自 由 吟」 林 二三子
様変わりした郷知らぬ人ばかり 富士宮
散々な苦労話はラップする
新緑が悩み消し去る程きれい
普通という暮らしがとても有難い
「目 先」 永田 延男
現時点考え込んで気が重い 静 岡
明日のこと何も読めずに飯を食う
悪夢から醒めていいやら悪いやら
大災害何が何して何とやら
「原発事故」 望月 弘
上向いて歩きたいのにシーベルト 静 岡
悲しみの裏を地デジの非常識
原発にパンドラの箱開けられる
菜の花よサクラよ共にがんばろう
「血液ガッタガタ」 加藤 鰹
僕以外全員Aでくそ真面目 静 岡
B型にいつも振り回されている
ちょっと目を離した隙に消えたO
僕AB 今夜ハイドに変わるのだ
顧 問 吟
「 無 」 高瀬 輝男
タイムカプセルに入れたまんまの夢一つ 焼 津
漠然と夕陽見ている無題の日
雑魚一人死んでも街の飯屋混む
揉め事は御法度 聞かぬ見ていない
「雑 詠」 柳沢 平四朗
子も他人思案の腕を組み替える 静 岡
スランプへもう受け皿が欠けている
この愛を楯に生き抜く絵双六
ほどほどに裏切る妻の泣きぼくろ