「雑  詠」              西垣  博司

不眠症永遠の眠りで元がとれ           静 岡

三回忌妻はおんなに返り咲き

一滴の水の化身か大津波

列島の地下でナマズの鬼ごっこ

 

 

 

「自 由 吟」               滝田  玲子

ありがとう言えずに逝ったやせた腕        浜 松

連休後急減あせるボランティア

避難所で山積み衣類汗をかく

ヘチマ水 秋に期待の種を蒔く

 

 

 

「自 由 吟」                奥宮  恒代

ゆきずりの町でビタミン補給する          森 町

肩の凝りこんなところで母に似る

オブラートに包んだままの片想い

花殻を摘んで約束する明日

 

 

「自 由 吟」                内山  敏子

リサイクル母の青春額に入れ              浜 松

コンパクト修正をする午後の顔

誘われて花と向き合うお弁当

派手な音させて男の台所

 

 

「な み だ」                     斉尾 くにこ

置き去りの空のペットへ溜まる雨              鳥 取

昨夜より雨脚少し弱くなる

降っていてほしい君にも同じ雨

水滴の大きなひとつ胸に落ち

 

 

「愛せないボク」             阿部 闘句郎

わかってはいるが愛してもらえない             横 浜

わかってはくれない人がわからない

責任を持てない顔と四面楚歌

愛せないボクを愛してくれる妻

 

 

「このごろ」              横田 輪加造

ロマンスカー最前列はすぐに着き        東 京

シロコロを食べて子連れが浮いている

ファミリーコンサート開演中も騒がしい

気圧された子供がはしゃぐ終演後

 

 

「平和な老後」            中矢  長仁

仲が良い事で評判老夫婦                  松 山

心得て逆らいません山の神

聞いている振りをしていて叱られた

手抜きでも旨ければ良いカップ麺

 

 

「自 由 吟」             酒井  可福

運少し使って酒が美味くなる          北九州

生き甲斐が仕事だったは寂し過ぎ

ストレスの元の制服脱ぎ捨てる

B級に口を逢わせてグルメ面

 

 

「ダイエット?」           森 だがやん

好きなだけ食べつつ願う痩せたいな        島 田

食べた分動くとしたら寝る間なし

体重と相談したらメシ抜きに

痩せもせず何故か体重リバウンド

 

 

「  虫  」             濱山  哲也

網戸から人を観察してる虫                つがる

チャラチャラと娘についたツツガムシ

弱虫も血液型も変えられず

爺ちゃんのカブトムシ見る目は子ども

 

 

「自 由 吟」               戸田 美沙緒

ひとつ目の秘密駅裏喫茶店           さいたま

ファミレスの皿に浮気な風を盛る

パンドラの箱に隠したお品書き

妄想がひとつ産まれる理髪店

 

 

「夜明け前」                 真田  義子

ゆっくりと何かが変わる夜明け前            仙 台

風見鶏秘密うっかりしゃべり出す

エネルギーが満ち満ちてくる夜明け前

草笛が緑の風に乗ってくる

 

 

「試  練」                 毛利  由美

日当たりのいい家この夏は試練               つくば

オオタカがいるので道が開けない

築十年ビルトインにもガタがくる

福島がまだフクシマのままでいる

 

 

「お 仕 事」              恩田 たかし

おじいちゃん夜中になると目がさえる           静 岡

食べたのに食べていないと怒りだす

お散歩に程よい距離の登呂遺跡

お料理は何食べレシピ役にたつ

 

 

「雑  詠」              井口   薫

棚おろしして確かめる現在地                袋 井

インストールして小宇宙手に入れる

好奇心目線はいつも3D

バラ展のバラはちょうちょを待っている

 

 

「  雨  」               深澤 ひろむ

湿っぽい話は雨が晴れてから           甲 府

雨しとどおんな二人の長電話

友逝って雨はこころに染みて降る

雨降れば気の合う友の顔が寄る

 

 

「犬の遠吠え」              新貝 里々子

体育館で議員も寝たらと犬の遠吠え         袋 井

届きましたかわたくしの義援金

宮城産と書いてあるから買いました

骨密度上げたらしゃんと立つつもり

 

 

「おんなたち」            栃尾  奏子

埋み火を抱けば女のまま独り                 大 阪

これからを造ろうイヴが風を呼ぶ

たくましい妻で何度も救われる

裏切りを許して笑顔取り戻す

 

 

「雑  詠」              宮浦 勝登志

一瞬の機転が分ける運不運           静 岡

オンとオフボタン一つのもたれあい

いつの日か監視カメラの無い国へ

人生の明暗分けた一秒差

 

 

「自 由 吟」                萩原 まさ子

怠けても節電だよとごまかそう             静 岡

落とし穴うまく出来過ぎ試せない

雨だれを上手に弾ける私です

割り勘と聞いて一皿追加する

 

 

「ホ タ ル」                     石上  俊枝

水あまい蛍飛び交う初夏の夜                静 岡

里の田に蛍飛びかいネオン街

恋蛍闇に怪しく短い夜

プカプカと肩身のせまい蛍族

 

 

「雑  詠」                    川村 美智代

お湯割りでよか御機嫌のお父さん             静 岡

遠い日よまんじゅう一つ子が五人

ローン終え互いに気付く共白髪

愛犬は見破っている下手な嘘

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

節電に片目だけ出すカタツムリ          静 岡

片想い慌てすぎたかはしり梅雨

イエローとレッドの境今日を終え

なぜだろうすぐにまとまる悪だくみ

 

 

「もーいや」              藤田  武人

あとひとつ縦横斜め揃わない               大 阪

スーツから甘い香りが漂った

寝坊して階段走りドア閉まる

マグロかな太公望が釣る地球

 

 

「気  持」               石田  竹水

ハードルを僕の自信で高くする          静 岡

空き缶を拾うか蹴るか見ない振り

恋愛はするが結婚せぬ世代

友からの助言に笑みを取り戻す

 

 

「自 由 吟」              松橋  帆波

カブトムシ売り場 男尊女卑でいる              東 京

拾われた犬ラッキーと名付けられ

にくらしいヤツを炒める中華鍋

扇風機 邪魔臭そうに仕事する

 

 

「  手  」              馬渕 よし子

差し伸べた手を引っ込めてそれも愛        浜 松

誕生と共に運命握らされ

手の数は揃い指揮者が決まらない

母の手は大正昭和まだ臭う

 

 

「頑張ろう」              鹿野  太郎

空っぽの棺どよめく中を出る           仙 台

もうらしさ津波ごっこをするやんちゃ

傷ついた小芥子をそっと休ませる

痛点を過ぎると鬼になるだろう

 

 

「梅  雨」              畔柳  晴康

芽が伸びる露を含んでみどり映え         浜 松

長雨に庭の牡丹も傘を差す

梅雨空に傘一本の二人連れ

サングラスおでこに載せる雨の午後

 

 

「雨もうれしい」            小林 ふく子

梅雨時の鼓膜に溜るチリホコリ          袋 井

雨続き足の裏から出る悲鳴

葛のつる伸びて元気をもらう夏

良い知らせ雨もうれしいリズム取る

 

 

「  庭  」              鈴木 千代見

松の芽を摘んでわが家の夏がくる         浜 松

刈り終えて一服のお茶すがすがし

職人の流した汗は惜しまない

若葉萌えお庭の石も目が覚める

 

 

「進む老い」              岡村  廣司

辻褄の合わぬ話ですぐにばれ          焼 津

慾捨ててみると人生味気ない

脳の錆他力本願では取れぬ

眠ってる内も律儀に進む老い

 

 

「鳥 の 声」              鈴木 まつ子

巣立つ頃負けじと歌う別れかな          島 田

囀りへ雌を呼ぶ声ラブソング

失恋へ歌いつづける鳥の声

雨燕 力いっぱいピピピッピー

 

 

「日  常」               成島  静枝

目を瞑る躰の芯がまだ揺れる          千 葉

薬草のドクダミわんさ引っこぬく

テンポ良く家事が捗る晴れマーク

朝のうち書く礼状に気が籠る

 

 

「  城  」                   安田  豊子

落城の哀れ苔むす野面積み                浜 松

一城の主となって恙ない

二世帯の城へ長居は気が引ける

ひとり居の城にもちゃんと色がある

 

 

「降  参」                   南   天子

降参と云えば勝負が早くつき            焼 津

降参だ体力気力低飛行

降参と云えば友達片手出し

降参と意地でもしない人もいる

 

 

「雑  感」                  川口   亘

梯子酒今はスーパー買い漁り           藤 枝

特価品売り場を泳ぐ記録持ち

気を病めば努力は止めて神だのみ

留守居番孫の相手に追い付けず

 

 

「控 え 目」                鈴木 恵美子

控え目の男が見せた底力              静 岡

控え目の笑顔射止めた玉の輿

控え目がいつも裏方やっている

控え目の中にはげしさ隠し持ち

 

 

「名  人」               薗田  獏沓

釣り名人 魚の言うこと解るらし         川根本町

名人に長考させるその一手

寄席に来て一歩足りない苦笑い

異常無し名医に見えたかかりつけ

 

 

「  絆  」                     大塚  徳子

根こそぎの花を上げます朧月                 仙 台

固定観念捨ててムームー着て出掛け

黙々と働く蟻にある未来

今年一字「絆」の文字の予感する

 

 

「縁(えにし)」             瀧    進

仲人の二人結んだ赤い糸             島 田

赤い糸馴染み打ち解け擦り切れる

摩り切れた解れ繕う赤い糸

愛紡ぐ夫唱婦随の赤い糸

 

 

「国会とは」              村越  精也

なぜ議長いねむり雑談無視をする            静 岡

中継を知っててコックリくそ議員

「辞めないぜ」皮千枚に負けまする

子供には国会中継見せるなよ

 

 

「自 由 吟」               飯塚 すみと

さあ今日はいつものコースAを取る        静 岡

しりごみか向うか大空晴れている

趣味の会まさかの人がそこに居た

気安さにちゃん呼ばりする披露宴

 

 

「  参  」                  山本 野次馬

参戦をすると三角波が立つ                 函 南

降参だ妻という字に勝てません

参考書の山親父の背の匂い

白馬の王子に人参ぶら下げる

 

 

「自 由 吟」              川口 のぶ子

難聴で話半分聞きのがし               藤 枝

この所夫との話ちぐはぐに

びっくりねまさか八十路を越えるとは

夫と妻八十路のり越え春を待つ

 

 

「雑  詠」              野中  雅生

いたずら絵人を動かす雪舟だ             静 岡

募金するみんな揃ってうきうきと

民主党はじめニヤリでいまヒヤリ

夏の宵ひょうたんぶらり暑かった

 

 

「自 由 吟」                  野中 とし子

孫からの電話さっぱり解らない                静 岡

世界一 鏡よ鏡わたしです

買いすぎて財布覗いて青くなり

紅一点若いと言われ舞い上がり

 

 

「大震災と敗戦と」           尾崎  好子

赤ちゃんを胸にしシャンとして母性        藤 枝

大空襲戦火をくぐり逃げ延びた

日本人も私に出来るボランティア

米兵にDDTを噴霧され

 

 

「読みきれぬ」                   小野  修市

政治家を五七五で詠みきれず                 静 岡

政治家の腹は読めないヘボ将棋

話題とる見積り腹に被災地へ

国民の為に必死と口は言い

 

 

「  旬  」                    森下 居久美

解禁のメインディッシュを待つごはん            掛 川

ふかふかのベッドに空豆のパズル

日の出前もいだとうもろこしの味

総選挙AKBで盛り上がり

 

 

「  鳥  」              永田 のぶ男

鳥が啼くビニール絡み動けない          静 岡

鳥騒ぐ騙しましたと頭下げ

鳥が逃げ限界超えた核の層

鳥が飛ぶ税を上げると羽根が折れ

 

 

「決  断」              薮﨑 千恵子

双方が自分よがりで擦れ違う                 焼 津

ケータイもなくて迷路に嵌まり込む

とんとんと事が運んでいく怖さ

行き止まり道で決断迫られる

 

 

「自 由 吟」               長澤 アキラ

アラフォーの娘の行く末を考える         静 岡

水溜りでも青空が覗いてる

忘却のはずの景色がよく見える

人生の残念賞が吹き溜る

 

 

「遊 び 心」                    中野 三根子

心から楽しんでいる生きている            静 岡

生き方を変えて心もはずみ出す

雨の日はたいくつしのぎしてしまう

ちょっとだけ遊び心が目をさます

 

 

「梅  雨」                林  二三子

雨続きカエルに元気奪われる            富士宮

菜園のトマトに傘をさしてやる

また花を食われた憎きナメクジに

汚れ物抱え梅雨空恨む朝

 

 

「アオウオ賛歌」            山口  兄六

茎わかめ 恋人達の半減期             足 利

万引きをしたくて疼く花屋街

雨音をしたためノアを待ちながら

ずんだ餅ピーヒャラ父も既に溶け

 

 

「雑  感」               勝又  恭子

高そうな器でカバーする料理             三 島

入り口に留まっている趣味ばかり

目薬が二滴ですんだことがない

ここからが始まり旅の支度する

 

 

「動  揺」              谷口 さとみ

よんどころ無いとこにあるキンチョール      伊 豆

何故今は鈴木なのかと聞きづらい

近道でネコの交尾をみてしまう

ゴキブリに見えて叩けば夫の手

 

 

「雑  詠」                荒牧 やむ茶

相次いだ揺れが五感を鈍くする             小 山

喧嘩してそっぽ向いてる二輪草

遅咲きの花で散れない夢想花

桃色の吐息零れる片想い

 

 

「自 由 吟」               真理  猫子

なくしもの2号が先に帰宅する          岡 崎

多数決やや野良猫が勝っている

諦めがつくまで海と語り合う

アドレス帳ところどころに神がいる

 

 

「ショック!」              稲森 ユタカ

夕立におニューの靴をよごされた         静 岡

録画したドラマ前半延長戦

目覚ましのセットを忘れ大慌て

酒を飲み記憶なければカネも無い

 

 

「七  月」                松田  夕介

青春のページ今なお書き綴る              静 岡

鏡から外出許可が出ない朝

君の顔ばかり見ていた蛍狩り

ツバメさん僕ともダンス踊ろうよ

 

 

「雑  詠」                  多田  幹江

実篤のかぼちゃも苦くなりました              静 岡

好きなことして来た人の後祭り

転んでも滑ってもこの道を行く

歩く歩く 止まると駄目になりそうで

 

 

「自 由 吟」               増田  信一

顔からは想像出来ぬ思いやり           焼 津

金持ちになればなったである悩み

長生きのコツは青でも左右見る

恋心伝えられずに流れ星

 

 

「余  裕」               佐野 由利子

良いことがあると運命線が言う          静 岡

ライバルを庇う心にある余裕

ストレスを丸洗いする青い空

六十路これから地図を書き直す

 

 

「昼  寝」               川村  洋未

おばあちゃん育たないけどまた昼寝        静 岡

生きてるか鼻にティッシュを乗せてみた

寝不足を昼に補い夜キラリ

手の跡がおでこについたねぼけ顔

 

 

「悲話の美貌」             池田  茂瑠

地図通り歩いて罠の底に着く           静 岡

解きにくいヒント抱えているピカソ

幾つかの悲話が詰っている美貌

愚かさを抜くと自分史隙が出来

 

 

「防人(さきもり)」           望月   弘

のんびりとして列島が包囲され          静 岡

防人へテトラポットとルビを振る

大海がテトラポットへ牙をむく

白旗は上げぬ男を捨てるまで

 

 

「伊達藩へ」              加藤   鰹

文明はかくも非力なものと知る           静 岡

ポセイドンの仕業 打ち上げられた船

トンネルの向こうは核のない世界

被災地と呼ぶには仙台はみどり

 

 

顧  問  吟 

「  夢  」                  高瀬  輝男

俗っぽい生き方がいいろくでなし          焼 津

バイブルの通り生きたら夢が消え

雑念が重過ぎるのも尼僧ゆえ

緑したたるふるさとはもう夢と消え