霜石コンフィデンシャル102   高 瀬 霜 石

「白米狂詩曲(ラプソディー)②」

津軽弁研究家の渋谷伯龍さんから聞いた、ひと昔前のとある高校での面接でのエピソード。

「君の趣味は何ですか?」と、面接官が尋ねた。

「……」

もう一人の面接官が、即座に助け船を出した。

「君の好きなものを言えばいいのだよ」

伏し目がちの生徒は一転、元気よく答えた。

「好きなものは、えーっと、熱―っ飯さ、納豆です」

つい吹き出した二人の面接官。粗末な食事を笑われたと誤解した彼は、再度大きな声でこう答えた。

「もとい!。熱―っ飯さスズコ(筋子)だば、もっといいです!」

僕もまったく同感だが、残念なことに、突然、納豆が食えない身体になってしまった。

僕の持病は《心房細動》という。簡単に言えば、不整脈の親玉(?)みたいなヤツ。

コイツは、ひょこひょこ血栓を作り出す悪い癖がある。その血栓が脳で止まれば脳梗塞、心臓で止まれば心筋梗塞、手足で止まれば閉塞性ナントカになるというのだから、まことにやっかいだ。

血栓を作らないようにするには、血をサラサラにする必要がある。そのために《ワーファリン》なる薬を飲まねばならない。血がサラサラになるのは結構だが、弊害もある。血が止まりにくくなるとかさ。

この《ワーファリン》の大敵が、ビタミンKというヤツ。同じKだが、カリウムとは違うのでややこしい。

納豆や緑黄野菜、海草に多く含まれているビタミンK。コイツが、ワーファリンの効き目を妨げるのだ。

「ワーイ。これでブロッコリー食わなくて済む」なんて喜んでいる場合ではない。(ブッシュ元米大統領の言葉)

人間に必要な栄養素だから、緑黄野菜や海草類は、一度にドサッと摂らない限りOKなのだが、絶対に食ってはならぬのが納豆。納豆の場合、納豆菌が腸内でビタミンKをせっせと生産するから駄目なのだそうだ。

こうして書くと、なんだか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな展開だが、僕にしてみれば悲しい話なのだ。健気で優しい納豆クン。このナイス・ガイをこよなく愛していたのに、突然の別離。どこで会っても、敵として見なさねばならないのだから淋しい。

彼とサヨナラして、もう半年が過ぎた。グスン…。