「酒と休日」              小野  修市

休日の朝だ一杯酒を飲む             静 岡

富士の雪眺めて酒をもう一杯

昼めしはいらぬぞ酒を飲んでいる

夜となりとうとう酒が空になり

 

 

 

「しあわせ貯金」            斉尾 くにこ

雨止んであした晴れたら遠足に          鳥 取

かろうじて弱音前歯で食い止める

会議中 不思議の国へ行くアリス

もういいよ幸せ貯金満期です

 

 

 

「福  耳」                濱山  哲也

十年も十万円もすぐ消える             つがる

結婚が地獄に見えるのは平和

代々福耳で代々貧乏

袋とじボクの心が開かれる

 

 

「等 身 大」                新貝 里々子

がたぴしとわたしを開けてまた閉めて        袋 井

厄介なお話だからごみ箱へ

身の丈の丈が縮んできたようだ

それなりのもどきに酔って生きようか

 

 

「呼  吸」                   杉山 とんぼ

紳助のアドリブ見たい時がある               横 浜

ビスケットいえいえそこはマンホール

膨らんでしぼんで生きている心

苦いこと踏み台にして生きていく

 

 

「  秋  」                奥宮  恒代

ビールより熱燗酔ってみたい月               森 町

あきらめない肌年令とにらめっこ

マイバックマイダーリンは車押す

虫すだくここは極楽一丁目

 

 

「ハエと美女の一部始終」        西垣  博司

ハエ狙う妻は女を捨てている          静 岡

美女だからハエも逃げたりしない筈

収集車葬送曲でハエを乗せ

ハエの処理済んでいつものおかめ顔

 

 

「口 下 手」              鈴木 恵美子

口下手の一言胸をえぐられる                静 岡

口下手の愛は豊かであたたかい

口下手が一番のりの棒グラフ

口下手な男が燃える正義感

 

 

「淡 い 恋」               鈴木 千代見

はないちもんめあなた好みの彩になる       浜 松

もういいよ すぐに見つかる場所にいる

おなべふに追いかけられて追いかけて

ピエロの顔にだるまさんがころんだ

 

 

「秋なかば」               小林 ふく子

ハートまで溶けて色付くみかん狩り         袋 井

人の世を見定めるよな丸い月

国宝へ伸びる五感を探す秋

秋はすてき冬の予備軍だとしても

 

 

「  酒  」             安田  豊子

虫の音とテレビ相手に飲むビール             浜 松

ひとり酒昔の夢に会いたくて

一合で淋しさ癒やす秋夜長

燗酒へめぐる想いのほろ苦さ

 

 

「転 た 寝」             瀧    進

転た寝の天下夢見る膝枕            島 田

ラマダンの転た寝つらい腹の虫

転た寝の尻切れトンボ甘い夢

儲け話目覚めむなしい昼の月

 

 

「  欲  」                鈴木 まつ子

選ばれた幸運次が欲しくなる              島 田

貯えて金の成る木を握りしめ

吹く風をふところにして私利私欲

欲ひとつ減らすと食がよく進み

 

 

「家  族」                    栃尾  奏子

父さんのふところ家族みな入り               大 阪

心まで広げて伸びをする実家

目を閉じる大事なものが見えてくる

手を繋ぐ心かたちにして絆

 

 

「様変わり」                    鹿野  太郎

量販の棚で威張っているコピー             仙 台

灰色のこころ緑に染めた君

サプリ止めグルメ鳥も止めておんぶ紐

ぐしゃぐしゃの浜に戻ってきた千鳥

 

 

「首 の 骨」              成島  静枝

回らない首の痛みに染む寒さ           千 葉

首の骨案外細いレントゲン

骨だけの写真に湧かぬ羞恥心

骨太の根性までは見ぬカルテ

 

 

「世  相」              石田  竹水

地獄耳立ててあれこれ首を出す              静 岡

聞くだけは聞いて一本釘を打つ

乗客も世相が変える縄電車

八起き目を数えて立っている余裕

 

 

「  虹  」               大塚   徳子

門限に遅れてわたし締め出され          仙 台

アルバムに思い出せない男居る

ときめいた古着着たいが入らない

雨上がるあしたの空に虹が出る

 

 

「訃  報」              井口    薫

偉大さがズシリ訃報を聞いてから               袋 井

ハングリー&愚かであるけれど

ジョブズ氏の尻尾の方で遊んでた

彼だものやがてあの世と交信が

 

 

「古  傷」              中矢  長仁

ちょっとした過ちがあり縄付きに         松 山

古傷を妻はチクリといびり出す

古傷を盾にしっかり尻に敷く

古傷に触ると俺も痛いのだ

 

 

「油  断」              毛利  由美

天国へ届け届けと大花火             つくば

さあ次はウォームビズかと服重ね

ストーブを買い停電も怖くない

油断していると白髪が立ってくる

 

 

「通り魔の友達」            阿部 闘句朗

ともだちのいない五体に血が流れ         横 浜

石地蔵クラスメートになっている

ボクの事わからせるのに要るナイフ

通り魔のヒトミ血走るパラダイス

 

 

「雑  詠」              山本 野次馬

瞬きをするたび過去になる未来          函 南

靴ひもを解いたままの鰯雲

郷からの宅配土の匂いして

叱られてみたくて悪さひとりっこ

 

 

「自 由 吟」              石上  俊枝

家の中母のリズムで弾む毬            静 岡

断捨離もできず衣装は眠りこけ

ユニフォーム脱ぐと別人になる医者

許せない自分に石を胸に抱く

 

 

「自 由 吟」              提坂 まさえ

読みかけのふりして置いた投書欄          静 岡

乗り継ぎを間違えたのかねこじゃらし

平服と言われて拗ねたピンヒール

屁理屈には不自由しないわが夫

 

 

「自 由 吟」              川村 美智代

ヘルメットかぶりルンルンあの世まで       静 岡

乗せてって夕陽に向かう雲のバス

みどり児の無垢なオーラに脱ぐシャッポ

プチトマトケーキの上で得意顔

 

 

「受 信 音」              安藤 千鶴子

弁慶がうちで言い負け悔し泣き           静 岡

出来ませんとは言えなくて追い込まれ

出来るから答え母の手震えてる

受信音心が凍る午前四時

 

 

「車 椅 子」              野中  雅生

車椅子我が人生のキャデラック          静 岡

微笑ましい爺乗る車孫が押す

楽しさは車椅子乗り散歩道

我いつも車椅子乗り妻が押す

 

 

「自 由 吟」              野中 とし子

梯子酒帰りの電車乗り過ごし           静 岡

孫たちと馬乗りした日懐かしい

飛鳥Ⅱ世界一周夢の夢

秋の空雲のじゅうたん乗りたいな

 

 

「自 由 吟」              萩原 まさ子

絵手紙で出会った美味しそうな旬         静 岡

お相手の体調見える糸電話

むきになる質で指定も突っ走る

氷河期の就活終えて婚活へ

 

 

「自 由 吟」              宮浦 勝登志

乗車口急げ急げの大時計             静 岡

じいじの日孫のハガキはヒゲの顔

大敗の今スタートと誓い合い

記憶力悪いはすべて親のせい

 

 

「  秋  」               酒井  可福

ツクツクと途切れ途切れに鳴いた蝉        北九州

元気ない蚊まで私を刺しに来る

秋深し布団蹴ったりかぶったり

田の稲が頭を下げて帰り待つ

 

 

「気にしない」                   岡村  廣司

印刷のずれた顔だが気にしない               焼 津

貧困は代々だから気にしない

音痴でも自分の唄だ着に気にしない

愛の為ならば外聞気にしない

 

 

「自 由 吟」               南   天子

俺という名前の子供生みません          焼 津

来世は蟻でもいいとふと思う

風に乗り知らぬ木の葉がひらひらと

負けないと昭和生まれの意地を出し

 

 

「自 由 吟」              畔柳  晴康

仲が良い互いに遠慮してるだけ             浜 松

職退いて笑顔に替る昨日今日

台風が楽しみ旅行吹き飛ばす

老いて尚夢追いかけて籤を買う

 

 

「いつまでも」              藤田  武人

洗髪を膝でしていた娘を思う           大 阪

日曜日必至で模型組み立てる

絶対にもみじマークは付けないぞ

医者にだけ本音を語る聴診器

 

 

「忘れ上手」                  真田  義子

聞かぬふり忘れ上手な午後のお茶              仙 台

自分史の所々にある喜劇

折り返し地点で夢をひとつ足す

こだわりを捨てて笑って生きてます

 

 

「自 由 吟」              薗田  獏沓

目標を少し下げたら楽な日々           川根本町

禅寺の塀に踏ん張る蝉の殻

寝たきりへ残暑見舞いに寄ってみる

三叉路は極楽行きと地獄行き

 

 

「苦 笑 い」              深澤 ひろむ

美人の湯うたい文句に騙される           甲 府

献杯を乾杯と聞く法事席

受話器から頭痛の種がまた増える

パフ軽く叩くおんなの昼下がり

 

 

「自 由 吟」              内山  敏子

事故多発ガードレールが泣いている              浜 松

労りへ心ときめき燃えた日も

ETがそこに居るよな月明かり

公平にいかぬ地震に暴風雨

 

 

「或 る 日」              川口   亘

警報機鳴れば気になる電池切れ          藤 枝

美味でさえしまい忘れる冷蔵庫

体調の不具合理由出を控え

淋しいは意志の疎通が欠けた時

 

 

「戦  争」                    滝田  玲子

戦争で狂う奈落の母子家庭                  浜 松

戦争の死語うすれゆく終戦日

終戦の暑さ忘れぬ半世紀

闇市で父さん買えと笑えない

 

 

「  日  」              川口 のぶ子

日当りが急に恋しくなってくる          藤 枝

津波から日数だけが過ぎていく

完全に曜日がとんで歳にされ

中日におはぎが並ぶ子だくさん

 

 

「自 由 吟」              恩田 たかし

運動会上下違う幼稚園              静 岡

これでもか行事重なる幼稚園

昔したリズム手合わせやってみる

ぶらり旅たった十分散歩道

 

 

「雑  詠」              飯塚 すみと

体力もポストの色もセプテンバー               静 岡

呼んでいる旅にこいよと浜名橋

藍色を欲しがる古希の人が好き

疲れかなガタガタCMすぐ止める

 

 

「ラーメン」              松橋  帆波

行列のわけを飲み干すラーメン屋         東 京

これというラーメンがない食いだおれ

引き算がない若向きのラーメン屋

この店はされどラーメンらしい列

 

 

「パルくんへ」                   森下 居久美

明後日も散歩できると信じてた            掛 川

垂れ耳がパタパタ昨日までの君

散歩道君がいないと歩けない

天国で君よ自由な風になれ

 

 

「  月  」              永田 のぶ男

月光に心落ちつくこの乱世            静 岡

青い球なんで騒ぐか虫螻が

三日月の静けさを行く藍の影

月女王津波ないからご安心

 

 

「猫じゃらし」               多田  幹江

猫じゃらしこの道で合う君が好き          静 岡

猫じゃらし野良死んじゃった死んじゃった

来ぬ野良を今日も待つ穂の猫じゃらし

のら恋しのら煩わし猫じゃらし

 

 

「自 由 吟」              林  二三子

菓子折りを持って親子で頭下げ          富士宮

いたずら書きピカソの絵にも見えてくる

つめ赤く染めて家中片付かず

大家族三猿守り波静か

 

 

「自 由 吟」               増田  信一

はらはらとさせてから出す金と知恵          焼 津

血統は一流で口は三流

背伸びして丁度みんなと並ぶ肩

足して引き掛けて割っても根は同じ

 

 

 

 

「民 主 党」                尾崎  好子

どじょうでいい金魚焼いても煮ても駄目       藤 枝

柳川になるとどじょうも品が出る

演説はう~んやるじゃん野田さんよ

三度目の正直という名文句

 

 

「  手  」              稲森 ユタカ

右手出しティッシュ配りにかわされる       静 岡

街中で手を出す女間違える

手から手へ現金渡り判を押す

手拍子につられて呑んで引きこもる

 

 

「自 由 吟」               中田   尚

深爪になると心が冷えてくる             浜 松

半そでが長そでになり冬になり

メル友を作って指がいそがしい

メル友を求めパソコン混んでいる

 

 

「嬉 し い」              中野 三根子

友が居ていかなご届く春が好き          静 岡

バースディ大きな梨のサプライズ

じゃがいもがどっさり届く秋も好き

冬が来てリンゴ待ってる時が良い

 

 

「次男6歳ソフトボールデビュー戦(守備編)」 森 だがやん

球来ないライトで欠伸眠たそう          島 田

グランドでモジモジしだすトイレかな

意を決し「タイム」と叫ぶ我が息子

皆が待つ息子のトイレ超長い

 

 

「わが秩父」              山口  兄六

抜け落ちた犬毛転がす秋の風           足 利

芋フライソーズに染みる里慕情

グルメには無頓着なり鰹節

駅までの道ぴゅうぴゅうと空っ風

 

 

「バカな奴」              長澤 アキラ

うきうきとする度靴を履き違え          静 岡

K点に挑んだ傷を抱きしめる

飲み込んだ言葉が溜る喉仏

探してる探し切れないものなのに

 

 

「  秋  」                 高橋  繭子

紅葉に染まる2011年               仙 台

角二つ曲がると 仮設住宅

被災地の話題が減って神無月

静かに静かに静かに放射能

 

 

 

 

「自 由 吟」                荒牧 やむ茶

善人のついた嘘なら信じたい            小 山

茶に混ぜた父の小言のほろ苦さ

素直にはなれぬ寝癖を諭す朝

ふくしまがクリックしてる戻るキー

 

 

「雑  感」              勝又  恭子

とげとげの言葉の中でダンゴ虫          三 島

重くなる真実だけを語る口

さよならの余白にちりばめた未練

道草が根っこを太くしてくれた

 

 

「自 由 吟」               真理  猫子

痴話喧嘩祭太鼓に煽られて              岡 崎

たいやきのカタチに文句つける猫

カルロスとイカロスがまだ食事中

外れてるバネの代わりにカタツムリ

 

 

「匂  い」              谷口 さとみ

秋の空吸って私が秋になる            伊 豆

昼時のサテンの匂い生姜焼き

焼き芋屋匂いなびかせ去ってゆく

新米の匂い私を笑わせる

 

 

「  秋  」                佐野 由利子

秋ですね もみじ色した服を選る          静 岡

秋めいて森もほのかにダイエット

よく食べてよく昼寝してダイエット

このドアに注意のドアにぶっつかる

 

 

「一人暮し」              川村  洋未

縦横にしわを育てる年になる           静 岡

一人でもテレビ観てたら笑えたよ

この印自分で書いて何だっけ

遺言に書きたす事は今日もなし

 

 

「決  断」               薮﨑 千恵子

決断の早さが有無を言わせない            焼 津

何様でないからいつも控え気味

虫の音か耳鳴りなのか秋の夜

ぶらり出てばったり出合う蚤の市

 

 

「  妙  」               松田  夕介

妙に好き雨の日薫るアスファルト         静 岡

一人酒妙にスースーする心

酔ったかな妙に綺麗に見える君

ヒコーキ雲追ってあなたに逢いに行く

 

 

「変えた鍋」              池田  茂瑠

悪女めく一行足して出す手紙           静 岡

煮え切らぬ夫へ鍋の質変える

底までは読めぬ異性のヒントです

一コマのマンガと繋ぐ暮らし向き

 

 

「秋だなあ」              望月   弘

色づいた柿4Bが待っている           静 岡

躙り口からダイエット勧められ

セシウムに落ち穂拾いを諭される

手も触れぬ会話もなくて秋深し

 

 

「月ノヒカリ」             加藤   鰹

月煌々ノスタルジアと酌み交わす          静 岡

チルシスとアマント家にお入りよ

秋の夜の手紙が中也めいてくる

五十まであと三年になっちゃった

 

 

顧  問  吟 

「自 由 吟」                  高瀬  輝男

普段着で訪える友あり秋深し            焼 津

小卒のレッテル僕の誇りです

友情の毒舌に知るあたたか味

どうあがいても無欲になどなれず