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銀 行 強 盗 事 件     静岡市  永田 延男

 この世の中は思いもよらぬ事が起きるものだ、私が支店長をしていた銀行に予期もしなかった銀行強盗の遭遇である。
 昭和四十六年三月一日午後三時少し過ぎ、所属支店の表玄関口のシャッターを下した直後犯人が通用口から進入した。刃渡り二十糎の柳刃包丁と発炎筒を発火させてカウンター越しに出納係から現金を鷲掴みにした。
 騒然とした店内は緊急ベルを押して非常体制に入った。男子職員は障害物を持って立ち向い逃げ道を塞いだ。女子職員は関係方面へ連絡をとり、新入社員が出口のドアに鍵をかけたのでかなりの時間を稼ぐ事が出来た。
 犯人は抵抗されている間にポケットに入れた札束をポトポト落し椅子で通用口の硝子を割って裏の小路伝いに逃げた。
 職員をはじめ民間の方々の協力もあって「銀行ドロボー」と叫びながら追いかけた。
 警察の威力は素晴らしいもので、パトカーは二分後に急行し、逃げる犯人を住宅の玄関に入ろうとする寸前に取抑え逮捕した。
 犯人が路上に落した現金は交番に届けられ、捕まった犯人の内ポケットにあった二万円と合わせて心配した現金は全額戻り、感謝に堪えなかった。

 協力して下さった皆様へのお礼もすませ、調査の終えた警察からは功績のあった職員と店舗に表彰状を賜った。
 振り返ればこの世は諍いが多すぎる。「悪の枢軸」とか、一方「大悪魔」とか、勝てば官軍、敗ければ賊軍と呼ばれる。平和だ治安だといくら叫んでも納まらない。人間とは有形無形を敵に廻して戦って生きていく動物なのだろうか。かつての日本も義勇奉公とか天皇陛下万歳でやってきた。竹槍で一対一なら日本は勝つと信じた教育だった。六十年経った今、憲法改正は将来を築く重大課題だ、長い間戦争反対を叫び靖国問題が批判をされても法の拡大解釈で不自由な選択の道を迷っている。
 現在我が国は八百三十二兆円の借金を抱えているので一人当り六百五十万円の大穴があいている計算だ。少子化の今後の国民の負担をどう考えているのか身近な解決策はない。金も票も欲しいのは解るが、天下りも談合も税金の無駄使いも無くならない。取り上げれば切りがなく嫌な暗いニュースが多くて頭が狂ってくる。
 真面目そうな顔をしたオジンがマイクの前で美辞麗句を並べ、専門用語を使って解らぬ事を喋っているが、腹の底は何を考えているのか。悪は亡び善が伸び伸び生きる住み良い世の中でありたい。
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(2007/06/26(Mon) 09:25:03)

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