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霜石コンフィデンシャル71   高瀬 霜石

「エ コ ひ い き」

「三本木農業高校、馬術部」を観た。とても、いい映画であった。主演は、長渕文音。この娘の父親は、カリスマ歌手の長渕剛。母親は、かつて千葉真一が主宰したアクション俳優養成所(JAC)の女優第一号だった志穂美悦子だが、まあ、それはどうでもいいこと。
 長渕文音は、いわゆる美少女ではない。お母さんの方がずーっと美人なのだが、この映画では、それがかえってよかった。そのへんにいそうなフツーの女の子が、障害がある分、気難しい馬の世話をしながら、苦労もし、ちょっぴり恋もしながら、じょじょに大人になってゆく、さわやかな青春物語である。
 彼女が世話をするタカラコスモス(通称、コスモ)は、目に障害があるが、生かされている。一方で、足を骨折した馬は、薬殺されるのが運命だ。
 僕は前々から、この「競争馬の安楽死」が理解できなかったのだが、実はこういうことなのだ。
 体重が四、五百キログラムもある馬。農耕馬のような頑丈な馬ならまだしも、ひたすら速く走るように、つまり精密機械のように《作られている》競争馬は、残った三本の足でその重量は支えられず、蹄が血液循環障害を起こして壊死してしまうのだそうだ。このため、馬は耐え難いほどの痛みに狂い死にするか、衰弱死してしまうという。これは、やっかいだ。
 それなら足に負担をかけないように、人間のように横になって治療を受けさせればよさそうだが、馬は寝返りを打てないので、すぐ床擦れを起こし、敗血症になってしまうので、これも駄目。競争馬自身、自分が動けない状態というのをまったく想定していないので、ストレスが溜まり、馬にとっては命取りになる腹痛を引き起こすという。まさに八方塞がりだ。
 この映画、最近の邦画によくある安易なお涙頂戴映画ではないのは、ひとえに佐々部清監督の手腕であろう。特に、先生役の柳葉敏郎がよかった。
 この人の演技は、いつも固いというか、力が入り過ぎて困ったものだったが、今回はまるで違った。
 青森県が舞台だったから「依怙ひいき」だろうと思う人がいるかもしれないが、それは違う。
 まあ、しいて言えば、三本木の《四季の美しさ》と、柳葉敏郎の《自然》な演技に対しての、ごくごく素直な「エコひいき」と思ってください。
霜石コンフィデンシャル | Link |
(2009/01/29(Wed) 14:48:05)

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