静岡川柳たかねバックナンバー
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 平成十八年十月二十一日 定例句会
    於 静岡市駒形神社 社務所

席 題 「  旅  」  林 二三子 選
秋の空思い出作る二人旅      三根子
古里の方言をきき旅に出る     三根子
集積所満杯にする旅の恥       弘
ツアー客方向音痴世話をかけ    零 児
大胆に女も捨てる旅の恥      茂 瑠
気晴らしにちょっと豪華な旅プラン 獏 沓
休肝日延期しました妻の旅      弘
日本の春夏秋冬グルメ旅      零 児
高いとこ苦手敬遠空の旅      零 児
コスモスも女心も揺れる旅      鰹
三代の顔が揃った旅の宿      零 児
凸凹の道ばかりです夫婦旅     泰 山
凧糸を切って地酒の梯子旅     泰 山
古里が少し恋しい旅三日      輝 男
停年を期に夫婦して旅に出る    獏 沓
旅好きな妻が浮き浮き旅前夜    零 児
憧れは世界一周船の旅       由利子
折り込みのパック旅行にすぐ応募  零 児
五 客
秋風の音で届いた旅の私語     平四朗
充電の旅の夜長は話好き      平四朗
肥ってもいいさ味覚の旅に負け   茂 瑠
鈍行の秋満喫の旅日和       零 児
賢妻の殻旅先の酒へ脱ぐ      茂 瑠
人 位
マンネリの流れを変える旅支度   平四朗
 地 位
同行の妻に感謝の有難う      アキラ
 天 位
デジカメを満腹にする紅葉狩     弘


 宿 題 「気 配」 佐野 由利子 選
自転車がカタン朝刊取りに出る   智 美
愛犬に浮気の気配嗅ぎ出され    重 雄
百舌が鳴く秋の気配がしのびよる  寿 恵
先客の気配にそっと引きかえす   登 志
さりげない心配りが身に染みる   三根子
気づくのがかなり遅れていたホの字 亜季浩
ライバルの弱い気配に油断する   昌 利
ずるずると結ばれそうな腐れ縁   大 鯉
鼻水にクシャミ早寝の玉子酒    竹 水
振り向いて別れの気配感じとる   アキラ
秋色の気配深まる山の木々     零 児
盗み酒うぐいす張りの床が鳴る   獏 沓
ゴキブリの動く気配に身構える   のぶ子
ボーナスが出そうな気配なく不安  玲 子
親の目でしかと掴んだ子のサイン  豊 子
ひたひたと迫る気配に怖くなる   徳 子
娘の目どうも気になる恋模様    泰 山
手紙来る予感も思慕の中に持つ   茂 瑠
きな臭い気配北鮮燻り出す     零 児
苦手なる人が来る偏頭痛      たきこ
こうの鳥下りた気配に夢を盛る   敏 子
菓子袋あけているのがなぜわかる  洋 未
核実験また遣る気配凄味見せ    びん郎
和解する気配夫がお茶を入れ    二三子
よいことがありそう空が晴れて来る 俊 坊
お迎えに来そうで先に墓参り    竹 水
花添える菩提寺亡母の来る気配   政次郎
天仰ぐ母がこたえの鈴鳴らす    美弥子
 五 客
曼珠沙華しっかり秋を連れてきた  穂々美
構わない方が気配りかと思う    しげる
お出かけの気配に犬がまといつき  玲 子
気配など微塵も見せぬ盗塁王    獏 沓
背がさむいカッコントウを飲んでおく 尚
 人 位
行き届く妻の気配りこそばゆい   しげる
 地 位
こぼれ萩ふたり潮時かも知れぬ    鰹
天 位
暴騰の気配見抜いて投資する    安 心


宿 題  「思いやり」 高瀬 輝男 選
目出度い日腹を立てないことにする 獏 沓
寝たきりへ昔話の蛍籠       平四朗
お昼寝をおこさぬようにくしゃみする洋 未
譲ること覚えて人が丸くなり    泰 山
代引きの荷から財布へ来る電話   静 枝
激憤の振りで収める部下の危機  じゅんこ
うたた寝に掛けてくれたねこのケール長 仁
大袈裟に出来の悪い子褒めてやる  廣 司
しくじりに当り障りのない見舞い  大 鯉
欲望を捨てるあなたと歩いてる   満 月
辛くとも我慢しなさい肩叩く    ぎ ん
カスミ草ごめん主役になれないね  茂 瑠
この先は立ち入らぬのが思いやり  由利子
時々は憎まれ役になる親仁     亜季浩
月仰ぎ母の祈りが見え隠れ     たきこ
思いやり杖に柱になって老い    は な
亀の仔を海辺へ向ける思いやり   びん郎
その気持ち嬉しかったぜ恩に着る  政次郎
車椅子乗った目線で押してやる   穂々美
さりげない言葉の裏の思いやり   は な
笛太鼓泣いたカラスが笑うまで   五 貫
読んでくれ酔ってつぶれて打つメール洋 未
お互いの趣味を理解し邪魔はせず  二三子
疲れてる頃合を見てお茶を出す   敏 子
思いやり過ぎて子供が甘くなり   零 児
その先はもう問うまいと話題変え  たきこ
負け犬の尻尾は見ないことにする  昌 利
たとえばのはなしで気遣う思いやり 美弥子
 五 客
独り住む老いを気遣う両隣り    登 志
水溜り先に渡って手を貸そう    穂々美
病妻へ明るい色の紅を買う     美佐緒
角砂糖一方的に溶けていく     野次馬
風届けましょうあなたの残り火へ  茂 瑠
 人 位
逃げ口のある方角へ追い詰める    葉
 地 位
言うだけは言った背中を見守ろう  アキラ
 天 位
鬼の目の涙はきっと真水かも    平四朗
 軸 吟
手料理で単身赴任もてなされ    輝 男



宿 題「はし(表現自由)」川路 泰山 選
毎食の会話途切れる箸二膳     廣 司
菜箸に愛がはじける煮ころがし   敏 子
居候箸が遠くて届かない      重 雄
箸二膳揃う幸せかみしめる     春 江
遠景を見たく禁断の橋渡る     輝 男
和解まだ出来ず黙ったままの箸   は な
箸二膳茶碗二つが閑古鳥      のぶ男
橋出来て空巣被害も持ち込まれ   博 司
道端の石は不運を語らない     美佐緒
端たない金の話に泣く世過ぎ    政次郎
端っこの方へデカパン秋日和    静 枝
端役からいつか来る日を待つ主役   亘
桟橋はドラマが生まれ消えてゆく  穂々美
橋一つ陸の孤島を過去にする    博 司
レンゲ一面端から端に休耕田    穂々美
洋食に箸を注文戦中派       獏 沓
フルコース箸で食べたいレストラン 三根子
端っこに座り睨みを利かしてる   由利子
端々に文句をつけて嫌われる    由利子
五十年喜怒哀楽の夫婦箸      零 児
強敵に出会う橋への交差点     アキラ
言葉の端を拾って食べる三次会   徳 子
廃道に昔を拾う古い橋       獏 沓
箸上手く持てぬ上司に魅力ない   二三子
大揺れも熱い二人の丸木橋     平四朗
橋のない川にロマンが沈んでる   しげる
ぬりはげた還暦夫婦揃いばし    三根子
居酒屋で情報を飲む端の席     竹 水
真ん中で思案めぐらす長い橋     葉
はしはしに愛の強さと脆さみせ   のぶ男
不機嫌なサインは音で箸を置く   平四朗
橋ひとつ越えて訛りを聞きに行く  美弥子
 五 客
侮辱した言葉だよなあ橋向う    安 心
橋渡し要らぬふたりの目が笑う   玲 子
菜箸が強過ぎるのよ山の神     アキラ
マディソンの橋揺れている濡れている 鰹
たかが箸五本の指をあわてさせ    弘
 人 位
また婚期逃がしてしまう迷い箸    鰹
地 位
命日に思い出すなあパンの耳    太 郎
 天 位
無印の箸でジャンケンにも挑む   美佐緒


宿 題「 自 由 吟 」 互 選
G錆ついた釘は本音をあかさない  春 江
E仲直りしようかごはんできたから 智 美
E単純なほうが幸せかも知れず   大 鯉
Dあなたと私煮込めばきっとタヌキ汁
                じゅんこ
C追いかけようまだ幸に手が届く  アキラ
B帰りじなあんた私をどうする気  のぶ男
B文字に乗り行く旅先は過去未来 じゅんこ
B切なさは男にもある秋の風    由利子
B肩車いつの間にやら脛かじる   登 志
Bコンビニにおでんが座り冬を待つ  尚
B方針を忘れてしまう風見鶏    美佐緒
A裏金の流れ図太く女将待つ    しげる
Aいい人と云えぬ姑でまだ元気   博 司
A苦労して喜びを得たしつけ糸   竹 水
A涸れかかる詩情を誘う秋の雨   は な
A気取らない百年の計は自由です  満 月
A農家には嫁ぎたくない農家の娘  叶志秋
A返せない重ね重ねの恩がある   徳 子
A辻褄を合わす言葉が火を煽る   まつ子
A言い訳に持ってる札を全部出す  洋 未
Aキャッチボールグラブに痛い子の成長
                 獏 沓
@ひと前は夫唱婦随を演技する   廣 司
@幸せの中途半端が焦げ臭い    草 園
@ひだまりへ逃げていくさに遠くいる昌 利
@良い方に解釈すれば腹立たぬ   びん郎
@諍いを途中で降ろす縄電車     弘
@片袖がぬれてうれしい二人かさ  三根子
@再生紙となりの財布のぞいてる  穂々美
@大空へ指紋を残すはぐれ雲    野次馬
@昭和史の戦禍を駆けた歳回り   豊 子


 参加者(順不同・敬称略)曽根田しげる
柳沢平四朗、望月弘、川路泰山、池田茂瑠
中野三根子、佐野由利子、あらいじゅんこ
林二三子、永田のぶ男、高瀬輝男、加藤鰹
朝比奈零児、薗田獏沓、長澤アキラ、辻葉
高橋春江、堀場大鯉、望月満月、大塚徳子
岡村廣司、内山敏子、堀井草園、森島寿恵
成島静枝、中矢長仁、御田俊坊、横山昌利
笹美弥子、川島五貫、山田ぎん、西垣博司
竹内登志、谷口智美、石田竹水、鹿野太郎
中田尚、金田政次郎、松野はな、安田豊子
滝田玲子、川口亘、柏屋叶志秋、川村洋未
鈴木まつ子、設楽亜季浩、宮野たきこ、中
川司、芹沢穂々美、山本野次馬、市川重雄
戸田美佐緒、川口のぶ子、中安びん郎、上
田元、森田安心、中村教子、山口兄六

▽川柳マガジン「第一回全国結社対抗誌上
川柳大会」において、見事日本一に輝いた
長野県みすゞ吟社の選抜メンバー、あらい
じゅんこさんが句会に参加して下さり、い
い刺激を下さった。また、朝比奈零児さん
と共に、元大井川鉄道SL車掌さんの薗田
獏沓さんが初参加。病気療養でお休みして
いた川路泰山さんが復活。林二三子さんも
久々に遠方から参加下さって賑やかな句会
となった


定例句会 | Link |
(2006/12/26(Mon) 09:32:41)



そっくりで良かったボクとお父ちゃん 薫
セクハラで遊び上手が減ってきた  トラ夫
たとえばの話に伏せてある本音   ふみ子
正札のゼロに思わず指を折る    洋 未
首縦に振ってしまってからの欝   由利子
満ち足りてくると助言が気に入らぬ 廣 司
トンネルの中で本音が見えてくる  草 園
白旗の下で虚ろな息をつぐ     茂 瑠
本降りの恐さを知らぬ日のページ  幹 江
ニンゲンを喰った話が面白い    輝 男
眼を閉じて右脳が描く十二色    野次馬
指紋合致ぱっと昔の顔になる     薫
雪解けるまではバレずに済みそうだ 二三子
すげ替える首が欲しくてデパ地下へ 春 江
町はずれモンロー調でウォーキング 春 江
一円貨仲間はずれの音がする    フサ子
君のシワ笑い皺だね素敵だよ    智 美
一冊の本一本の藁になる      茂 瑠
襟立てて気前良すぎたなと思う   アキラ
私の名刺 魔除けにされている   トラ夫
根は深く残っていたのです妻に   奏 子
背伸びして歩いてみたい春の靴   義 子
万華鏡おんなも変り身が早い    幹 江
手紙書くからねと言ったのに五月   鰹
本能を使い切らずに終わりそう   トラ夫
突然ですが妻も女でござ候     美佐緒
生き恥を曝す事などご免だね    廣 司
封筒の奥までのぞくラブレター   龍 狂
国会の秩序守っている睡魔     太 郎
幸福にルビを振っても気付かない  トラ夫
政治家がジャンケンポンで負けました徳 子
注目を浴びる準備はできている   猫 子
友からの絵手紙元気とり戻す    義 子
手を出せぬ位置で熟している果実   鰹
人間の背中で爪を研いでます    繭 子
平凡に生きて悔いなし花鋏     まつ子
カラフルで使用期限が来てしまう   尚
高すぎることはない利息と理想   龍 狂
いつかいつかを貯めている小抽出し 幹 江
針のない時計さがしに骨董屋    春 江
泣いて済む話羨ましくもあり    帆 波
知っている筈の母から記憶失せ   二三子
解り合うならばすっぽんぽんがいい  鰹
敗因をつまむ酒席がささくれる   平四朗
水色を捕まえるまでチューニング   静
月満ちるいいなおんなは子が産める 静 枝
恋人の肩越しに見る百日紅     美佐緒
ポジティブと言ってくださいキリギリス  智 美
シャガールの青より謎深き女     鰹
飼われたくなくてすぐ死ぬカブトムシ久 子
向う岸逢ってはならぬ人がいる   恵美子
陰口を言えば空しい酒の酔い    叶志秋
激辛のトムヤンクンとクーデター   鰹
捨てて来た未練を拾うロスタイム  平四朗
水漏れがわたしの脳のどこかから   薫
靴底の減らない人が謝罪して    龍 狂
減るもんじゃないけどあんただけはイヤ
                 痩 馬
寒風に干されひと味増すわたし   よし子
年収が足りず悪女に出会えない   兄 六
仕合せの風景偽卵抱いたまま    輝 男
大丈夫何とかなるさ青い空     由利子
不愉快な人だなピタリ年当てた   久 子
積み上げた私の夢に屋根がない   満 月
ダンシングオールナイトな腹の虫  猫 子
内緒だが二年前まで尾があった   アキラ
美人です煮ても食えない金魚です  勝太郎
音のない拍手も混じる多数決    ふみ子
絶好調ふんわり丸くオムライス   洋 未
年毎に禁煙の文字上手くなり    博 司
染め上げた色へ妥協は混らない   平四朗
輪の中に入る勇気と出る勇気     尚
豆腐噛む脳が荷崩れせぬように   泰 山
複雑な話はしない発泡酒      五 貫
ぬるま湯にニートの湯垢浮いている 草 園
どうせならもっと美人にふられたい 博 司
処方箋楽しいうそを少し混ぜ    洋 未
切り株の芯父がいて母がいて    鐘 雄





虎竹抄 | Link |
(2006/12/26(Mon) 09:28:41)

ちゃっきり し ぞ 〜 か 弁 川 柳

しゃあこいた顔であんてえやってくらー  岡村 廣司
昼酒をごせえっぽく飲む留守居役     岡村 廣司
なんずらかみゃ〜んちニュースおとましい 谷口 智美
しびーお茶さみゃあた方が味がええ    堀井 草園
おだっくい踊り行かざ〜 その腰で?   堀井 草園
やいおめえしゃっぽかぶれよひずるしい  畔柳 晴康
みちゃおれんささらほうさだこのざまじゃ 畔柳 晴康
やるこんがさっさくさーでおもいやむ   鈴木まつ子
そんぐらい誤魔化したってええぢゃんか  高橋 春江
今っからわしらんうちへこんかいねー   高橋 春江
だばあけてばかりいないで仕事しろ    西垣 博司
引越しでやんごらっさあ家の中      西垣 博司
でんがってがらいこさいた深い傷     柳沢平四朗
手もずらを掻きからかいて鼻を欠く    柳沢平四朗
かきゃ不作そのかーちまずごせっぺー   中安びん郎
はっくしょんそばでしんなや風邪引かー  中安びん郎
増税はかにしてくりょ〜おとましい    中安びん郎

▽しぞ〜か弁って言っても西から東からふんとにいろんな方言
があるね〜。最初集まんなくて止めざあと思ったこのコーナー
すっかり「たかね」の名物になったみたい。嬉しいなあ~♪
また来年も続けるでね。どしどし送ってくりょうや!
〒421‐2106
しぞーか市葵区牛妻2095の13  加藤 鰹あて
(受付随時、投句料もいらにゃあでね〜)


ちゃっきり しぞ〜か弁川柳 | Link |
(2006/12/26(Mon) 09:26:41)

「菊 の 花」            大塚  徳子
一球を待って三振してしまう         仙 台
白鳥の翼に乗って来る童話
学校の怠慢生徒かわいそう
霊前にいじめを嘆く菊の花



 「恋は空席」            戸田 美佐緒
貴女を待って恋は空席です。かしこ     さいたま
ときめきが痛い痛いと切ながる
ため息で残り時間を消していく
以上で終る味気のない僕でした



「舞  台」            高橋  春江
喝采もないのに舞台しがみつき     袋 井
斬られ役今日はみごとに死んでやる
パソコンは一本指の手法です
雑魚だから群れていないと寂しいの


「冬ですね」            相馬 さわこ
寒そうに空のバス行く七時前        神 戸
マスコミに踊らされて自殺連鎖
冬花火見る時だけは恋の顔
冬ですね旧友に出す文戻る


「面食らう」            石田  竹水
愉快かな暮らしは漫画そのまんま       静 岡
陽が沈み愉快にネオン喋り出す
口下手が砂に書いてた誉め言葉
喜びが重さなり過ぎて面食らう


「  花  」            安田  豊子
口説かれて花は多彩な香を放つ        浜 松
はらからの想いは尽きぬ曼珠沙華
踏ん張って遮二無に生きる水中花
少子化を睨み寡黙な茄子の花


「雑  詠」             ふくだ 万年
微笑みは言葉以上の意思表示          大 阪
閉じ込めた妻の愚痴から異常音
面の皮薄いのだろうかこの寒さ
夕餉膳格差社会が見え隠れ


「生 き る」           山本 野次馬
生きている証しか人に嫉妬する       函 南
だいじょうぶ楔を元へ打ち直す
しがらみと同居していく心地よさ
大あくび人間らしく酸素吸う


 「虎 竹 抄」            鈴木 恵美子
毛糸玉ころころ愛を編み続け       静 岡
川の字に寝てはいないよぼく元気
喧嘩した昨日を忘れ仲が良い
わんぱくがぐったりしてる何かある


「酒  場」           金田 政次郎
連れられた酒場で薔薇の花に逢い    静 岡
水割に季節が浮かぶカウンター
距離を置く耽美な恋のナルシズム
こみあげる恥の記憶の啼き声


  「雑  詠」            成島  静枝
青い目へ車中メイクが恥かしい        千 葉
恥文化日本の良さが消えかかる
世間様教えた母が小さくなる
赤トンボたまには母を笑わせて


「合わせる」         馬渕 よし子
頷いているが目線を合わせない     浜 松
イエス・ノー言えぬ日本の舌足らず
焦点を合わすと発火するメガネ
足並を合わすと夫走り出す


 「破 れ 傘」            横山  昌利
煮崩れの豆腐が嗤う骨粗鬆     相 馬
未練たらたら破れた傘をさしている
吊されていよいよ軽くなる右脳
快諾の妻に油断をしてしまう


「まぼろし」          新貝 里々子
噛みしめる恋も奥歯も萎えている     袋 井
坂道を無様に転び恋終る
マニキュアは恋のあの日と同じ色
疼くものあれはまぼろしあれは夢


  「雑  詠」            笹  美弥子
玄関に君が一輪の吾亦紅        仙 台
菊人形大河ドラマに彩を塗る
切り取り線いったりきたり倦怠期
そのことに触れまいモーツアルト聞く


「没句供養」            薮ア 千恵子
ひたすらに歴史を呑んで海無言       焼 津
故郷の祭に続く木遣り歌
散歩道風が運んでくる季節
一肌を脱いで返している恩義


「バランス」            増田  信一
リセットができる自分史あったなら      焼 津
方言のシャワーをあびて生き返る
連れ添いは勝ち負け五分でちょうどいい
若い時出した手形が今回る


「もう終わり」           中田   尚
この間雑煮食べたら大晦日          浜 松
学生の時にこんなに早ければ
計画が計画のまま十二月
下書きのままで終わった句と眠る


「動 物 園」             井口   薫
子供より子供になって動物園          袋 井
オランウータンの千両役者動かない
象ナナ子喪中へ檻の前静か
動物の視線人間ウォッチング


「自 由 吟」            寺脇  龍狂
恵贈の歌集に光る師のサイン        浜 松
改革の華は一、二期 危機四、五期
言い訳を優先席へして座り
ちびっ子もメジャーも同じホームラン


「小さな灯」            真田  義子
転ぶたびあっけらかんと歩き出す       仙 台
ポケットに楽しい言葉入れてます
ライバルがいるから僕も光り出す
平和です小さな町の小さな灯


「雑  詠」            江川 ふみ子
生きていく箸が重たい日暮れどき       函 南
ドアチェーン人間不信となる私
終のある人生今をいとおしむ
確実に一秒一秒死に向う


「老  い」             堀場  大鯉
整形の鼻だけ老いぬ可笑しさよ         焼 津
山頭火来そうな道に秋の蝶
手のひらで切るお豆腐に秋を知る
老残を忘れる杖よ菊日和


「自 由 吟」             川口 のぶ子
サイズから試着の部屋の狭き門        藤 枝
回転の遅い頭のネジを巻く
来客が押売だけになる世代
見上げればまんまるの盆秋の月


 「  雨  」            畔柳  晴康
降り止まぬ雨と句作の根くらべ        浜 松
懐しい想いを馳せる雨の午後
苦にするなゆっくり休め今日の雨
気晴しに散髪したが雨やまぬ


 「い ば る」             設楽 亜季浩
威張っても私あってのアナタでしょ      静 岡
いばるのは病気のせいと受けとめる
意地張ってしょんぼりしてる威張りんぼ
威張るのも定年は許してた


 「現  象」             西垣  博司
晴天も続けば人は疎んじる       静 岡
クーラーを掛けて地球をあたためる
疎んじて暑さ寒さのご挨拶
ひねくれた松が素直に時を漕ぐ


「秋 の 空」            加茂  和枝
青空をひとつ探して日が暮れる        岩 沼
古いけど家のおばあは宝物
何もかも本気で汗をかく世代
腰曲がるそれでも仕事精を出す


 「雑  詠」             内山  敏子
兎小屋ローンの海を泳ぎきる      浜 松
アクセント昔のままで来る返事
思い出をつなぎ合わせる里の風
いっ時の緊張ほぐす鳩時計


「自 由 吟」            山田 フサ子
脇役へささやか母の女道         袋 井
秋晴れに酔って野山へドライブする
倖せは健康意見一致でおしゃれする
平凡を愛し静かに独楽まわる


  「矢  印」            芹沢 穂々美
矢印が天に向き変え生かされる         沼 津
噂など耳をふさいで聞き流す
ネクタイを外す男のいかり肩
結納の席でウソなど言えますか


「愛犬一五才」            増田  久子
茶太郎の名で代々の雑種犬           焼 津
だれにでも馴付き番犬は失格
犬だって飼う気になるは顔次第
可愛くて長寿で無芸うちの犬


  「喜  寿」               岡村  廣司
喜寿が来てさあここからが正念場        焼 津
切れ味をまだ落とされぬ喜寿の坂
おだてれば喜寿率先のボウリング
百薬の長を味方に喜寿を過ぎ


  「冬が来る前に」          酒井  可福
人里に冬眠の餌求め下り           北九州
やさしさを一つ残した子守柿
股引のゴムも入れ替え冬支度
松の木もワラの腹巻き巻いて冬


  「蕎  麦」            宮野 たきこ
痩せ地ゆえどこまで続くソバ畑         岩 手
揺れ咲くは北の大地の白小花
新蕎麦に舌鼓舌鼓の太鼓腹
婆が打つ蕎麦には勝てぬイタリアン


「雑  詠」            滝田  玲子
天高く体重計が狂い出す            浜 松
あちこちで尾鰭をつけて飛ぶ噂
金持ちが貧乏ゆすりする不思議
閑人に見えるか道をよく聞かれ


  「詰 め る」               薗田  獏沓
食う人を思い弁当飾り盛り          川根本町
満員でお尻を押してドアを閉め
詰め込みと言われる学校履修もれ
端で見る将棋とっくに結んでいる


  「しり取り川柳」          中矢  長仁
家の前スーパー出来て便利です        松 山
便利です朝晩に出る特価品
特価品教えてくれるレジ係
レジ係新人さんも美人です


  「頑 張 る」            川口   亘
宇宙から神の啓示か虹の橋           藤 枝
独り身の端役主役のない芝居
気力では負けないつもり歳が邪魔
足や気を示し合わせの欲しい歳


「雑  詠」              森島  寿恵
苦の坂で歩く男の勇み足          浜 松
いろは坂越すに越せない七曲り
カレンダー秋の夜長に身がふるえ
竹蜻蛉飛ばす大きな夢を乗せ


  「自 由 吟」              藤野  俊子
柳友はラジオがくれた宝物         掛 川
介護保の行方気になり年令を知る
口げんか負けるが勝ちと知り乍う
良き夫生んだ姑だと娘をなだめ


  「生  活」             鹿野  太郎
ヒツウチに留守電息を潜めてる         仙 台
九献から踊る阿呆の泣き笑い
ハンドベル一つ鳴らしていいですか
お疲れさん柳の枝が酌をする


  「がたつく」             鈴木 まつ子
読めるけど書けない漢字すぐ忘れ        島 田
目も耳も読み損なってガタがくる
年ごとにたるみ度レベルアップする
生きてゆく苦労つきもの背が寒い


「雑  詠」            竹内  登志
若者のパワー貰って生きのびる        浜 松
残り火へ大地の恵み秋の寶
ニューモード眺めるだけのウインドウ
見栄張った域は半ばで崩れ出し


  「生 き る」              朝比奈 零児
逞ましく生きた昭和の激動期         島 田
命ある限り努力の灯は消さず
精一杯生きて励めと日が昇る
前向きに生きて爽やか顔の艶


  「冒  険」            竹内  さき
美しく腰のタオルが光る国         浜 松
風漢走って走る十二月
北風に耐えて花の美抱く女神
脈脈とつむく私の一人鍵


  「虐  待」            山田  光男
虐待児命の保証だれがする          静 岡
虐待は安全場所が子らにない
虐待は上にも下にもない良心
虐待は親のえごから子はあわれ


「自 由 吟」       御田  俊坊
図に乗ると信用落とし暗くなる    高 畠
結ばれて夫婦の絆設計図
命とは枯れ落ちるまで分らない
年毎に枯れ落ちて来るクラス会


  「自 由 吟」        山田  ぎん
故郷の蜜柑届いてありがとう    静 岡
富士の山何処から見ても美しい
食事時犬が私を迎えてくれ
菊の花見事に咲いて玄関に


「バレー戦」         中安 びん郎
競技より得点を見るバレー戦   静 岡
ジュースでは気が気ではないバレー戦
団結は鉄より堅いバレー戦
一点差手に汗握るバレー戦


   「焦れったい」           堀井  草園
鴬嬢笹鳴きまでは真サラヨ           静 岡
手応えを掴めぬ頭上流れ弾
憎いまで横に首振る余り風
月も見ず一日一善下戸淋し


「  心  」            中野 三根子
母の前心がとけてゆるみ出す         静 岡
思い出をさがして心の旅に出る
心から笑ってしまう母の前
夢の中やさしい心あふれ出す


 「ソーラン節」           林  二三子
背丈程の昆布のれんの様に干し     芝 川
足早に利尻の秋は去ってゆく
鰊番屋の広さ最盛期を偲ぶ
番屋からソーラン節が消えている


「鮎三昧・・・其の三」       永田 のぶ男
爽快に友釣りの夢若返る         静 岡
鮎の口梅雨に水なく乾きぎみ
釣れなくて名人の真似しても駄目
竿さばき橋の上から指図され


  「雑  詠」            川村  洋未
今だから言えるだなんて罪だねえ        静 岡
目に見える効果でてこそ自慢でき
冷たさが時に適度な距離保ち
愛情で払ってためた領収書


「朝 の 雨」       多田  幹江
みんないい人カラス黒くて当り前   静 岡
無人売り百円玉が好きらしい
八起き目の出花を挫く朝の雨
人殺しの話に順れて肌寒い


  「日向ぼこ」        佐野 由利子
目立たない位置になくてはならぬ人 静 岡
幸せの真ん中にいて愚痴ばかり
山間を暫し走って露天風呂
日向ぼこ言いたい事を言い合って


「  秋  」         長澤 アキラ
あきらめた過去がくすぶる火消壷 静 岡
風の音静かに聞いた秋桜
遠い日の祭囃を抱いて老い
生き過ぎたボヤキながらも医者通い


   「こ こ ろ」            堀場  梨絵
一筆をふまえて生きる秋の陣          静 岡
この秘密吐けばどんなに楽だろう
相手しだいいい子になっていたんだね
なにもしないでいいよと子らに見離され


「指 定 席」       谷口  智美
見せ方は計算済みのVネック     伊 豆
謎ひとつおいてつき合う長い友
座布団に温もり残る無人駅
天国は完全予約指定席


  「十 二 月」         山口  兄六
白菜の芯役になるサバイバル   足 利
売れ残るケーキに鼻で笑われる
十二月また振り出しで会いましょう
夜祭りの終わりに髭を剃らぬまま


「崩 れ る」         池田  茂瑠
揺れ動く心へ支え頼りない   静 岡
愛の穴塞ぐ幾枚要る切手
この帯を解けば私が崩れ出す
尾てい骨熱気の渦に沈めよう


  「リ ン ゴ」            川路  泰山
リンゴ地に落ちてから引力産まれ        島 田
白雪姫もイブもアダムもリンゴから
地球を制覇したのはリンゴでした
ナイーブになろうとリンゴ剥いてます


「自 由 吟」              高瀬   輝男   
生きるためならば共食い許されよ        焼 津
ああ殺意腕に一匹蚊が止まる
悪用に利用度高い人の知恵
人肌の善意殺した介護法


「適材適所」                望月   弘
ちがってもいいとみすずを好きな星    静 岡
目をつむるまでは余生をつくらない
相槌を適材適所貼ってある
百薬でまだ煩悩が薄まらぬ


 「ブリキの鳥」           加藤   鰹
電飾の街 野良犬は眠れない       静 岡
マスメディア自殺ブームを煽りたて
渡り鳥北朝鮮のスパイかも
気ちがいの目線で対話する愚か


   顧  問  吟 
 「囲  む」        柳沢 平四朗
続編へ手垢のついた言葉達           静 岡
真実もあの目この目に囲まれる
紅葉がノックしている旅栞
遠慮なく石鹸が減る生きている




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(2006/12/26(Mon) 08:26:41)

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