静岡川柳たかねバックナンバー
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 平成十九年五月十九日(土)
  定例句会  於  アイセル21


▽席 題 「印象吟」(写真を見て)
 佐野 由利子・選




プードルを連れていそうな美女揃う茂 瑠
御馳走へ美女たち誇りなど捨てろ 輝 男
男性はお呼びでなくてまだ食べる のぶ男
後列の僕には食べるものがない  茂 瑠
帰ったらすぐに秤へ乗っている   弘
腹いっぱい今食べなくていつ食べる洋 未
見栄外聞少しは捨てている食い気 梨 絵
おしゃべりも食べてる時はおとなしい  洋 未
会場が静まりかえり箸すすむ   のぶ男
体力をつけてこれから一勝負   アキラ
黙々とするのは皆同じこと    アキラ
肥ってもいいさ美食の方がいい  茂 瑠
食べすぎた美人薄命知らん顔    弘
旨いもの前に気取っちゃいられない二三子
まだ若いアップで写る赤い服   洋 未
 五 客
若いっていいなピンクがよく似合うしげる
オヤこんな写真にボクの好きな娘が輝 男
幸せな笑顔はいつも揃いぶみ   三根子
一枚の写真重量感がある     茂 瑠
いやな人食べてるとこを撮るなんて輝 男
人 位
会費分食べなくちゃねぇそうよねぇ 鰹
 地 位
何年も前の写真に皺がない    のぶ男
天 位
美人ですちょっと太めのタヌキです
                アキラ

▽静岡市民川柳大会後、市民文化会館内の
レストラン「味の蔵」で行なわれた懇親会
の写真が今回の席題「印象吟」でした。初
の試みで楽しい句が沢山出されましたが、
三人の悪口を書いた句は全てボツになった
とか・・・(笑)


宿 題  「ボタン」 高瀬  輝男・選
 忍び込みボタン落として来た不覚  廣 司
 ボタン付けも覚えた長い単赴任   二三子
 ファスナーのできぬボタンの飾りどこ
重 雄
 子育てにずれたボタンの掛け違い  草 園
総理夫人ボタン一つに気を遣い   俊 坊
ボタンにも歴史の糸がからみ合い   亘
ボタン付け上手に出来てまだ独り   弘
七つボタン老いへ食い込む子の遺影 平四朗
シャクヤクをボタン切手が恥をかき 静 枝
第二ボタン引き取るいい娘募集中  寄 道
クールビズダイナミックに空けボタン
しげる
ボタンかけ違えても睦まじい仲   信 一
止め糸が延びたボタンの自由主義  アキラ
思惑が外れボタンを掛け違い    まつ子
掛け違うボタン別れの予感する   千恵子
詮の無い過去は語らぬボタン鍋   五 貫
卒業の記念にボタンくれますか   博 司
以下同文そんな言葉をきく釦    春 江
テポドンの発射ボタンをつぶしたい 安 心
核のボタン持ってはならぬ人が持つ 哲 也
ネクタイの陰で揺るがぬ貝ボタン  豊 子
園児服今日もボタンが取れている   弘
ボタン穴くぐり抜ければ世はせまい 輝 男
 五  客
子の夢がこぼれぬようにボタン付け 五 貫
ポケットの中のボタンに火の用心  さとみ
まあまあと釦を外す社長さん    獏 沓
取れそうな夫婦のボタン子がつなぎ  鰹
見てよ見て飾りボタンの独り言   竹 水
    人  位
浜風に逢い泣き出した貝ボタン   大 鯉
    地  位
ボタン押し極楽行きのキップ買う  由利子
    天  位
オール電化ボタン一つが狂わせる  敏 子
   軸  吟
パリコレのボタンは金貨など如何  輝 男


宿 題「お、で始まる句」池田 茂瑠・選
重い腰よいしょとあげて夏に入る  のぶ子
拝まれて今後悔の保証人      博 司
おしゃべりが煮こぼれているシチュー鍋
敏 子
億の札持って数えて他人の金    のぶ男
おだやかな顔で急所をズバリ突く  輝 男
表には猛犬がいて美女は留守    のぶ男
穏やかに生きたく命陽にさらす   春 江
おこしやす女将が見抜く偽夫婦    鰹
面影は老いず歳月ゼロにする    梨 絵
想い出を糧に明日を膨らます     薫
怒るより笑ってしまう低金利    廣 司
お試しのセットで妻の化粧足り   廣 司
追風にのるホームランだってある  春 江
女です胸のふくらみまだ残る    穂々美
穏便にするためガマン強いられる  二三子
煽てられ財布が空になっている   徳 子
奥様とセールスマンにだけ言われ  由 美
億の金入る財布は持っている     尚
沖縄のひめゆり祈るように咲く   太 郎
王手飛車狙いは君を攻め落とす   竹 水
お互いが一人になって若返る    正 治
女ならスカートぐらいはけばいい  安 心お月様両掌で掬う露天風呂      鰹
老い先の不安拭える策がない    二三子
おおらかに微罪かくした胃のしこり 豊 子
穏やかな性格妻を苛立たせ     由利子
おしゃべりな靴でどこにも顔を出す しげる
五  客
大空に描いた夢が虹になる     三根子
お疲れね欠伸に虚飾の影がない   政次郎
衰えは見せぬ口角泡を吹き     泰 山
朧夜に見透かされてる腹の中    博 司
オボラートに包み自分を擁護する  由 美
人  位
オリオン座輝き明日は子の巣立ち  輝 男
地  位
おもいっきりレモンを絞り許そうか 敏 子
天  位
遅咲きの右能を覚ます花が舞い   まつ子


宿 題 「  嫁  」 望月  弘・選
姑の苦言の釘がよく曲がる     野次馬
反対をしていた嫁に管理され    廣 司
カルチャーに張り切る嫁へ孫と居る 竹 水
嫁が来て動ける範囲縮められ    廣 司
嫁の愚痴畑に零し土掛ける     徳 子
都会からお嫁を連れてUターン   長 仁
泣いているのは姑です嫁天下    玲 子
将来の話をすると嫁笑う      哲 也
補聴器に冷たく刺さる嫁の声    由利子
嫁もまたカタカナ文字の意味を問う 晴 康
無風です嫁がタクトを持ってから   薫
青い目がジーパンで来る嫁ひでり  平四朗
星が降る村に異国の嫁が来た     鰹
嫁プラス猫を貰った色男      茂 瑠
残りもの食べよか捨てよかヤジロベー重 雄
嫁っこが俺の年金当てにする    由利子
内緒だと嫁の秘密をばらす孫    俊 枝
花嫁がベールをぬいで強くなる   三根子
長男の嫁は強いぞてごわいぞ     鰹
母さんは俺の嫁だぞ甘えるな    まさえ
家中を引っかき回し子が嫁ぐ    五 貫
パソコンで米や野菜を嫁が売る   竹 水
目立たないうちに可愛い嫁もらう  豊 子
嫁さんと言われた頃へ返したい   泰 山
嫁三年まだ本心は鞘の中       進
跳ね過ぎて台所から去った嫁    アキラ
面接に茶を出したのが今の嫁    びん郎
嫁が来て妻に舌打ち多くなり    大 鯉
まだ嫁の座ですと古希の友が言う   薫
  五  客
鬼嫁に徹し寝たきりにはさせず   二三子
酪農の嫁を取り巻く取材陣     獏 沓
嫁の描く下絵通りに色を塗る    アキラ
嫁の座の昔は筵 今ベッド     政次郎
税金で合コンをする過疎の村    まさ子
   人  位
我が家には娘のような嫁がいる   和 枝
   地  位
嫁姑おんなじ空を泳いでる     和 枝
天  位
核家族嫁にも老いはきっと来る   平四朗


宿 題 「 自 由 吟 」 互 選
D好奇心過ぎて扉にはさまれる   春 江
C旅に出て少し大きな欠伸する   義 子
C子供には江戸も昭和も大昔    由 美
C軍隊は豆鉄砲でいいだろう    アキラ
B禁煙を決めた時には武士だった  哲 也
B安全をことさら記しあやしまれ  さとみ
B憶測で今日も井戸端盛り上がる  博 司
A翌日は二倍になっていた話    由利子
A貧乏に慣れて世渡りうまくなり  廣 司
A時々は気付いています千の風   安 心
A休みたい椅子晩餐の絵から選る  茂 瑠
A騙されて知らぬ幸せ知る不幸   まつ子
Aひたすらに野山をかける脱介護  徳 子
Aご栄転コンビニもなし山の中    尚
A眼医者でも落せぬ悔いの眼のうろこ重 雄
Aめでたい日貧乏神もおしゃれする 洋 未
Aたんぽぽが笑って囲む地鎮祭   太 郎
A憲法の日も満員の行楽地     五 貫
A口下手がしどろもどろに下手な嘘 玲 子
A造花ならあなたの側にいるものを 千恵子
@分相応うそもたまには食べてます 梨 絵
@おおらかにあざけ演じて殻を脱ぐ 豊 子
@明快なエピローグだな引き籠もり 政次郎
@木の根元確かめている罪隠し   穂々美
@後足で砂をかけてく憎い風    大 鯉
@うれしさを抱いて鏡にいるお花  満 月
@カタカナにきな臭い言がまぎれ込むしげる
@たわいない言葉に嘘を見抜かれる 野次馬
@猛特訓かじれる脛に育てたい   長 仁
@あん時の笑い残しをつまみ食い  竹 水 



▽参加者(敬称略)林二三子・佐野由利子・
 曽根田しげる・池田茂瑠・望月弘・加藤鰹
 川村洋未・堀場梨絵・高瀬輝男・成島静枝
 永田のぶ男・長澤アキラ・中野三根子・
 谷口さとみ・金田政次郎・畔柳晴康・瀧進
 堀井草園・望月満月・高橋春江・岡村廣司
 薗田獏沓・大塚徳子・堀場大鯉・内山敏子
 芹沢穂々美・毛利由美・御田俊坊・井口薫
 中田尚・鈴木まつ子・川路泰山・増田信一
 西垣博司・中矢長仁・石田竹水・鹿野太郎
 川島五貫・滝田玲子・濱山哲也・牧野正治
 川口亘・柏屋叶志秋・安田豊子・加茂和枝
 石上俊枝・塚本寄道・市川重雄・森田安心
 山本野次馬・中安びん郎・藪崎千恵子・川
 口のぶ子・萩原まさ子・提坂まさえ・中川
 司・真田義子・柳澤平四朗


定例句会 | Link |
(2007/07/26(Wed) 18:32:12)

ちゃっきり し ぞ 〜 か 弁 川 柳

どぶん中へうっちゃる様でもってえねーだ 高橋 春江
ええ歳こいてあほんだらにも程があらー  高橋 春江
こまっこいこたあ言わまい男じゃん    瀧   進
女房留守たまにゃあええにごせっぽい   瀧   進
精出してたあーんと摘んでおくんなあ   芹沢穂々美
たまだでさ洒落くりかーっていく句会   鈴木まつ子
へっついとひゅうけんだけの嫁で来た   鈴木まつ子
うざましいくらいに金があるあいつ    西垣 博司
あちいから痩せひんごけて医者通い    西垣 博司
ちょっくらといつもの虫にゃ〜知恵で勝つ 堀井 草園
出しよっきゃ〜噂の傷に気付くみゃあ   堀井 草園
年毎にずでえよんわくなっちゃった    岡村 廣司
なんだわりゃあ悪さ存分してたずら    岡村 廣司
まだでけんおめーいままでなんとる    畔柳 晴康
てんだうよこんなこんきいしごとだでー  畔柳 晴康
見損なうままいでんぐり返えらんで    柳沢平四朗
幸か不幸かあおたぎ暇をもて余す     柳沢平四朗
田植雨んきゃーしき降んにゃー困るなー  中安びん郎
父の日ん来てもだーれもかまわにゃー   中安びん郎
 
▽おっ!瀧進さんがしぞ〜か弁初参加、嬉しいっけやあ〜
皆さんもぜひこのコーナーにチャレンジしてくりょ〜や〜♪
〒421‐2106
しぞーか市葵区牛妻2095の13  加藤 鰹あて
(受付随時、投句料もいらにゃあでね〜)


ちゃっきり しぞ〜か弁川柳 | Link |
(2007/07/26(Wed) 18:28:12)

創 作  自薦句
    虎 竹 抄


「魅惑のタンゴ」          新貝 里々子
ドレスアップ淡水パール光らせて        袋 井
バンドネオンと流れつくのはあの岸辺
ふつふつと嵐子よこれはタンゲーラ
このひと皿がブエノスアイレスの悲哀



 「雑  詠」            内山  敏子
スタミナの切れ目をつなぐ缶ビール       浜 松
見る人が見れば背伸びとわかる見栄
忘れよう昨日の苦い話など
飽食の口にやさしい梅茶漬



「しあわせ」            鈴木 恵美子
喜怒哀楽積んで夫婦の第二章      静 岡
倖せを掴むと翔んでみたくなる
愛かしら身近な人が優し過ぎ
しあわせな道だゆっくり歩きたい


「た ま に」            濱山  哲也
山へ行きたまに人間放棄する         青 森
歓楽街男をたまに取り戻す
マジ顔でたまに経済など語る
怒られる「たまにはちゃんとしろ」等と


「美しい国」             松橋   帆波
年寄りに美しくない事ばかり          東 京
「美しい星」とは何とお気楽な
クールビズ四十九日はまだ済まず
九条の他も変えたいようですな


「思 春 期」            塚本  寄道
なぜだろういつも気になる隣の子        長 泉
試験中あの子のうなじチラリ見る
好きなのに話したいのに知らんぷり
徹夜して初めて渡すラブレター


「近  況」             川口   亘
多数決なんて言葉に追われる身         藤 枝
大方は知らない事に押し切られ
落ち着いて考えて知る怖い罠
横柄な割りに態度が細か過ぎ


「こ と ば」           毛利  由美
今時の言葉を知らぬ広辞苑          つくば
外国人力士の美しい言葉
お母さんナウイだなんて古過ぎる
この頃は日本語にまで字幕入り


「十人十色」            中田  尚
志をもって開店の日の落し穴         浜 松
辞職より自殺を選ぶおろか者
「負けないで」さけんだ人が負けちゃった
星空をピストルが刺すナイフ刺す


「ハードル」            真田  義子
ハードルが高くて水を飲んでいる       仙 台
条件は揃っているがまだ一人
深い傷閉じ込めてます古日記
深い訳隠して旅に出る私


「時  代」             山本 野次馬
ソフト麺ばかり食い散らかしていた       函 南
日本万歳と言っては死ねません
糸電話なんかは無いと諭される
親父の威厳など綿菓子に消える


「雑  詠」           滝田  玲子
目の保養だけでは済まぬデパめぐり      浜 松
楢山も定員ですと帰される
待合室愚痴を言い合い姦しい
紫陽花が見事梅雨空ぱっと映え


 「口惜しかったこと」        増田  久子
はじめからチビへ二センチ背の縮み      焼 津
山道で展げた地図は別の山
バーゲンを積んで自転車川に落ち
バラ買いのジャンボ末尾で逃げた億


「蟻 の 性」           柏屋 叶志秋
バラの花自分の刺に気が付かず     山 形
職退けど蟻は定時に目を覚ます
近未来地球眺めて酒を飲む
温室で咲いた花にも悩みあり


  「ほくそ笑む」           西垣  博司
泣きごとを云えば誰かがほくそ笑む     静 岡
同情の背中でほくそ笑んでいる
ほくそ笑む腹で金持ち口で泣き
ほくそ笑む事だってある人だもの


「  手  」            馬渕 よし子
もみじの手いつかこの手で介護受け      浜 松
差し延べた手を疑いの目で見られ
幸運を逃がした手だがよく動く
触れた手を握り返して日日平和


「恋 色 々」            瀧    進
初恋の思い出花の一行詩           島 田
多情仏心恋が狭間に苦悩する
恋一途お七命を燃え尽くす
失恋の心あざみを摘んでます


「雑  詠」            寺田  柳京
手掴みの火傷の痕がなつかしい        静 岡
蜘蛛生まれさわやかに散る娑婆の風
長生きの約束があるクラス会
揺籃の我家は遠い虹の中


「雑  詠」             藪ア 千恵子
札束の舞い散る先は闇の中           焼 津
実像と虚像が絡む政治の場
少子化に永代供養予約する
長いものに巻かれて閉じる日記帳


「ゴミの山」            芹沢 穂々美
エンゲル係数知られてしまうゴミ出し日    沼 津
ゴミの山欲の深さでまだ呆けず
人生の山場はとうに越えたはず
クモの巣を作ったクモの誤算の日


「出  る」            薗田  獏沓
筍の尖がり大地を割って出る        川根本町
森深く童話次々生れ出る
虫も出た姉も連れ出す車椅子
合併に出張った処削られる


「テロチェック」          井口   薫
一歩目のハワイ指紋と顔写真         袋 井
脱け殻が無様ファーストクラス席
ワイキキの波ブランドの顔でくる
折角の英語出番のないハワイ


「やれやれ」             鈴木 まつ子
披露宴美辞がえんえんまだ続く        島 田
申告書ぴったりしないにらみ合い
相槌も打たねばならぬ痴話げんか
先ず細く長ーく生きて良しとする


「暑  い」             小林 ふく子
スパイスを効かせて夏に立ち向かう       袋 井
決断を迫るひまわりこっち向き
陽が落ちた山の向こうは熱かろう
暑い日の番茶に涼を見つけてる


 「梅  雨」            酒井  可福
梅雨入りにお印程の雨の粒         北九州
チビリ下駄梅雨であろうが呑みに出る
紫陽花も顔色変えず水化粧
梅雨入りにおんぶ蛙の笑みを見る


 「散  歩」             岡村  廣司
散歩する度健康というおまけ         焼 津
お若いと言うのを期待する散歩
散歩道肥満の人に追い越され
平和だね犬の散歩に人が供


 「サラリーマン」           増田  信一
合併しまた合併しあなた誰           焼 津
専業の主婦の予定が今夫
見込ある言ってた上司左遷され
定年後妻の御抱え運転手


「ラッパ吹く」           山田 フサ子
美しく老いる火種を埋めておく        袋 井
ウォーキング頭上に鳥の声ひびく
平穏に生きて青葉の一しずく
美しい國へとラッパ吹いている


 「貴様と俺」             金田 政次郎
ファンファーレ貴様と俺がすれ違う   静 岡
見せたがる貴様の小指はブスだろう
鼻白む貴様が見てる泣くもんか
キリストも釈迦も縁ない無垢な俺


「  腕  」            堀場  大鯉
いい腕と言われてモテた頃もあり     焼 津
片腕がまた出来ました我が句会
腕組みが固すぎいい句浮かばない
腕まくりしても所詮は空元気


  「拘  来」            成島  静枝
点滴優先黙る拘来帯              千 葉
ぷくぷくと酸素マスクへ続く泡
束の間の自由頭も顔も掻く
切なくて止むなし紐はゆるくつけ


「  鬼  」             高橋  春江
鬼は留守いのちの洗濯しておこう        袋 井
鬼さんこちら鬼の貴方はもういない
佛とも鬼とも出合う回り途
身の内の鬼一匹がまだ騒ぐ


  「約  束」              安田  豊子
ひとりでに時効になったいいなずけ       浜 松
義理立ての約束だから破れない
のろまになって約束なんてできません
美しい公約なんて信じません


  「混  沌」            鹿野  太郎
じっくりとおさらいをして深呼吸        仙 台
ねんねこがポストの中で呼んでいる
島国で良かった好きな色一つ
五月病一番多い自衛官


  「勲 八 等」            寺脇  龍狂
勲八等二十の汗がしみている          浜 松
桐ッ葉にわが青春が凝縮し
粗末にはできぬ五年の重き日々
勲八等吊って二度めへ胸を張り


「雑  詠」              山田  ぎん
あじさいが色取りどりに競い咲く     静 岡
あやめ咲き見事に咲いて足を止め
曾孫笑み老いと遊ぶよ華を受け
衣替え薄着に成って風邪を引き


  「山 吹 草」              大塚  徳子
山奥で山吹草が生れてる           仙 台
木漏れ日に山吹草が揺れている
清楚な貌で山吹草が咲いている
山越えて山吹草の花畑


  「  風  」             畔柳  晴康
気弱だなひとり眠れぬ夜の風          浜 松
ビル風にセットした髪また乱れ
凧祭り吹いて欲しいよ春の風
元気ないそよそよ風の鯉のぼり


  「北海道ドライブ」          中矢  長仁
気持ちよく走る道ならデッカイド        愛 媛
広い道一直線で何処までも
一日中走って居ても疲れない
お土産が一杯になり帰ろうか


「元  気」              加茂  和枝
あなたから元気を貰うありがとう     岩 沼
ゆったりの若葉の森の深呼吸
鯉のぼり空を見たので帰ります
少しだけ雨を下さい休みます


  「自 由 吟」              川口 のぶ子
久々の雨に草木も若返り         藤 枝
おだやかな日々を送りて喜寿祝う
喜寿迎え今日で最後の同窓会
背を丸め辞典をのぞく虫めがね


  「自 由 吟」             御田  俊坊
透析で血液洗い生きる人            高 畠
地球ごと洗い汚れを落としたい
献血は命を救うと待っている
古里の墓に参拝出来ぬ罪


  「雑  詠」             堀井  草園
欠点が邪魔で逃げ道掃いておく         静 岡
耳栓で傷なめ合って黄昏れる
投げ槍を束ねた紐が伸びて行く
憎いまで上向く花に目が触れる


「傘寿過ぎ」              中安 びん郎
四つん這いして草を取る傘寿過ぎ      静 岡
恋文は最早書けない傘寿過ぎ
足腰が言うこと聞かぬ傘寿過ぎ
老妻に世話を焼かれる傘寿過ぎ


  「ウォーキング」           林  二三子
箱根路を歩く杉林に魅了            芝 川
登り切り旨い空気と達成感
ここかしこ湧き出る水に癒される
遊覧船横目に湖畔ウォーキング


「十 六 夜」            萩原 まさ子
写メールで旅の醍醐味持ち帰る          静 岡
嫁ぐ日は格差社会の出発日
嫁姑戦いすんでお茶を飲む
確かかと聞く移り気な十六夜


「自 由 吟」             提坂 まさえ
顔洗うゆうべの喧嘩流れない          静 岡
日当たりがよすぎたのかも萎む恋
名刺出す鈍感力も載せておく
メリケン粉クッキーにする母遠忌


  「必 常 食」             石田  竹水
楽しんだ思い出だけの必常食          静 岡
食料と寝袋持って行く樹海
片足を笑顔で入れた蟻地獄
面白のツボを知ってる好奇心


  「口 下 手」             堀内 しのぶ
口下手の絵文字メールがよく喋り        焼 津
口下手のパントマイムに花ひらく
口下手な夫の汗知る靴の減り
口下手を愚直に守り難を避け


「近  詠」            多田  幹江
アメリカンブルーに染まる美し国       静 岡
キャラ脱ぎ捨ててにんげんを捲き戻す
切り口上の中身竹光ではないか
輪の中に鎮座ましますクラスター


「現実逃避」              真理  猫子
厄介なメール読まずに食べました        岡 崎
やる気ない時の人気はパンダ並み
見ない振りしても三つ目がやってくる
特急で現実逃避して帰る


「自 由 吟」            谷口 さとみ
永遠を願うものほど消えてゆく        伊 豆
ギプスとれ用は無いけど遠まわり
不意に干支聞かれてサバが読みきれず
新聞に仲直りのタネ探してる


  「鮎三昧・・・其の九」       永田 のぶ男
一に針 二にはオトリで 三に場所       静 岡
雨降って想いは川原 鮎の苔
殺生の好きな輩が友を呼ぶ
まだ早い苔は乗らずにまた雨か


「波  紋」       池田  茂瑠
波紋ほど私広がれない女        静 岡
円満の柄ハンカチの狭さにも
触れさせぬ過去を港の女将持つ
揺さぶりを罪な笑顔とかけてきた


  「  父  」            中野 三根子
父は今 私の中に生きている         静 岡
メロドラマ父からそっと下を向く
いつだって弱音をはかぬ父が好き
父からの小言数えてなつかしむ


  「ひ と り」            川村  洋未
缶ビールわびしく冷やす冷凍庫       静 岡
お手上げさ誰かタオルを投げてくれ
一人勝あとからつけがどっと来る
三面鏡知らない顔が笑ってる


  「友  情」        佐野 由利子
友情は果敢なきものよ女達     静 岡
若いねと互い心に無いお世辞
正論も馬耳東風の天の邪鬼
一日の反省をする床の中


「もういいか」         長澤 アキラ
ライバルと言われ養毛剤を買う          静 岡
スタートの一歩手前で嫌になり
並行線手を握り合う時もある
各停で気負いの抜けた本籍地


「西  東」            川路  泰山
光琳図京に咲かせて美を競い          島 田
京の美を舞って扇に紅九段
枕絵師情話の紐を江戸に解く
浮世美を粋に流した江戸気質


「自 由 吟」                高瀬   輝男   
わたくしの自慢ずーっと貧乏で          焼 津
深海魚たまには戦見においで
百グラム程だが俺もゴミは出す
豊かさがまた一つ消す里の森


「愛する地球」                望月   弘
愛掛ける円周率で生きていく        静 岡
原発の町に漂う白い嘘
九条に蔦の吊り橋渡らせる
人が住む地球だ油差してやる


 「自 由 吟」            加藤   鰹
キャンパスで伝染るはしかと恋病   静 岡
向日葵が揺れる逢いたい人がいる
カーボンの如く薄っぺらな持論
朝もやの中酔いどれが待つ始発


   顧  問  吟 
 「たかが・されど」         柳沢 平四朗
昔日をピエロに塗った異聞録          静 岡
耐えて来た唇だから歌がある
年輪へたかが・されどの世の斜面
古疵を乾いた風が触れたがる



虎竹抄 | Link |
(2007/07/26(Wed) 18:27:12)

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