自 由 吟 虎 竹 抄
「2009 夏」 森下 居久美 オーシィツクツク 食べ損なったかき氷 掛 川 チンチロリン 延期のままのバーベキュー リーンリーン 出番の来ないかもめーる ガチャガチャガチャ ブルーシートが乗ったまま
「暮らし向き」 増田 久子 来年のバザーの品を買うバザー 焼 津 給付金使った記憶ないが無い 夢枕には千匹を超す羊 中古車を買って三回目の車検
「スタート」 井口 薫 リモコンの気配総理の背後から 袋 井 閣僚の記念撮影お急ぎを マニフェスト リボン解いたら白煙が チルドレン賞味期限は四年なり
「気 疲 れ」 成島 静枝 丸ノコが黙るコードも切るダンナ 千 葉 働くと威張る丸ノコ ヨイショする 殿様は良きに計らえ後始末 秋めいた空へ血圧深呼吸
「生 き る」 大塚 徳子 ホイホイと生まれてヤレヤレと生きる 仙 台 父の死す日も朝御飯食べていた 生かされて喘ぎ喘ぎ生きている 一言がキラリと光るありがとう
「雑 詠」 馬渕 よし子 貧乏の筈だが何故か脂肪肝 浜 松 評判の味へわたしの舌が拒否 夏草のいたちごっこもやっと終え 意気込んだ食べ放題へ胃が怯え
「参 加」 小林 ふく子 参加する川柳なのに席がない 袋 井 曖昧な返事参加とみなされる あの人が参加するならやめておく 多数決多い方へと参加する
「オバタリアン」 濱山 哲也 ガハハハと男トイレになだれ込む つがる 町銀座まけろまけろと吠え歩く 二枚目と涙にもろいオバタリアン 無料バス途中で止めて消えました
「虎 竹 抄」 真田 義子 この山を越えたらきっと見える海 仙 台 ふんぎりをつけたら見えた青い空 サスペンス好きな女のサングラス トゲのある言葉奥歯で噛み砕く
「現 実」 新貝 里々子 おばあさんの溢れる街ですっと溶け 袋 井 体型が無理だと言っている下着 情熱の赤は赤でも昭和かな 裏通り記憶はたしかこのあたり
「 猫 」 川口 のぶ子 ミニ畑のきゅうりうっかりメタボなり 藤 枝 朝取りのトマトの味の甘いこと 猫の手を借りたい時にいない猫 猫なでの声が気になる落し穴
「 い 」 戸田 美佐緒 いまはまだノックしないで爪を咬む さいたま 柔らかな顔になるまで湯に沈む お土産にあの日の雨を持っていく 戻れない夜へ真昼の月が哭く
「恋愛マニュアル」 栃尾 泰子 キスひとつ恋の魔法をかけられる 大 阪 愛されているうちは淑女の仮面 紅強くひいて戦士になる乙女 崖っぷち魔女も悪女も解き放つ
「 恋 」 松橋 帆波 勝手だが妻より妻にしたい人 東 京 メモリーへ男名前で棲む子猫 矛盾まで愛しい君と居る時間 君の名がカフェインよりも効く夜更け
「願 い」 鹿野 太郎 人になるハードボイルド小野田塾 仙 台 ようやっと見つけた技術家庭塾 妻の前のたうち回るかすり傷 訳ありとネット市場に出す娘
「 旅 」 内山 敏子 満月と枝豆つまむビール党 浜 松 秋風へ旅をひろげるスニーカー 鈍行で里の温さを拾う旅 秋風へ誰かに電話したくなる
「夏だねぇ」 西垣 博司 鍋底を叩いて蝉の夏祭り 静 岡 ゴキブリの逃げ足の良さただ見とれ 砂浜で大地を知った土踏まず 殺虫剤夏の家計にのしかかる
「雑 詠」 安田 豊子 諍いの余寒無言の茶をすする 浜 松 七十路の残り火を消す夢芝居 苛立ちを宥めて覗く万華鏡 三色で足るひとり居の彩選ぶ
「自 由 吟」 竹内 さき 風やみて恋も静かに秋実る 浜 松 赤トンボ茜の夕陽数見せて しっとりとコーヒーをのむいい時間 幻か秋も深もよドラマ旅
「ヒロイン」 提坂 まさえ イチロー風 もの凄いことさり気なく 静 岡 キリギリスよく貯えてよく歌い 脇にいて時々くっている主役 ひまわりの花終えてなお立ち尽くす
「忘 れ る」 川村 美智代 苦しみを忘れるために泣いてみる 静 岡 今日もまた忘れっぽくて浮いている 痛い足少し忘れて花を買う 忘れるを流れにまかせ老い二人
「 道 」 藤田 武人 肩並べ夢を描いた並木道 大 阪 閻魔から帰れと言われ道迷う 畦道で案山子相手に影を踏む 道端で踏まれて耐える丸い石
「自 由 吟」 酒井 可福 腹の虫泣いて止めますダイエット 北九州 揺れました壊れる物は何も無い 肩書きがあって政治に幅が出る 日焼けする暇も無かった夏休み
「秋 の 風」 毛利 由美 給食を恋しがらせる昼ごはん つくば アナログな夏を楽しむ扇風機 夏休み明けて休校などごめん そしていま流感にかかるのも手か
「病院通い」 中谷 長仁 病院へ今日も仲良く老夫婦 松 山 タクシーが覚えてくれて直ぐに来る 待合で名医ですよと噂する 院長も川柳が好き持って行く
「走 る」 山本 野次馬 向かい風妻の背中で耐えている 函 南 命日へひたすら走るだけの事 バッテリー切れて惰性の日が暮れる 突っ走る若さが欲しい五十代
「雑 感」 川口 亘 背負いして呉れると云って効かぬ孫 藤 枝 配給の言葉忘れて今日を生き つい先を読む気にさせる電子辞書 失敗が有って人間らしくなり
「雑 詠」 芹沢 穂々美 投げ役になってボールの品定め 沼 津 おにぎりの中の梅干情が濃い 篭の中 初で無垢とは大誤算 中立で世間の風になびかない
「残 り 火」 鈴木 まつ子 ときどきはスパークをする恋の仲 島 田 打ち込めば不平不満も取り消され 惜しみない川柳が好き人も好き めくるめく愛の残り火揺れやまず
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 そんな世にフントになるか新政府 浜 松 教え子も世話子もなくて生きている 大勝へ負けてやれよとビールいう 耳鳴りも白内障も知らず戦友は逝き
「自 由 吟」 滝田 玲子 新型は夏も好きです白マスク 浜 松 新米と秋刀魚で残暑くぐり抜け ひと雨がほしいと案山子こうべたれ 不況風リストラ化する夏花火
「く せ」 鈴木 恵美子 梱包の几帳面さに信用し 静 岡 ごね得が立派な家に独り住む 八方美人言われたくない律義者 けちんぼの母出すものはいさぎよし
「男 と 女」 石井 昇 にくらしい いとおしい男と女 蓮 田 矢印をたよりにゆけば行き止まり 悩むより閃きで書く点と線 仕方なく生きて怠惰な灯をともす
「踊 る」 篠原 久 阿波へ来て一度は阿呆になるつもり 四国中央 地唄舞奥の深さに動と静 炭起しスルメ躍らせ一人旅 踊らない風は路地裏通り抜け
「 根 」 薗田 獏沓 枝ぶりも良いが根張りはもっと良い 川根本町 正直に曲がった松の根の姿 根の強さ岩の割れ目で生きてゆく 「さあ来いと」根っこしっかり張った松
「 風 」 加茂 和枝 小休止やりたい事が山ほどに 岩 沼 爽やかな風は素顔で受け止めて どしゃぶりに笑顔が消えた太陽で 山を見て本音で話す人が好き
「ベ ル ト」 瀧 進 別腹がベルトの穴を追いかける 島 田 バイキング ベルトの穴も味方する ダイエット心ベルトにたたら踏む 両輪のベルト弛んだ倦怠期
「有 頂 天」 岡村 廣司 有頂天なると自分を見失う 焼 津 お世辞とも気付かずなった有頂天 有頂天つい気遣いを忘れてた 落し穴気付く筈なし有頂天
「宴 会」 鈴木 千代見 箸袋細かく畳み好きでした 浜 松 注ぎ足しの酒に本音をのぞかせる 三次会ついてゆく人ゆかぬ人 カラオケの分厚い本が回りくる
「自 由 吟」 萩原 まさ子 若返り整形したら夢語ろう 静 岡 美しく偽る鏡あったらな マドンナに聞けないままの後日談 父さんに残す枝豆冷えている
「憧 れ」 石上 俊枝 マネキンに予約しました我が望み 静 岡 ああしたいこうもなれたらいいのにな 希望から理想の花が芽生え出す 憧れと現実 口は一文字
「秋のミルーク」 恩田 たかし とめどなく色んな思い現れる 静 岡 哀愁を知らず背中で語ってる 別れあり新たな門出 出会いあり 秋になり飽きない商い空きになる
「後期高齢」 畔柳 晴康 赤い血も老化したのか燃えて来ぬ 浜 松 のぞみなし惚れる薬も期限切れ メタボ腹偽装するのに苦労する 後期だな遠慮もするが威張ってる
「雑 詠」 飯塚 すみと 登校日世間もなにか明るみに 静 岡 裏の人どくだみほしいと頼みくる 換気扇家族の留守にそうじする 合成酒低サラリーに買いやすい
「91甲子園(常葉橘)」 尾崎 好子 春夏や初出場と賑やかい 藤 枝 菊川は弟 橘お兄ちゃん 神様を頂く天理智弁PL 洗練をされたチームと褒めちぎる
「セ ― ル」 佐藤 明美 オフになり二足新調夏の靴 三 島 半額の靴のサイズが大きすぎ 半額でつい買い過ぎるお惣菜 バーゲンに自分サイズの服がない
「涼 風」 林 二三子 来年も咲いてほしいとお礼肥え 芝 川 心地よくなり寝過ごしてしまいそう 店頭には食欲そそる物並び 温かいものが恋しくなってきた
「自 由 吟」 小熊 カズ 思い出す暗い夜道で苦笑い 菊 川 露天風呂壁の向こうに君がいる 晩ご飯考えながら朝ご飯 朝起きる時計片手に二度寝する
「半 分」 中田 尚 半そでが少々さむい秋の入り口 浜 松 リンゴ半分秋が半分同居する 半分を割って日本が大慌て どの人とペアになっても損をする
「09 おにぎりの夏」 和 一 おにぎりの夏思い出を独り占め 伊豆の国 真ん丸の握り具合に見える顔 梅干しの口に広がるメッセージ むせ返る夏を頬張る塩かげん
「還 暦」 増田 信一 還暦がうれしいような無いような 焼 津 還暦をもう一度とは欲張りか 還暦を過ぎても会社行ってます 還暦でちゃんちゃんこなど要りません
「他人ごと」 永田 のぶ男 美の壷を画鋲で止めて安堵させ 静 岡 蹴った石雑草と畔仲良すぎ 叩かれたトウモロコシは仇討ち 他人ごと地震水害爪の後
「物言わず」 小野 修市 冬瓜が煮えて無口な酒となる 静 岡 負けたとは言えぬ口元への字なり 安心と言えぬどんぐりまなこかな 妻と居て声には出さず胸の中
「タイミング」 谷口 さとみ 思い出を濾過する役をする時間 伊 豆 ズボラにも信念がつく歳になり 事故にあい便利と恐さ知る車 どう言うかよりタイミング難しい
「パラシュート・ガール」今井 卓まる 満月の夜までキスを我慢する 浜 松 空き缶を蹴りたくなったハイヒール 涙ごと焦げてしまった夏休み じゃあまたね 君との日々を深呼吸
「ぷんぷん」 高橋 繭子 ネガティブな会話にウツが寄ってくる 大河原 ヤな仕事バケツリレーでぶん回す お忘れでしょうね社員の心など こっそりと専務がブログ書いている
「愚 直」 多田 幹江 いい加減に生きるって大変なこと 静 岡 拝まれて北の大地の支店長 音無しの構えはとてもできません 報知器の愚直サンマを焼かせない
「そして秋」 勝又 恭子 夏限定少し正直ですわたし 三 島 このときとばかりにはしゃげ夏祭り 輝いていたね真夏の一ページ 夏の日の思い出残すロゼワイン
「三 日 月」 中野 三根子 三日月が大好きになる旅の空 静 岡 つらい時見上げた空に月がいる 彼とみたあの三日月が気にかかる ねむれない夜の三日月語り合う
「過ぎる季節」 池田 茂瑠 体温の違う愛だが固めねば 静 岡 一季節過ぎる答をきけぬまま 私も青い飼う蛇なを青い 一歩退く仮面の裏が読めたから
「ノスタルジー」 真 理 猫 子 初恋は舟木一夫で思い出す 岡 崎 生け垣に隠しておいたラブレター 帰省したような気分になるローカル線 忘れたいことを浚ってゆく夕陽
「掲 示 板」 山口 兄六 口元のホクロが目立とうと光る 足 利 似顔絵の君はやっぱり僕好み 暇人が暇人を呼ぶ掲示板 コメントは不要単なるボヤキです
「たりない」 川村 洋未 身長がたりない分は横はばで 静 岡 イケメンがそろわぬ時はお笑いで 日本酒がたりない時は料理酒で メンバーがそろわぬ時はライバルも
「虫メガネ」 石田 竹水 読めていた 先が読めない虫メガネ 静 岡 レッテルを賞味している通の舌 嘘っぽい話興味の耳を呼ぶ 目に見えぬ棘ほど痛くなる言葉
「勇 気」 薮ア 千恵子 大方は○と×とにふるい分け 焼 津 失敗を笑い話にする勇気 成り行きの結果を良しとする勇気 外見に格差出ている喜寿の会
「老いた犬」 長澤 アキラ 忘却の後期が歌うわらべうた 静 岡 修羅の面はずして眠る老いた犬 女房とは出合い頭の事故だった 夏終る前に本当のビール飲む
「イ ビ キ」 佐野 由利子 内緒だがわたしもイビキ掻くらしい 静 岡 上品に振る舞う人は見栄っ張り オッパイが垂れた女の悪足掻き 気の合った友達と行く小旅行
「正 論」 高瀬 輝男 正論が詰まらせている非常口 焼 津 正論も複数あると知る非才 迂闊にも正論という舌に負け 私の意見これこそ正論だ
「気 配 り」 望月 弘 労力でなく能力を派遣する 静 岡 洋食へ箸一膳を添えてある 直線にかかれば鞭は当ててない 一言をがまんをすれば風は無い
「自 由 吟」 加藤 鰹 カモミールティーと優しい秋の海 静 岡 逗子葉山ちょっとリッチな風に触れ 避雷針 君が頼りと背負わされ ろくでなし達のトラックターミナル
「不 本 意」 柳沢 平四朗 真実を掘り下げすぎて夢が消え 静 岡 ほほ杖の窓へ自嘲が転げこむ 軋ませて不本意な戸も少し開け 一度広げた風呂敷は畳まない
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