静岡川柳たかねバックナンバー
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「冬きたる」            高橋  繭子
木枯らしは北から寒い心から        大河原
白い息ため息ついているのです
ポケットのぬくもり感謝したい恋
エイヤ〜ッと寒太郎へと立ち向かう


 「自 由 吟」            井口   薫
コスモスの海で鮮度を取り戻す      袋 井
焼きたてのサンマ話はあとまわし
そっくりで良かったボクとお父ちゃん
スーパーをしばし楽しむ回遊魚


「  嘘  」             戸田 美佐緒
本当のことは言わない占い師      さいたま 
種明かし無しです嘘は崩さない
どの嘘を置いて行こうか三幕目
嘘をつくときだけ話す丁寧語


「雑  詠」             田原  痩馬
裏方ではまはげになる若女将          熱 海
公園でドラマがあったコンドーム
凶暴を押えて今日も家事をする
温度差があるから仲のいい夫婦


 「自 由 吟」             寺脇  龍狂
郵政法花見気分で本会議         浜 松
議員暦前科が一つ加えられ
秋雨へ甲羅も干せぬ池の亀
守っても守らなくても事故に遭い


「自 由 句」            山本  トラ夫
密会の扉の前にある聖書            長 泉
セクハラで遊び上手が減ってきた
結婚も離婚も同じテレビ局
ロボットのスイッチはまだこちら側


「てのひら」            横山   昌利
魂をゆさぶる恋をまだ知らぬ          相 馬
すれすれの策で脱輪回避する
ひとり居の秋はわびしい風ばかり
てのひらを見せて和解の席に着く


「あの日をさがして」        新貝 里々子
あの日をさがす風の匂いと陽の匂い    袋 井
権之助坂恋のかけらも落ちていず
雅叙園のトイレおのぼりさんになる
化粧直し無駄な抵抗だと悟る


 「失  笑」             増田  久子
重ね着をすればそのままウォームビズ  焼 津
百均の店にも日本製がある
バーゲンを積んで自転車川に落ち
共学のビリは大抵男の子


 「自 由 吟」            中田   尚
甘栗に夢中になって乗り過ごす       浜 松
温暖化地球も熊も不機嫌で
美奈子死す白血球に問いかえす
絵ハガキが消えてメールが忙しい


 「  傷  」             鈴木  澄子
ふと触れた傷があれこれしゃべりだす      浜 松
大小の傷にあおられ人間味
お互いの傷が互いを思いやる
胸の奥痛み続ける傷一つ


「祖母の誕生日に」         塚本 小弟子
ばあちゃんの作る料理は世界一     (小6) 長 泉
これからは無理をしないでマイペース
おばあちゃん得意の趣味を楽しんで
いつの日かひ孫の子守してほしい


 「若づくり」             真理  猫子
年齢は干支でごまかすキャミソール    岡 崎
Gパンは破って脚を詰め込むの
付け爪にお値打ち品の星みっつ
ピチピチのシャツがストレス抱え込む


 「母 の 声」            真田  義子
一番の味方は母の笑顔です          仙 台
故郷はいつでも母の声がする
鉛筆がすらすら走る午前二時
あの日からずっと走っている私


 「彼女の場合@」           山口  兄六
おばさんでごめんね女性専用車        足 利
全部欲しいけど友達でもいいよ
切なさの形に沈みゆくベッド
さあ行こう信号は青目は真っ赤


「雑  詠」            江川 ふみ子
たとえばの話に伏せてある本音         函 南
老ひとりことりともなく秋夜長
いくたびも転んで己れ見え始め
助走路の距離もう少しほしい坂


 「霜  柱」            柏屋 叶志秋
紙の花きっと疲れているはずだ        山 形
裏方に徹して拍手など知らず
直線が曲がって見える千鳥足
文無しの財布の中に霜柱


 「秋 の 月」            内山  敏子
秋の月誰かに電話したくなる         浜 松
中秋の月から童話降りて来る
中秋の月と一緒にわらべ歌
里の駅満員にする秋祭り


 「雑  詠」            福田 勝太郎
左遷され復帰の夢で飲む地酒         大 阪
秘め事を作り亭主が若返る
変わりたい五キロ落せば医者いらず
死んだ後骨が綺麗と褒められる


「仕掛けに乗る余裕」         鎌田  一尾
切札を持って仕掛けに乗ってやる    山 元
磨かれて石各々に出す光
重宝なカードが首を取りに来る
頷いただけさ納得していない


 「九十二歳が翔ぶ」        金田 政次郎
一会の深さに思慕のある別れ        静 岡
拭き掃除きれいな心で明日へ向く
来る初春へ九十二歳夢があり
あすの線見事に初春へ翔んでやろ


 「眼  鏡」            成島  静枝
諳じた話さえぎる眼鏡拭き          千 葉
おこぼれの優勝セール行くメガネ
いい話眼鏡の蔓でリフレイン
バラ色の眼鏡に愚痴が似合わない


 「雑  詠」            竹内  さき
変えたくて今日の釣り銭募金箱        浜 松
人生を恋して綴るドラマかな
ふり向いて微笑の紅よ夏の日よ
妥協して白紙に戻る小さいペン


「言 の 葉」            加茂  和枝
届かない言葉の裏の夕間暮れ        岩 沼
ぽつぽつの言葉の先の思いやり
なんだろう言葉の渦に落ちていく
秋だったたっぷり言葉おいていく


まだ満ちる五感しっかり息を吸う     山田 フサ子
生かされて空の青さに酔っている    袋 井
平凡の幸せ愛の湯がたぎる
もう少し二人でともに頑張ろう
こだわりを捨てて無心の絵にとける


 「  酒  」            山本 野次馬
コップ酒おでんと涙切なさよ        函 南
寂しさをひとつ隠して屋台酒
チャンチキおけさ唄って虚勢張ってみる
生き抜けば楽しい酒も数知れず


 「リンゴ園」            川口 のぶ子
リンゴ園暫しの老いを忘れさせ        藤 枝
青空に赤いリンゴを置いて見る
色どりを添えたリンゴが卓飾る
泣く児でもカメラ見せればポーズとる

「器  量」            安田  豊子
マッサージしても器量は変わらない    浜 松
職場の花あれよあれよと器量負け
浮世絵は厚い化粧で造られる
妖艶にコロリ男が読めてくる

 「雑  魚」          岡村  廣司
自尊心まだ微か有り定年後           焼 津
老いたから細工をしない顔で居る
騒ぐ血が有る内ぼけは来やしない
雑魚だって見栄も張ります夢もある


 「未  来」            馬渕 よし子
父母を看て我が身重ねている未来       浜 松
九条が子等の未来を握ってる
バラ色の未来信じている愚か
宇宙への旅立ち星になる未来


 「点  火」            高橋  春江
パーツだけ換えても若さ戻らない       袋 井
病あと人間を求めてちと疲れ
厨房へ自由になった男達
未だ燃える火種点火をしてみたい


「雑  詠」            竹内  登志
誘われた招待券に愛芽生え        浜 松
カード手に暗号忘れうろたえる
敬老会十人十色の今日の幸
祖母の数珠朝の日課にある平和


 「翔  ぶ」             笹  美弥子
肩の力抜いて気負わぬ鳥になる     仙 台
もたついたこころひとつに躓く日
老父母も子孫もおもう秋夜中
明日光ることばを溜めて小休止


 「雑  詠」            滝田  玲子
少子化であしたが怖い都市砂漠        浜 松
本堂の敷居が高く立ちくらみ
石蹴って今日の運勢ためしてる
マンションでロボット犬が後ずさり


 「事  件」            薗田  獏沓
神聖とされる学校荒れている         川根本町
スクープのペンが事件を誇張する
犯人の様に呼び出す目撃者
人の世の事件で学ぶ強さ得る

「雑  詠」            設楽 亜季浩
やり直す気持ちがあれば大丈夫      静 岡
途中から病気自慢のクラス会
ケータイが鳴らし続ける黒電話
趣味生かしホームを見舞う腹話術


 「生きがい」           鈴木 まつ子
ゆったりとライフスタイル自分なり      島 田
真心にひかれ一肌脱ぐつもり
培った昔の勘を呼び戻す
生きていること最高に愉しませ


 「無  題」            鹿野  太郎
草笛が羽化を促す赤トンボ          仙 台
運動神経が茶道部に入る
冬が来る前に胃袋扱き使う
凍て付いた北の悲しい風物詩


 「  道  」            山田  光男
不運では済まぬ歩道の事故悲劇        静 岡
介護して散歩の道は焦らずに
筋道を通す頑固は親ゆずり
道を説く人と思えぬ欲の顔


「こ の 頃」            川口   亘
つい気合い若気になれず老に馴れ     藤 枝
回転が速すぎるのか足おくれ
昨日見た年寄役を試しみる
歳という重荷を軽くする化粧


 「写  生」            大塚  徳子
のっぺらぼう貧相な山描くなかれ    仙 台
写生するならば腰据え四方山
描いても描いても山また山の山の中
カルチャーショック迫り来るよう山を描く


 「雑  詠」            森島  寿恵
熱気球色取り取りで競い合い         浜 松
張り子の犬千両箱を負う縁起
十三夜世の中乱れ月も泣く
豊作で小鳥喜び落穂食べ


 「寒くなったネ」          堀場  大鯉
詩も忘れバカになってる日向ぼこ       焼 津
少しずつ数が減ってく賀状書く
古株の理屈も多くなって冬
玉子酒のんでも皺は減ってこず


「呼  吸」            升  ますや
吐く息が揃いのれんを子に譲る      気仙沼
小刻みに吸ったり吐いたり受験票
涙腺に盗まれている息づかい
いい夢にタクト振られて寝る呼吸


 「自 由 吟」            御田  俊坊
児も家事も母を頼りに共稼ぎ      高 畠
ヘルパーを頼り任せて世話を受け
無邪気で慌て躓き怪我をする
無邪気で明るく親を助ける子


 「自 由 吟」            山田  ぎん
とうがんが畑に幾つもころがって       静 岡
彼岸花お墓参りを知らせてる
秋知らす彼岸花咲き白も咲き
スズメ集団稲穂を食べて脅し無く


「勇 み 足」            堀井  草園
気の合える町を根城の灯へいそぐ       静 岡
崖っぷち五指で救った名キャッチャー
盗まれた話に刺が味方する
馬鹿受けの隅で逆立ちして受ける

「雑  詠」            西垣  博司
百円で消費は美徳リバイバル         静 岡
親よりもお金手厚くもてなされ
ここだけの話背中の孫も聞き
リフォームで出費生活ガタが来た


「自 由 吟」               柳澤  猛郎
もつれ糸解く母さんの深い胸       袋 井
リタイヤの椅子には名刺などはない
エアロビへ賭けた女の持つ色香
失敗を明日へのバネにする奮起


 「緩  む」 芹沢 穂々美
つんと出た胸の高さの若いころ     沼 津
コンパスで描いた円が緩みだす
タテのものヨコにもしない男伊達
一本のネジが緩んで内緒ごと


 「雑  詠」            川村  洋未
赤ちゃんも涙と笑顔使いわけ         静 岡
がんばりも息を抜かなきゃただの意地
今時の子供とんがる靴をはく
正札のゼロに思わず指を折る


「自 由 吟」            安本  晃授
君が代は日本の国歌で有難い         静 岡
ああそうだ渡る世間は鬼と住む
文化の日流石美人の勢揃い
ねぎらいの言葉ふくらむ凡夫婦


「参   拝」               中安 びん郎
参拝を非難する国褒める国        静 岡
参拝に紋付き着たり服着たり
参拝は適切な時適当に
参拝は私心の発意他意は無し


 「卒  寿」 林  二三子
病癒えいつもの席に母がいる      芝 川
卒寿まだ生きるつもりの策を練る
ワタクシの行く末母を見て悟る
元気かの電話に卒寿今日も無事


 「皮 談 義」            永田 のぶ男
踠いても死んでも皮は残せない        静 岡
病院へ入ると悪くなるムード
名宛なき手紙を持った面皰猿
蛇の皮財布の中で働かず


「自 由 吟」         谷口  智美
タネ無しじゃやっぱ淋しいサクランボ     伊 豆
もう一度ストレートな恋してみたい
「捨て方」の本が書棚にあふれ出る
泣きそうで煙の下へすすすすす


「ピ エ ロ」            中野 三根子
おどけても涙のあともピエロです       静 岡
富士山ものぞいています大道芸
青空とピエロの顔にいやされる
赤い鼻つけてピエロになってみる


「思うまま」           堀場  梨絵
セリフもう忘れて匂う沈丁花       静 岡
行き詰まるときは神さま仏さま
ブランコが風に押されている孤独
自分史にけし粒ほどのメロドラマ


橋いつも越せばこの罪消えるのか    池田  茂瑠
束ね髪キャベツで包む愛がある      静 岡
逢える日の胸底罪の泡が立つ
無理をして出向いた赤い靴の哀
煮詰めたい愛へ足りない身の火種


「美 術 館」             佐野 由利子
回れ右しても抜け道見付からず        静 岡
油切れしないよう行く美術館
首縦に振ってしまってからの鬱
おだやかな笑顔にまたも騙される


「駄目な男と恐いばあさん」       多田  幹江
駄目な男がブルガリア食べている     静 岡
安安と踏み台になるパイプ椅子
触れずおくキレると恐いアスベスト
迷惑な私はきっとアスベスト


 「獺  祭」         川路  泰山
獺祭と決めて六畳の主さ        島 田
時間は霧となって遠のいてゆく
暫くを昔に帰る麦ご飯
さよならがしにくくなった小糠雨


 「自 由 吟」            高瀬  輝男
あまりにも空が静かでファイト消え     焼 津
進化した猿の哲学論に凝り
トイレ出ると勢力圏が変わってた
策一つ極彩色の皿に盛る


「春から秋へ」               望月  鐘雄
夫婦とはこんなものです味噌ワサビ    静 岡
シンプルな女に惚れているわたし
真っ直ぐに生きて拳に光る汗
切り株の芯父がいて母がいて


 「日々好日」         望月   弘
いろいろな大義を聞いてよく眠る    静 岡
米を研ぐことが辞書から落ちている
老衰にほっとしている訃報欄
マニュアルの通りに老いてすみません


 「冬の日の幻想U」         加藤   鰹
冬の僕たちとLEDの青          静 岡
雪が降る 音という音消し去って
バッテリー切れですケイタイも僕も
冬銀河 愛のセリフが見つからぬ


   顧  問  吟 
熟年の暮色へ黒いわだかまり      柳沢 平四朗
年波へ憑かれた自負が浚われる         静 岡
アスベスト闇の悪魔の白い牙
団塊が踊り場で待つニート族
秋そぞろ歳はもしもを抱いて生き

[10] (2005/12/05(Sun) 19:45:38)



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