創 作 自薦句 虎 竹 抄
「雑 詠」 高橋 春江 いい格好しすぎて衣はがされる 袋 井 傷ついた夢は春までそっとして 明日という頁へ好きな彩を溶く ノータイになってほんとの空気吸う
「本 音」 馬渕 よし子 コマ一つ進めてからの風当り 浜 松 意見書へ本音書けぬと書いておく お利口な人に話の腰折られ バランスを崩し欲張り見抜かれる
「生きる パートT」 山本 野次馬 羊水の流れ大河へ続くはず 函 南 産声で履歴のページ開く僕 期待だけ背負うカバンは重かった 胸の中火事になるほど君が好き
「自 由 句」 山本 トラ夫 鉛筆を削らなかった夏休み 長 泉 家柄も血統も無い猫の恋 戦いを終えるといつもある余力 寝て起きる起きなかったらどうしよう
「整 形」 松橋 帆波 似た顔のナースばかりの美容外科 東 京 整形外科に容疑者のデスマスク ボツリヌス菌でスターの仲間入り 教科書の偉人へ鼻毛耳毛など
「太 陽」 真田 義子 太陽が大きく見えた旅立つ日 仙 台 秋の雲会いたい人がふと浮かぶ 自分史の夢を支えてくれた骨 ライバルのでっかい夢にしがみつく
「 秋 」 増田 信一 太るのはゼーンブ秋のせいにして 焼 津 初冬でも秋と思える温暖化 我年も紅葉中か西日です 彼岸花子供の頃が走馬灯
「 秋 」 井口 薫 紅葉前線前頭葉をはや通過 袋 井 恋多き木にちがいない落葉樹 音量を一段上げて受入れる 秋深し急速にくる電池切れ
「 笑 」 薮ア 千恵子 正直で作り笑いがすぐばれる 焼 津 バカ笑いしたら肩の荷素っ飛んだ 笑うだけ笑った後の虚脱感 最後には笑うしかない行き詰まり
「弱肉強食」 増田 久子 鶏小屋へ虎猫が来る三毛が来る 焼 津 早い者勝ちを制するのはミセス 左遷地で子ら山に馴れ川に馴れ 写メールの顔で見事に縁が切れ
「自 由 吟」 寺脇 龍狂 ケータイを持つと手紙が来なくなり 浜 松 諭しすぎ元も子もない角力部屋 市民税上げてもらって政令市 初恋の相手未だに原節子
「茫茫の中の影」 金田 政次郎 米櫃の一粒ならば生きやすい 静 岡 大振り小振りブランコの下の影 電池切れ音を忘れている木馬 延命のリフォームの旅風に舞う
「雑 詠」 寺田 柳京 唯我獨尊僕はそんなに偉くない 静 岡 均整の美人へ腹を引っ込める 年金が痩せて俺まで痩せて来た 税金が追い上げて来る九十九坂
「雑 詠」 滝田 玲子 風呂敷に小さな義理も包みこむ 浜 松 欠点も個性のうちとあきらめる 昭和史に生きたもったいないも死語 ロボットの電池切れそう千鳥足
「雑 詠」 石井 昇 縁とは不思議なものよ酒肴 蓮 田 雨か嵐か横隔膜の微振動 平和ボケ漫画の蓋が開いている 瓢箪の底から喜劇転げ出す
「ボランティア」 成島 静枝 福祉協お食事会のボランティア 千 葉 老い孤独門もこころも鍵をかけ 訪ねれば嫌なオヤジが超気さく 美しい老いは国より難しい
「 秋 」 毛利 由美 あの夏がこの秋をひとしお秋に つくば 番組改編メイクドラマは三ヶ月 内閣も秋の雰囲気漂わせ 鍋をして先取り感のある手抜き
「政治なんて・・・」 戸田 美佐緒 ストライクゾーンがぶれてくる野心 さいたま 悪党のDNAが足りません リハーサル通りにいかぬ猫じゃらし はみ出したドラマが消える永田町
「家 族」 鹿野 太郎 ひんやりの下着に寄って来る小バエ 仙 台 茶柱が立って波立つ午前午後 愛一つされど呪文は百通り 姿見の前で葛藤する水着
「そ の 先」 岡村 廣司 その先は言うな誰にもわかってる 焼 津 その先を言ったら困るのはお前 その先を言わねばならぬのが掟 その先が言えず男は去ってゆく
「 波 」 鈴木 恵美子 浸食の浜辺に波の声を聞く 静 岡 浜育ち褐色の肌波に乗り 傷心を癒してくれる波といる 波長合う友と充電旅に出る
「雑 詠」 江川 ふみ子 もう少し引っぱらないで阿弥陀さま 函 南 火を貸して下さい心が寒いので 口下手が言うから本当だなと思い 女です鏡に眉を描き続け
「雑 詠」 西垣 博司 なべ底の恋はタワシで引き裂かれ 静 岡 喜寿過ぎて尚華のある女文字 気短かな男の長い自己弁護 日めくりが風邪引きそうに痩せて―秋
「米軍ミサワ基地」 濱山 哲也 米軍が冠に付く日本の地 つがる ヘイ敗戦国笑顔の奥が言っている 郷に入りては郷に従う日本人 戦闘機見上げてみんな拍手する
「執 着」 辻 葉 さり気なく咲いて零れたい白萩 大 阪 夕焼けの田んぼから秋が揺らめく 秋に生まれて無性に秋が絡み付く 秋冷を分け哲学の道をゆく
「フリーハグ」 大塚 徳子 国技とやビックリガッカリと呆れてる 仙 台 厚化粧落としてビックリ別人だ 抜け道のパイプが巡る天下り フリーハグそんなはやりに騙されて
「染 ま る」 小林 ふく子 木の家に住み紅葉の山を待つ 袋 井 喜怒哀楽四肢に染めて生き上手 今日の画布しあわせ色に染めました 葉が染まり少し魔力が失せていく
「似ている」 中矢 長仁 似てきたか夫婦でしぐさ顔までも 愛 媛 生き様が親に似てきた困ったな 古時計手入れ良いのかよく動く 定年後夫婦同じの時間表
「自 由 吟」 ふくだ 万年 マラソンの選手になれとお履き初め 大 阪 介護靴はいてズシリと老いを知る 賑やかな声の数だけ並ぶ靴 昼飯は諭吉で釣りと決めている
「神も仏も」 酒井 可福 パソ壊れデーターの無事神頼み 北九州 ご利益がある神ならば大歓迎 仏壇のおはぎが一つ消えている 神無月車の傷は神不在
「ライバル」 畔柳 晴康 ライバルがジロリこちらを睨んでる 浜 松 ライバルに負けるものかと胸を張る ライバルに笑顔会釈のこの余裕 汗ゆぐい今日の勝ち負け引き分ける
「雑 詠」 瀧 進 移り気な恋が解けない乱数表 島 田 昇降舵引いて逆風迎え撃つ 子に帰る老母の思い出蜃気楼 人の世を映す仏の掌
「ぐし縫い」 芹沢 穂々美 雑布の運針やけにヒステリー 沼 津 運針のハートの形愛がある おみくじは末吉で良し恋しい日 運針の乱れに何か見抜かれる
「不 揃 い」 鈴木 まつ子 フルマラソン老いも若きも競い合い 島 田 不揃いのナスでも味覚保証つき 葉は花に逢えぬ運命や彼岸花 見比べて異彩を放つ大家の絵
「追 憶」 安田 豊子 かやぶきの里に活きづく食文化 浜 松 絵手紙の素朴にこころ囚われる 味わって呑めば昔が揺れる猪口 追憶をゆっくり回す万華鏡
「さ が す」 新貝 里々子 何色かとさがす会話の糸口 袋 井 ツールバーとは路地裏にありますか 歩きながらのメールは打てません この部屋になにをさがしにきたのだろう
「雑 詠」 内山 敏子 運動会子供見るより親の会 浜 松 包帯を巻くと泣き止むかすり傷 ありのままに写った鏡を憎めない 倦怠期初心にかえりお茶を点つ
「不 揃 い」 薗田 獏沓 分け隔てなく育てたが此の違い 川根本町 半分に切って大小この不思議 飼い猫と野良猫鋭い目が違う 縦横と墓の形よ墓地迷路
「雑 詠」 山田 ぎん 秋の空鳩が飛んでる茜雲 静 岡 涼と風九月になって心地良い 家の前花色々に咲いている 曾孫笑み生えた可愛い歯が二本
「果たして?」 川口 亘 吸血鬼云って呉れるな採血車 藤 枝 昨日から考え過ぎて悩む今日 旧交も老令過ぎて話題消え 記名して偽名が騒ぐ元となり
「台 風」 川口 のぶ子 台風が去って暑さの置き土産 藤 枝 一寸した事でも転ぶ歳になり 真っ直ぐに歩ける筈の曲る足 落ち着けと充分胸に云い聞かせ
「自 由 吟」 御田 俊坊 愛想よく威張らず頭低い人 高 畠 世のために尽くす心に頭下げ 嬉しいと手紙を読んで出る涙 最後には元気に暮らせ来る手紙
「赤い服のくまさん」 山田 フサ子 健康を楽しみながら行く余生 袋 井 支え合い楽しく生きる老いの春 奇麗に生きよう戻らぬ日を抱いて 行く余生趣味の料理の腕ふるう
「雑 詠」 堀井 草園 無駄骨で得した俺のレントゲン 静 岡 公約が避難袋の底が抜け 火遊びが好きで火傷に気付かない 音沙汰のないのが無事か土左衛門
「原 油 高」 中安 びん郎 原油高また松根油堀りましょか 静 岡 原油高自転車乗れば健康に 原油高ウォーキングは金不要 原油高大八車油差す
「運 動 会」 林 二三子 応援に組んだスクラム崩れない 芝 川 棒倒し騎馬戦もないハラハラも てっぺんはスマートな子で組体操 ビデオ手に我が子を追って親走る
「円 周」 池田 茂瑠 重い荷へ風を味方にして励む 静 岡 白旗を上げれば事は済みますが 反論へ円周だけは固めよう 濁流へ未練の残り捨ててきた
「雑 詠」 多田 幹江 噂の根穿る元気なシャベルたち 静 岡 指切りの軽さジワジワ付けが来る アンチエイジング青〜いシャツ着てさ きのうを捨てる私を捨てる冬支度
「第42回県大会ボツ句」 中田 尚 カップめん待つ三分の長いこと 浜 松 両国にモンゴルの風吹き荒れる 福の神わが家の地図を忘れたな 森光子でんぐりがえりまだ続け
「どきどき」 塚本 寄道 真夜中に近づいてくる砂利の音 長 泉 一発逆転ホーム目指して駆け抜ける 授業中指名をされて目を覚ます 初めてのどきどき忘れ街に住む
「ま ぶ す」 石田 竹水 口下手が言葉に笑顔足している 静 岡 握り飯塩か砂糖かまぶす腹 竹光で奇麗な首が切れますか 合鍵の腹が読めない薄笑い
「夏の終わり」 谷口 さとみ 夏まつり後は探されないお面 伊 豆 シミになる心配もないほどの恋 秋風が吹いて萎んでゆくプール つまらないものを食べたときみは言う
「秋 風」 中野 三根子 さわやかに笑って風を受け止める 静 岡 コーヒーの香りに私走り出す 心まで秋風の音しみ渡る 風だけが私の心知っている
「雑 詠」 川村 洋未 足腰が弱い列からはずされた 静 岡 幸せが歩いた跡を踏み固め ドアノブで待ち続けてた恋心 はじかれて味方もいない敵もなし
「上 品」 佐野 由利子 長生きを疎まれる日がきっと来る 静 岡 順調に進む話が気に食わぬ 上品に振舞う人に肩が凝り スタートに遅れて輪には入れない
「ログアウト」 真理 猫子 割り切りで交際中の元夫婦 岡 崎 沢庵を切る手元から嫉妬心 今夜こそ左脳と縁を切ってやる 優しさは売り切れましたログアウト
「思うままに」 堀場 梨絵 息抜きの散歩こころの色直し 静 岡 ピーマンの空洞にある無の時間 太陽が好き縁側の回り椅子 場を読んで納得をするわたし
「な ま ず」 長澤 アキラ 家具止めた止めてないのは僕と妻 静 岡 非常食備蓄したのは酒ツマミ 犬小屋の下に置いてる貴重品 断層の左右で夫婦ちがう夢
「風 の 櫛」 川路 泰山 風櫛の女あくまでも妖艶で 島 田 残り香に何を秘めしや磯の花 忘れ得ぬ出合い生れた七月一日 一九七一を生年月日として置こう
「自 由 吟」 高瀬 輝男 生意気な靴にマンネリ指摘され 焼 津 お目出度い話家計簿そっぽ向く 混沌の世だから恥もすぐ忘れ 弾除けはごめん先頭には立たぬ
「そして秋」 望月 弘 予報士がてんてこ舞いの秋の空 静 岡 穂を渡る風が乾いてそして秋 人肌の燗と語らうそれも秋 ソーランで日本の秋を埋めつくす
「野 良 猫」 加藤 鰹 野良猫が「一万円でどう」と言う 静 岡 年老いたチンチラ過去にしがみ付き 三毛猫と山田うどんで飲むビール 酔った目で自殺未遂を語るノラ
顧 問 吟 「右 脳」 柳沢 平四朗 子の帰省ああ引き算のお出迎え 静 岡 単細胞ヒトの右脳へ喰いさがる 偶然はもう他人事へ老い二人 人情に怪我をしそうな端がある
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[94] (2007/11/26(Sun) 08:47:12) |
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