静岡川柳たかね 巻頭沈思考バックナンバー
トップページへ







「 二匹と二人 」 望月  弘

 世の中高齢化が進んでいる。
 二匹と二人の我が家も典型的な老々家族だ。二人はさて置き、犬の「ホクト」は十二年と七ヶ月、猫の「コロン」は十一年と四ヶ月だ。人間の年齢だと八十歳を過ぎた頃だろう。
 私が物心ついた頃から、犬と猫はいつも家族の中にいて一緒に暮らしてきた。
 以前飼っていた犬は、息子が小さい頃から飼い始めて十九年程生きた。最期の一〜二年は足腰も弱り、歩くのもよろよろの状態だった。猫もある頃から姿を消し、犬も死んでからもう動物を飼うのはやめようと思った。
そんな時、妹の家で仔犬が産まれ、同じ年に子供(孫)も生まれることになった。妹から、迷信だと思うが同い年だとどちらかが負けると言い伝えがあるので、飼ってほしいと頼まれて飼うことになった。
 柴犬の雑種だったが、近所の人達や子供達にもかわいがられて、やさしい性格に育った。遠くで子供らの声がすると耳をそば立てている。知らない人でも尻尾を振るほどの人好きで、番犬にはなっていない。今は時たま溜息をついたりして寝てばかりいる。
 犬が一才を過ぎた頃、勤務先の駐車場脇に捨てられていた猫を娘が拾ってきた。数匹の中からいちばん弱そうで可哀相なのを拾って来たという。目脂で目が塞がっている状態で、やせこけていて育つのは無理だと思った。

0712-hiroshi.jpg しかし、スポイトで牛乳を飲ませたり、温かくして面倒を見たおかげで、ようやく歩けるようになった。よくよろけてばかりいるので「コロン」と名付けた。ようやく大きくなり外出するようになったので、半年位の時に不妊手術を施した。それからは余り遠出はしなくなった。
 性格は犬と正反対で人間嫌いに育った。捨てられたことを本能的に察知しているのかと思えるほどだ。遠くで子供らの声がしただけでもその場から逃げてしまう。家族と一緒にいても、来客があるとさっと逃げてしまう。
 でも淋しがりやでもある。家にいる時は私のそばでいつも眠っている。そっと席を外してもすぐついて来る。
 今は、足の衰えを遅らせるべく、犬と朝夕の散歩を続けているが、どちらが先に音を上げるのだろうかと思っている。当分は二匹と二人で癒し合い、助け合って生きている。

飼い主に似た溜息を犬がする    弘  

[23] (2008/03/08(Sat) 09:53:46)



これが川柳・これも川柳 >> << 「父さん」のバカ(一)
Copyright © 静岡川柳たかね 巻頭沈思考バックナンバー. All Rights Reserved.