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霜石コンフィデンシャル82  高瀬 霜石

「 美 男 薄 命 」

前号に、文芸春秋スペシャル2009夏号「映画が人生を教えてくれた」の中の、読者と執筆陣のアンケートによる「日本の女優ベスト10」の結果を載せた。
映画評論家・長部日出雄さんは、誰に入れたと思います? 長部さんは、まず間違いなく、高峰秀子に一票を投じただろうと、僕は思うのだなあ。
高峰秀子といえば「二十四の瞳」(1954=昭和29年)の大石先生があまりにも有名だが、長部さんは、「カルメン故郷に帰る」(1951=昭和26年)の彼女がとても印象的だったと、何かに書いていたのを、はっきり覚えている。
この映画は、日本初の総天然色の長編映画。そのわりには内容が軽くて、主演の彼女はなんとストリッパー。もちろん彼女が脱ぐわけはないのだが、長部さんは、彼女のショート・パンツ姿にクラリときたそうだ、日本初のカラー映画で、美人女優のまっ白な太股だもの。長部少年がボーッとなるのも無理はなかった。
随分と遅れて僕も観たが、色っぽいというよりは、健康美。ただ、当時のことを考えれば、なかなかに大胆であったろう。そして、目の保養であったろう。
先月、女優のベスト10を載せた。今月は、華のある男、頼れる男、影ある美しさをたたえた男の登場。
@三船敏郎 A高倉健 B渥美清 C市川雷蔵 D渡辺謙 E緒方拳 F仲代達矢 G石原裕次郎 H佐藤浩一 I森雅之
 女優と男優を見比べて、改めて思った。女優で亡くなったのは、急性骨髄性白血病で28歳で流れ星のように消えた夏目雅子ただ一人。あとは、みーんなご健在。
 一方の男優は? 指折り数えてみて下さいな。
 日本の女性の平均寿命は86歳。世界一なのは誰でも知っていること。内訳を見ると、50%は86歳の手前で亡くなり、あとの50%は86歳の先まで生きる。そんなの当たり前、だから平均寿命なのだとおもうでしょ。
 ところがどっこい。男の平均寿命は、79歳だが、実は、男の半分くらいは70歳前後で息絶えるという。たまさか生き残った少数の爺さんが、90歳、95歳と長生きをして――数字を引っ張りあげるから――その数字になっているのだそうだ。つまり、男の鬼門は70歳。男優の顔触れを見ると、納得せざるをえない。
霜石コンフィデンシャル | Link |
(2009/12/28(Sun) 12:29:43)

霜石コンフィデンシャル81   高瀬 霜石

「ロボ・ナース」

《インプラント》なるモノをほどこしている人が、僕の回りにも数人いる。なにせ、あっちこっちにガタがきている年代だから仕方がない。
「口の中に、ベンツが一台入っている」と豪語する友人。それほどにジェンコ(お金)がかかるモノらしい。
僕は、奥歯に爆弾を抱えてはいるものの、三ヶ月に一度、歯医者さんで定期診断を受けているので、とりあえず、だましだましの現状維持だ。
僕の行っているO歯科医院は、それはもう至れり尽くせり。毎日、馴染みの可愛いおネエちゃん(歯科衛生士)が担当してくれ、好きな音楽をヘッドフォーンで聴ける。近くの椅子で、歯を削っているあの怖い音《ウィ〜ン》が聞こえないのも助かる。
99%痛くもなんともないのだが、でもあの椅子に座ると、どうしても緊張してしまう。トラウマってやつですか。きれいな看護婦さんが側にいて、手を握ってくれれば安心なのにと、行く度に思う。
人間じゃなくたっていいのだ。ロボットでいい。もちろん千円くらいのチップは払いますよ。《吉永小百合ロボ》とか、《松坂慶子ロボ》とかがいてさあ。
文芸春秋スペシャル2009季刊夏号「映画が人生を教えてくれた」(千円)に、読者と執筆陣の投票による「あなたが最も美しいと思う、魅了されたスターは誰ですか?」のアンケート結果が載っていた。
 日本の女優のベスト10をお知らせしよう。
@吉永小百合 A原節子 B高峰秀子 C夏目雅子 D岸恵子 E岩下志麻 F宮沢りえ G若尾文子 H松たか子 I松坂慶子
 投票した人の平均年齢は、A原節子を見る限り、僕(還暦)よりちょっと上かなあと思う。「永遠の処女」と呼ばれた彼女は、白黒スタンダード画面の、日本映画の黄金時代のスター。1962(昭和37年)に、42歳で自ら映画界を引退してしまった人である。僕は、残念ながら、ビデオでしか彼女を観たことがない。
 歯科医に限らず、病院に備え付けて欲しいロボットは、別に話しかけてくれなくていいのだ。ギュッと手を握ってくれるだけでいいのだ。
 「高瀬さん。今度、《松たか子ロボ》が入りましたよお。いつもの《若尾文子ロボ》よりは、新顔な分、割高だけど、どうします?」なんてね。
霜石コンフィデンシャル | Link |
(2009/11/07(Fri) 13:53:54)

霜石コンフィデンシャル80   高瀬 霜石

「クレイマー宣言」

オラの生業は、自動車部品商。自動車は生活に必要不可欠のモノであると同時に、環境にはとてもやっかいなシロモノである。
ことの発端は、去年の秋、商工会議所の創立百周年で市民会館へ行った時のこと。青森からおエライさんを乗せてきたであろう一台の黒塗り高級車。ずーっとエンジンかけっぱなしで待機している。役所ってこれだものなあと思い、窓をノックした。
「あんた。このイベントが終わるまで、ずーっとそうやっているんだが?」と聞いた。弘前公園のさわやかな秋空の下にもかかわらず、暑いからなどと言い訳をする運転手のネームプレートを見て驚いた。役所の車ではなく、青森の某タクシーだったのだ。
数日後、青森へ行った。偶然乗ったのがタクシーだったので、このことを問うた。「お客さん。それは会社に抗議しても無駄。なぜなら、その運転手はうちの幹部で、そんなオイシイ仕事は自分で取っちゃう人で、苦情は全てこの人の所に集まるわけ。自分で握り潰してオシマイ」とのたまう。
気になりだすと止まらない。大型店、デパート、ホテル、駅、夜の鍛冶町などで客待ちしているタクシーの長い列。100%エンジンかけっぱなし。側を通るとオエッとなる。
弘前のタクシー会社何軒かに、どうにかならないものか聞いた。答はおおむね一緒。「燃料高騰の折。エンジンはなるたけ切るように運転手にお願いしているが、正直、そこまでの管理はとても無理」とのこと。「お宅の経営のことはどうでもいいのです。こっちは排気ガスのことをいっているのですが」と喉まで出かかったが、あきらめた。
 こういうのを《暖簾に腕押し》とか《糠に釘》とかいうのか。いや、この場合は《馬の耳に念仏》というべきか。はたまた《馬耳東風》というべきか。どっちにしろ、自覚がまるでなく、すべて他人事だから始末が悪い。
北欧では、信号待ちでさえもエンジンを切らないと罰金だそうだ。
 タクシー会社に自浄力はない。運転手にも罪悪感なんてない。ただ、惰性のなせる業である。
 ここはやはり、商工会議所とか、法人会が音頭をとって(いい意味での圧力団体になって)大型店やデパートやホテルや駅のトップ人たちに決断(惰性の打破)を促すのがてっとり早いと思うが、読者諸兄は如何?
 思っているが、訴えるのはいかにも臆病とかいう人が大多数だろう。でも、一人よりは二人。二人よりは三人なのである。一人ぼっちで言い続けるのは、とてもくたびれる(コエグなる)のだ。援軍がほしいなあ。
 《排気ガスみんなで喋ればコエグない》と、オラは切実に思う。
 アッ、これは川柳ではないです。「標語」です。

霜石コンフィデンシャル | Link |
(2009/10/07(Tue) 13:51:23)

 

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