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一桁の昭和生まれが振り返る日本

川路 泰山


 激動の昭和、戦後も六十余年を過ぎて世界でもトップ級の経済大国とはなったが、反面大きな歪みも生じてしまった。一つには大家族制度の崩壊により、なげやりな家庭教育から生ずるモラルの低下、それによって起こるおびただしい数の事件犯罪である。
それというのも敗戦により国土の大半は焼土と化して衣食住を失った国民は生きる事さえ大変な時代を迎えて、一人一人が焼土にしがみついて立ち上がってきた。
その昭和一桁生まれの人達が自分の経てきた過去を子孫には踏ませまいと必死の努力をして、“自分は食わなくても子供には”の甘やかし。そして、急速な経済成長による豊富な物資と個人生活の安定、反面核家族化が進み、夫婦での共稼ぎによる家庭内での子供達の躾は自然と放置され、箸や茶碗の持ち方まで学校で教えるのが当然かの過った考えが横行、事件が起こると何もかも学校や社会の責任の様にして、親としての責任は何一つ頭にない恐ろしい時代となった。結果が子が
親を親が子を殺傷、他人に対しても同様に無差別な殺傷や物を奪ったりが日常茶飯事の様になってしまった。また、核家族化による老人の一人住まいも近所との付き合いもなく何時死んだかも知れない事件が多発しており、自分さえ良ければ他人様のことなど振り向きもせず、なるべくなら関わりのない方向へと回避する。一見平和な様に見える日本だが先が危ぶまれる。これも一部には昭和一桁生まれの責任のようにも思える。
私達の青少年時代には隣近所の大人達も互いに日常の面倒を見合ったものだが、今は余分な事の様に思われて話すら出来ぬ事柄が多い。昭和一桁も全員七十代となり、地域からも人生経験者と見られ、暇も作れるので、何とか話し合いの場や挨拶運動あたりから始めて、生活常識を再教育する時代ではなかろうかと思う。地域や行政でも、そんな機会を作ってもらえればお手伝いさせてもらえるのだが。


[10] (2006/02/09(Wed) 00:43:39)



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